2005年05月24日(火) 22時28分-K
むかしむかし、あるところに、与作という名の、心優しい青年が住んでおったそうな。与作は親から受け継いだ家で、決して豊かではないが、つつましく暮らしておったそうな。でも、その与作にも悩み事が一つあったんだと。それはとっくに結婚適齢期なのに、嫁さんがいつまでたっても見つからないことであったのだ。
そんなある日、与作が森の中を歩いていると、何かがうめいている声が聞こえてきました。おやっ、なんだろうな、と思ってそちらのほうに行ってみると、そこにいたのは木こりでした。見ると、木こりの足はトラバサミに挟まれ血が出ており、木こりは「ウー、ウー」と痛そうにうなっておりました。与作はそれを見てかわいそうになり、木こりの足から罠をはずしてやり、
「これでよし、と。もう悪い人間につかまらないように、あんまり人里に近づくんじゃないぞ」
といって、森に放してやりました。すると木こりは斧を持って、森の奥深くに逃げていきましたが、そのとき与作は木こりが自分に礼をしたような気がしました。しかし、与作は「まさかそんな」と思うと、すぐにそのことを忘れてしまいました。
その夜のことです。与作の家の敷居に、若く美しい娘が立ち、道に迷って夜になってしまったので、一晩だけ泊めてほしい、といってきたのです。与作は彼女を家の中に入れてやりました。そしてそのままその娘は与作とともに暮らすようになったのでした。
その娘には、不思議なところがありました。夜になると、ひとりで部屋にこもり、「絶対に中をのぞかないでください」というと、朝まで出てこないのです。そして、朝になると、その部屋には大量の薪や、木材が、きれいに並べられているのでした。与作はそれを町で売り、以前よりもずいぶんいい暮らしが出来るようになり、いい嫁さんもできて、本当に幸せに暮らしていました。しかし、夜中一人でいったい何をしているのか、ということだけ、時とともに気になってしょうがなくなっていくのでした。
ある日、与作はとうとう約束を破って、障子をそっと開けて、中をのぞいてしまいました。すると中ではなんと、たくましい木こりがもろ肌脱いで、「ハイホー、ハイホー、しご~とが好き! ハイホッ、ハイホッ、ハイホッ、ハイホッ、ハイホー! ハイホー!」と小声で歌いながら、斧で薪を叩き割っているのでした。躍動する筋肉、飛び散る汗。濃い髭に覆われた木こりの顔は、自分の肉体で恩返しする喜びにあふれていました。
ガタッ
与作は驚いてしりもちをついてしまいました。その音を聞いた木こりは、与作がのぞいていることに気づきます。
「見てしまっただな」
木こりの顔が悲しみに曇ります。
「おらの正体を見てしまったなら、仕方がねえだ。おらは出て行かなくちゃいけねえ、って、ん、どうしただ?」
与作は、真っ青な顔をして震えています。
「そ、そんな……いくらなんでも……ひどすぎるんじゃないか?」
その目に宿る光の尋常ではないのを見て取った木こりはあわてます。
「お、お、落ちつくだ。そんなに驚くとは思わなかっただ。も、も、も、もし、こんなおらでよかったら、出て行かなくてもいいだよ、いてやってもいいだ」
与作は立ち上がって叫びます。
「ウワーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
与作は家を飛び出して、どこかに走っていってしまい、二度と帰ってきませんでしたとさ。
めでたしめでたし
むかしむかしのことでした。海の上を一隻のドレッドノート級の戦艦がどんぶらこどんぶらこと航行していました。ブリッジには艦長とその補佐がいます。
あるとき補佐が言いました。
「艦長!前方上空に敵戦闘機が見えます」
艦長は言います。
「かまわん、撃ち落せ!」
その戦闘機は撃ち落されてしまいました。
またあるとき補佐は言いました。
「艦長!前方上空に空が見えます」
艦長は言います。
「かまわん、撃ち落せ!」
こうして、撃ち落された空が、その後、海になったと伝えられています。
おしまい
お前は木こりを何だと思っているんだ。
最終更新:2013年06月12日 22:07