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断片小説集

2005年07月11日(月) 00時33分-K

 

 今日、学校に行こうと思って家を出たら、道の途中に世界の果てができていた。地面がそこで途切れ、崖ができていて、川が滝となって流れ落ちていた。遥か下で、水は霧となって、消えてしまっている。さあ、どうしたものかと思っていると、崖っぷちぎりぎりのところで、スイカの露天商をしている人がいる。一切れ買って、地面の切れ目に腰を下ろし、足をぶらぶらさせながら食べた。星の輝く奈落のそこに、種を飛ばす。気づいたら、もう昼過ぎだった。今日はもう帰ろう。


 気づいたら、鏡の中に私がいて、鏡の外に自分そっくりの何かがいた。どこからこんなところに入ってしまったのだろう。とりあえず出ようとして鏡面を手で押そうとすると、鏡の外の自分が手で押し返してくる。力が同じなのでにっちもさっちも行かない。仕方ない、正面からがダメなら横から行こう。私は鏡の横に回りこもうとした。すると、鏡の外でも同じ行動をとろうとしている。外の自分が、鏡の正面から外れてしまうと、私は消えてしまった。


 床に砂時計が落ちていた。私は砂時計という奴がなかなか好きなので、拾って机の上においてみた。ひっくり返してみる。砂は、最初は小山のようになり、そのうち底一面に広がり、だんだん水位(?)が高くなっていく。おかしい。上部の砂がほとんど減っていない。砂が真ん中のくびれのところまで来る。砂時計の内部は砂で埋まってしまう。そしてパリンとガラスが砕け散る。砂は机の上に散らばり、端からさらさらと零れ落ちた。
 そして今、私は流砂に流されて、部屋から押し出されようとしているところだ。


 テスト開始まであと十分。その前にシャーペンの芯を確認しとこう。カチカチとシャープペンシルのお尻をノックする。ペン先から芯が三センチほど顔を出す。これだけあればとりあえずは大丈夫だろう。でもこの長さだと、またペン先から入れるのにはよほどの慎重さがいる。全部出して、また後ろから入れるほうが無難だ。ノックを続ける。すると、芯がだんだん長くなる、さらに長くなる、どんどん長くなる。芯の長さは、シャーペン自体の長さを超え、その二倍ほどになってしまった。これじゃあ、前からも後ろからも入れられない。まったく、先生が解答用紙を配り始めているというのに、困ったことだ。


 中井の馬鹿が、通信販売でまた馬鹿なものを買ったようだ。おもちゃの光線銃みたいなものだ。二人でいろいろいじくっているところに、吉田の馬鹿が鼻の穴に指を突っ込んで、ほじくり返しながら歩いてきた。中井の馬鹿が、「食らえ! 不条理光線!」と叫んで、銃を発射すると、吉田の馬鹿はするすると、自分の鼻の穴の中に滑り込んでいき、全身がその中に入ると、消えてしまった。いいな、それ、どこで売ってたの?


 家の前で旅人に会った。ドアを開けて出たところに、らくだが立っていて、どうしてこんなところにらくだが? と思ってよく見ると、その背中になにやらぼろきれのようなものがぶら下がっており、さらによく見るとそれは、ぼろきれに包まれた人間だった。彼は意識を失っていた。急いで水を飲ませると、彼は途切れ途切れに話し始める。
 「こ、これを……」
 といって、彼は私にペンダントを渡した。その先には、真っ黒な、お風呂の栓のようなものがぶら下がっていた。
 「これがあるべき場所から移されてしまってから、少しずつ、この世界は滅びに向けて流出してしまっているのです。今現在もこの世界は少しずつ貧弱なものへと変化しています。だ、だから、これをあるべき場所へと………」
 そこまでいうと旅人は、力尽きてしまった。私はそのペンダントを持って、どうしていいかよくわからないまま立ち尽くしている。これから学校に行かなきゃいけないのに、僕にどうしろっていうんだ?
 はるか遠くに巨大な竜巻が見える。


 廊下の壁に、見慣れないスイッチがある。横に「押すな」とだけ書いてある。何のためのスイッチなのかもまったくわからない。周りを確認すると、誰もいない。そっと恐る恐る押してみる。途端に、ヴィーッ! ヴィーッ! とブザーが鳴り始めた。思わず身をすくめる。いったい何が起こるんだ? すると、用務員のおじさんが走ってきて「だめだよぉ、それ押しちゃ。これ押すとブザーが鳴っちゃうんだから」と言って、もう一回押すと、ブザーが鳴り止んだ。いったい何なんだ。


 あまりといえばあまりに取り留めのない夢から覚めると、私は巨大な毒猫になっており、しかもそこは果てしのない草原の真ん中で、岩の上には剣が刺さっていて、空からUFOが降りてくるのが見えるが、あの人がいない部屋などとても耐え切れないので、共産主義革命結社から抜けるために、私は荒野を目指して旅立つのであった。


 ある朝、隣の家の屋根に白羽の矢が突き立っていた。なんでも、近所の池に蛇神が越してきたらしくて、処女を御所望らしい。いまどき処女にこだわるなんて、なんともかんとも古式ゆかしき神様である。と言うわけで隣の由香ちゃん(14)に白羽の矢が立ったわけだ。
 神様に捧げられる前日、由香ちゃんの家では、お別れパーティのようなものをやっていた。ちょうど私は回覧板を届けに、その玄関先まで来ていたのだが、どうやら中では何か騒ぎが起こっているらしい。由香ちゃんが実は処女ではないことを告白したのだ。事態が大きくなりすぎて、今まで言い出せなかったらしい。それでいろいろと言い合っているようだ。私は回覧板をドアの横において、その場を去った。
 次の日、由香ちゃんは結局神前に捧げられた。うまくごまかせたのだろうか。


 ふと気づくと、時計の針がいつもの数倍の速さで動いていた。グルグルぐるぐる忙しそうに回っている。時間がいつもより早く流れている?秒速五秒ぐらいかな?ヤバッ!と言うことは、おれも速く動かなきゃいけないのか?ちょちょちょちょっと待ってよ、そんなに速く動けないよ!追いつけないよ!わあ、あせって服にコーヒー引っ掛けちゃった。お願い、時間よ止まって!あなたは実に美しいですから、どうか止まってください!


 全学教養科目の課題として提出するため、「真の愛」を探すための旅に出てからはや五年。思えば遠くに来たもんだ。さまざまな場所を訪れた。酒場、喫茶店、合コン会場、小学校、中学校、高校、大学、女子校、幼稚園、結婚相談所、各種職場、ジム、結社のアジト、本屋、古本屋、映画館、秘宝館、ビデオショップ、ゲームショップ、アニメイト、まんだらけ、とらのあな、秋葉原、ディスコ、キャバクラ、イメクラ、大人のおもちゃ屋、ブルセラショップ、あいまい宿、特殊浴場、新宿二丁目、ソドムとゴモラ、赤線地帯、女護島、トルコ。どこを探しても、「真の愛」は見つからなかった。しかもなぜか、いつの間にか有り金がなくなっていた。私の探し方が間違っていたとでもいうのだろうか?そして私は、この北の果ての地で、誰に看取られるわけでもなく死んでいくのだろうか?ふっ、それもまた良いだろう。
 粉雪に次第に埋もれながら、私の意識は少しずつ薄れていき、すると今まで感じていた皮膚を刺すような寒さも解けるように消えていった。次第に体が温かくなってきた。ポケットの中に何かがある。ぽうっとぬくい何かが。ああ、こんなところにあったのか、「真の愛」は。
 夜の空が急に光り輝き始め、天使たちが私を迎えに降りてきていた。私は天国に向けて昇っていきながら、「真の愛って一人で持ってて意味あるんか?」とか「これって提出しなきゃいけないんじゃなかったっけ?」とか「俺の努力の意味は?」とか「卒業しろよ!」とか「いい加減にしなさい、あんたとはもうやってられませんわ!」とか考えていたのである。

 かわいいし、なんかねじが緩んでる感じで面白いかな、と思って彼女のアパートまでついてきたのだが、入ってみるとその部屋は壁がすべて銀色に光っている不思議ゾーンだった。なんでもアルミホイルは悪い電波を跳ね返す効果があるらしくて、ローマ法王庁からの毒電波攻撃をこれで防いでいるらしい。なんともかんとも。あきれていると彼女は、今日はいつもより攻勢が激しいからと、全身をアルミホイルで、魚のホイル焼きのように包んで寝てしまった。艶も何もあったものではない。家にはもう、友達の家に泊まるから、と連絡してしまった。よって、単なる不思議ちゃんと思ったのが単なるデンパだとわかったからといって帰るわけにも行かないのだ。銀色の巨大な葉巻を前にしてまんじりともせずに夜を明かす。俺はいったいここで何をしているのだろうか?
 窓の隙間から朝日がもれて、壁に乱反射する。ようやく朝である。起こそうかなと思って近づくと、銀色の繭が身震いをした。びりびりっとさなぎの背中が破れていくと、中から美しい、人の背丈ほどもある蝶蝶が羽を広げた。
 「私にもなにがおこったのかよくわかりませんが、私がこのような美しい姿になれたのも、あなたのおかげではないことはないといえないこともないわけではないとは限らないので、このご恩を一生忘れないように善処することに吝かではありません」
 と言い残し、彼女は窓を突き破って、朝日の中に飛び込んでいってしまいました。単なる不思議ちゃんだと思ったら、単なるデンパだとだと思ったら、すごい不思議ちゃんだったわけだ。しまった記念にヤッときゃよかった。

  短いのが好き!

最終更新:2013年06月12日 22:12