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20110915対名工大合評会会話ログ抜粋カオスフルその三

2011年10月14日(金)20時14分 - うつろいし

 

面白い作家。トマスピンチョン

・面白い本を紹介します。ヴァインランド。トマス・ピンチョンていう小説家なんですけど、まあ20世紀で一番偉い小説家10人選べって言われたらこの人選ばれます。
 でまあ1960年代のVっていう小説でピューリッツァ賞取った男だ。(ゑ?) うん。あれ時々小説も取る。報道写真と報道がメインだけど。
 すごく有名になったんだけど何か35年くらいまったく表の世界に現れなくて謎の人だったんだけど、例えばフラクタルがどうのこうのとかカオスがどうのこうのとかそういうことを小説の中で言うもんだから、理系かMITの教授が七人くらい集まって書いてるんじゃないかって噂が流れてたんだけど、結局ヴァインランドってのは、そもそもこの人結構難しい小説家。読みにくい小説家なんだけどこのヴァインランドってのは1989年に出たときに、余りに読みやすかったために皆ががっかりしてしまった。もっと難しい小説が出ると思ってたのにって。でもその後、まあ読みやすいから広く。今までほとんど読まれてないけど、それに関する文学部の論文とかいくつも出てるみたいな人だったのが広く読まれて割りと面白いじゃんて一般に認められたものですごい面白くてさ。
 1984年が舞台なんだけど、主人公が沢山居るんだけどまあ最初に出てくるのがゾイド・ホエイアって人でこの人はね、えっと男寡婦でかわいいしっかり者の娘がいるんだよ。それを一人で育ててて、で収入は何かって言うと国から精神異常の補助金を貰ってて、時々貴方が精神異常であり続けるという証拠がなくなりましたって、一ヶ月以内に精神異常である証拠を見せないと補助金が打ち切られますって通知が来るからその度にね、近所にあるバーの窓ガラスを女装してガーンって割ることによってお金を稼いでる。で冒頭、今年は違うことやろうって言って、女装してチェーンソウ持って近所の店行ったら、「おいお前ここじゃねえよ。あそこだよ」「え、どういうこと」「テレビ局が皆待ってんだよ」いつの間にテレビ局がってなんだ、精神異常やるのにテレビ局のお伺い立てなくちゃいけないのかって。まあそういうシーンから始まるんだけど、でそうするうちに古い、60年代にマリファナを巡って追いかけっこをした捜査官が久しぶりに現れて、「あんたの嫁さん逃げましたね」みたいなことを言って「あいつが逃げたの?」でゾイドの嫁を探している過激派捜査官がゾイドの家を捜索して家がなくなっちゃって、娘と二人逃避行を始めなくちゃいけないみたいなのが始まりなんだけど、その後メインが娘の話になってくわけ、その娘はゾイドのパンクロック友達に娘さんは私が必ず守りますとか言いながらパンクロックの髪の毛緑色の奴が、仲間に聞こえないように小さい声で言ったりするわけ。で分かった頼むぞってさ。何あんたら私を物みたいに交換しないでよって娘が怒ったり。で別れるときに「お父さんヤクは程ほどにね」「うん、お前も股をしっかり閉じておくんだぞ」って面白いんだよ。
 で話はね、娘がいろんな人たちに会っていくって、パンクバンドがイタリア人のふりしてマフィアの結婚式の音楽を担当するって、でそのマフィアの中で昔のお母さんの、娘がお母さんの顔を覚えていないけどお母さんを探すってのがメインの話なんだけど、つまりお母さんの知り合いだった女の人に合って、そっから話がどんどんおかしくなるんだ。そこでお母さんが過激派だった時代にお母さんと知り合いでいろいろ協力していた女の人なんだけど、その人はカリフォルニアの山奥のくのいちの館に住んでる忍者なんだよって。
・なぞだ。なんで忍者が
・本当にそういう話なんだよ。忍者いるけど。そう、テレビと忍者とロックの話なんだ。でその人が何で分かったかって言うと、ゾイドが昔助けた日本人がいて ふみもた たけし って日本人がいて、そいつがいざとなったら私が助けられるのだったら私に相談してくださいって名刺を出して、その ふみもた たけし って名詞をその忍者の人が知っててって繋がるんだけど、でその忍者の女の人がふみもたたけしとどう繋がってるのかっていうと、さっき言った家を壊した過激派の捜査官。あいつと忍者の女の人が昔から犬猿の仲でさっき言ったマフィアの人が、マフィアこの過激派捜査官嫌いだからこの忍者に暗殺を頼むという話で、どうやって暗殺するかって言うと、変装して日本の『春のデパート』って売春宿に潜伏して過激派捜査官が来るのを待って、『震える掌』って触られると一年後に死んでしまうデスタッチの技術で殺そうとするんだけど、その過激派捜査官は予めそれを察知して自分とそっくりな日本人の ふみもたたけし を代わりに送り込んで、で間違えてデスタッチを食らわしてしまってって言うところが。
 この人の話が読みにくい理由はね、話がどんどん変わっていく。他の小説だと本当にそれが拡散していっちゃうんだけど、この小説は定期的に戻って来てくれるおかげでなんとか読める小説、読みやすい小説になっている。他の小説本当にまとめる気がゼロだったりする。
 でなんで女の人が忍者の技術を持っているかって言うと、お父さんが軍の関係者で一時期横浜にいた時にパチンコ屋で微妙に調節された釘の間を行くパチンコ玉の行方を見てたときに突然肩を叩かれて、「私は人の行く末が分かる人間だ。あなたには才能がある」みたいなことをw パチンコ屋でそういうのが出てくるのが面白いんだけど、「何を教えてくれるの」って言うと「さあ貴方なら直ぐに団持ちに慣れます。貴方をパチプロにするにはもったいない。私がイノシロ師匠に会わせましょう」って、イノシロって英語だけで読むと苗字なのか名前なのかまったく分からないんだけど、本多猪四郎っていうゴジラの監督の人がいて、それで多分イノシロウなんだと。何でかって言うとこのイノシロ師匠が女にくのいちに教えたら、その必殺技が死の鼻穿りとチンピラゴジラって技でここでゴジラが出てくるからゴジラ関係でイノシロウって名前だと。
 でさっきの ふみもたたけし はなぜ捕まったかって ふみもたたけし の所でゴジラの話が出てきて、こいつはワワズメ生命&非生命っていう謎の保険会社の社員で、ところが脱サラしてフリーの調査員になろうとするんだけど結局だから元いた所からしか仕事が貰えないっていう情けない生活をしていたところへワワズメ生命&非生命の南東の研究所が巨大な足跡と共に消滅するという事件が、それを調査している間にさっきの『春のデパート』へ連れて行かれてしまうという話。それで面白いのはさ、その後しばらく体の調子がおかしいぞってワワズメ生命&非生命の会社の所へ行っていろいろ検査してもらって、どんなことがあったかって言うと医者が「こんなことは医者としては言いたくはないんだが、君『震える掌』という言葉を知っているか」「その店なら一度行ったことがあります」「風俗の話じゃないんだよ。くのいちの技の話だよ」なんかね。ギャグセンスがみんないい。なんか狂わしすぎる。なんか野球中継が8時50分に終わるとか書いてある。
・思ったんですけど、そいつ世に出ない間日本に居たんじゃないですか?
・住んではいないけど、どうも二回くらい日本に行ったんじゃないかって噂があるんだけど、本人曰く一度も行ってないよっていう。会ったって人すらいるんだけどね。あれはピンチョンだったと思うって。でも顔写真が良く分からないんだよね。大学時代の一枚の写真くらいしか残ってなくて五年位前に二枚目が発見されて、それくらいしか。
 この人ね、僕は早すぎたラノベだと、えっとラノベ的センスってのを早すぎて持ってた人と思ってる。そう、1960年代に描いたVっていう小説はどういう小説かって言うとハーバード・ステンシルっていうのとベニー・プロフェインって二人の男が主人公なんだけどベニー・プロフェインってのは『駄目男なるヨーヨー人間』って奴で三十代のデブの無職でアメリカの東海岸のフィラデルフィラからニューヨークまで職を求めて上へ行ったり下へ行ったりしているからヨーヨー人間なんだけど、それで酒場にいつも戻って昔の仲間と莫迦話をすることになる。で、基本的には莫迦話がずっと続くんだけど、で、ハーバード・ステンシルはどういう人かって言うと、父親が第二次大戦で活躍したスパイで、ところが謎の失踪を遂げたと、その父の死を探している間にどこにも必ず頭文字がVの女が出てくると、このVの女ってのが陰謀の元なんじゃないかと調べてくんだけど、でもなんか色々調べるといく先々で何故かベニー・プロフェインに会うと。こいつも何か陰謀と関わっているんじゃないかって話になるわけ。なんかそこら辺の雰囲気が『涼宮ハルヒの憂鬱』とか大抵のラノベと似ているわけ。つまり駄目男である主人公がいて、その主人公は普通の日常生活を送っているみえて実は陰謀に関わっている。本人は知らないところで巻き込まれているんだと。で、普通のラノベは誰かが本人に言うわけよ。「あんたは陰謀の中心に居るんだ」ってで「そんなことはないだろう」って言うんだけどその内決定的なことが起こって確かに陰謀はあったんだと主人公のやることが本編に入るんだけど、ピンチョンのすごいところは、最後まで陰謀があるのかないのか分からない。陰謀があるといったらある、ないといったらない、もしかしたら全部私の妄想かもしれないっていう所でストーリーを進め続ける筆力ってのがあるんだ。逆にそっちのが難しいんだよ。どう考えてもこんなの偶然ではありえないと思うんだけど次の瞬間には、でもこれって出来すぎているが故に嘘なんじゃない? みたいなことになっているわけ。だからその何故か知らないけどいつもこいついるなと。なんか関連している株主総会に行ったらやっぱり居る。何故? って言う感じで。
 あと日常描写が結構面白いっていうのもラノベっぽい。つまりだから陰謀と対照的に日常が面白い話みたいな。だから酒場で喧嘩している話とかすごいきらきら。Vで好きなシーンはさ。自殺しようって言う男と自殺を止めようって男が非常階段で追いかけっこをするシーンってのがあるんだよ。上へ下へって。それで最後に喘ぎながら「俺は死ぬんだあ!」とか言って一階から飛び降りてさ。そこに消防員が待っているのよ。それでグルグル巻きに包み込まれてえっさ、ほいさって。なんかそのギャグセンスの素晴らしさがね。
 この人結構シリアスな面もあるわけ。テレビが何で出てくるかって言うと、僕らの世界は結局みんなテレビに操られているんだと。でみんなテレビを見て莫迦にされているから国の言ったことを全部信じちゃうんだよって言うことが中心にあるわけ。つまり僕らはテレビに支配されている。さっきのだからゾイドが好きで精神廟になれたのはこれからテレビに支配されながら精神病にならざるを得ないってのが象徴的に書かれている。結構そういう僕らはある種のシステム、陰謀に囲まれてて、どんどん追い込められていくというのがメインの話なんだけど、ただそこばかり見ていたらピンチョンの面白さは分からなくって日常のくだらなさって言うのがね。
 『逆光』一番らしいけれども、『重力の虹』って言うのが今まで読んだ中で一番読みにくかったんだけど、どういうのかって言うとタイローン・スロースロップっていう人がアメリカからイギリスへ戦況の調査官として派遣されてて、V2ロケットがロンドンに落ちる報告をしているんだけど、本人は気付いていないんだけど周りの人間は気付いているって。スロースロップが女と寝た次の日に必ずそこにミサイルが落ちているんだと、どうもこの男は良く分からないんだけど第二次大戦の陰謀の中心に居るんだと本人が気付いてないところで、だから本人は気付いていないんだけど周りの人間は全員調査官とかスパイとかで囲まれているんだという。で、そいつがフランスへ行って、ある女と出会って、その女もスロースロップを調査しに来たって話なんだけどその主人公のスロースロップがね、陰謀に囲まれているんじゃないかと気付くシーンが大好きなんだよ。海岸でね話してると水着を着たヒロインとすれ違って手を振ったりするわけ、「あれ、知り合い?」って聞くと「いや、なんかこっち見てたから」とか言って。ところがきゃーって声がして見ると、ヒロインが大きな蛸に巻き込まれてるわけ。助けなきゃって言うと同僚が「これを投げて」ってでかい蟹を持ってくるんだよ。で、蟹を投げて蛸が気を取られているうちにヒロインを助けるって、でその日のうちにベッドインするんだけどベッドの中で主人公がふと気付くわけよ。「あんなに都合よく蟹が出てくるはずがない」ってw 「どうもおかしい。逃げなくちゃ」っていって、第二次世界大戦時のフランスからドイツを連合国側と枢軸国側の間で主人公を巡って大追いかけっこを繰り返すっていう。
・陰謀論的なところがラノベっぽいですね。
・うん、ラノベ的センスはあるんだけれど、ラノベではないんだ。それはなぜかって言うと、ラノベが『そうした方が物語を作るのが楽だから』という理由でそうなっているって所を決してそうしない。つまりラノベだと陰謀組織があって終わりなわけ。ところがピンチョンのは陰謀組織があったらその陰謀組織もまた何らかの陰謀組織によって操られている存在に過ぎなくて、それをどんどん遡って行くうちに訳分かんなくなっちゃうっていうのが。だから基本的にラノベの世界っていうのは『エヴァンゲリオン』にしてもそうなんだけど張りぼてなんだ。だから例えば『涼宮ハルヒの憂鬱』の組織にししても組織って何なのかまったく分からない。あれは単なる張りぼてなわけ、張りぼての向こうには何もない。ところがピンチョンは張りぼての向こうに張りぼてがあって、張りぼてがあってって仕組みになっているわけ。それをやるにはすごい筆力がいる。
・どんな世界があるのかって考えるのが非常に面倒くさいですね。
・めんどくさいしだからある種のリアリティがある。だからこれも、80年代のアメリカってのをすごくリアルに書くわけよ。第二次大戦どうだったかってのを第一次大戦はどうだったかって戦況を上手いことまとめてくるのはやっぱりすごいね。これ(ヴァインランド)もだからテレビの話がすごい出てくる。当時どんなテレビCMがあったかみたいな話がすごく細かく出てくるわけ。みんなテレビジャンキーだから。だからそう、例え話とか全部「ほら、あのテレビにああいうの出てきただろ」っていう話になるわけよ。みんなスタートレックの話をするみたいなさ。アメリカ英語でね、"What's the beef"って言うとね「何が問題なんだよ」っていう意味になるらしい。だからなんか文句行っている奴にWhat's the beefって言うと「何が不満なの?」っていう意味になるんだよ。なんかアメリカの余り有名じゃないハンバーガーショップのCMがあったらしくてさ。"Where the beef? Where the beef?"ってつまり牛肉はどこ? っておばさんが言うとはいこれですってハンバーガーが出てくるって言うCMがあってそれだから"What's the beef"っていう口語表現が元になっていてアメリカでは良く使うみたいね。それでラリーキングっていうCNNの結構有名な、筑紫哲也レベルのがイギリスのBBCの人と王室問題について衛星で話し合うっていうのがあってその時にラリーキングが一体イギリス人何が問題なんですかって時に"What's the beef?" "B, beef?"って。イギリスでは通じない。やはりアメリカ人はビーフ大好き。
・消しゴムのラバーとイレイザーの違いで英米間ですごい誤解が起きたっていうのも聞いたことある


・日本と違って海外ではこういったコミカルなものも割りと高い評価を受けることがあるんだ。日本はやはりこの手のものが評価が高くない国柄で、なんか最初から最後まで真面目にやらないと真面目な話として受け入れてもらえない。


雨が降っていたので内職をすることにしたヘタレです。うつろいしです。
ということでログ抜粋作業が完了しました。
その三は見ると分かる通り無双状態です。日常ですね。
今回は途中から抜粋というよりは若干改変部分が多くなっているかと思いますが悪しからず。

ちなみにウィキペディアで調べてみるとトマス・ピンチョンが小説『V』受賞したのは最優秀処女小説に与えられるフォークナー賞で
――引用。
『重力の虹』を発表。1974年度の全米図書賞を受賞するが、授賞式には姿を現さなかった。諮問委員会は満場一致で同年度のピューリッツァー賞フィクション部門に推薦したが、同理事会が「読みにくく卑猥である」としてこれを退けた
――引用尾張。
だそうです。
最終更新:2013年03月25日 01:30