2006年10月08日(日)16時46分-渋沢庚
私は、某高校で教鞭をとるYというものです。
担当科目は日本史。まあ、こんな科目ですから、聞かない生徒がいるのは仕方ないと、思っていました。私のお粗末な持論を言わせていただければ、そのような生徒は結局、後になって苦労するわけで。そういうわけですから、「ざまあ見ろ」とでも、言いましょうか。私はそういう落ちこぼれは、切り捨ててきたと、言うわけですね。私としても、何か問題があるのは、なんていうんでしょうかね・・・。ええ、わかりやすく言うと、面倒なので・・・はい。とにかく、私の人生は平穏そのものでした。はい。おかげさまで。
ところが、それは、一人の生徒から始まりました。
「あれ・・・K君はどこにいきましたかね?」
教室の生徒は誰も答えません。いつものことです。この子たちは、意思表示をしようとしないのです。前から三列目の、Mという比較的まじめな子がやっと答えてくれました。
「お休みです」
私はその時は、何気なく出席簿にその子の休みを記入しました。しかし、私は気づいていなかったのです。一番後ろでにやりと笑っているHのことに。
次の授業は二人欠席が出ました。二人目の子は、まじめで決して授業をサボるような子ではなかったので、私は少し不安になりました。そして、次の授業には三人、その次には四人と次第に増えていったのです。
ある日、私はあのMに理由をきいてみました。
「あの、最近、欠席が増えているみたいですが・・・何かあったんでしょうかね?」
「さぁ、みんな、連絡がつかないみたいですよ・・・」
「連絡がつかない?」
その時です。私が背筋に冷たいものを感じたのは。私の後ろにはHが黙って微笑していました。
次の授業も次の授業も、生徒の数はだんだん減っていきました。口数の少ない私のことですので、ほかの先生とも、このことは話さずにいました。しかし、どうしようもなく気になった私は、同じ社会科のDという先生に尋ねてみたのです。
「あの・・・H君はどういった子なんでしょうか?」
「H?よく知りませんね。ただ、変な子で、オカルトに興味があるらしいですよ」
私はそれを聞いて、ハッとしました。彼が、Hが、皆を消してしまったに違いないと。そして、それはすぐに確信に変わりました。
次の日、授業に出た私のクラスにはもう、あのHとMしかいませんでした。 私は、いつものように出席をとり、いつものように授業を初め、チャイムで終えました。しかし、いつもと違ったのはその後です。
「先生・・・」
Mがよってきました。私は教科書を持ってきたので質問かな?と思ったのです。しかし・・・
「先生・・・。Hの奴が先生のことを消すって。H、皆の事、気に入らないって。気に入らないやつは」
そこまで言ってMは口を閉ざしました。それは蛇の目でした。後ろで、Hが恐ろしく冷たい目で見ていたのです。彼はその目をこちらに向けたまま近づいてきました。私は、怖くなって教室を出ました。Mの手を払って。
教室の引き戸を閉めた時、Hの恐ろしい声が聞えてきました。
「裏切り者・・・」
私は次の授業も、しかし、一応、出ました。そして、黒板に「自習」と何も言わずに書くと、急いで教室を出ました。教室にはついにHしかいませんでした・・・。そして、私はその足で校長室に向かい辞表を提出しました。次の転校先を待つ間、Hと二人きりでいるのは無謀でしかないからです。私が、教師をやめた仔細は以上です。
「しっかし、凄ぇな。Hは。本当にY先生、消してしまうんだから」
「集団で登校拒否するだけじゃ、芸がないからな。一人づつ消えていきゃ小心なYだ。ビビるに決ってる。逃げるように辞めるのも想像がついたさ・・・」
「ふ~ん。にしても、お前がオカルト好きなんてデマ、誰が流したんだ?」
「いや、それは本当だ。俺はオカルトやホラーも好きな好青年だ」
「・・・ま。なんでもいいよ。Yもいなくなったし、皆、帰ってきたことだしな」
たぶん中学か高校のときに書いた作品です。急に出てきたので。