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極短編小説(17+1)

2011年11月05日(土)20時34分 - 17+1

 

宇宙行商人

「チケットはいらんかね」
「何のチケットですか」
「チケットはいらんかね」
「えっと、何の」
「チケットはいらんかね」
「あの……」
「チケットはいらんかね」
「……だめだ、壊れてやがる」
「チケットはいらんかね」
「クソッ!」
「チケットはいらんかね」
「このポンコツめ」
「チケットはいらんかね」
「……あ、このおじさん、僕の無線が壊れてることに気づいてないや。申し訳ないなあ」
「チケットはいらんかね」



アイデンティティ屋

「へい、らっしゃい!」
 店主は威勢よく声をあげた。
 対して客は、一通り店内を見回してからぼそりと呟く。
「……アイデンティティひとつ」
「あいよっ! 今日は活きのいいのが入ってるよっ!」
 客は黙って二千円札を渡した。
「まいどありっ! はいお釣り八百万円ねっ! アイデンティティ一丁!」
 途端、客の佇まいや口調が変貌する。
「おおっこいつはいいねっ! また来るよっ!」
「あ、はい……」と店主は返した。



ショウセツモドキ

『「フレズノがさりてつむ羊をやみ好きなさい」ってお比さんに触がれて、突破口で腕いてみたとの、身軽の種がさりてつむ羊はにとにとがい。』
 これはまだ幼虫です。
 成虫まで育つと一応読めるようにはなりますが、あくまでモドキですので文脈はありません。
 二つとして同じ模様はなく、体長もさまざまです。
 複数のショウセツモドキを意図的に並べることでかりそめの文脈を持たせる遊びが流行しています。
 いま六匹目です。



人生の難易度をつかさどる天使

「わたしは人生の難易度をつかさどる天使です」
 人生の難易度をつかさどる天使は言った。
「おれの人生はハードモードですか?」
 男は天使に尋ねた。彼はまだ若く、艱難辛苦と言えるような経験はなかったが、それでも不安だったのだ。
「まさか。全然ハードモードじゃありませんよ。あなたの人生は初級です。簡単簡単」
 天使はこともなげに答えた。
「よかった、初級だったのか……」
「はい、初級3手詰めです」
「すぐ詰む!」



ソラミミさんとサクシくん(終)

「ソラミミさん! こっち見てみいよ、雲が怪獣になった!」
「サクシくんったら、またいつもの目の錯覚でしょ……」
 あきれ笑いを浮かべながらソラミミさんは振り返ります。
 しかし。
「……あれ?」
 視線の先にサクシくんの姿はなく、ただ原っぱが広がっているだけ。
 夕焼け空には変わった形の雲がひとつ。怪獣というよりも、子どもの手のひらのように見えます。
 そこでソラミミさんは、やっと本当のことに気づいたのでした。

最終更新:2013年02月20日 18:52