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家から犀川まで徒歩9分!

2010年08月31日 (火) 17時45分 - うつろいし

 

 そう言って、僕は妙に納得した。
 優しく包み込む闇に灯火が交じり合い、穏やかな薄明かりが生まれている。
「それにしてもお父さん、貴方が迎えてくれるとは思いませんでしたよ」
 お父さんは静かに微笑んでいる。薄明りがゆるやかに揺れた。
「お父さん、私は善い事をしたのでしょうか。それとも、悪い事をしたのでしょうか」
 少し気懸かりだったので尋ねた。お父さんは静かに微笑んでいる。
「良かった。私はたくさんの生き物を殺してきましたが、それは善いことであるならば安心して眠れます」
 お父さんは静かに微笑んでいる。柔らかな夜の風が流れてきた。
 力を抜いてふっと息を吐く。そして僕は居住まいを正した。
「分かりました。明日はあちらへいきます。・・・・・・それにしても何とも大変なものです。今日はこちらに明日はあちらにと、まるで蟻さんのようですね」
 お父さんは静かに微笑んでいる。少し長い髪が灯りを受けて煌めいた。
 僕は灯りを手に取る。ちらちらと揺れるそれは、儚くて綺麗だった。
「それでは、今日はもうおやすみなさい」
そう言って僕は命の炎を吹き消した。
 おやすみなさい。
 そしてそこにはお伽の国が広がっていました。
 ひげを蓄えた男の人が燃え盛る炎の中を元気よく駆け回り、向こうではカップルと思しき二人組みが手を繋ぎ合って、艶めく黒羽の鳥たちに啄ばまれています。
 ぽたりと垂れた天滴に押し合いへし合い群がって、それらが汗を散らしてキラキラと幻想的です。
 僕も遊びたい。そう言うとおじさんは困った顔をして、
「帰れ」
 そう残念そうに告げました。
「それは差別というものでしょう。 神様は平等にヒトをお創りになられました。 ならばこそヒトが持つ権利は平等であるべきです」
「権利ではない、義務だ」
「ではどれほど支払えばここで遊ぶことが出来るのでしょうか?」
「去れ」
 おじさんはそう言うと目を逸らすように背を向けました。わずかに俯いた肩が寂しげに揺れます。
「待ってください。おじさん、僕は遊びたいんです。待ってください、おじさん!」
 ふと、肩に手が置かれました。見ると先ほどのひげ面の男の人です。その他にもいつの間に集ってきたのやら多くの人々がこちらを見ています。
 僕はなんだか気恥ずかしくなってしまって俯いてしまいました。耳が火照ります。
 すると、安心させるように大きな手が僕を担ぎ上げました。追従するように大小様々な手が伸びて、僕はさながらお神輿のようになってしまいました。
 僕は四方八方へ揉みくちゃにされながら、けれどもこれが初めてではないような気がしました。それほどまでにお神輿の匂いが頭にこびりついて離れないのです。
 少しずつ引きちぎられながら僕は、感覚が命じるままに記憶を辿っていくとそこには何もありませんでした。いや、何も無いのです。そこにもかしこにも全部。何も無い記憶の中をお神楽のお囃子が巡って行きます。
 ドンドコドン。ドンドコドン。
 お母さんの音が聞こえます。
「夕ご飯。 もうすぐだからそれまでに宿題をやり終えてしまいなさい」
 そうでした。これは宿題だったのです。あまりに集中しすぎてそんなことも忘れてしまうとは。僕は自分のふがいなさに頭を勝ち割りたくなってしまい、慌てて手を放り捨てました。
 しかし手を放り出してから気づきます。手が無くては宿題が出来ないのです。そして少しでも手を休めてしまうと・・・・・・。
がらがらがら・・・。
 ああぁ。僕は漏れてくる溜め息を留めることはできませんでした。またやり直しです。折角ここまで積み上げたのにまた始めからなのです。どうしよう、どうしたらいいんだろう。僕は積み上げなければいけない。だけれども積み上げる手が無い。そもそもどうして手を放り捨ててしまったのだろうか。なぜなのだろうか。なぜ・・・・・・。なぜ?
 さりぼむんしい。 くわんてぃてぃるらくぅくぅとしあ。
 川のせせらぎが僕の焦りをひやしてくれました。心地よい音色に耳を澄ませると、向こうからお母さんの呼ぶ声が聞こえます。
  ―ご飯ですよ――。
 それで君はどうしたんだい?
 君は木製のがっしりとした椅子に納まって机の上の僕を見下ろしている。
 僕はむっとして少し羽ばたいた。鱗粉が少し辺りに堕ちた。それを見ると君は鼻にしわを寄せる。いくらか気が晴れた。
 つまり、君の説明はそれじゃ足りないんだ。 肝心な君の行動が示されていない。 君の物語に君がいないんだ。 そうだろ?
 そう言われても僕は困る。
 大体自分の行動を逐一理解しているという方がおかしい。そう聞く君は昨日食べた晩御飯に使った食器を買った時の心境を思い出せといったら答えられないだろう?
 それじゃあ治せるものも治せないね。君が分からないようなら私が理解できるはずが無い。理解できなければ治せるわけが無い。
 それがどうしたと言うのだい?
 君は少し首を傾げた後一人合点した様に頷いて、机の端に置いてあった木で組まれた小さな箱を開いて、その中から真珠色の玉をお尻につけたピンを取り出した。
君の亡骸が永遠にその姿を留めることになると言う事さ。
 そう言うと君は僕の体を摘み上げた。義理で少し足掻いてみたけれどそんな程度で僕が自由になるわけでもなく、内臓が破壊されるかのような感触の後僕は死んだ。
 そうして君はいそいそと僕の殻を整えると、ジェンガの様な木組みの棚に放り込んだ。
 机には僕の生きた証というべきか、鱗粉が少し辺りに堕ちていた。
 日差しを受けて辺り一面キラキラと輝いていた。
 端的に言うと、黄金色とラズライトの二色だった。
 雨が降る季節は湿地帯になるのだろうか。どこまでも平らな地平からススキが枯れた手をラズライトの空へ伸ばす。
 柔らかい色合いのそれは、乾いた風にたゆたって気まぐれに畝を作っていた。
 いつまでもいつまでも、飽きもせずに一面の枯れ穂がそうやって揺り合い、囁くような力ない音を流し続けていた。
 風が毛むくじゃらの穂を撫でる。不意に先端の毛玉が一塊り、風に攫われてふわりと舞い上がった。白い毛玉は水色から青色、ラズライトへと小さくなって消えていった。
 残された枯れ穂は手を振るようにもう一度大きく揺らいだ。風が纏わり付いてきた。
 指の間に絡まるようにカサカサと乾いた音がした。
体力の続く限り僕はセロハンテープをはがし続けていた。
どのくらいはがし続けただろう? 突然異臭が漂う。
テープをはがすときに生じる静電気がガソリンに引火して火事になっていた。やっぱり……。
煙が、炎があっという間に逃げ道を塞ぐ。
あと2m33cm。僕は必死にはがし続ける。この程度のトラブルに屈してはいられない。妹の命がかかっているのだから。
少しずつ、懐かしい妹のボディラインがセロハンのもやの向こうから浮かび上がる。
「ねぇ、何ではがすの?」生気の感じられない虚ろな声がセロハンを震わせる。
 その時、プツリとテープが途切れた。テープは妹に巻き付く。もう、どこからはがせばいいのか分からない。 終わった、何もかも。
「もうやめようよ、お兄ちゃんも一緒に眠ろうよ」優しげな声が囁きかける。すると、はがした筈のテープが意志を持つように立ち上がり、僕に巻き付く。
 もう終わりなのだろうか。巻き付くテープに身を任せようとしたとき、視界の隅に何かが映った。妹が大切にしていたアコーディオンだ。
 ひとりでに動き出すアコーディオン。奏でるは思い出の歌「春の海」
「でもやっぱり琴の方がいいよね……」
 妹がそう呟くと、アコーディオンは粉々に砕け散った。
 しかし音は止まらない!思い出は砕けない!!
「まさか……これは歯笛!」妹は気づいた。そう、心に音楽がある限り、どんな手段でも僕らは思い出を奏でられるのだから。
「もう君はいらないよ」僕はボクにそう突き付ける。
 そして妹は助かった、僕のこの命を犠牲にして・・・・・・。
「つまらない、最近質のいい番組がないな」
 玉石混交にもいい面と悪い面がある。だから僕はBMI技術の発達もそれほど歓迎していない。
 脳とネットが直接繋がれば、そりゃアクセスの速度や難易度は飛躍的に改善されるだろう。しかしその反面、ヒトの認識速度なんかちっとも進歩なんてしていない。
 だからこんなにも作品の質が下がってしまっているのだ。
 大体クリフの奴が悪い。あいつが生まれたから僕はこんなにも苦痛を受けているのだ。
 心中でクリフの藁人形に釘を刺す。人形は痛いよと呟いてケタケタ笑った。
「それはあんた、逆恨みってもんだぜ。君のつまらなさを僕に押し付けられても困るのさ」
「僕がつまらない人間なのは十分に把握しているさ。だからこそ誰もが面白いと言うモノが欲しいんじゃないか。僕はそれを面白いと思えばいい」
「そうすれば君は面白がれるねぇ。確かに」
 不意にあのクリフの好戦的な顔が浮かんで、ケタケタと笑う藁人形に重なった。僕は慌てて頬を叩いて瞬きをした。クリフの顔はどこにも居なかった。
 うなじをひとしきり揉んで、僕はすっかりと温くなってしまった発泡酒をテーブルの上に置いて検索エンジンを回す。
 ぼわぁと朧ろげに光るスクリーンには色々雑多なつまらないものが現れて消える。僕の認識能力において僕を満足させる作品にはまだ出会えていない。

 


2010年08月31日 (火) 18時09分- うつろいし
あとがき
祭りのノリで出た提案を俺が書いたらこうなった
ど う し て こ う な っ た 
ただ、書いている分には割かし楽しかったと思う
あれだね、無計画で場面だけ書けばいいってお題だと楽だし楽しいね
自作と合作2箇所コピったけどだいぶ他から浮いているのが難点。もっと上手く繋げるか構成を調整したほうが良かったかも

夏休みも大体明日から後半戦だね
課題?図書はもう皆買ったのかな?
俺はなんだかんだ予定が詰まってたんでまだ読んでないけれどまあなんとかなるよね。。。

そんなこんなで夏休み後半戦。敵は自分
悪環境の中苦戦が強いられること必須でしょうが前灯篭を灯して迷わずいきたいものですね

最終更新:2012年09月20日 18:43