2006年06月16日(金)18時51分-川口翔輔
以下、太郎氏の言い分。ただし一部改訂。
まったくいつも通りの夕方でした。僕はタケシ君とテイク・アウトのハンバーガーをかじりながら、公園のベンチで日が暮れるのを待っていたのです。いつも僕らは日が暮れるまで、互いになんでもない話をしていました。この日もそうだったんです。
タケシ君と話すうち、順調に日は暮れてゆき、公園はだんだんと寂しさを増していきました。もうみんなすっかり帰ってしまったろうかと思い、見渡すと、砂場のあたりにまだ人影がありました。近所の小学校に通うホンダ君が、見覚えのない、同い年くらいの男の子と、あっちむいてほいをしているのでした。
それが、なかなか勝負がつかないものですから、タケシ君とどっちが勝つだろうかなんて話していたのです。やがてタケシ君が、二人のどちらが勝つか賭けをしようと言い出しました。僕はいいよと言いました。タケシ君が、ホンダ君がきっと勝つといったので、僕はもう一人のほうに賭けることにしました。それで、僕らはお互いになにを賭けようか話していたのです。
僕らの頭上を、寝床へと帰る数え切れぬほどの鳥たちが飛び去っていきました。
まったくあきれてしまうほどの長期戦にも関わらず、ホンダ君はいよいよ熱っぽくあっちむいてほいを戦うのでした。
僕とタケシ君の会話が続かなくなったころでした。長かった二人の戦いが、とうとう決着したのです。ホンダ君の首が折れるというかたちで。
「いひひっ」
うれしげに笑ったかと思うと、彼はあっという間に走り去ってしまいました。僕らはとにかく屍を乗り越えて追いかけました。
やがてタケシ君が追いついて、彼の手を引いてきました。
そうして僕らがこの公園に戻ってきたら、おまわりさんがいた、と、こういうことです。
*
警官:なるほど。しかしその少年は…。ふむ、この証言に間違いはないかね、タケシ君?
タケシ:いいえ、真っ赤なうそです。やったのは太郎君です。僕、この目で見たんですから。いひひっ。
太郎:なっ、このやろう!どうしてそんなでたらめを言うんだ!
太郎は手を振りほどいた。
*
彼くらいの歳ならば、大いに喜んだっていいものなのだが、生まれて初めてのパトカーに、彼はなんの感動も示さなかった。ただ血走った目をじっと僕に向けて、しきりにぶつぶつ言うばかりだ。
「賭けは僕の勝ちだ。約束は守ってもらうぞ…いひひっ」
なつかしいな。うん。
もうぼくは18になってた。まいった。
やれやれ。