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晴れた日は柄の長い傘を持って・21~

2005年08月02日(火) 22時58分-月組

 

◆21(藤枝りあん)

 一方その頃。
「――はぁ、疲れたぁ・・・」
 光原ハルは、自分の1LDKの部屋よりも遥かに広い純和風の個室で、盛大な溜息をついた。
 有無を言わさずにここに連れてこられたのが数時間前。外が雨で、しかも時折、激しい雷が鳴っているので時刻はわからない。だが、今までの経緯から察するに夕食時ぐらいではないだろうか。その証拠にとばかりに、彼女のお腹がくぅと鳴った。
「はう・・・お腹すいた・・・」
 昼食を食べ損ねてしまったため、朝ご飯のバタートースト一枚しか今日は口にしていなかったのだ。ドタバタしていた気が付かなかったが、ほっとすると――といっても、ここは一応危ないところなのだろうが――お腹がすいてきた。
 食べられる時に食べる、と言うのがハルのモットーだ。
 一応、ここが得体の知れない危険な場所であっても、今すぐに何かが起こるわけではないだろう。もし何かが起こるとすれば、空腹で力が出ないというのはまずいだろう。昔の人もこう言っているのだ――腹が減っては戦は出来ぬ。名言だ。
 お手製のスペシャル弁当を鞄から取り出し、いそいそと広げる。
「では・・・いっただっきまーす」
 お弁当箱のフタを開き、爆弾おにぎりを口に入れたところで、「失礼するよ」という声とともにガラリとふすまが開かれる音がした。
 ぐほっという奇妙な音と共に、爆弾おにぎりが文字通り喉で炸裂した。胸を叩いて無理やり飲み下し、水筒のお茶をあおってどうにかこうにか一段落をつける。
「大丈夫かい?」
 その尋常でない状況を気遣い、相手が心配そうに声をかける。ハルはうんうんと大きく頷きながら、もう一杯お茶を喉に流し込んだ。
「ぷはぁ・・・し、死ぬかと思ったぁ~」
「これは済まなかった。お食事の邪魔をするつもりは無かったのだが」
「い! いえいえこちらこそどうもすみません! どうもお腹が減っちゃって、あ、でもでも、床とかは汚してませんから。というか、どなたですか!?」
 息の続く限りの言い訳を終えてから、ハルはようやくそこに突っ込んだ。
 見ればそこにいるのはハルの父親くらいの年の男性で、和装を見事に着こなした、意外とナイスダンディーなおじ様だった。
「私か・・・そうか、息子は何も説明していないようだね」
 ふむ、と男性は軽く溜息をついてから、相手に警戒されずになおかつ親近感すら覚えるような絶妙の間合いで、ハルの前に座った。
 ちょっとかっこいいかも、とハルは思わず目を伏せる。いやいや、私はおじ様趣味じゃないけどね、とは彼女の心の中での言い訳であるが、それはともかくとして、男性はこう始めた。
「私は、嵩宮雨水(かさみや うすい)」
「え? 嵩宮、嵩宮――蛟丸先輩のお父様ですか!? ひょっとして!?」
 うっそぉ、と叫びそうなほどに驚いたハルの脳内を様々な可能性が飛び交った。そして一言。
「わわわ、私まだ結婚とか早いですから!!」
 雨水は一瞬きょとんとして見せたが、ははは、と明るく笑った。
「君、ハル君と言ったかな、それは勘違いだよ」
「え?」
 ちなみにこの瞬間、彼女の脳内では、
  連れ去られる→家に連れて来られる→父親に紹介→婚約
 という一連の流れが出来上がっていた。
 雨水はそれを察し、それを否定した上でまたもや言葉を続ける。
「手荒な真似をしたことは詫びるが、今日無理やりに君をここに連れて来たのは、君の身を守るためのことだよ」
「はわわ・・・わ、私ったらなんておバカなことを・・・」
「まぁ、致し方無いことだろうとは思う。事情の説明も何も無しに連れて来られたのでは、そう思うのも仕方が無かろうね」
「すす、すみません・・・」
 穴があったら入りたい、という状態に陥っているハルに、雨水は人の良い、息子とそっくりな笑顔で答えた。
「君が謝ることは無い。事実、説明も無しに連れて来たのだからね・・・だが今回の事件、私から説明することは出来ないのだよ、残念ながら。しかし、息子から伝言を預かっている」
「・・・?」
 先輩から伝言って何だろう、とハルは座り直す。雨水は言った。
「非常に申し訳ないが、暫くは学校に行かずにここに留まってほしい、だそうだ」
「ええっ!? でも、けど・・・困ります! いろいろと・・・」
 もちろん、ハルのこの反応も雨水にとっても蛟丸にとっても予測済みだった。雨水はこう諭す。
「ハル君、今、学校は非常事態なんだ」
 以下、説得の言葉は省略するとしても、その言葉がどれほど彼女の決心を変えてしまったかについては、ハルのこの一言でわかるだろう。
「・・・わかりました。私も、覚悟を決めました。だから、大丈夫です・・・たぶん」
「そうか、そう言ってもらえると助かるよ」
 言って、雨水は席を立った。
「あ、待ってください!」
「他にも何か?」
 この屋敷を自分の家のように使うこと、家財道具その他諸々で入用なものはハルの下宿先から持って来させること、勉強については専門の家庭教師をつけて学校の代わりにすること、携帯電話は使わないこと、などなど生活に支障をきたす恐れのあることはほぼすべて合意した後だったので、雨水は立ったまま彼女の呼びかけに応じた。
「あの・・・えと、蛟丸先輩から聞いていませんか? 私の他にも、そこにいた人がいるんです」
「なるほど。水知君のことが、心配だと」
「ええ、まぁ・・・ええ!? いやいや、その、心配といってもまあ、アレですわ、彼女がするようなものではなく友人を気遣うような気持ちで心配しているのであって、その、決して恋人とかそーいった意味ではなくてですね・・・あっ、そうそう! 怪我してたんですよ! 動けなくなってて、大変そうで本当に大丈夫かな、帰れたかな水っち、なーんて思ってまして」
 しどろもどろになって弁明しているハルは、気付けなかった。
 何故、雨水はハルが何も言う前から『雨宮水知』が倒れていたと知っているのか、ということに。だが、たとえ彼女がその点を指摘したとしても、雨水はおそらく、息子から聞いたとでも言っただろう。
「おそらく、だが・・・彼なら大丈夫だろう」
「ほ、本当ですかね? よかった・・・いや、そういう意味じゃなくてですよ!?」
 彼は、ただそんな甘酸っぱい彼女に笑みを投げかけるだけに留まっていた。
「それでは、失礼する」
 そういって去っていった雨水の真意を、ハルは知ることは出来まい。
 何故なら。

「――蛟よ」
「ここに」
 気配を勘繰られることが全く無いほどハルの部屋から離れた部屋に、嵩宮親子はいた。
 そのどちらからも、人の良い優しさは微塵も感じられない。
「何故、放っておく」
 余計なことは言わずとも、真意は蛟丸――いや、蛟には理解出来た。
 それは正統派である雨宮家の跡取り、水知のことだ。
「弱すぎるからです」
 蛟は平坦な言葉に憎しみを滲ませながら、そう言い切った。
「あれは使える駒です。少なくとも、もう少し強くなれば」
「あるいは、その動き如何によっては、であろう? 蛟よ」
 特に肯定の返事もしない。問いかけではなく、確認であるとわかっているからだ。
 空気が放電し、真っ暗な部屋を雷が青白く彩った。
「父よ、貴方の時代は終わった」
「・・・認めよう。私と雨情(うじょう)との因縁は、お前達に持ち越されたのだとな」
 どちらも動かない。
 何度目かの落雷は、かなり近い。
「下らぬ忠告をしようか」
 雨水が口を開いた。
「私にとって、在りし日の雨情は血の濃い弟だった。私の後を追い、私を目指す奴の姿はいとおしくもあった。だからこそ――」
「――貴方は負けたのだ。父よ」
 轟音と強烈な閃光が響いた。雷が彼らの上に落ちたのではと思われるほどの強さだ。
「そう、私は甘かった」
 蛟は微動だにせず、言葉を聴いていた。
「そしてお前は、弱かった」
「今はどう思われるので」
 答えは、皮肉混じりの冷笑だった。
「蛟、我が息子よ・・・お前が何を考え、何をしようとしているのかは知らぬ」
「滅相も無い。私はただ、雨宮と嵩宮の因縁のために――」
「いや、嘘であろう。お前は肉親であれ、お前の力以外を信じぬ男に育てたのだからな。この私が」
 負の因縁は途切れることは無い。だからこそ、縛り付け、それを引きちぎるような力を我が子に与えさせた。無論、それを悔いることはあってはならないのだ。
「だが、それがいい」
「光栄です」
 口先だけの音を操り、蛟はそう告げた。
 もちろん、父の許可を得るまでも無く、彼には彼の目的とそれを遂行するためにならばどんな犠牲もいとわぬ覚悟があった。
「蛟よ、父を越えろ」
「お望みのままに・・・失礼します」
 気配も無く部屋を出て行く息子に思いを馳せ、雨水は満足だった。
 我が子ながら、見事に成長したものだと。
 自分以外の何者をも信じず、孤高の強さを求めるだけではない。蛟はその忌むべき本性を隠し通す、見事な仮面をも自ら作り出し、演じ続けているのだから。
 しかし、父である雨水にとって、この狡猾な力の体現者たる息子は誇りだった。
 如何に雨情が優れようとも、その息子である水知が同じように優れているとは限らないのだから。
 少なくとも、雨水自身の復讐は終わってしまった。息子である蛟のために。だからこそ、楽しみなのだ。父をいとも容易く飛び越えた息子の復讐劇を見ることが。


 次の日は滞りなく授業が進んだ。少なくとも、一般の生徒達にとっては。
 家庭の事情で光原ハルが暫く休みだとか、始業式以来一度も教室にすら出てこない雨宮水知はすでに追試決定だとか、その他有望な生徒はクラブ活動に精を出して授業に出てこないだとかいうこと意外は。


 暗雲立ち込める空の下、5人の猛者どもが集い、語り合う場所――生徒会室。
 しかし、今は4人しかいない。そして彼らは、語り合っていた。
「――今、他の情勢はどうなっている!?」
「だから――ランベ・リューアを攻めるべき――」
「しかし――こちらの戦力も――考えなければ」
「――戦おう――」
「――無駄ではないか――」
 だが、その今後の方針予定表は全く埋まらず、議論も堂々巡りを繰り返すばかりであった。
 そんな折、5人目であり、生徒会の代表である生徒会長が姿を現した。
「待たせた」
「遅いぞ、元気」
「・・・で? 会長、『あの方』は何と・・・?」
 元気、と呼ばれた会長は頷いた。
 彼ら生徒会の構成員は、生徒会長:志藤元気(しどうげんき)、副会長:美田原陽子(みたはらようこ)、会計:富士森コウ(ふじもりこう)、書記:安斎明子(あんざいあきこ)、斎門晃(ざいもんあきら)の5人である。
 そしてもう一人。
 彼らが『あの方』と呼ぶ、裏生徒会長とでも呼ぶべきブレーンがいた。
「皆、喜んでくれ。これで我ら晴天同盟が――」
「イヤッホーイ!!」
「・・・まだ早いよ、コウ」
「いや、いちおー、やっとくべきかなーと」
 少し興をそがれる感じになってしまい、コウがやばいことをしたと口をつぐんだ。気を取り直して元気会長が続ける。
「・・・ともかく、確かな情報を得た」
「と、言いますと?」
「光ですか?」
「いや、それは違うが、晴天同盟の利となることは間違いないことだ」
「おお! すげぇ楽しみ!」
「その情報とは・・・?」
 暫く間の間。
 そして。
「雨衣に、裏切り者が出たそうだよ」
 その一言で、十分だった。
「これで予定表、埋まりましたね」


「――そのような戯言で我らを労するつもりか? 黒野井翼・・・いや、デミトリ」
「出来れば、信じていただきたいのですが」
 ここは急遽取り持たれた臨時集会所(3F多目的ホール)である。そこには豪華絢爛たる顔ぶれが――雨衣のトップ・水落衣織から、ランベ・リューア四天王・黒野井翼までが――あった。
 そしてその周りには、雨衣の数々――ただし、実力者はいない――が、翼ことデミトリ率いる雲原姉妹と海公兄弟を取り囲んでいた。
「ふーん・・・やっぱり、ね」
 重苦しい雰囲気を破って口を開いたのは、意外にも雲原豪姫だった。
「何・・・?」
「この程度のリーダーでは、裏切り者も出るなぁと思いまして」
 空気が殺気立った。それを待っていたとでも言うかのように、豪姫が一歩前に出る。それを遮るように、デミトリが彼女を制した。
「やめろ、パラソレイユ。お互い、紳士協定に基づいて挑発も禁止だ」
「・・・挑発? 事実を言ったまでのことだ」
「何だと!?」
 今にも撃ちかかっていきそうな雨衣を、今度は衣織が制した。
「やめなさい」
 今、ここで実力者を欠いた状態で戦っても勝機は薄いと踏んでのことだ。
「――それで、話を戻しますが、証拠はあるのですか? 裏切り者が出たという、確固たる証拠は」
「私では、信用できませんか」
 落胆したように、勇姫が呟いた。
「そんなことはありません、先輩」
「そうですよ、先輩。俺は先輩を信じてます」
「俺も先輩を信じてます。だからこうしてここにいるわけで」
「危険を顧みずにね」
 その勇姫を庇うようにして、海公兄弟が油断無く立ちはだかっていた。もともと彼女に惹かれて入部した手芸部、そして雨衣なので、彼らを寝返らせるのにたいした苦労はいらなかった。
 まぁ、問題はそれよりも、
「どうしても信じられないのならば、まず、こいつらが裏切り者では?」
「お姉ちゃん!」
「「失礼な! 愛のためです!!」」
最愛の妹の隣で怒り心頭のパラソレイユこと豪姫なのでがあるが。
 その辺りの事情は各人で片付けてもらうことにして、デミトリはもう一度衣織に向き直った。
「少なくとも、そういった噂の元凶はお断ちいただきたい」
「ランベ・リューアの罠かもしれない、というのは考えられるはず」
「そうしろと言ったはずだ」
 仏頂面のまま、豪姫が言い捨てる。
「裏切り者に組を滅茶苦茶にさせ、その隙に光を取り戻し、戦力増強によって一気に叩き潰す――そのはずだった」
 翼はそれに頷いてから、こう切り出した。
「しかし俺がそうするなと言ったのです。確かに。我らは不倶戴天の怨敵、それは俺とて依存は無い。しかし、一顧の武人としてそれは許せなかった」
「困った生真面目さんね」
「一本気というか」
「甘すぎるというか」
「だから、ランベ・リューアの情報は駄々漏れなんです、ご理解いただけると嬉しいね」
 自身に対する恨み辛みは望むところ、とばかりに翼は言った。
「俺がいる限り、卑怯な手出しをするつもりは無い。裏切り者を始末するのは我らも同じこと。この騒動が終わり次第、またお相手願おう」
 目で合図をし、5人は互いに背を庇う。
「では、これで」
「――無事に帰らせるとでも?」
 すぅっと衣織は翼に近づくと、攻撃ギリギリの間合いで軽く構えた。
「やっぱり、ただでは返してもらえそうに無いわね」
「大丈夫です、先輩は俺が――」
「――いや、俺が守ります」
「この双子・・・勇姫には指一本触れさせない!」
「味方同士で争うな」
 やれやれ、と盛大な溜息をつきつつ、翼は衣織に向かって深々と頭を下げた。
「雨衣第一衣、水落衣織殿。お心遣い、感謝する」
「待て、私はまだお前たちを返すとは――」
 顔を上げた翼の表情に、衣織はドキリとした。翼は軽く微笑むと、
「しかし、貴方もまた、礼節を知る誇り高き戦士であるはず。だからこそ、俺はここに来たのです」
親しい友人と別れを惜しむような感じで、4人を連れると、いとも簡単に部屋を出て行ってしまった。
「あ! 逃がすか!」
「いや、いい。捨て置け」
 ですが、と言いかけた部下を手で制止、衣織は続けた。
「次に会うときは敵だ」
 そう、次に会うときは――しかし、今、彼女の目の前に立ちはだかるのはそんな問題ではなかった。
「まさか彼女が・・・秋水が、私を・・・」
 裏切ったのか。
 信じがたいという思いはまた、許せないという強い怒りの炎へと、姿を変えつつあった。


「――怒っているのは一人ではないと、ご理解いただけまして?」
「・・・もう聞こえる人なんて、いないでしょ」
 傘道同好会の練習場は、修羅場と化していた。原因は二人の見目麗しき女性――もとい、片方は男だ。
 ランベ・リューア四天王、ジャックこと香勝とシロフリルこと綺麗だった。香勝は和装、綺麗は動きやすいフリルのついた服を着ていて、和洋取り揃えた美しさがあったが、それが一層この場所にそぐわない感じをさせていた。
「うぅ・・・葉露・・・さ・・・・」
「あ、まだ生きてた」
 ドン、と無常に、香勝は手にした舞傘を晴嵐に突き立てた。ぐぅ、と短く呻き、彼は気を失った。
「半歩、踏み込みが甘かった。10撃以内に倒そうと思ってたけど、やはり一筋縄ではいきませんか」
「あら珍しい、ジャックさんが反省するなんて」
「まぁ、気の変わりって奴ですか? 熱でうかされれば、誰だってそうなりますよ」
 ははは、と細い目に冷たい笑いを浮かべて香勝は着物の袖を直した。
「あれ以来、考え方を変えたんですよ」
 その決意の表れが、この和装だった。本来の彼の持ち味である舞うような間の詰め方を、極限まで引き出すためのいわば決意の現れである。
 珍しいことではあったが、確実に香勝は己を省み、そして強くなっていた。
「・・・要は、勝てばいいんです。何をしてもね」
 元からの残虐ファイトにより磨きをかけ、弱者であろうとも躊躇も容赦も一切しない凶戦士――彼は再び、かつて敵対者全てに恐れられる存在に戻っていたのだ。
「あら、怖いわぁ」
「怖い? よく言いますよ。自分としては貴方の変わりようが怖いですけどねぇ、シロフリル」
「そうですの? まぁ・・・夢中になりすぎるのは、よくありませんわね」
 彼女の足元には、無残にものされてしまった雪守の姿があった。勝負は一撃で決まっていた。
 四天王の中において、トリッキーな動きから繰り出されるその傘術は力こそ劣るものの、その威力たるや凄まじいものであった。攻撃系の誰かと組めばさらにその恐ろしさが身にしみる――本来、ランベ・リューア四天王は団結して戦うことを前提に結成されているのだ。
 そして今、その団結力も取り戻しつつあった。
 だがしかし、シロフリルこと綺麗の表情は曇っていた。
「でも・・・私、出来れば葉露さんとは戦いたくありませんわ」
「割り切れませんか」
 見れば、綺麗が倒しているのは雪守など、傘使いではないものたちばかり。彼らを倒したのは全て、香勝である。
 敵となれば倒すのみである香勝とは異なり、綺麗は普段から仲間意識が強い。かつての友人や仲間に対してであればなおさらのことだった。
「やられますよ」
「そう、ですわね・・・」
 それでもまだ悩んでいる綺麗に、香勝は皮肉な笑みを交えて言った。
「じゃ、他の敵でも倒してください。仲間以外の敵を、ね」
「・・・」
「後ろからバッサリだけは嫌ですからねぇ。背中を預けられるぐらいの働きは、してもらえるんでしょ?」
「その、つもりですわ」
 ヒュッと風を切り、香勝の舞傘が綺麗の鼻先に突き付けられた。驚く綺麗に、彼は一言呟く。
「それとも、『虹刀』につく気?」
「そんな・・・私は!」
 そこいらの女性よりも美しい顔に仕上がっていた香勝の顔に、笑みが浮かんだ。
「あはは、冗談ですよ、気にしたいならどうぞ」
「・・・」
 この男は常に味方を試しているのだ――そのくらい、綺麗もわかっていたはずだった。だが、実際にやられてみるとどうだろうか。いい気はしない。
「お待ちになって、ジャックさん」
「何か」
 悪びれる風も無く、彼はゆらりと振り返った。
「何のつもりですの?」
「ああ・・・っはは。いや失礼、どうも男の笑い方になりますねぇ。無粋極まりない」
 香勝は女らしい仕草を心がけながら、舞傘を両手で構えた。
「私はね、綺麗、味方を信じたいのですよ」
 言われて、綺麗ははっとした。親友だと思っていた葉霧と戦った時、それ以来、香勝から純粋な笑顔は消えていたのだと。今になってようやく気が付いた。
「葉霧君の・・・?」
「あの男、ですか。別に気に病むことでもないでしょう? 昔のことですし、それに私はあの時以来、誰であれ友人であれ仲間であれ、幻想に過ぎないと思ってますから」
 ふふん、と冷たい笑みが彼の瞳に影を落とした。
「しかし、もうそうも言っていられない。だからせめて戦うときぐらい、敵じゃないと信じてもいいんですよね? 四天王の皆様は」
「ええ」
 お互いに一癖も二癖もある猛者ばかりだが、一度築いた信頼関係は完全に破壊されているわけではない。少なくとも、ランベ・リューアの要である以上、力を合わせるべき時は協力出来るはずだ。
「それを聞いて、少しは気休めになりましたよ・・・では、私はこれから稽古がありますので。御機嫌よう、お嬢様」
 どこからどう見ても見事な女形の香勝は、まるで上演終了後の拍手喝采の中を歩いていっているかのように、優雅に部室を出て行った。
 そんな彼を見送りながら、綺麗は呟いた。
「私だって・・・戦えますわ。仲間のためにならば」
 かつての友人でも、きっと戦える。綺麗は倒れているかつての仲間たちに頭を下げると、部室から逃げるように去っていった。


 万花は、走っていた。
 どこをどう走っているかはわからなかったが、走り続けなければならなかった。
 秋水が捕まってしまった。
 光も、奪われてしまった。
 油断だった。
 まさか、あの蛟丸に――
 だが、今は泣き言など言ってはいられなかった。
 自分を逃がすために秋水たちが盾になってくれた。その思いに報いるためには、一刻も早く学校に辿り着かなければならない。
「みんな・・・待ってて・・・絶対・・・助けるからね!」
 そうして万花は、走り続けていた。


 鍵のかかった屋上で、蛟丸は今にも振り出しそうな雲を満足げに眺めていた。
 今日、すべきことはやった。
 晴天同盟の裏の頭脳として、晴天同盟のトップを動かした。
 翼に賛同するふりをして、雨衣内部の軋轢を衣織自ら始末するように仕向けた。
 裏切り者を匿った傘道同好会を壊滅させた。
 紫電がやられたとして傘道連盟に要請を出した。
 そして――第五衣のヒールを、わざわざ逃がしてやった。
 すべてがうまくいっている。
 いくつの組織が壊滅するのだろうか? 少なくとも、雨衣の力は激減するだろう。その隙に、傘道連盟と紫電を片付ける時間ぐらいは出来るだろう。
 邪魔者は排除しなければならない。
 そう、全てだ。
 まずは、あの女――『虹刀』。
 光の在り処は、秋水だと誰もが思うだろう。そして、彼女こそが裏切り者だということも。そうなれば、彼女を助けるために『虹刀』が出てくる羽目になる。
 自分ではない誰かを信用するから、こんな目に遭うのだ。
 『友情』などという馴れ合いのために、あの女は自滅する。かつての兄と同じように。
 そして。
 雨宮水知。
 そいつだけは自らの手で絶望の淵に叩き落してやらなければならない。そのために、ここにいるのだから。
 授業終了を告げるチャイムが、曇り空に響いた。
 これから先、どうなるかが楽しみだ。
 一人で笑っている蛟丸の肩に、ポツリと一滴、雨が当たった。まるで天が、誰かのために泣いているかのように。

 こうして全ては、風雲急を告げた。ある一人の男の、策略によって。
 まだ4月じゃないかという突っ込みは、決してしてはならない。物語は時として、早く動くものだ。
                                            つづく!


◆22 穂永

 かつて、傘を愛し、傘術を芸術の域にまで高めた男がいた。
 時は流れ、――その男の血は呪いとなった。傘は戦いの道具となり、戦いの理由となり果てた。
 それでも傘を愛したのが、兄・花月葉霧。
 それゆえ傘を憎んだのが、己・花月葉露。
 だから葉露は、本心から傘を楽しいと思えたその時まで、兄の傘『雪梅』を継ぐまいと決めていた。
 だから葉露は、水知と傘を交えたその時から、『雪梅』で戦おうと心に決めた。
 ――兄さん。
 『雪梅』を開く。白地に薄紅の、あでやかな文様。
 兄の敵でありながら、ただ一人の親友だった人、そしてそれだけの理由で、危険を冒して自分をかばってくれた人。その人を、助け出さねばならない。
 たとえ、一人でランベ・リューア全員を相手にすることになろうとも。
 ――力を貸して欲しいとは言いません。これは、あなたの望みではないでしょうから。でも。
 葉露は瞑目し、傘を閉じて、それを撫でながら、つぶやいた。
「願わくはもう一度、ただ一人の傘術士として、雨宮さんと交えたいものです」
 ふう、と息をつく。
 ――行ってきます。
 葉露は扉を開け、曇りがちな朝の空を眺めてから、高校へと足を向けた。

 葉露が一人で戦わなければならなくなったのは、こういうわけである。
 昨日の放課後、手芸部部室に血まみれの万花が駆け込んできたのが、ことの起こりだった。どうにか自分の命と『雨月』だけは確保してきた彼女は、涙ながらに報告を行い、併せて唐園・秋水の救出を衣織に請うた。
 いつもの衣織なら、可能な限りの戦力を割いて、両人の救出に向かうところである。味方が捕縛されている屈辱を、晴らさずにおく衣織ではない。ところがこの日、衣織は難しい顔をして押し黙ったままだった。
 ――なぜ、万花だけが逃げ切れたのだ。
 保健室での敗北の後、臥薪嘗胆して雷電豪助を倒すほどになった万花だが、それでも唐園・秋水に比べればその力量は甚だ劣る。ならば、二人が捕まったにも関わらず、一番弱い万花が逃げ切れたのはなぜか。
「それは、ミドリとシズクがかばってくれたから――!」
 いつもの衣織なら、それで納得もしたろう。だが今や、黒野井翼らの言葉によって、秋水への信頼を失っている。万花の報告は、衣織の疑いを確信に変えた。
「秋水は――」
 秋水は。
「わざと、捕まったのだ――」
 そうに違いない。
 万花には、衣織の言葉の意味が分からなかった。
「秋水は自ら、『光』を蛟丸に売り渡し、さらには自らの身を言わばエサにして、我々を誘い出そうと――」
 そこにいた黒合羽の面々は――既に数が半分になっているが――呆然としてその言葉を聞いた。まさか秋水が――。
 衣織は部下たちの驚きをよそに、一人沈思していた。
 ――『雨月』が私の手に入ったのも、これも罠か? 蛟丸は、そこまで複雑な計略を用いる人物だろうか。いや、迷うことはない。少なくとも『雨月』は本物だ。これがあれば。
 長年の目的、数多くの先達が成し遂げられなかった悲願、地下風水盤の確保を行うことができる。
 ――決まりだ。
 衣織は咳払いを一つする。黒合羽の面々が、一斉に衣織を見る。
「当面、ランベ・リューアには手を出さぬ。それより『雨月』が手に入った以上、地下風水盤の確保こそが急務だ。明日、全員、地下風水盤のもとへ向かう」
 たまたま会合に出席していなかった葉露が、急を聞いて部室に駆け込んだのはこの時だった。
「衣織先輩、雫ちゃんの――」
「秋水の救出は行わぬ」
 目を見開いた葉露に、衣織はこの結論に至った理由を諄々と説き聞かせた。
「正気ですか?」
「君よりはな」
 その言葉が間違っていることに、衣織は気づいていない。
 葉露はそこに集まった顔ぶれを見回した。蜃楼、雲原はもはやおらず、万花は気が動転していて諌めるどころではない。第九衣以下の者たちは、実力より性格を憎まれて階級を下げられている者たちである。とても強諌など期待すべくもない。葉露は、柄にもなく声を高めた。
「地下風水盤の確保など、いつでも行えます。それよりご存知ありませんか、蛟丸が、国際傘道連盟に救援を頼んだこと」
「それも知っている」
「連盟の会員は、みな蛟丸に勝るとも劣らぬ使い手ばかりです。昨年、ルーマニアのカタリナ一人に、上三衣が全滅したことをお忘れですか。今なら連盟の救援は間に合いません」
「だがそれこそ、地下風水盤があれば何とでもなることだ」
「どうあっても、聞き入れてはいただけませんか」
「あまり人を信用しすぎると、手を噛まれるぞ。それとも――」
 その先の言葉は予想できた。
「君も私を裏切るのか、花月葉露」
 葉露は首を振る。
「おかしなことを言われますね。私は初めから、あなたの部下ではありませんでした。ただあなたは私と同好会に庇護を、私はあなたに力を与える、それだけの約束だったはずです」
「私は今、君の力を求めている」
「私は今、あなたの庇護を求めています。しかし、それを得ることは出来ないようですね」
 葉露はくるりと背を向けた。
「誰も頼りにならないなら、一人で行くまでです」
「行くことは許さぬ、『虹刀』。地下風水盤の確保にあたっては、同盟の妨害が予想される。君の力を失うわけにはいかぬのだ」
 第九衣以下の四人が、葉露をぐるりと囲む。
 『露草』を水知に渡してしまっているので、このとき葉露の手元にあるのは予備の無銘傘だけだった。だがそれでも。
「やめてください――あなたたちが束になっても、私を止められはしませんよ」
 この言葉は間違っていない。黒合羽たちはじりじりと下がり、葉露を遠巻きにする。葉露は気にするふうもなく、出口へ向かう。
「行くことは許さぬ」
 出口付近に、きらりと光る細い筋が何十本も走っていた。振り向くと、衣織の手に糸の束が握られていた。衣織の技『蜘蛛斬り』である。この糸に触れれば鋼鉄さえ両断されるという。
 葉露は瞬時立ち止まったが、平然たる面持ちで糸の中へ踏み込んだ。雨中の梅花と呼ばれた彼女の身体も八つ裂きかと思われたが、葉露は無傷で糸の中を出、部室を去った。あとには薄紅の花弁が舞うのみであった。
「――散花血、か」
 重い空気が漂う。
「どうなさいます」
 沈黙を破って問い掛けたのは、第九衣『文神』、書道部部長の嵯峨だった。
「決定に変更は無い。作戦開始は明日の始業時刻」
 感情のこもらぬ声で、衣織は言った。

 誰かが裏切っている。
 それは紛れも無い事実だ。雨衣でも一部の者しか知らないはずの場所に、蛟丸が現れたのだから。もう一つ、自分がわずかな間部室を空けた隙に傘道同好会が襲撃を受けたことも、情報が漏れている証左であろう。
 唐園緑、万花湖子、雪守氷衛、震電加奈子――葉露の脳裏に、様々な人物が現れては消えてゆく。
 ――震電さんは、違う。彼女は兄さんを倒す役が、自分ではなく閃電三十郎に任されたのを恨んでこちらについたのだから。といって、雪守の人たちが裏切るとも――。
 葉露ははっとして、ぶんぶんと首を振った。
 ――これじゃ、さっきの衣織先輩と同じじゃないですか。疑うより、動くこと――雫ちゃんを助けること。
 一人でも、やれる。きっと。
 それが彼女の結論だった。

 そして蛟の目論見でもあった。
 唐園・秋水・蜃楼・雲原に加え、花月まで失ったとなれば、雨衣の戦力は半減、いや三分の一ほどに落ち込むであろう。その状態で晴天同盟と戦えば――。
 ――いや。
 衣織は勝つ。彼女の力量は自分もよく知っている。同盟のほかにもう一枚、駒を用意しておく必要がある。
 ――雨宮水知、か。
 衣織と秋水が決裂したことを、彼はまだ知らない。光原は必ずや雨衣のもとにいると思っているであろう。そうだ、豪助を使って、彼を地下風水盤のところへ向かわせよう。殺し合い、邪魔者を潰し、その果てに空虚を掴み取るがいい。
 注意すべき秋水の身柄はすでに抑えた。万一脱出されたとしても、八方を敵に回していては動くことは出来まい。いま一人油断のならぬ人物である紫電為右衛門も、『虹刀』を恐れて学校へは出てこない。
 残るは、ただ一人。
 ――それでも、お前だけは不安要素だ、花月葉露。
 この女には交渉も策略も通じぬ。力量の程も、底が知れぬ。
 連盟の救援も、間に合わない。
 ただ、花月流の技は、その複雑さのため、莫大な集中力を要求される。それを削ってしまえば、兄と同じく料理は簡単だ。
 ――捨て駒を使わねばならんな。
 かつて、自らを使って葉霧の力を奪い、三十郎にとどめを刺させたように、誰かに奪わせればいい。
 葉露に甘さがあることも、蛟丸の知るところだ。三十郎に制裁を加えたなら、そのついでにデミトリやジャックも戦えないほど痛めつけておけばよいものを、そうしなかったのだから。従って大切な手駒を、再利用できないほど壊してしまうことはまずあるまい。気楽に駒を棄てられるというものだ。
「明日、この学校は死神の舞踏場となる……か。さて、みなに作戦を伝えるとしよう。捨て駒になってもらおうなんて、気が重いな」
 そうつぶやいて、眼鏡をかけなおした蛟丸は、携帯電話を手にとった。

 ただ一人、決断がつかず、校内を彷徨する者がいた。黒合羽第五衣、万花湖子である。
 秋水は裏切り者なのか? 花月葉露のほか、ただ一人それを信じていないのが彼女だった。だが葉露と違って、この疑問を否定しきることもできていなかった。
 彷徨ううちに、いつしか足は、椅子格闘部の練習場に向いていた。
 リングの上では、一・二年の部員たちが熱のこもった練習を繰り広げ、リングの外では筋トレが行われていて、怪我をして包帯を巻いた者たちは、客席から応援の声を飛ばしていた。彼らの威勢の良い声と、椅子がぶつかる心地よい響きに、彼女は思った。自分はやはり、椅子を好んでいるのだと。傘使いたちが傘を愛するのと、差異はないのだと。
 ふと眼を転ずると、包帯人間の群れの中に、一人だけ異様な骨格を持つ者がいた。いや、異様なのは骨格だけではない。そこにいながら、誰もいないと錯覚させるような存在感の薄さ――いや、あるいはわざと気配を消しているのだろうか。そして包帯の端から覗く傷跡は、打撲傷ではなく、火傷のような――。
 それが誰なのか、万花は気づいた。その包帯人間は、音もなく万花の近くにやって来た。
「迷っているな」
「うん」
 包帯人間は尋ねた。
「どうしたいんだ?」
「シズクとミドリを……助けにいきたい」
「なら、なぜ行かない?」
「衣織先輩、頼りにしてた部下をほとんど無くして辛そうだった……シズクが裏切り者だっての、それは信じられないけど、だけど、あの人は、やっぱりあたしたちとはどっか違ってるし、ひょっとすると……でも、ハツユは……」
 言葉ははっきりせず、脈絡も錯綜していた。包帯人間が何も言わないでいると、不意に万花は泣き出した。
「……私、どうしたらいいのか分からないよ……」
 包帯人間はその大きな頭を、万花の頭に軽くぶつけた。万花は彼の意図がわからず、眼を白黒させる。
「君は『ヒール』だろう。泣くのは君じゃない、君の敵だ。……君は『ヒール』だろう。人のことを気にしてどうする、自分のやりたいこと以外に、眼をやるんじゃない」
 万花は沈黙する。包帯人間は続ける。
「もう心は決まってるんだろう」
「蛟丸があたしをわざと逃がしたのは、それは事実かもしれない。でもあたしは、別に親しくもないあたしを、シズクが身を呈してかばってくれたことが、嬉しかった……」
「なら、うだうだ悩むな。決めたならやれ」
「ん……ありがと、ハルカ」
 包帯人間は、ぶんぶんと首を振る。
「僕は決して、黒合羽第四衣、『空蝉』、忍者の末裔、水も滴る美少年、雨宮水知に敗れて重傷を負いはしたが、リベンジを期してリハビリの合間にもトレーニングを積んでいる蜃楼遥なんかじゃない。ただの通りすがりの透明人間さ」
「それに、初めてホントのコードネームで呼んでくれたね」
 包帯人間は、包帯の下の顔を真っ赤にした。照れのあまり、”ホントのコードネーム”という自己撞着した表現に突っ込みを入れるのを忘れたのだった。

 風雲の一日が始まる。
 葉露は初めて『雪梅』を手にして家を出た。
 水知は『露草』と、この間の修練で得た力を頼みに。
 蛟丸は部室で葉露に備え、衣織は地下風水盤奪取に向けて武器を調え、晴天同盟は防備を固めた。
 豪助は水知に急を報せ、万花は葉露を待っていた。
 そして光原は――嵩宮家でまったりと、光合成をしているのであった。

 まずは花月葉露のことから語り始めよう。
 彼女が銀糸の刺繍の黒の合羽を翻せば、ランベ・リューアも晴天同盟も逃げ散る――今は雨衣もだが。そして彼女は、苦もなく部室棟の入り口に辿り着いた。
 そこで待っていたのが、震電加奈子。
 追いついてきたのが、万花湖子。
「随分待たせるじゃないの、朝は苦手なほう?」と加奈子。
「や~っと追いついた、朝早すぎるよ、ハツユ」と湖子。
 面倒になって、葉露は「これが普通だと思いますよ」とだけ返し、言った。
「ついてくるつもりですか」
「そうだけど、なんで黒合羽がいるの?」と加奈子。
「そうだけど、なんで四電家がいるの?」と万花。
「なんであなたたちはいるんですか?」とまとめて切り返す葉露。
 加奈子は万花と目を見交わして、それから咳払いをして、言った。
「葉霧を痛めつける役を、あたしじゃなく三十郎に任せた。それ以来、伯父様と蛟丸先輩には恨み骨髄なの。その小さな頭で理解できた?」
「もの凄く不純、ってかとち狂った理由だよ、それ」と万花。「こんなの仲間にして良いの?」
「不純で個人的な理由だからこそ、あたしはあんたを裏切る可能性がない。分かってるわね」
 葉露は知らない、とでも言わんばかりに、首を振った。
「場合によっては、あなたが保健室の壁にはりつけられたかもしれませんけど」
「あたしの趣味じゃないわ、それ。ヤるならもっとグロテスクにね」
 聞いてられない、といわんばかりに、万花が口を切った。
「あたしのほうは、多分、ハツユと同じ。でも四電家とつながってるなんて、やっぱりシズクは衣織先輩を裏切ってたの?」
 葉露は肩をすくめた。
「衣織先輩と志を異にしていたことも、四電家とつながってたのも事実――でも、それは衣織先輩を倒すためでも、四電家に利するためでもない。話せば長くなるから今は話さないけど、それで了解してくれますか?」
「ん、あたしはそれだけ聞ければ充分。言い訳が長くないのは良いことだよ。――で、ハツユ。蛟丸を倒すことが出来たら――それからどうやって、シズクたちを助け出すの?」
「彼を締め上げて、居場所を吐かせます」
 万花は柄にもなく絶句する。
「――大丈夫ですよ、締め上げる方法は、酷暑刊行会の『拷問大全』で勉強しましたから」
「どんな本読んでるの、ハツユは」と万花。
「あたしが貸したのよ」と加奈子。

 部室棟奥の天文部部室へ向かう途中、前、後、左の教室、右の窓、天井、床下、あらゆるところからランベ・リューアの構成員が飛び出してきたが、そこらの平構成員が彼女ら三人にかなうはずもなく、見る間に蹴散らされた。
 だが彼らは目くらましに過ぎない。気づいたとき、彼女らは前後二人ずつ、四人の使い手に囲まれていた。
「連れがいるとは思わなかった」と、デミトリが後ろから声をかける。
「しかも一人は、味方のはずの震電さんだなんて」と、前からシロフリルが応じる。
「君たちの勢いもこれで終わり」
 と、デミトリの隣からパラソレイユが言葉を出しかけたが、「キエエエエエッ!」という奇声に言葉の翼をもがれてしまった。万花が新式の金属椅子でパラソレイユに打ちかかったのだ。雷電豪助をも打ち倒した凶悪な兵器である。
「うん、良いわ」と加奈子。「デミトリは、あたしがもらった」
 そう言って、黒地に深紅の斑点をあしらった悪趣味な傘『血飛沫丸』をあみだに構え、デミトリに打ちかかっていく。
「さて、一対二になりましたね」と葉露が、シロフリルとジャックに向かって言う。「二人で――倒せると思っていますか?」
「思ってませんよ」とジャック。「でもあなたの力は削ぐことができる。そうすれば、あとは主が勝負をつけてくれる。この戦いに勝つのはランベ・リューアであって、あなたではない、それは変わらない」
「困りましたね」と葉露。緊張の中で残酷な心が頭をもたげ、言葉はいつになく強気になった。「あなたたち二人を倒すのに、花月流の技が必要だとでも思っているんですか?」
 葉露は『雪梅』を無造作に振りかざすと、足もとと呼吸を整えた。次の瞬間に、一撃で以ってジャックを倒し、ついでシロフリルを葬ろう――。
 その必要はなかった。彼女の左右に、二人の人物が飛び降りた。どこから? 無論天井からである。
「北は麗しきオホーツク、そこに住まいし雪守一族、そが末席を血と汗もて、もとい汗と汗もて汚す、薄幸の美少女霙沢つらら、友情と努力と正義によって、ああそういえば愛と勇気のほかに友達がいないさみしいヒーローもいましたね、いやいやそんなことより義によって花月葉露どのにお味方いたすでありますっ!」
 あまりに大仰で意味のわからない言葉に葉露と四天王の二人が唖然としていると、もう一人が言った。
「雪守氷衛、義によってお味方いたします」
 この簡潔な挨拶によって、葉露は彼らが何者であるかを知った。
「先日傘道同好会が襲われた折、我らは救援を差し向けましたが、力及ばず……鷹名晴嵐どの以下、誰一人として救うことかないませんでした。本来なら葉露さまには顔合わせできぬところですが――」
「いえ、巻き込んでしまい、こちらこそ申し訳ありませんでした」
「そのお言葉だけで救われる思いにて――一族の仇を報い、併せて汚名を返上せんがため、恥を忍んで参上いたしました」
「つまり、であります!」つららが急に、ジャックら二人に話を振る。「お前たちの悪行もこれまでなのであります。悪代官は潔く腹を切りなさい、成敗っ!」
「負け犬どもが、小癪な真似を」とジャックが静かに笑う。
「寧ろ私には好都合ですわ」とシロフリルが傘を構える。
 二人の間を、葉露は突っ切った。するとさらに三人の刺客が現れて、行く手を遮った。葉露は彼女らとは知り合いである。
「やめてください、『月針』。蛟丸がどういう人物か、実際に接しても分かりませんか」
「分かったわ、危険を冒してまで、敵をかばってくれる人だとね」
 海公兄弟が、じりじりと間合いをつめる。『雨霧・戒』を武器とする雲原は、かえって間合いを取っている。
 葉露の傘がわずかに震えた。その瞬間、雲原は動きを封じられ、葉露は海公兄弟の目に止まらずに、雲原の後ろにまわっていた。雲原の影に、拳ほどの長さの小さな傘が突き立っていた。
「動かないで下さい、海公さんたち」と葉露。「これは『針水』と『杳鳴傘』との複合技。この小さな傘『針傘』を抜けば、雲原さんは重傷を負います。抜かなければ動けません」
「くそう、卑怯な」
「くうっ、卑劣な」
 葉露は、寂しげに笑った。
「本当は、こんな使い方をする技ではないんですよ。『針水』も『杳鳴傘』も。……さて、決着はつきました。私の話を聞いていただけますか?」
 兄弟も雲原も何も言わない。葉露は沈黙を承諾と解する。
「衣織先輩は地下風水盤の確保に向かっていますが――おそらく、晴天同盟の妨害に苦戦しているでしょう。……今すぐかの地へ向かい、衣織先輩を助けてください」
 答えを待たず、葉露は針傘を消して雲原の身を自由にする。三人が窓から去っていったのが、見なくても分かった。
 ――ごめんなさい、衣織先輩。私があなたにできることといえば、これくらいです。
 天文部部室はもう目の前だった。

 部室の中は全くの暗闇だった。やがて部屋の真中に小さな火の玉が現れ、ややあって急激に膨張し――部屋は星の光で満たされた。蛟丸は北極星を踏んで立ち、葉露に正対していた。
「読みが外れたのは久しぶりだ、君はここに来るまでに、力の大半を使い果たしているはずだったのに。――妥協の余地はないのかい?」
 穏やかな――偽君子の声。
「あります」
「ほう、条件は」
「雫ちゃんと唐園さんを無傷でここへ連れてきて、身柄を解放し、併せて紫電為右衛門を引き渡して、それからあなた自身は、そうですね」葉露はそこで言葉を切り、『雪梅』をあみだに構えてから、言った。「跪いて詫びていただきましょうか」
「やれやれ、全面降伏しろってわけだね」
「嫌でも、そうさせます」
「させてみるがいい」
 とこの言葉で会話を打ち切ると、二人は瞬時に間合いを詰め、激しく打ち合った。あの雨宮水之進でも、この打ち合いを見れば二人の技量を達人のそれであると認めたであろう。
 いや、史上稀な達人のそれであると。
 不規則に変化する葉露の傘法は、蛟丸にすら読めていない。逆に葉露は蛟丸の傘筋を八手先まで読んでいるが、わずかに蛟丸のスピードが勝っているため、つけいることができない。『杳鳴傘』で動きを封じようとも考えたが、蛟丸は葉露の狙いを察し、影を踏ませようとしない。まず、形勢は五分といえた。
「ふむ、その足さばき――師は、姚崇老師だろうな」
 葉露は内心驚いたが、傘の動きは乱れない。
「ではお互い、少しずつ、手の内を明かしていくとしよう」
 言って、蛟丸は左手の『屠竜』を下段に構え、思い切り突き上げた。嵩宮流の基本技『逆水』である。この技の動きは葉露も熟知しており、軽く受け流す。続いて蛟丸の右手の『飛竜』が、葉露の予想しない形で動いた。回転鋭い突き――雨宮流の『散水』だ。葉露は凡手のあとの鋭い一撃をかわしたものの、わずかに体勢を崩した。そこへもう一度『屠竜』が襲った。
 『屠竜』が葉露の右肩を抉った――と、蛟丸は思った。だがその右肩の傷からは一滴の血も出ず、かえって数枚の花弁が散っただけであった。葉露は報復の一撃を見舞う。蛟丸の右頬が浅く裂かれ、鮮血が奔る。
 ここで二人は、一旦引き分けた。
 ――『散水』。ランベ・リューアの主として、他流派の技にも通じているというわけですか。
 ――いきなり『散花血』を使ってきたか。気力の容量は、兄の比ではないらしい。
 それからまた二人は打ち合った。蛟丸の傘が幾度彼女の身体を掠めても、彼女は身に寸毫の傷も負わなかった。かえって葉露は蛟丸の身体にいくつもの傷をつけていた。全て、ほんの浅手ではあったが。
 ――わずかなダメージでも、蓄積していっているはず。このまま打ち合えば、倒せる――!
 蛟丸の考えも同じであった。葉露はまだ余力を残している。早めに倒さねばならない。そこで彼は、猛烈な攻めに転じた。葉露はその隙に乗じ、蛟丸に十四の傷を負わせたが、いずれも軽傷だった。蛟丸は手数と力で葉露に勝るのを強みとし、一気に踏み込んで『飛竜』の猛烈な斬りをくれた。葉露は防ぎきれず、よろめいて三歩後退した。蛟丸は追い討ちをかけ、『屠竜』で葉露のみぞおちを突いた。
 葉露の身体は壁に叩きつけられ、薄い胸から背中までを、『屠竜』が貫いていた。
 これで決まったと、蛟丸は思った。
 気づくと、葉露の身体が徐々に崩れていき――やがて全て、薄紅の花弁に変わってしまった。
 蛟丸の銀河に、梅の香りが満ちた。
 馬鹿な――と蛟丸は驚いた。しかしさすがに、背中の気配を感じ取り、素早く振り向いた。いつの間にか背後にまわっていた葉露の『雪梅』による一撃を、『飛竜』をつかって防ぐ。それでも防ぎきれず、左肩から右胸にかけて、やや深い切り傷を負った。
 ――『散花血』が使えるのは浅手のみのはず、身体を貫通した一撃を無効化できるとは……まして、全身を花弁に変えるなど聞いたことが無い……!
「これが天才か――」
 蛟丸は、久しぶりの恐怖を覚えた。勝利が確実な状況を用意できなかった、自分の手抜かりを呪った。どうすればこの女に傷を負わせることができるのだろう。
 なおも蛟丸は、嵩宮流・雨宮流・四電家の技を駆使し、葉露を攻め立てたが、葉露は動じることなく、隙を突いて少しずつ傷を負わせてゆく。十合、二十合、『屠竜』の強烈な横薙ぎに、『雪梅』が払われた。
「はっ!」
 蛟丸は『飛竜』をふるい、葉露を脳天から唐竹割りに両断した。ところが次の瞬間には、葉露の身体はそこから消えうせ、花弁が散っただけだった。
 ――これでも、駄目なのか!
 気配を読み、鋭く振り向き、背後にまわった葉露の腹部を『屠竜』で突く。同じ結果の繰り返し。もう一度振り向いた蛟丸。葉露が大幅に間合いを取っていた。
 『雪梅』の先端から、小さな傘が無数に放たれた。
 ――『針水』か。
 二本の傘で蛟丸は逐一弾き返し、『針水』を防ぎきったが、体力は大幅に削られていた。構えなおした双竜傘が、やけに重い。
 ――体力の削り合いでは、分が悪いな。……試してみるか。
 蛟丸は跳躍した。葉露は身構えた――が同時に、蛟丸の跳躍距離が意外に短いことをいぶかった。とてもあの折り畳み傘の間合いには入れない。間合いに入るのは、自分の影くらいだ。
 ――影?
 なぜ分かったか分からない。だが葉露には分かった、蛟丸の狙いが。咄嗟に身を翻す。蛟丸の『飛竜』が葉露の影の左肩あたりに――狙っていたのは心臓のあたりであったが――突き刺さった。
 葉露の左肩が血を噴いた。
 蛟丸はさらに踏み込んで、『飛竜』で傷口を狙った。葉露は『雪梅』でこれを受ける。『屠竜』は『逆水』を出す構えだったが、繰り出されたのは『逆水』ではなく、『針水』だった。
 葉露は地を転がったが、避けきれなかった。この三手で受けた傷はいずれも軽いものではなかった。
「ようやく私に勝ち目が出てきたな。妖傘の技は、『散花血』では防げないらしい」
 葉露は肩口を抑えて、問う。
「なぜあなたが、花月流の技を使えるんです……?」
 蛟丸は答える。
「なんのために私が、わざわざ自分で葉霧君とあいまみえたと思っているんだ?」
 その意味は、自らをエサにして、葉霧から花月流の技を盗んだということである。
「まさか、兄さんが叛乱するように仕向けたのは……」
「別にそれだけじゃないよ。理由はまあ、他にもいろいろある。それが一番大きな理由だったけどね。……勘違いしちゃいけないな、私は彼に状況を与えただけ。叛乱すると決めたのは彼だ」
 唇を噛んで、ものも言わずに葉露は打ちかかった。傘さばきが乱れた。蛟丸は葉露の頭の影を狙った。狙いに気づいて、葉露は左に跳躍する。『飛竜』が葉露の髪を数本、引きちぎっていった。
「それで勝ったつもりですか、蛟丸さん」
 葉露は蛟丸の双眸を睨して、言った。蛟丸は警戒を強める。
「それで花月流を盗んだつもりですか。――あなたが妖傘で戦うつもりなら、私には『杳鳴傘』も『散花血』も必要ありません。『針水』だけで充分です」
「大言を……」
 だが、葉露の言葉がハッタリでないことは、蛟丸も察していた。
「――『針水』」
 葉露が『雪梅』を掲げた。現れたのは無数の小さな傘ではなく、『雪梅』と同じくらいの傘が五本。それらが葉露の五方を囲んで、くるくると回っていた。
 『雪梅』が静かに振り下ろされ、蛟丸を指し示す。すると五本の傘が蛟丸のぐるりを取り囲んだ。
「あなたが二刀流と言うなら――こちらはさしずめ、六刀流といったところです」
 蛟丸がはっとすると、右後方と左前方から二本の傘が襲い掛かってきた。『飛竜』と『屠竜』をふるい、それぞれを打ち払う。息つく間もなく、右前方から傘、体勢をくずしつつもこれをかわす。続いて葉露自らが前方から『雪梅』で突きかかってきたが、『屠竜』と『飛竜』を交叉させて防ぎとめる。今度は左後方から傘、立て直すのが間に合わないと悟った蛟丸は、『屠竜』をその影に投げつけ、『杳鳴傘』を使ってこの傘を砕いた。が、真後ろから、さらに一本の傘が迫った。
「ぐうっ――!」
 蛟丸は、背中を深く切り裂かれ、地に伏した。
 残った四本の傘は、また蛟丸を囲んでくるくると回っていた。葉露が『雪梅』を祭ると、また新しい傘が現れて、『杳鳴傘』で砕かれた傘の穴を埋めた。
「よく五本もかわしましたね。でも――」
 蛟丸は、よろめきつつも立ち上がった。眼鏡の右にはひびが入り、左は完全に砕け散っていた。先ほどまでと違って、その眼に余裕はない。あるのは憎悪と憤怒の、暗い炎だけだった。
 葉露はようやく、蛟丸の本性を覗き見たと思った。先に三十郎を倒したとき、保健室の鏡に映った自分の眼つきは、まさにこんな様子だった。ただ蛟丸の眼は、その倍も陰険であったが。
「これで――終わりです!」
 五本の傘が乱れ飛んだ。

   23(バーネット)

 一本目は右肩を掠めた。
 二本目は左足に軽い傷を負わせた。
 三本目、四本目はかわされた。
 五本目は頬を裂いた。
 そして六本目、必殺を期して彼女自身が放った一撃は――彼の傘によって受け止められた。
 同時に襲い来る五本の傘を避けきり、さらに葉露の一撃すら防ぎ、蛟丸はまだそこに立っていた。受け止められた葉露のほうは力比べは不利と見て再び間合いを開ける。その間に蛟丸は投擲した『屠竜』を回収する。外れ、あるいは掠めていった傘が再び蛟丸の周囲に集まり始める。
「不愉快だ。まったくもって不愉快だ。――不愉快すぎていっそ愉快ですらある」
 傘に囲まれた中で、眼鏡に手をやりながら蛟丸はそう呟いた。
「君だ。君だけが計画と異なる。おかげで眼鏡が台無しになってしまった。フレームまで壊れているじゃないか」
「眼鏡の心配なんかしてる場合ですか」
「自分の心配をしろと? なるほど、そのとおりだな」
 そう言いながら蛟丸は右手に持っていた『飛竜』を短く畳んだ。そのまま逆手に持ち替える。傘に囲まれ、いつ襲われてもおかしくはない状況の中で、蛟丸はこの動作を平然とやってのけた。
「本来、二刀流とは嵩宮流の本意とは反するものだ」
 張り詰めた空気の中、距離を開けている葉露に向かって蛟丸は言葉を発する。
「嵩宮流傘術は相手より早く、一撃でもって確実に対象を防御ごと貫き、あるいは砕くことを理想としている。平たく言ってしまえば一撃必殺に特化しているということだ」
「それがどうしたんですか」
「一撃で仕留める、つまり二撃目を考えないのならば二本目を持つ意味は無い。邪魔になるだけであり、また両手で扱ったほうが一撃の威力は上がる。つまり二刀流にはデメリットしかないということになる。」
 互いに睨み合い静止したままで言葉は続く。
「だが、もしこのデメリットを克服することができたらどうだろうか。両手で扱う必要のないほどの威力を片手で出すことが可能であり、なおかつ邪魔にならない程度のサイズであればどうだろうか」
「その結果がそれだと言うのですか」
「そうだ。この学校の人間に見せるのは君が初めてだよ。この嵩宮蛟の戦い方を見せるのは」
「……言いたいことはそれだけですか。なら、今度こそ終わりにします!」
 葉露の叫びとともに五本の傘が再度襲い掛かる。だが、蛟丸――いや蛟は先ほどとは違いほとんど動じず軽く前屈みになると――葉露へ向かって疾走する。
 それに反応して一本の傘が方向を変え蛟に迫るが、彼は速度を落とさぬまま短くなった『飛竜』でそれを弾き飛ばす。残りの傘は後方で空を切った。
蛟の狙いを察した葉露は退くのではなくあえて攻めに転じた。恐るべき速度で迫る蛟に対して先手を取るべく切りかかる。蛟は右の短傘でその威力を流すように受け止める。次は左が来ると判断し、葉露は傘を引き戻し受ける構えを取る。
 一瞬、顔が見えた。半壊どころでは済まない状態の眼鏡の奥には相変わらずの陰険な目がある。だが、その目の中に先ほどとは違う別の色も混ざっていた。葉露には分からなかったが、それは暗い愉悦の――自らの前に立つものを打ち倒す喜びに震える色だった。口元も微かに歪んでいる。その表情が――その酷薄な笑みが葉露の背にゾクリとしたものを感じさせた。
 そして――薄い笑みを浮かべたまま、蛟は小さく呟いた。
「――吹き飛ばせ、『砕傘』」
「!?」
 左からの神速の横薙ぎ。尋常な速度ではない。左から来ると分かっていなければ、葉露ですら反応できたかどうか怪しいところだっただろう。
 強烈な――強烈という言葉さえ陳腐に聞こえるような一撃が葉露を襲う。真っ向から受けるのは無理だと判断した葉露はその威力を逃がすように受ける。だが――
(嘘っ!?)
 葉露の体が、浮いた。蛟の一撃により、文字通り、宙に浮いたのだ。確かに葉露はそれほど重くは無い、がそれでもその体を浮かせるほどの一撃を繰り出せる人間などそうはいない。しかも蛟はそれを片手だけでやってのけた。まさに常軌を逸した力だった。
 地から足が離れれば、受け止めることなど当然不可能で。葉露の体はそのまま大きく吹き飛ばされ壁に激突する。受身は取ったもののさすがに衝撃は強く、葉露は軽くむせた。
 ダメージは決して小さくはない、が手にはまだ傘の感触があった。『雪梅』。兄の無念の象徴。それはまだ自分の手の中にある。――ならば、自分はまだ戦える。心の中でそう呟いて身を起こそうとして――
 首筋に傘が突きつけられた。目の前にいるのは無論、蛟だった。
「片手を防御に回せば、もう片方は攻撃に専念できる。それが私の嵩宮流だ」
「……これで勝ったつもりですか」
「いいや。もし私がこのまま突き刺しても君は『散花血』で逃れるだろう。だが――」
 蛟の顔に先ほどの笑みはなかった。その目の中にも愉悦の色はない。
「君は自力ではこの状況を変えられない。私の一撃に対応できなかったのは『散花血』を使わずに防御しようとしたからだろう? 通常の『散花血』とは違い、君の『散花血』は一瞬だが発動に何らかの動作、あるいは集中を必要とする。つまり、君は『散花血』をいつでも使える状態にしたままでこの体勢から動けない。無論、『散花血』を使わないまま動こうとすれば私は君に止めをさせる」
「もし出来たらどうするんです?」
「別にどうもしない。また戦いを始めるだけだ。……さて、君にひとつ提案がある。この勝負引き分けにしないか?」
「!? 何を馬鹿な」
「私が動かなければ君も動けない。だが、別のところで戦いはまだ続いている。君の勇敢なる仲間たちと四天王の、だ。震電はともかく、他の三人は四天王にはやや劣る。もし彼女たちが敗れ、人質となった場合、君はどうする?」
「……だったらそうすればいいでしょう」
「それもいいかもしれない。しかし――そうだな認めよう、それでも私は君が怖い。君が何かを隠し持っているような気がするのだ。この満身創痍の状態では、それは十分な危険となりうる。私としては君と戦うならもっと勝利が確実な状況でやりたいと思っているのだよ。どうだね、お互い悪い取引ではないだろう?」
「…………」
 しばしの静寂が作り物の宇宙に満ちる。だが、表面的には静かであっても両者の内側では相手の思惑を読むべく複雑な思考が渦巻いている。
「……いいでしょう」
 苦渋の決断といった顔で葉露は取引の成立を小さく告げた。
「それなら早く行ったほうがいい。君の親愛なる友人たちは今にもやられてしまうかもしれないのだから」
「分かっています。……蛟丸、次こそはあなたを葬ります」
「ああ。私も次こそは君を葬る」

24 皆既日食

闘いを終えて、蛟丸は独り歩く。
――やれやれ、さすがはあの男の妹。なかなかに骨が折れる。
正直な話、この眼鏡に傷をつけられるとは思ってもみなかった。
すでに半壊した眼鏡を取り外す。
普段とはまるで違う、凶悪なまでの獰猛さが外に顕れた。
足を止める。
目の前にはひとつの部室がある―『裏千家茶道部』
ノックもせずに蛟丸はその扉を開いた。

部屋の中は真っ黒だった。

内装は黒で統一されており、日光すらも黒いカーテンで完全遮断。わずかな蝋燭の灯りだけがこの部屋の光源だ。
その灯りにぼんやりと浮かび上がらされたヤギの頭蓋骨、黒狗の首の剥製、牙飾り、各種怪しげな品々が異常なほどの不気味さを演出している。
黒い絨毯の上にうっすらと輝く魔法陣の中心には鍋、というかむしろ巨大な壷が鎮座しており、紫色の液体がぐらぐらと煮えたぎっている。
その脇では黒いローブを纏った小柄な少女が一心不乱に壷をかき回している。
「うふふふふあははははへへへへへへへへへへほほほほほっほほほ」
呪文なのか?と心の中でツッコミをいれつつ、蛟丸は裏千家茶道部部室に足を踏み入れた。
「渚、俺だ」
「へへへへへへへへへくくくくくくくけけけけけけけけけけけけぎりぎるぎ」
「気づけ」
右手の飛竜で一撃。
「ぶべらっ」
・・・・・仮にも女の子でその悲鳴はないだろうに。
「みみみみみみみ蛟丸様?ななななななんですかいきなり!?」
「入ってきたら気づかんか馬鹿者。お前は<計画>の鍵を造っているのだぞ」
「うへへ・・・」
「照れんでいい」
左手の屠竜で一撃。
「ぶぁい・・・」
鼻血をどくどくと流しながら、少女は不承不承にうなづく。
「で、瑞穂。それはどこまで完成しているのだ?」
「だいたい2割から8割ってところナリねー」
「・・・どっちだ」
「ワタシよくわかんないアルヨ」
無言で飛竜を構える。
「いいいいいいやいやちょっと待つっす!これにはれっきとしたワケがあるっす!」
「どんな理由だ」
「もはやこれはウチの手を離れたと言っていいんよ。あとは自動的に組みあがっていくだけだべさ。でも完成にはまだまだ時間がかかるっちゃ」
「そういうことか・・・」
「じっくり待つヨ!イイコトあるネ!」
ようするに、コレの完成にはまだ遠いらしい。まあいい、フィナーレにはまだ早すぎる。
「期待しているぞ・・・裏千家茶道部部長・木枯渚」
スペアの眼鏡をかける。
獰猛な眼光は消え、再び完璧な仮面に覆われる。
「あれ?メガネかけちゃうっぺか?はずしたほうが男前だっぺよ」
「そう言うな」
まだまだこの仮面は必要だ。

◆25 藤枝りあん

 蛟丸の――いや、蛟の目論見は『花月葉露』に関しては、痛み分けという事になった。
 しかし、腐ってもランベ・リューア四天王、かつては1年生にして雨衣の上衣と互角に戦ったとまで噂されるその実力までもが失われてしまったわけではなかった。
 こうして、蛟の『捨て駒』にはならずとも、彼らはその役目を立派に果たしてくれた。
 そう、彼らは四天王の菜を汚すことは無かった――秘めた力の開眼。それは蛟が望んだものではなかったが、後々の彼にとってこれ以上重大なことは無かっただろう。
 虹刀こと葉露は、その光景に声を失った。
 ――もう少し早ければ。
 ――もう少し強ければ。
 ――大切な仲間を助けることが出来たのに・・・!
 しかしそれは、かつての戦いと同じく、叶わぬことであったのだ。
 その戦いの詳細を、少し過去に振り返って見ることにしよう。

 第一戦――翼(デミトリ)vs加奈子
「・・・正直、俺を狙ってくれてうれしいよ、加奈子ちゃん」
「へ~え? あんたってそのケありなわけ?」
「まさか。修練は好きだが、相手を傷つけるのはあまり・・・」
 ぶんぶんと血飛沫丸を振り回す加奈子に、翼は取り繕った笑みで返していた。
 隙をついて撃ちかかることは無い――お互いに、それはわかりきっていることだ。
「――出来れば、このまま二度と俺らの目の前に現れないようにして、この場から消えてくれないか」
「誰に向かって言ってんのよ?」
 溜息混じりに、翼がその黒傘『闇羽』を構えた。
「・・・もう、身内で争うのは真っ平だ」
「あ~らお優しいこと」
 しかし、加奈子の返答は決まりきっていた。そのまま血飛沫丸を上段に構える。美しさの微塵も無い構えだが、その分破壊力には申し分ない、完全攻撃型の構えだ。
「でもそれでどれだけみんなが苦労してると思ってんの?」
「君が皆を代弁――」
 代弁するのか?、という翼の問いかけは、加奈子の猛烈な一撃によって押しとどめられた。
 飛び上がり、さらに遠心力を加えた必殺の一撃――ガードごと打ち砕くその威力は傘の一本ぐらい、たやすく粉砕してしまう。
 奇声を発し、渾身の一撃を放った加奈子の傘は、狂い無く彼の頭上に振り下ろされていた。ぐらり、と翼が片膝をつく。
 勝利を確信し、加奈子が笑った。
「あはは、いい気味よ! 四天王最強だか何だか知らないけど、あたしのことなめすぎじゃないの?」
 トドメの一撃を与えるべく、加奈子が傘を振り上げた、その瞬間。
   バシッ
 軽い音とは対照的に、加奈子の右手に鈍い痛みが走る。
「ッ!」
 取り落とした傘を慌てて拾い直し、距離をとる。そこには相変わらず複雑な心境をそのまま表情にした、翼ことデミトリが立っていた。
「裏切り行為の利点・・・それはわかるだろ? 味方の戦い方を知ることによって戦局を有利に進められること、相手に精神的ダメージを与えられること、など。しかしまた同時に欠点もある・・・自分の戦い方も知られるのは、こればかりは仕方が無い」
 闇羽を開き、骨が折れていないことを確認しながら、デミトリはそう言ってのけた。
 さすがの加奈子も、この隙の見せ方は明らかに誘いだと知って撃ちかかりはしない。だがそれ以上に、掠った程度の右手が酷く痛む。
「・・・確かに、俺は君を誤解していた。それは認める」
「殊勝な心がけよね」
 痛みを相手に気取られないよう、左手をそっと添えながら加奈子は血飛沫丸を肩の上に乗せた。まだ痛みは引かないが、話を長引かせれば――
「どう誤解してくれてたのかしら? もっと弱いと思ってたとか?」
「・・・いや」
 デミトリは首を横に振ると、「加奈子ちゃん」と彼女に声をかけた。
「先に言っておくが、体の力は抜いた方がいい」
「はぁ?」
 何を馬鹿なことを言い出すのか、という加奈子に、デミトリは淡々と続ける。
「宣言すると、俺は次の一撃で勝負を決する」
「・・・アタマおかしくなったんじゃないの?」
 ランベ・リューア平構成員ならまだしも、加奈子の実力からいってそれは不可能なように思われた。実際、手合わせでもかなりの数を打ち合って粘ることが出来るのに、それを一撃とは笑止だ。
 そんな加奈子の嘲った表情を見て、デミトリは苦笑を浮かべる。
「そうだな、ならばこういうのはどうだろう・・・俺は一撃しか攻撃しない。つまり、次を耐え切れば加奈子ちゃんが何をしても、俺は文句を言わないっていうのは」
 一瞬の間。
 そして、
「あはははははははははははは!」
 加奈子は文字通り、腹をよじって大爆笑していた。目尻には涙も浮かび始めている。
「え? 何? ってか何考えてんの? 四天王最強のデミ様って自惚れ過ぎじゃね~の? ま、そんなにあたしに殺られたいってんなら止めないけど?」
「つまり、了承ってことかな」
「やれるもんならね」
 頭に傘を構えた加奈子に、デミトリはもう一度苦笑する。「違う違う、狙いは腹の辺りだ」
 加奈子は一瞬ムッとした表情を見せたが、体の正面に傘を構え直した。ここに来て不意打ちをする男では無いだろうからだ。
「では・・・覚悟してもらおうか」
 刹那。
 そう、一瞬ではなく、刹那。
 加奈子は痛みを感じる暇すら無く、その場に崩れ落ちた。体をぶつけては大変だと、それを慌てて翼が受け止め横たえる。加奈子が知れば激情するような行為を思って、翼はまた苦々しく笑った。
 何をしたのか――その答えは簡単だった。
 ほんの一撃、宣言したように加奈子に攻撃を繰り出しただけだ。
 ただそれが、常人には防ぎようも無い素早さで、なおかつ、相手を気絶させるだけで他にダメージを残さない力での、しかも柄での一撃だったというだけだ。
 言ってみれば、完全に格下相手への攻撃なわけだ。
 無論、翼に相手を貶める道理は無く、ただお互いに無駄な力を使うよりはとそうしただけだ。おそらく、二~三日安静にしていれば完全に体力は回復するだろうという程度の傷でしかない。
「裏切り、か・・・」
 あんな思いは一度で十分だったのだがな、と翼はひとりごちた。
 翼は溜息をついて、それから暫く迷っていたが、加奈子の血飛沫丸を手に取った。
「この傘は・・・預かっておく」
 黒地に真紅の斑点――悪趣味とも取れるが、それは加奈子なりの誇りなのだ。
 本来、裏切りは傘の破壊を持ってしか償えない。だが、この血飛沫丸を初めて手にしたときの加奈子の喜びようを思うと――もちろん、その時の笑顔の怖さは凄まじいものだったことは認めるが――無碍に破壊することは出来なかった。
「そういえば、加奈子ちゃんの何をどう誤解してたのか言わなかったな・・・」
 ちらと振り向き、すまなそうに告げる。
「・・・君のことは、仲間だと思ってた。誤解してたよ」
 それから翼は表情を引き締めると、他の戦いの行く末に気を張り巡らした。

 第二戦――香勝(ジャック)&綺麗(シロフリル)vs氷衛&つらら
「先日の借り・・・利子をつけてお返しいたす!」
「先日、先日、ねぇ・・・?」
 ふ~む、と、わざとらしく考え込むふりをしながら、香勝は眉をひそめた。それからややあって、
「何かありましたっけ? 綺麗、覚えてますか?」
「貴様・・・ッ!」
 体温が上がるほど激昂し、武器の氷を構える氷衛に、何故か綺麗が忠告をする。
「名前はご存知ありませんが、氷使いのお方、彼の口上に乗ってはいけませんよ」
「おおぅ? 意外な展開に胸が熱くてこれは恋? それとも愛?」
「そちらの可愛らしいお嬢さん、誤解を招く言い方はしないでもらえます?」
 傘を閉じたまま、綺麗がそうぴしゃりと言い切った。
「香勝さんも、人の悪い真似はおよしなさいな」
「そう言われても、覚えてないんですよねぇ。昨日は舞踊の稽古があって・・・」
 それから、ああ、とようやく気が付いたかのように手を打って笑う。
「思い出しましたよ、そう言われてみれば昨日、裏切り者をボコボコにしたんでしたっけね?」
 『裏切り者』の部分に力を込めて、香勝がくすくすと笑う。さっと氷衛の顔に朱がさす。
「お前にそんな権利が・・・」
「ありますよ」
 氷衛の持つ氷の刃よりも鋭く、冷たい一言が香勝の口から紡がれた。
 しかしそれも一瞬のこと、彼は再び人を馬鹿にした笑顔に戻ると、嫌みったらしく、
「ま、その裏切り者に尻尾振ってる貴方になんて、もっとそんなこと言われたくないですね、私は」
と切り返した。
「そんなこと・・・どんなこと?」
「相手にするだけ無駄ですわ」
 やれやれ、といったように綺麗は頭を振った。
「それよりも・・・お相手願えるかしら?」
 手にした白い傘――白波蜂――をバサッと広げながら、綺麗が言った。
「私、今、怒っているんですのよ? 貴方がたが無残にも踏み付けて来た皆様の痛み・・・少しは自分で感じ取りなさい!」
 言い終わる前に、衝撃波が空間を薙ぎ払った。
 ほんの数秒反応が遅ければ、そのまま傷を深くされて一撃で戦闘不能だったろう。それぐらいの威力だった。
「お見事お見事。素晴らしい避けっぷりでしたよ。さすがは逃げに慣れているだけのことはありますね」
「ふふん、褒めたって何にも出ないですのだ!」
「よそ見している暇は無くってよ!?」
 二度、三度と威力を増す衝撃波を何とかかわしながら、二人は機をうかがう。
「香勝さんッ!? いつまでそうしてぼさっと突っ立っているおつもりですの!?」
「今からやりますよ、我が女王様、ってね」
 つららが咄嗟に投げつけた氷の礫を開いた傘で受け止め、香勝が艶っぽく笑う。
「さて、ではジャックこと蛇乃目香勝の舞、堪能していただきましょうか」
「では、お相手はこの雪守氷衛がつとめさせていただこう!」
「そいなら、つららのお相手はこのおネイサマですなっ?」
「うふふ・・・勝てるとお思いですの? 甘くってよ!!」

 パスワードが一致しなかったので、新たに上げときました。
風雲急告げまくりじゃないかという突っ込みは、雨と一緒に流してください。
いまだ誰も蛟丸の真意には気付かず。
まだまだラスボスまでの道程ははるかに遠いですよ。まだまだまだまだ遥かに!
そして問題はひとつずつ解決しないとですね!
逃げられないようにしたんで、頑張ってくださいねー。(R)

と言うわけで、気づいたらラスボスが追い詰められております。あれ?
……まあ、きっと大丈夫でしょう。ラスボスはやられる時までやられないはずですから。とりあえず眼鏡も半壊しましたし。
水知VS衣織も書きたかったけど、力及ばず。
秋水粛清にもっていけず、衣織に「見捨てる」という中途半端な選択をさせたのは申し訳ないです。蛟丸に捕えられているので、ちと動かしにくく。
では本文ともども長くて失礼。穂永。

何とか引き分けということで。
正直『散花血』が強過ぎな気が。少々の実力差なんて簡単にひっくり返せますよ、これ。まあ、それでも引き分けに持ち込めるほど蛟丸が強いということで。(バーネット)

渚がつくってるものは何に活用してもかまいません。好きに使ってください。(日食)

一人だけ、遅いッ!
しかも詳細説明、終わってない!
でも、葉露サイドが全滅したってことだけは書いてしまうこのアホッぷり! あ~、誰か穴掘ってくださらない? 入りますから(R)

最終更新:2013年06月12日 22:16