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椀タンメン小説

2011年11月07日 (月) 20時02分 - うつろいし

 

・夕暮れ花の咲く丘で
 夕暮れ花は、その黄昏よりも真っ赤な花弁を恥らうように俯かせて、丘一面を染め抜いていた。
 その中で秋の季節たちが花弁で作った薄羽を腰に括りつけて一斉に飛び立つと、羽ばたきから鬱金色の宵がりんぷんのように舞い降りてきて、旅人は思わずその花畑の中に仰向けになって沈んだ。
 そのまま彼が死体となり、秋の移ろいと共に土となって消えていくのを見届けると、口々に季節たちは告げるのだ。「秋が移っていくよ」と。

・フェレンゲル、シュターデンに捧ぐ
 彼の愛猫フェレンゲルは、私が訪問すると必ずそのしなやかな前肢を揃えたかと思うと一回二回と小気味いいステップを踏み、それから私を見上げてにゃーおと鳴く。
 いぶかしんで彼に聞いても、彼は笑って「愛されてるな」としか応えなかった。
 彼とは長いものの所々こうして頑固な所がある。私は手持ち無沙汰になって膝の上で寝入ってしまった猫を撫でた。
 愛しているらしい割に気侭な奴だと思う。それでいいのかもしれないが。

・飴色ロスタルジー
「いつか、君の夢なんかちっぽけになってしまうくらい大きいことをしてやるよ」
 その時私は、餓鬼臭いって言ったと思う。彼はいつもその大風呂敷でバッサバッサと私を扇いだ。
 いい加減にしろって怒ると、底抜けた様に笑って「悪い悪い」とニッキ飴を私の手に握らせた。
 そんな男が私は大嫌いだ。
 私の願いなんかちっぽけなんだと否定して何様になったつもりなんだ。
 賞味期限の切れたニッキ飴なんてもう食べる気も起きない。

最終更新:2013年03月25日 15:04