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極短編小説(渋江照彦2)

2011年11月06日(日)17時36分 - 渋江照彦

 

             誘われて

 「ちょいと、其処の若旦那」
 路地裏を歩いていた男は、華やかな女の声に振り向いた。
 其処にはとても美しい女がニコリと笑って立っていた。
 女が男を手招きする。
 男はまるで誘われるかの様にフラフラと近付いていった。
 女が何者かなど余り考えなかった。
 男の指が女に近付いた瞬間。
 女はフッと笑うと、男に口づけをした。
 すると、男は瞬時に大きな美しい牡丹の花となった。
 女はその花を手に取ると、惚れ惚れとした様に見入り始めた。


             夢


 こんな夢を見た。
 真っ暗な夜道を私は一人で歩いている。
 すると、前方からゴロゴロと何かが転がって来る。
 だが、暗くて正体は判らぬ。
 気味が悪いと思ってちょっと道を脇にそれて音が通り過ぎるのを待つ事にした。
 音はどんどん近づいて来る。
 そして、音が私の真横へ来た瞬間に。
 「つれないねぇ」
 と、耳元で声がして音が止んだ。 
 その声は去年亡くなった私の妻の物だった。
 

最終更新:2013年03月25日 14:56