2011年11月05日(土)13時48分 - 水無原
彼女は落ち葉の上でステップを踏み、笑いながら友人を見た。
だが、その友人は彼女を見ない。
彼女は制服のスカートを翻し、片思いの相手を見た。
だが、その相手は彼女を見ない。
僕は知っていた、彼女が好きな彼は彼女の親友と両想いだと。
僕は知っていた、彼女はもう大好きな彼らとは会えないと。
彼女と僕の目が合った。
「私が見えるの?」
そうだよ幽霊さん、と僕はつぶやいた。
短編連作小説「落葉」
吐息でガラス越しの視界が曇る。良かった、もう二人を見ることはない。
窓から離れてベッドに倒れる。枕の隣のナースコールを用もないのに押したい気分になる。
これでいいんだよね。
前は二人バラバラでお見舞いに来た。先週は二人で一つの花束をくれた。今日は雪が降っている、きっと二人で相合傘だ。私は明日退院する。明後日からは学校だ。
今日の見舞いがデートの口実だと気づいても、私は何も言わない。
だって私はもうすぐ死ぬ。
僕は先週退院したクラスメイトの背中を眺めた。ますます線が細くなった気がする。ふと彼女が数学教師を見ていないことに気づき、視線の先を辿る。
彼女と仲のいい、男子。
片思いか、とため息を吐きたくなった。彼が彼女の親友と付き合い始めたのは周知の事実。だが、自殺でもして化けて出られたら寝覚めが悪い。
僕は自分の役回りを呪いながら、天井を仰いだ。
私はクラスメイトに屋上に呼び出された。告白かと思ったら違った。
彼曰く、二人はやはり付き合い始めたらしい。
「伝えといた方が良いと思ったから」
「何でそう思ったの?」
「だってお前、今にも死にそうだから」
言いたいことがあるなら今のうちに言っておけ、だなんて無愛想に言う彼が面白くて。笑ったら少し気分が明るくなって。
ありがとう、と素直に言えたことが、驚くほどうれしかった。
時が過ぎるのは早いものだと改めて感じた。落葉の季節。もうすぐ冬だ。
ちょうど数か月前に逝ってしまった同級生を何気なく思い出し外を見ると、三人分の気配。件の死んだ同級生と、その親友と恋人。
……まだ、付き合ってたのか。
若干の驚きを胸に、幽霊とささやかな挨拶をし、一番気になっていたことを聞く。
「事故で死んでから、ずっと?」
かつての恋人が病弱な親友を気遣う姿を、彼女は微笑みながら目で追った。