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キノコ勇者・28~

2005年09月26日(月) 15時53分-月組

 

◆藤枝

 オーランティア江の怪物が倒れた――その喜ばしいニュースが王都へ届くよりも前に、そのニュースを受け取った者達の方が早かった。
 凶報は吉報よりも早く届くものである。

 昼なお陽光の照りつけぬ暗き闇の世界――暗黒大陸にある魔衆の本拠地、妖魔城にて。
   バァン!
 レイスの玉座の間の扉を騒々しくぶち破りながら、来訪者が現れた。
「何事か、騒々しい」
 ふわりと玉座にレイスが座る。普段は色々な場所に気まぐれで存在しているため、ここ玉座は常に空っぽのままだ。しかし、いざという時の連絡用などに、ここに来れば必ずレイスに会えるようになっているという構造はさておき。
 その来訪者は息も荒く、肩をせわしなく上下させながら跪いた。
「・・・殿! ・・・は、く・・・」
「落ち着け、ジャヴァ」
 すっとレイスが手をかざしただけで、ジャヴァと呼ばれた戦士の疲労が露のように消える。
 しかし彼は、主のその魔力の高さを驚くよりも、より重大な事柄を伝えるためにその残りの力を振り絞った。
「殿、ミラージュパレスへ! お急ぎください、お願いいたします!」
 彼が言葉を言い終える前に、主は姿を消していた。
「・・・ロードポリウスが・・・」
 ジャヴァは主のいなくなった玉座で、ぼうぜんとそう呟いた。
 その後から、口々に「エントローマが!」「あの魔神が!」「ミラージュパレスで!」などと叫びながら、一隊が雪崩れ込んで来た。
「もう、お伝えした・・・」
 疲労困憊でジャヴァはそう呟くと、後から来た仲間達に支えられながら、どうにかこうにか玉座を後にした。

 ミラージュパレスは文字通り、鏡の宮殿である。
 様々な鏡を使った仕掛けを解かなければ先に進めず、また戻ることすら出来ぬため、主に凶暴な魔人や魔神、そしてレイスに従わぬ者達がここに半ば閉じ込められているという状態である。
 その深部に、問題が起こっていた。
「うは!」
「こ、こっち見た!」
「退避退避! 奇襲隊一時退却!!」
 轟く爆音に、兵士達の叫び声。仲間同士の喧嘩にしては激しすぎる光景だった。
「騒々しいな、何が起こった」
「れ、レイス様!?」
 突然隣に現れた主に驚きを隠せず、セレフォーラが頭を下げた。
「必要無いと言っているだろう? それよりも、状況を」
「いえ、ですがこの程度私一人で十分で――」
「状況を、教えてくれ」
 二度目のそれは重く、セレフォーラも黙って従うことにした。
「エントローマの、いえ、魔神ロードポリウスの封印が解けたようなのです」
「ああ・・・なるほど」
「ですが今暫くお待ちを、レイス様。恩知らずを闇に帰すのに御身を煩わせるわけにはまいりません」
「いや、いい」
 セレフォーラが止める間も無く、レイスは防御壁をすり抜けて外に出た。しかも、通常の魔衆ならば防御壁内部でも身動きが取れぬところを、いつもどおりへ依然としているのだから恐ろしい。
 そして彼は、エントローマを魔の鎖で必死に縛りつけようとしている部隊に撤退を告げた。
 途端に力が緩められ、自由になったエントローマが虫を落とすかのように腕を振るい、戦闘部隊を叩き落した。それを慌てて回復部隊が収容し、撤退する。
 その巨躯の傍らでは、死人と見間違うばかりにやつれきり、魔力を奪いつくされてなお、傀儡として剣を振り回し続けさせられている魔剣士グラシリスの姿があった。
「同志の被害は・・・なかなかにひどい、か。死者が出なかったのが幸いだ」
 魔力が満ち溢れ、本来の巨大な姿に戻った魔神ロードポリウスの前に浮かびながら、レイスはそう呟いた。
 ――うおお・・・おぬしが・・・私を・・・――
「うん? 話が出来る知能はあるようだね」
 ――ふざ、けるなぁあああああッ!――
 バリバリと魔鏡を割る大音響をさらりと受け流し、レイスが笑った。
「獣の咆哮じゃあるまいし、もう少し普通に会話は出来ないのか?」
 ――レイス・・・よくも我の前でそのような口を利けたものだ!――
 撤収しきり、防御壁を幾重にも重ねた中であるというのに、魔衆達はその魔力に圧迫され、凍り付いていた。
「魔神エントローマ、いや、今はロードポリウスか。どちらにせよ、何が不満だ?」
 怪訝そうに眉をひそめるレイスに、魔神の一撃が叩き込まれた。
「レイス様!」とセレフォーラが外に出ようとするのを、その彼が魔神の拳の下で制する。
「肉体言語とは・・・知能の程は元々そうたいして変わりないらしいな」
 完全防御壁でその拳を押し返しながら、レイスは相変わらず笑っている。
 ――黙れ、愚かしいアマニタ風情が・・・よくも私を謀ったな――
「謀る・・・? 人聞きの悪い。お互いに利益分配などについては納得しあっていたはずだが」
 二度目の返事は魔力の一撃だった。余波が防御壁を貫き、怪物の姿となって襲い掛かってくるのを、セレフォーラらが瞬殺していく。だが、それらの一撃をまともに喰らったはずのレイスには、かすり傷無かった。
「・・・つまらない」
 ボソリ、とレイスが呟く。
「芸の無い攻撃だ。力押しの、技術の無い、己に慢心しきった無駄な攻撃・・・実に不愉快だ」
 そのまま彼が軽く指を動かすと、目に映るよりも早く、魔神エントローマの肉体を何十もの鎖が縛りつけた。
 ――何ィッ!?――
「私は、ロードポリウス、知っての通り、君のような存在が嫌いだ。力によってのみ他者を支配し、傲慢な振る舞いをするだけならばいざ知らず、己を過信して邁進しない輩は・・・!」
 ギリギリ、と鎖がロードポリウスに食い込んでいき、それを断ち切ろうとグラシリスが剣を振り下ろす。しかし、その鎖は彼の剣をしっかりと包み込むと、引いても押しても抜けなくしてしまった。
「さらに付け加えると、配下を手駒のように扱うのは最も嫌いだ」
 ――う、ぬ、ぬおおおおおおッ!――
 もがけばもがくほど、鎖は絡まり、食い込んでいく。
「さて、何だったかな・・・そうそう、おめでとう、君の肉体が復活したそうだね。君は積年の夢が叶い、こちらも今までよく働いてもらい、双方にとって利になったわけだ」
 言いながらも、その自慢の肉体はいまやレイスの鎖によってがっちりと捕らえられている。
「さて、ここで私からのささやかなプレゼントだ。君は完全復活するや否や、その溢れんばかりの魔力によってグラシリスを拘束し、何の罪も無い同志達を攻撃してくれた。ついでに言うと、この広場も滅茶苦茶にしてくれたが・・・まあそれはいいとして」
 人のよい笑い顔のまま、レイスが続ける。
「ともかく、そのお礼に相応しいものを与えようと思う」
 刹那、その場が一気に暗くなった。いや、そう思えるほどに邪な意志が溢れ出した。
 ――こ、これは・・・――
「君は知っているはずだ、『名を呼ぶことすら厭う存在』・・・“達”だ」
 魔衆の何人かが、その姿を見て気を失った。頑強な戦士であれ、英知を極めた魔道師であれ、その恐怖は本能に直に作用する。人間だったならば、即死していただろう。
「君を彼らと同じ世界に送って差し上げよう・・・なぁに、遠慮はいらないさ」
 ――な、そ・・・ッガ・・・グッ――
 必死に鎖を引き千切ろうと、ロードポリウスが無駄としか思えぬ動きをする。それを獲物を見るような目つきで、何かよくわからない、悪しき存在が観察している。
 そんな彼らを侍らせながら、レイスは意思の無い、淡々とした声で告げていく。
「我が名において命ず。神を語る物の御霊を貶める邪の体現者よ、解き放たれよ。光輝の楔よ、眩い白き鎖よ、今一たび名を呼ぶもおぞましきもの達へ刹那の自由を――」
 ――ま、待てッ! 待たれよ!!――
 今まさに彼らがロードポリウスの体に触れようとした瞬間、彼が叫んだ。
【わ、私が悪かった・・・認めよう、だから頼む、まだ消えたくは・・・】
「・・・それが詫びの言葉か・・・?」
【――う・・・す、すまぬ・・・私の失態だ。どうか、ゆ・・・許して、くれぬか――】
 身動きこそ取れなかったが、もし彼が自由の身であったならば、間違い無く土下座して頼んだことであろう。
 彼らの完全解放――それが意味するのは、存在の消滅だからである。
 だがしかし、レイスをそこまで怒らせておいて、許されるはずは無いように思われた。
 ほんのわずかな時間ですら何十年のように感じられるような時が流れる中、だが意外にも、その答えは早く出た。

「そう。じゃあ、やめよう」

 まるで落雷が突然晴れ渡ったかのように、雰囲気が一変した。悪夢でも見ていたのではと思い違うほど、そこはいつもの見慣れた場所に戻っていた。鏡一つ割れた素振りが無い。
 そして、刹那のことだ。
 誰しもが、聞き違いではないかと耳を疑った。
 だが、当のレイスはニコニコと無邪気に笑ってこうロードポリウスに語りかけた。
「自分がやられて嫌なことは、他の人にもしない・・・わかってくれればいいんだ」
 しかしその笑顔がかえって、恐ろしく浮かんで見えた。

「それで、これからのことだが・・・」
 すっかり萎縮しているロードポリウスの前で、レイスがにっこりと笑ったまま尋ねた。
「まず、こちらの条件。一つ、契約が解約したとみなされる魔剣士グラシリスを解放すること・・・つまり、主従関係の白紙化。彼はあくまでもロードポリウスという不完全体の従者であって、力を取り戻した今の君の従者ではないから。一つ、魔衆に歯向かわないこと・・・これは敵対しなければ何をしてもいいということだ。別に仕えろと言う気も無い。あとは・・・それぐらいか。そちらの条件は何か?」
「レイス様! それでは甘過ぎます」
 途端に、補佐官から厳しい一言が飛んだ。だが「いやいや、ここはそういう組織じゃないからさ」と軽く流されてしまう。と、
 ――・・・出来るのか――
 ロードポリウスが呟いた。
「何を」
【・・・出来るのか、と伺っておるの、です、レイス・・・様】
「ああ、呼び名は好きなようにどうぞ。レイスでも構わないよ。で、何が出来るのかって?」
【・・・力を――】
 ギラリ、と目の奥で鈍く復讐の光を輝かせながら、ロードポリウスが呟いた。
【――私にこれ以上の力を・・・与える事は可能でしょうや?】
「出来るよ」
「レイス様!!」
 次の叫びは悲鳴に近かった。だが、ロードポリウスはそれを聞き、勝ち誇ったように言った。
【――ならば私により強大な力を・・・それによって、聖魔剣の勇者を今度こそ屠ってみせましょうぞ。無論、魔衆の為に――】
「そしてあわよくば、この私をも・・・だろ?」
 クックッとのどの奥で笑いながら、レイスは答えた。
「いいだろう。ただし、これからも今まで通り、いや、今まで以上に、魔衆の一員として尽力すると誓うのであれば、だ。そして、先程の条件を飲む・・・つまり、グラシリスを自由にすると約束出来るのであれば、その働きに応じて、君により強大な魔力を与える事を約束しよう」
【・・・約束ぞ】
「そう、約束だ。だが破る可能性があるのは、君の方だが」
 瞬間、バリバリと皮が剥がれるようにして、ロードポリウスが元の姿に戻った。同時に、魔力の噴出が一気に抑えられる。
「なるほど、考えたものだな」
【――私は最早、以前の私ではありませぬぞ、レイス“様”】
 白磁の切れ目のような口元を歪めながら、ロードポリウスが返した。
【――では、レイス“様”・・・私はオーランティア江に封じられし我が肉体の封印を完全に解き、より多くの魔力を取り戻そうと。何かご指示は――】
「いや、そうだな・・・こうしよう。今丁度、王国の騎士達があの水蟲を倒した後始末をしている頃だろう・・・そしておそらく、勇者一行もいる。そこで――」
【承知】
 言い終わる前に、ロードポリウスは姿を消した。
 唯一つレイスと違うのは、相手の言わんとする事を理会出来ているかどうかという点においてである。
 レイスは虚空に向かって、苦笑まじりにこう最後まで言い足した。
「そこで、君にわ彼らの足止めをしてほしい、つまり端的には艦を破壊しておいてもらうだけでいいのだが・・・聞いてないよな」
「そのようですわ」
「せっかちは変わらず、と」
 やれやれと溜息をついてから、レイスはおもむろに振り返って同志に笑いかけた。
「みな、どうもお疲れ様」
「え? い、いえいえっ! とんでもございませんッ」
「そんな、もう少し我らがしっかりしていればレイス様にはお手を煩わすことも無く――」
 口々に詫びの言葉が出るのをレイスはいちいちしっかりと聞いて、「そんな事はない、よくやってくれた」とねぎらった。
 と、ここでこう言い出した者達がいた。
「殿、この失態は我らの責任でござる」
「少なくとも、もう少し被害は抑えられたはずでございます」
 ミラージュパレス深部の警備責任者の、ウスタルとアスペラである。
「かの魔神の代わりに、我らに今一度機会をお与えくださいまし」
「この汚名、見事挽回してみせるつもりでございます!」
「・・・アスペラ、汚名は挽回ではなく、返上するものだよ。まあ、止めはしないが、怪我しないよう気を付けてくれ」
「もったいなきお言葉――」
「れ、レイス様!」
 せっかくのお礼の言葉を遮られて、ウスタルがムッとした先に、フラフラになったグラシリスが立っていた。
「我が剣にて同胞を斬るとはこのグラシリス、死を持ってしか償う術を知りません! どうか腹を切れとお命じください!!」
「グラス、そんなに重大に事を受け止めないでよ、死者も出てないんだし・・・」
「そうでござる、責務は我らが負う所存。貴公は体を癒し、逸早く戦線復帰を果たす事こそが償いでござろう」
「しかし、それではこのグラシリスの気が晴れん! 主に失態を押し付け、のうのうと療養することなど出来るはずが無い!」
「あの~、申し訳ないのですが、レイス様、どうか彼を止めて・・・」
「アスペラ、手回し不要! レイス様、どうかお願いいたします! このグラシリスにご指示を!!」
「・・・できればやめ――」
「止めないでいただきたいのです、レイス様!」
 いや、どっちだよ、というツッコミがそこにいた彼らの心に浮かんだのはさておき、気力だけで立っているようなグラシリスだったが、どうせ倒れるならば思うようにやらせる方が幸せだろう――という事で。
「ウスタル、アスペラ、くれぐれも無理をしないように」
「はッ! もったいなきお言葉!」
「お任せください、レイス様」
「それとグラシリス・・・“絶・対・に!”無理をするな」
「お心遣いいただけるとは・・・グラシリス、たとえ骨だけとなろうとも――」
「いや、だから骨にならないようにしてくれ」
 三人が空間転移を果たしたのを見送ってから、レイスはようやく溜息をつきなおした。
「レイス様・・・」
「どうした、セレフォーラ。まさか君まで雪辱をとか言うんじゃないだろうな?」
「いえ・・・差し出がましい真似をいたしました」
 呟いて、セレフォーラは俯いた。自分で十分だと言ってしまった事をまだ気に病んでいるようだ。
「いや、今のは私の我が侭だ。最近・・・考えるばかりで体を動かしてなかったから、丁度いい機会だと思ってね」
「ですが・・・」
「これからも君の力を当てにしているよ、セレフォーラ」
 反論を許さないようにしてから、レイスは元々いた場所――とある森の一角――に舞い戻った。
 彼女の言いたい事はわかる。
 確かに魔衆の主としては、自分は甘過ぎる。
 ゴロリと草原に横になって、空を見上げる。
 蒼い。そして、明るい。それは昔も今も、変わりはしない。
 だが、それを見ている自分は――
「我が名は・・・か。フフ」
 自分は変わってしまった。それは間違い無い。レイスの魂に刻まれた刻印は、未来永劫、彼が魂ごと消滅するまでついてまわる。
 それが罪だというのならば、あがなおう。だが、この志までは・・・奪えはしない。
「我が名はレイス・・・魔衆の主、レイス・・・だ」
 そのためならば、自分は――変わってみせる。


「ふざけるなあ!」
「なあんですってぇ!? この・・・化け物風情がッ!」
 港町で修羅場が起こっているまさにその時だった。
 戦闘も終わり、船が港に寄せられているその間近で、轟音と巨大な水柱が立ち上った。
 グラグラグラッと激しく地面が揺れ、一瞬後に、天の底が抜けたような雨――ただし、海水――が降り注いだ。
「な、なんですの!? あッ!」
 ぐん、っと鎖が引っ張られる感覚がして、少女は慌てて引っ張った。グッと、プルが一歩踏み出した状態で止まる。
「ぐえ・・・」
「どこへ行く気ですの!? 許しませんことよ、この私を置いて逃げようなどとは!」
「どうしてプルが逃げるのに君の許可が要るんだ!?」
「うるさいわよこの化け物!!」
 そうこうしているうちに、二度目の水柱が立ち、先程よりも大量の塩水が降って来た。
 プルの頭に、仲間達の姿が現れ、船に吸い込まれていった。
(そうだ、みんなまだ、あそこに!)
 無事でいる、自分と違ってみんなはそんなにヤワじゃないから。だけど、もし・・・
 今、自分はありったけの荷物を預かっている。つまり、薬草やら何やらも。ひょっとして誰かが怪我をした時、そして魔法だかが使えなくなってしまったら、その傷の回復に必要なのは・・・アイテムだ。
 プルはもう一度、今度はもっと力を込めて、鎖を引っ張った。

 ―― 誰であれ 我らの前を 防ぐ事あたわず ――

 急に突き放され、プルはバランスを崩して前のめりにつんのめった。が、間一髪のところで転ばずに踏みとどまる。旅の成果かもしれない。
「ええ!?」
「プル!?」
 驚く二人の少女を尻目に、プルは駆け出していた――鎖から外れて。
 だがプルはその不思議よりも、早く仲間の元へと辿り着きたい一心で見る間に遠ざかって行った。
「ど、どういう事・・・ですの?」
「ミセナ!」
 ぼう然とする少女達のすぐ傍に、黒いマントを羽織った男性が駆け寄って来た。
「ここにいたのですか。物見遊山気分はまた後ほどで」
「あ、ええ、わかっています」
「ああ、お嬢さん、失礼いたしますよ。少々、この娘さんと用事がありますもので・・・それと、貴方には怒った顔は似合いませんよ。言うまでも無く、怒った顔も可愛いですがね」
「ファエル殿!」
「おっと、すみません。では失礼、よい観光を」
 同時にバサッと二人は背に翼を生やし、空中へと駆け上がった。
「!?」
 そこにいるのが、人間だということも忘れて。
「ば・・・化け、物・・・本、物・・・の・・・!」
 少女は暫く立ちすくんでいたが、駆け出した。
 化け物を見たら討ち果たすべし――二人がかりで分が悪いのであれば、騎士団を呼べばいい。そして彼女の直感が、あの船団に彼らがいる事を知らせてくれていた。

「ど、どうもすいません!」
「いえいえ、お安いご用ですよ」
「でも・・・いいのか、プル。このまま一緒に来ても、君は・・・」
「え?」
 しかし、気付いたところで今更遅すぎるのではあるが。
 というのも、今、三人がいるのは空中(しかも結構高い)である。
「あはははは~、そ、そういえば、あの時アイテムだけ渡しとけば良かったかな~、なんて今更・・・」
 声をかけられ、どこに行くのかと尋ねられた時、プルはこう答えていた――みんなのトコに行かなきゃ!
 そうして、現在、プルはファエルとミセナに捕まってかなり危なっかしい空中散歩をしているのである。
「・・・やはり、降ろしましょうか?」
「いえッ! い、いいいいんです! 大丈夫、着いたら逃げますから!」


 オーランティアの水蟲は倒した――だが、それで終わりではないとは誰が予想したろうか。
「全員、退避!! 撤退せよ!!」
 海水が滝のように降りしきる中、フラムルが大声でそう指揮をとっていた。
 艦が真っ二つに折れ、水面に投げ出される者達。あるいは、荒波に飲まれ、海中に引き込まれる者達。ラテリトの氷術が解除された今、海がその悪意に負け、獰猛に騎士達に牙を剥いていた。
「人命を最優先せよ! 木切れでも何でもいい、まずは海に飲まれるな!!」
 彼がそう叫んでいる間にも、凄まじい衝撃で海が空から降って来る。艦が大きく傾ぎ、咄嗟に手すりに体をぶつけて落下を免れる。その向こうでは、部下達が防御が間に合わずに海にドボンドボンと落下しているのがちらと見えた。しまった、と思ったものの、何とか命だけは取り留めているらしい。彼らは大きめの板を小船代わりに、手際良く他の仲間を引き上げ始めた。
「フラムル!!」
「フラムル殿、ご無事で!? 一体何が・・・」
 マストが倒れて塞いでいた船室へと扉を力任せに突き破って、トリュフォーとダーマが姿を現した。その前では、扉を壊した勢いで足が滑り、しりもちをついている大剣の少年シャンプの姿もある。
「見たとおり、敵襲だ」
 頷き、トリュフォーとダーマが厳しい顔つきになる。
「しかし、どこから攻撃を? 巨大蝦は始末したはずではなかったか」
「ああ、それは間違い無い」
「だとしたら、よくあるパターンじゃねぇのか? 怨念か、あるいは・・・」
「――仲間呼び、か。確かに、その可能性が一番高い」
 やれやれ、とトリュフォーが安堵の溜息まじりで苦笑する。
「ともかく、アイツを降ろしといて正解だったぜ」
 戦いの後、本来ならばそのまま王都へ向かうつもりだったが、損傷が激しく一時寄港することになった際に、俺だって何かの手伝いぐらいは出来るよ、と言い張っていたプルを、邪魔だからと下船させたことを思い出して、トリュフォーは苦笑した。
 これはすでに、艦の中でじっとしていれば大丈夫だとかいうレベルではない。
 歴戦の騎士達ならば海に投げ出されても平気だが――というよりも寧ろ、身を守るためにはあえて飛び込むべき状況でもあるが――海を見たことすら無いと言っていたプルが、こんな所に落ちたらそれこそ取り返しがつかない。
「・・・で、どうする気だ? 二人とも」
 フラムルの問いかけに、トリュフォーが面頬の下でにやっと笑う。
「答えを聞くまでもねぇさ」
「ああ、決まっている・・・人命救助も仕事だが、殿(しんがり)も立派な役目だろう? 違うか、フラムル殿」
 今度は、フラムルが溜息をつく番だった。
「どうしてこう、若者は血気にはやるのかな」
「まぁ、色々と事情があるんで」
「そう、色々と、ね。それに、第三隊隊長を見捨てるわけにもいかないだろうから」
 元々この二人が武勲や武功を目当てに戦うような輩ではない以上、ここで何を言っても最早遅かった。フラムルは諦めたように苦笑すると、
「ならば、命だけは落としてくれるなよ」
と言ってから、「君も――」と、あのシャンプとかいう少年にも声をかけようと横を向いた。
 が。
「む? おや、あの少年は?」
 気が付けばそこには誰もいなかった。まさか海に落ちたのかと心配した矢先、「いや、見ろ! あそこ」とトリュフォーが傾ぎながらも唯一立っているマストの頂上を指差した。
 その物見台のてっぺんで、シャンプはじっと水平線を見つめていた。
 大丈夫か、降りて来い、などとはトリュフォーは言わない。代わりに、
「おい、シャンプ! 何が見える!?」
と大声で尋ねた。シャンプは視線を逸らさず、
「もうすぐ来よるお。準備なっせ」
とだけ返した。
 それから、こっそりと呟く。
「まざまざ・・・いっぺぇ来おる」


 次第に波自体の揺れが収まりつつある中、まだ足場として機能しそうな艦はここしかないようだった。つまり、シャンプらが迎撃体勢を整えているあの艦である。
「ふむ、まったく・・・脆い作りをしておるの。所詮は木造、強度にも限度があるという事か」
 言いながら瓦礫と化した艦をよじ登っているのは、赤い髪をしたルスラである。どこから見ても目立つが、それを追うラテリトはご老体、子供のように身軽に動く事は出来ない以上、彼女の姿は捉えられても近付けない。
「こ、これ、待ちなさい。そっちは危な・・・おおっとぉ!?」
 危うく足を踏み外して落ちそうになりながらも、ラテリトは彼女の後を追った。魔術師団の面々が見たら卒倒しそうな光景ではあるが、彼はふぅふぅ言いながらも幼い子を危険に晒すわけにはと必死に力を振り絞っていた。
 そしてそのすぐ上を、シークレアがゆるゆると飛び移りながら移動している。
「し、シークレア、お前もです。戻りなさい」
 いつもならば、どの戦場に連れて行っても役目以上の事をしようとしない彼女が、何故か勝手に行動をしていた。何も言わずとも、役目を終えれば帰ってしまう彼女のことだからとそのままにしておいたら、今回ばかりはこの始末だ。
「二人とも、そっちへ行っては危ないですよ! っと」
 柱に捕まりながら、一人から二人へと止める人数が増えた少女達へ、ラテリトは何度目かの注意を促した。
「どこが危ないかはわらわが決める。少なくとも、状況を知った方が災厄からは逃れやすいわ」
 かなり距離を離されてしまったルスラは、振り返るとそうラテリトに告げた。
「じゃによって、ついて来る必要はあるまい。ほれ、そこのおぬしもよ」
 ちらと顔を上げ、シークレアがルスラを見た。が、そのまま手にした大鎌でマストを一本切り倒すと、その上をすたすたと歩き始めた。
「知らぬぞ。わらわは止めたからの」
「あっ、これ! 待ちなさいというに!」
 ぴょん、と斜めになったマストを滑り台代わりに、ルスラの小柄な体躯が瓦礫の向こうに姿を消した。シークレアは別の道を通ってはいたが、やはり瓦礫の山の隙間に消えてしまった。
 引き返すことも出来る、しかし、ラテリトの信条がそれをさせなかった。
 彼は力を込めて反対側のマストに飛び移ると、よろめきながらも急いで二人の後を追った。
 口ではどうあっても幼子。いざとなれば、守ってやらねばならないのだから。


 ――ふふ・・・久しいな、聖魔剣の勇者、よ――
 海上遠くで、そうロードポリウスは呟いた。無論、声が聞こえるような範囲ではない。
 ある程度の遠距離攻撃を終え、臨戦態勢に入っているであろう勇者に対してどのように声をかけるべきか――そんなことで詰め手をとっておいているのである。
 ――貴様と再び会う日を心待ちにしておったぞ――いや、甘い――我が屈辱はそんなものではあるまい――ふむ――――再会の喜びは貴様の血で祝宴といこう――うむ、これでいくか――
 ニヤニヤと独り言を呟いているロードポリウス脇をすり抜け、ウスタルとアスペラ、そしてロードポリウスに見つからないように仲間を盾に隠れているグラシリスが通り過ぎていった。
「・・・グラシリス殿、もう出て来ても構わぬ」
「そ、そうか、うむ、それは重畳」
「てかさ、グラス、あんたあの魔神が怖いの?」
 アスペラの的確な質問攻撃、グラシリスに100の精神的ダメージ!
「な、何を言うかアスペラ。このグラシリスが魔神に怯えるだと? 確かに以前は召喚に失敗し使役させられるという憂き目に遭いはしたがこのグラシリスその程度で恐怖を覚えるような生半可な鍛え方はしておらぬわふははははははハはははハ」
「へーそう、ふーんそう、あっそう」
 アスペラの棒読み攻撃、グラシリスに170の精神的ダメージ!
「ううう、疑っているのかこの超絶魔剣士グラシリスを!? このグラシリス、腐っても悪の花道を貫く――」
「・・・もう良い、見えたぞ」
 二人の漫才を遮り、ウスタルが艦を示した。オーランティアの水蟲が倒された場所から、かなり遠いところだ。だからこそこうやって、空中を移動する羽目になっているのだが。
「ん、もぉ・・・倒したらその場で待ってて欲しいわよね。そうすれば移動魔法で一気なのに。空を移動すると髪のセットが崩れちゃうわ」
「戦いに容姿の美醜は不要なり、アスペラ」
「何を言うか、ウスタル殿。美しく戦い、麗しく敵を屠ってこそ、戦いの美学というものがあろう」
「そうよねー。たく、ウスタルは女心がわかってないわぁ」
「わかろうとも思わぬ」
「だから女にもてないのよ! この堅物! 朴念仁!! ほら、グラスも何か言ってやって! 結構もてるって噂だし!」
「・・・いや、相手も選びたいのだが・・・」
「選り好みしないの!」
「そういう以前の問題なんだが・・・」
(もうじきに着くとわかっているのか、この二人は・・・)

 ――などという寸劇は、戦闘相手は知らないわけで。
「来ため」
 シャンプの言葉に、それぞれが得物を構える――トリュフォーは槍、ダーマは剣、フラムルはメイスだ。しかし、当のシャンプはじっと正面を向いたままだ。
 だが、それに言及する前に、例の三人が現れた。
 ちょうど空間がひび割れているかのように、ビシリ、と鈍い音と共にそこに亀裂が入ったかと思うと、空間の一角がまるでガラスでも破られたかのように粉々に四散し、またすぐに戻ってくっついてしまった。
 空を飛んで着地しなかったのは、はっきり言ってしまえばグラシリスのこだわりの賜物である。
 ともあれ、そこにいたのは魔衆の戦士達。
 漆黒を切り取ったかのような身軽な装束に身を包んだ影ウスタル、薄衣を何重にも着飾り銀の装具をはめた呪師アスペラ、そして見事な装飾が施された甲冑(ただし、先の暴動で多少へこんでいる)を身に纏った魔剣士グラシリスだ。
「お出ましだぜ」
 これ以上の増援がいるのだろうか、と思いつつもトリュフォーが槍を構える。
「ふむ、やはり殿(しんがり)がいたか」
「厄介というか、面倒よね」
 一息置いてから、魔衆の三人も得物を構える。
「我が名は魔剣士グラシリス」
 言って細身の剣を優雅にかざすのは言うまでも無くグラシリスだ。それを聞いて、やれやれこっちもやらなきゃダメなの?、とアスペラが頭を振る。
「・・・魔衆が一人、呪師アスペラ」
 それから隣にいるウスタルに続きを促す。が、さすがは手馴れたもので、彼はおもむろに口を開くと、
「死者に語る名など持ち合わせておらぬ」
と言い切った。
 あーその手があったわね、と少しアスペラは後悔したものの、そのまま懐から水晶で出来たドクロを取り出して構えた。それから、「あんただけ名乗らないのは不自然でしょ」とウスタルの耳元で呟く。
「・・・なれば、影とでも」
(まだ逃げるか、この男・・・)
 ムッとするアスペラを差し置いて、トリュフォーが口を開いた。
「なるほど、闇の勢力というわけか」
「・・・如何にも」
 満足そうな顔で、グラシリスが答える。勢いだけは元気だが、ちょっとした拍子に倒れかねないような重傷だという事を忘れているのではなかろうか。だとしたら便利な能力である。
 そして彼はおもむろにポーズを変えると、びしっと赤い甲冑の騎士に剣を向ける。
「そして聖魔剣の勇者よ、今こそ彼の時の雪辱を果たさん――!」
 そう言ってしまってから、グラシリスが固まった。
 確かに、武器は剣だ。そして両隣の騎士に比べれば、小柄な体躯をしている。
 が、しかし。
「大層な人物と勘違いしてくれたようだが、私の名はダーマ・スクレロ・・・王宮の騎士だ」
 ――まったくの、別人だ。
「ついでに、第四部隊隊長」
 茶々を入れるトリュフォーに、グラシリスの顔がさっと赤くなった。やれやれ、と頭を振るのは当のダーマだ。
「肩書きは関係無いだろう。それはともかく・・・君の相手はこの私という事でよろしいのか、魔剣士グラシリス」
 名指ししてしまった以上、今更間違いでしたとは言えまい。
「ふっ、その通り・・・その奥に控える勇者を引き摺り出してくれよう」
 半ばやけになって、グラシリスがそう格好をつけた。
「勇者ね・・・まさか本気でこんなところにいるとでも?」
 先程からのフラムルやトリュフォーの不審な言動と関係があるのだろうか――と思いを巡らしてから、ダーマはまさかなと思い直した。聖魔剣リシーサなど物語に過ぎないのだから。いくら預言者がその復活を告げようとも、信じられるはずは無かった。
 しかし、ダーマのその態度をウスタルとアスペラは鼻であしらった。
「見え透いた言い訳だ。この期に及んで誤魔化す気か、情けない」
「でもあの態度、もしかして本当に知らないんじゃないの?」
 だが、事情を知らされていないダーマはともかく、ある意味では当事者であるトリュフォーと、事情をある筋から聞き及んでいたフラムルはその表情を厳しくしていた。
「けど、どの道、締め上げれば白状するかな?」
「女性がそんな言葉を使うものではないよ、アスペラさんとやら」
「そちらこそ、敵に『さん』付けはいらないわ。え~・・・どちら様、でしたっけ?」
 にこっと町の少女のように微笑むアスペラに、同じくフラムルが笑顔で返す。
「ああ、私はフラムル・ヴェルト。こう見えても、王宮騎士の端くれなんで」
「あらぁ、怖いわ」
 アスペラが言うように、彼は柔和な表情ながらも、その瞳は真面目だ。
「ふむ、なれば我が相手はそこな名も無き戦士か」
「いきなりザコって決め付けるか? フツー」
「なれば問おう。騎士ならば顔は隠さぬはず。顔も見せれぬような輩が騎士を騙るか?」
「・・・ご忠告痛み入るぜ、ったくよ。あと、アンタもそう大差ねぇんじゃないか?」
 自分の面頬を示しながら、トリュフォーがニッと笑う。ウスタルも目の部分以外は露出を控えた格好をしているからだ。
「それから、私をあんまなめねぇ事だ」
「それは、刃を交えればわかる」
 スラリと、ウスタルの両手に見た事も無い鋭い短刀が握られる。噂には聞いたことがある、異国の武器らしい。
「な~んか・・・不平等じゃねぇ? 私だけバリバリの戦闘タイプってのは」
「なに、心配は要らないさ。一対一が同時に三箇所で展開されるわけじゃない、あくまでも三対三・・・数の上では同じだな」
「ん~? けんどれ、オラぁ、ここにいっぺよ~?」
「えぇい、うるさいッ! これ以上人数を増やされてたまるか! 誰かは知らんが、そこでおとなしくぶら下がってろ!」
「う~い」
 目的の勇者に向かって、そう早口でまくし立てるグラシリスと、それを聞いて、ああ、あの少年は勇者ではないのか、と思ってしまったウスタルとアスペラ。
 確かに命令は艦を破壊して足止めをすることだが、勇者を見逃してしまって・・・いいのだろうかという問題はこの際さておき。

 シャンプはじっと、水平線の彼方を睨んでいた。
 その下では、仲間達が魔衆と戦っている。
「――我が意志によりて解き放たれよ! 漆黒の蝶!!」
「光よ、我らを闇より守りたまえ!」
 ほんのわずか先に光が輝き、ぶわっと飛び交う蝶々を弾いて消す。
「なによ、もぉ! ってキャアア!」
 詠唱後の一瞬を逃さず、フラムルの『太刀砕き』と称されるメイスがアスペラを襲う。が、間一髪、彼女はその手にしたドクロで受け止める。
「クッ、止めた・・・?」
「フラムル、どけッ!」
 咄嗟にトリュフォーがフラムルを突き飛ばしたまさにその瞬間、彼の鎧の継ぎ目から心臓を狙った一撃が突き出された。幸い、下に着込んだ帷子に血が滲む程度で済んだが、今のが間に合ってなければ命も危うい。ウスタルの必殺の一撃である。
「ふむ、拙者の筋を見切るとは見事。だが――その程度の筋では当たりはせぬ」
「はっ、寝ぼけんなよッ!」
 リーチが格段に差があるとはいえ、速さが違う――そう思い、反撃を避けきったと思ったウスタルの肩にむずがゆさが走った。血だ。逃げるであろう方向を予想し、一歩踏み込んで槍で突いてきたのだ。確実に戦力を落とせる部位を突く――戦い慣れている証拠だ。
「刃よ、地より出でよ! シャドウ・エッジ!」
「おっと!?」
 連撃を繰り出そうとしたトリュフォーの目の前に、ぬっと黒い平面な刃が地面から生えた。アスペラだ。詠唱も短い、当たるはずも無い初歩程度の魔術だが、同時に防御壁にもなりうる。これでまた少し距離をとられる。
「・・・ぬかった」
「もぉ、何やってんの! 足止めしてもらわないとヘボいのしか出来ないんだから、頼むわよ!?」
「承知」
 目を閉じ、ドクロに意識を集中し始めたアスペラを守るように、ウスタルが構えを変える。かと思った瞬間、彼が一斉に増えた。
「な、分け身だと!?」
「・・・いや、おそらく偽者の力はオリジナルにはかなり劣ると見た」
「ほぉ、槌の騎士よ、その理由は」
 声が重なり合いながらそう問いかけるのはウスタルだ。フラムルは半ば確信したように告げる。
「君以外は偽者だからさ」
 彼の言う通り、一人だけ肩から血を流している者がいた。そしてフラムルがメイスをその一人に向けると、その先から石のツブテが飛んだ。詠唱無しの得意魔術だ。いきなりの事に驚きながらも、しかしウスタルは素早くそれを避けた。
「奇襲とは、卑怯なり」
「はは、せめて小賢しいと言って欲しいな」
 言って、刃とメイスがぶつかった。
 その少し離れたところでは、二人の剣士が技を競い合っていた。
「殺撃・舞刃裂波!」
「う、く、この・・・」
 剣を避けながら、ダーマが顔を歪めた。スピードでは勝るものの、剣の長さが違うため、間合いに入れないのだ。そうこうしている間に、ピッとグラシリスの切っ先が頬を掠める。
「おや、美しい顔が台無しだね」
「お褒めに預かり、光栄だ。が、私が傷を恐れるとでも?」
 ダーマは血を拭おうともせず、冷たくそう言い切った。よく見れば、その額から鼻の右側にかけて、一筋の傷が――といってもよほど目を凝らさなければ見えないほど直りきってはいるのだが――あった。
「いや、容姿端麗な者はその美を守る義務がある。血に染まるのはどうもいただけないね」
「そっちがやったんだろうに」
「いや、なに。敵が傷付く様は美しい。滅びの美学というものだ」
「・・・意味のわからん奴だ」
 呟いて、ダーマは何度目かの跳躍で相手の懐に飛び込んだ。素早く相手が剣を戻すのをしゃがんで避け、そのまま足を払う。まさかそう来るとは思っていなかったグラシリスは、無様にも転倒してしまう。その隙を逃さず、ダーマがグラシリスの剣を足で踏み付け、刃を喉元に突きつける。
「う・・・」
「チェックメイト。油断したね」
「き、貴様、このグラシリスに恥を――」
 顔を真っ赤に染めながら、グラシリスは憤っていた。怪しげな素振りを見せれば斬る――そうするつもりだったダーマだったが、しかし。
「せあッ!」
「な!?」
 気合一撃、グラシリスが渾身の力で腕を跳ね上げると、ダーマがよろめいた。全体重を乗せていなかったせいもあるが、ダーマは重くは無い。そのため、弱りかけのグラシリスでもこのような芸当が出来たのである。
 そしてその彼は、おもむろに立ち上がると――カッコ良く立とうとしてふらふらとよろめいてしまったが――剣を構えなおした。
「なかなか、しぶといな」
 だが彼は何も返さず、代わりに「血塗りの薔薇」とだけ呟いて剣を掲げた。と、地面から茨が生え、あっという間にダーマを取り囲んでしまった。それだけではない、当然のごとく、体中関節が動かないように止めるべきところはガッチリと巻きつかれてしまっている。
「王手砦落とし・・・といったところか。無駄な動きはしないことだな。体力を浪費するだけだ」
「何を・・・ッ!」
 キラキラ、と音を立てるような感じで、あちこちに紫色の薔薇が咲き乱れる。
「ああ、それは手向けだ、勇敢なる紅の騎士よ。このグラシリスに一撃を加えた事を、誇りに思って散るがいい」
「一撃というか、一蹴だな」
「い、一蹴て・・・そ! そんな無駄口を叩く暇があるのか!? ふん、どの道もう何も出来ぬのにそのような口を利くなどとは、醜い! 実に醜いぞ! 最期の時くらい凛としていられぬのか?」
「だから――」
 その声が終わる前に、グラシリスは左脇腹に痛烈な一撃を喰らって吹き飛んだ。そこには、槍を手にしたトリュフォーの姿。
「別に私は最期の時を迎えちゃいないんで」
「き、貴様は・・・ウ、ウスタル殿と・・・」
 戦っていたはずだ、というグラシリスの問いかけを継ぐように、トリュフォーがにやりとする。
「最初からこっちは三対三のつもりだぜ?」
「そういう事だ」
 アスペラの魔道を的確に相殺させながら、フラムルがそこに合流する。
「あああああッ! もう! 何やってんのよウスタルぅ!! 集中するまで護衛して・って言ってるじゃない!」
「・・・小賢しい真似を・・・!」
「もともと、頭脳系なものだからな」
 強大な魔術や魔道を使おうとする場合、必ず呪文詠唱が必要となる。つまり、実質戦っているのはウスタルとその幻影だけと考えられるのだ。そこでフラムルは、トリュフォーを前衛で戦わせつつ、孤立しているダーマに近付くよう指示し、自分は後ろで幻影を軽く受け流しながら、アスペラの邪魔をするために詠唱無しの魔術を放っては後退、を繰り返していたのだ。
 結果として、アスペラの術は発動出来ず、数の面では一応上回っていたウスタルも、歴戦の戦士であるトリュフォーの見事な槍捌きにまともにやり合えるのは本物しか残っていなかったため、ここまで押し切られてしまったのだ。

 一方その頃、上空では。
「ちょらー!」
【――ぐあ――ッ――ひ、卑怯だぞ――聖魔剣の勇者――め――】
「んなコツゆってもな~、ルスラが『やられるまえにやれ』ちゅーて・・・すまそぺ」
 ――ここまでの戦闘経緯。
   1ターン目:魔神ロードポリウスが口上を述べているスキにシャンプがクリティカル攻撃
   2ターン目:ロードポリウスが“第7章第13節:4頌”を放つも聖魔剣が吸収・倍返し
   3ターン目:ロードポリウスの攻撃をシャンプが迎撃、シャンプの技『ぶったぎり』で大ダメージ
 ――ということがあり、ロードポリウスはまさしく手も足も出ず、あっさり撃破されてしまったのである。
【うむう・・・やはりやりおる――しかし、私も仮にも魔神の名を冠する存在――肉体を取り戻した今――これしきの事で滅びはせぬわ――!】
「!?」

(中略)

あらすじ・・・この後、復活を果たした魔神とキャラ入れ替えでの戦いを、魔神が瘴気を放ったり、ルスラ成人化がバレたり、と、てんやわんやで撃破します。ついでに色々おまけもありつつ、王都へ向かいます。
つまり、

 次回スタートは王都到着からでOKです!

メンバー
 主人公パーティ:変動無し
 騎士団の人々:ダーマが先行、他の人は↑と一緒に王都へ(↑が騎士団の船に便乗しているため)
 空の僕2人:↑とは別経路で王都へ
 ヒロイン候補:↑の次に出発する一番船に乗って王都へ
 ヴェル:道中知り合った劇団の人々と共に王都へ(出稼ぎのため)
 ルブロ・ヴォルヴァタ:↑の劇団に少し前から紛れ込んでいる(理由はまだ秘密)

とりあえず、ダーマがトリュフォーさんと王都で再会さえしなければ、あとルブロ・ヴォルヴァタがミセナと会って戦いさえしなければ、何をしても大体大丈夫かなといった感じではあります。

長くなりましたが、次回、よろしくです!

    ◆29(穂永)

 王都! なんと豊麗で、妖艶で、蠱惑的な言葉であることか! この言葉の輝きの前には、いかなる街道、いかなる都市、いかなる城砦すらも、淡くかすんで見えてしまう。まして地図にも載らぬ名もなき村など、比較するだに愚かしい。
 そのような感想をいだくことになるだろうとプルは予想し、船上に在って既に来るべき感動に身を構えていたが、到着直後にはそんなことを考えている場合ではなくなってしまっていた。思いもかけない重大事が発生したからである。
 シャンプとルスラの船酔いだ。それも、ひどく重度の。
 早く宿屋で休ませるべきであったが、残りの頼みの綱もいなくなってしまった。王都につくなり、慌てた様子の騎士が自分たちのもとに駆けつけてきて、トリュフォーとフラムルの耳に何事かを告げた。すると二人は、シャンプに宿の場所だけを教えると、風のように走り去ってしまったのである。ちなみに、ダーマは先に王都へ入ってどこかへ行ってしまっていた。ラテリトは怪我のため、ヌメーガで療養中。兵士たちはそれぞれの準備で忙しい様子。シャンプとルスラの命運は、プル一人に託された。
 二人とも体重は軽いほうだが、プル一人の体力で運ぶのは難しい。それでも彼はシャンプを背負い、ルスラを抱いて、意地で歩いた。ルスラが「揺らすな、気持ち悪い」と言う。プルは慎重に歩く。そうするとシャンプが「早くしてけろ、吐く」と言う。プルは泣きそうになりながら、宿へ向かった。
 ふらふらになりながら宿に着いたプルは、ベッドの用意をして二人を寝かせ、念のために医者を呼びに行き、医者がどこにいるか知らず、道行く人に尋ね、――とにかく大変な目に遭ったのであった。
 王都到着は早朝だったのに、落ち着いたころにはもう昼近くなっていた。
 ――そうだ。
 プルは思う。
 ――食事と、見学に行ってみよう。
 来たときは、王都を眺め渡す暇などなかったから。体調の悪い二人を放っておくのは気が引けるが、医者も待機しているし大丈夫だろう。金について言えば、トリュフォーから預かった重い財布に加え、フラムルに貰った「御小遣い」がある。驚くなかれ、なんと1000スポアだ。
 王都は想像を越えた場所だった。ちょっと高そうな店で昼食を食べたら、300スポア飛んでいってしまった。
 ――桁間違ってない?
 その推測が現実逃避であることは、プルも理解していた。
 ――次からは、安そうなところで。
 決意すると、プルはたしかに美味だった料理を思い起こしながら、気の向くままに歩いていった。向かった先は街の中央広場。なにやら劇団が来ていて、「演劇」とかいうものをやるという。

    ◆

 王都上空。地上からは小さな点にしか見えないようなところ。
 三人の人物が、それぞれ異獣に乗って、王都を見下ろしている。いずれも魔衆の剣士で、「瞬剣」「剛剣」「魔剣」と呼ばれている。
 三つの首に四枚の翼、三本の脚を持つ青い怪鳥に乗っているのが「瞬剣」ファリン。長身長髪の美人で、腰には極端な反りをもつ曲刀をさしている。彼女は刀を抜くことを嫌うが、一度抜いたら誰かの血を吸うまで鞘に収めないともいう。彼女のただ一つの眼は四方百里を見渡すことができるが、常にある種の憂いを帯びており、気高くも妖しげな雰囲気を醸し出している。
 犬の首に獅子のたてがみ、牛の身体に一対の翼を生やした異獣に騎するのは「剛剣」ラルガ。その巨躯は人を圧するに足る。背中に斜めにかけているのはさらに大きな刀身を持つ剣で、形状はクレイモアーと呼ばれる両手剣に似るが、魔の製法を以って鍛えられたこの剣に打ち砕けないものはない。ファリンとは対照的に豪放な性格で、意味のない戦いを何よりも好む。
 紫の炎を踏んで立つ漆黒の魔馬に跨るのは、あの魔剣士グラシリスで、三人の中で最もやる気であったが、視力は最も落ちるので役に立たないのが惜しいところである。彼は満身創痍で蓄積した疲労も極めて重いが、ロードポリウスのことの汚名を晴らすため、ウスタルとアスペラが帰還した後もこの任務を志願したのだ。ファリンが再三、帰還して療養するよう勧めたが、聞かなかった。
 三人が見下ろしているのは王都の中央広場で、そこでは今まさに劇団が準備をしている最中である。と言って、三人は芝居をタダ見するために空中にいるわけではない。彼らの目的は演劇ではなく、劇団の中の少女である。してその少女は何者かと言えば、あの愛すべきヴェルティナで、彼女の「花を咲かせる」つまり「生命力を操る力」を魔衆は欲したのである。
 しかしながら、グラシリスを除いて、二人の魔衆にはやる気が無かった。くあ、とラルガがあくびを一つ。
「真面目にやりたまえ、ラルガ君」とグラシリスがたしなめる。
「だってよ、無駄じゃん?」とラルガが言う。「俺らの任務はターゲットの誘拐じゃなく、誘拐役の監視だぜ? そんなもんもっと下っ端にやらせろっつーの」
「仕方あるまい。悪とは信じぬこと。まして彼女らは新参で、そもそも信用が置けない」
「確かにそれはそうだけど」とファリン。「それなら最初から私たちが誘拐すればいいのよ。なんでレイスさまはあんな連中に任せたのかしらね」
「レイス様の心のうちは窺い知れぬ」とグラシリス。「が、彼女らに誘拐を任せたのも我らに監視を命じたのも、何か考えがあってのことのはず。我らは言われたとおりにするだけだ」
「で、おかしなことを始めたら、おめーは止めるのか?」とラルガ。「無理だぜ。俺ら三人でかかったって、どうにかできる相手じゃねえよ」
 ファリンは黙っているが、内心ではラルガに同意している。グラシリスも心の奥底ではそう考えているので、返答に詰まった。
「おめーはいーよな。昨日は王国の騎士ども相手に暴れたんだろ? こちとらずっと留守番でストレス溜まってるんだよ。あー畜生、暴れてえ」
「我慢するのね、ラルガ」とファリンが口を挟む。「近いうちに、休む暇もなくなるから。ほら例の、ティロピラス公を誘う計画は上手くいっているんでしょう?」
 ティロピラス公爵は王国北部のティロピラス城の領主で、高齢だが勇敢な男である。王に忠誠を誓ってはいたが、単純かつ節操のない性格でたびたび謀反を繰り返していた。王は彼の力量を惜しんでその度に許していたが、この男、懲りるということも知らない。
「ああ、インディカム・ルベルケンスを、王都から遠ざけるための計画な」とラルガが応じる。
 それはどういう計画だ、とグラシリスは尋ねようとしたが、どうやら公然の秘密になっているらしいこの「計画」を知らないことを恥じ、敢えて問うのをためらった。それに気づいて、ファリンがそれとなく説明を促した。ファリンの催促を受けて、ラルガは言った。
「ティロピラス公爵を謀反させれば、鎮圧のために騎士団長が出て行くだろう、その隙に王都で一騒動起こそうって計画さ。へへ、俺はティロピラス公爵の付き添いを志願するぜ。あの爺さん、人間のくせに面白え戦いをするし、何よりあの騎士団長と戦ってみてえ……おっ?」
 誰も聞いていないのだから声を潜める必要はないのだが、ラルガは小声で「面白いのが来たぜ」と言った。「勇者の片割れのお出ましね」とファリンがつぶやけば、「あいつか――!」とグラシリスが苦い声を出す。プルアロータス。聖魔剣に捕われた、もう一人の気の毒な勇者。
「まあ彼は放っておいても、別に障りにはならないわよ」とファリンが冷静な判断を下した。

 さてヴェルティナについて語れば、ムーランでプルアロータスと別れた後、ただちにシスターのもとへ戻ろうとしたが、路銀が尽きてしまい、立ち往生する羽目になった。その時助けてくれたのがこの劇団で、以後、ヴェルは劇団を手伝う代わりに同行させてもらい、食事も貰っているのである。気は焦るが、急ぐことはできないし、劇団の人たちの恩を棄てていくわけにもいかない。
 そんなわけで、王都についたこの日、彼女は小道具の材料などを買出しに出かけていた。まずはペンキである。ところが、ここで困った人物に遭遇した。
「貴女」と甲高い声で呼ばれる。
「はい?」とヴェルは振り向いてその人を見る。
「ちょっとわたくしの買い物にお付き合いいただけませんこと? この筆とかパレットとかいうものはどうも重くて、とても耐えられません」
 いや普通耐えられるだろう。大型のキャンパスとかならともかく。
「すみません、私、このペンキを時間までに仲間のところへ届けないと……」
 最後まで言わせずに、もう一人の少女が叫んだ。
「なんですって、わたくしが、このわたくしが頭を下げて頼んでいるのに、断るというのですか?」
「はあ……」
「ななな、なんて礼儀知らずなっ! どうしても付き合っていただきますわよ!」
 言葉が終わるのと同時に、鎖が飛んでヴェルをからめとろうとした。だがヴェルの脚はプルのそれと異なりかなり俊敏である。最初の鎖をひらりとかわし、第二の鎖もまた回避。第三の鎖は――。
「礼儀知らずはどちらか、よく自省してみなよ」
 第三の少女につかまれた。すらりとした体格で狩人の出で立ち、髪には花を挿している。
「しかし、また君か」
「また、ですって? わたくしはあなたなど存じませんことよ」
 第三の少女は、この街を歩くのに不審がられぬよう、変装していることを思い出した。耳の形と眼の色は魔法で変えているのである。この少女は察しのとおり、あの魔王、ミセナ・クロカータである。
「ともかく」と自分の失言を誤魔化して、ミセナは言う。「鎖で人を束縛するなど狂気の振る舞いだ」
「わたくしは高貴な家柄の者です。庶民の皆様がわたくしに協力できるのは、むしろ光栄と思っていただかねば」
「馬鹿なことを。貴顕の家柄を笠に他人にことを強いるなど、この世でもっとも卑賤な振る舞い。恥を知るがいい」
 少女がふと気づけば、まわりの人々はみな自分に白い目を向けている。かっと顔を火照らせて、少女は後ろを向いた。
「覚えていらっしゃい!」
 ミセナに向かって自然と喝采が沸く。さきほどの少女と同じく、顔を少し赤らめる。
「さ、そのペンキを君の仲間のところへ」
「ありがとうございます」
 ヴェルはぺこりと頭を下げる。それからちょっとためらって、言った。
「あの、ボク、劇団のお手伝いをしている者なんですが、あの、お時間があれば……」
 ミセナは聞いて破顔する。
「良いね、じゃあこれから見に行くよ」
 ヴェルも笑って、
「では、案内します」
 と言った。それから二人は街路に出た。とりとめのない話をしながら、二人は中央広場へ向かって歩いていく。歩きながら、不意に、ヴェルの視線がミセナの花飾りに止まった。
「あの、それ」
「ああ、これはある友人から貰ったものだよ」とこう言ってから、ミセナの視線はヴェルの胸元へ移る。その胸を飾っている花は、自分の花飾りの花と同じである。
「えへへ、変な偶然があるものですね」とヴェル。「実はボクも、ある人にその花を贈ったことがあるんですよ」
「では、僕はその人から貰ったのかも」
 ありそうもないことだと思いつつ、二人は笑った。

 さて『その人』はどうしていたかと言えば、芝居の前口上を熱心に聞き入っていた。舞台にかかることになっていたのは四代目勇者の物語で、実のところ王都に住んでいるような人たちには少々飽きられた題目ではあったが、プルにとっては初めての観劇である。口上が終わって、役者たちが開幕の準備をあたふたと進める様子すら、彼にとっては新鮮で面白いものだった。
 何しろ20スポアも払ったのである。何から何までしっかりと見届けなくてはならない。
 プルはそう決意していて、わき目も振らずに舞台を、まだ演劇の始まっていない舞台を眺めていた。
「ごめんなさい、遅れました!」
「あ、ヴェル、お疲れ。みんな、ペンキ届いたよ~!」
 会話の中にヴェル、という名前を聞いて、プルが初めて舞台の横を見ると、そこにいたのは見まがいもしない、あのヴェルティナである。そしてその隣を見てまたはっと驚いた。目の色こそ変えているが、ヴェルの隣に立っている少女はどうもミセナ・クロカータのようではないか。
 間もなく二人のほうでもこちらに気づいた。
「お久しぶりです、プルさん!」
「よく会うじゃないか、プルアロータス!」
 同時に声をかけると、あれれ、といった感じで、二人の少女は顔を見合わせる。プルもまさかこの二人がセットで出てくるとは思いもよらないので、言葉を発しかねている。
「いや、なんとまあ、しかし、……世界は狭いな!」ようやくミセナがそう言うと、三人はなにやら急に可笑しくなってきて、腹を抱えて笑った。ひとしきり笑ってから、ヴェルはこれまでの経緯や、ミセナに助けられたことなどを説明する。
「それで、画材屋さんで、変な女の子にからまれて」
「変な女の子?」
「ほら、港で会った、あの高慢ちきな魔法使いの」
 ミセナが悪意を込めて言う。プルはこの罵詈が少しだけ心に引っかかった。そんな悪い子じゃないような気がするけど、とそう感じた。確かに自分も、あの少女の被害を被ったわけだけれども。
 ヴェルが座長に呼ばれた。「はい」と返事して、「ではごゆっくり」とプルたちに挨拶して、それから背中を向けた。去り際に、またあの可愛い笑顔を残して。
 その笑顔に、プルは思わず陶然となった。プルの様子を脇から覗き見て、ミセナは「ほうほう、ふむふむ」とつぶやき、にやにやと笑った。
「え? 何、何がおかしいの?」
「いや、君は、ひょっとして、……ふふふ」
「ヴェル、なんかおかしなこと言ってた?」
「うん、ヴェルか、うん、ふふっ……、うん……、そうだな、ヴェルを泣かせたら、僕が承知しないぞ」
 突然指をさされて、プルは頭の上にクエスチョン・マークを載せた。ミセナのにやにやは収まらない。
「ふふ……そう、そうか。ふむ、ふむ、ふふふふふ」
 ……オヤジ臭いぞ、ミセナ。

 そうこうしているうちに、序幕が終わった。次に幕が開けばいよいよ四代目勇者・ルシダムの登場である。幕の後ろでは準備の音がかすかに聞こえる。と思っていると、突然「ガシャン!」という大きな音が響いた。幕の後ろがあわただしくなっているのが客席からも分かる。やがてヴェルが出てきてぺこりと頭を下げ、「もうじき第一幕の開幕です。しばらくお待ちください」と言ったきり、舞台袖へ向かって行った。プルとミセナが顔を見合わせる。他の観客も怪訝な顔をしている。ついでに言えば上空でも二人の魔衆が首をかしげている。
 二人? そう、一人は中で何が起きたか気づいていた。百里を見渡す単眼を持つ、瞬剣のファリンである。
「勇者ルシダムが」ファリンが言った。「つまり主演俳優が、作業中に脚立から落ちて脚を折ったようだ」
 聞いて、ラルガとグラシリスは失笑を禁じえなかった。
 だが劇団にとっては笑うどころではない。と言うより、もはや笑うしかないような状況ですらあるが、笑ったら負けである。代役を立てねばならない――が、勇者以外にも外せない役は沢山ある。役者の誰かが代わりをすることはできない。
「よし、決めたで」座長が言った。「ヴェル」
「はい?」
「君の友達の男の子。呼んできてぇな」
 で。
「えーと、なんでこんなことになってしまったのかな?」
 と言うわけで、気づいたときプルは、剣と盾を持ち鎧を着てマントを羽織り、舞台中央に立っていたのである。まだ幕は開いていない。貴族の衣装をまとった座長と、何やら色っぽい衣装のヴェルが脇に来て事情を告げた。「主演の俳優が怪我しはってん」「代役をやれる人もおらんから」「君に勇者の役をお願いすることにしたんよ。あ、ちゃんと報酬は渡すから安心してな」。ヴェルの「演技は全部アドリブでいいです。みんなでフォローしますから!」という言葉を最後に二人が舞台脇に下がっていく。プルの心の準備ができないうちに、幕はおもむろに開いた。
 舞台中央に剣と盾を手にした勇者が、つまりプルが立っている。観客が喝采する。ミセナと上空の三魔衆が呆気に取られる。プルの隣に立っていた、赤頭巾の少女が語り始める。
「ああ、ついに聖魔剣を取り返すときが来ました! 魔衆の暴虐におおわれたこの世界の、闇を切り払うときが来たのです! おお勇者! どうぞ我らの先に立ち、我らを守り、我らに道をお示しください!」
 少女が黙る。プルは自分の台詞であることを悟る。慌てて言葉をひねり出す。
「僕などに、勇者たる力があるのでしょうか」
 ――よし無難な台詞だぞ。とプルは少し安心する。
「聖魔剣に選ばれしことこそ、勇者たる証明。先の勇者・ルブリカさまも、力こそ初代や先々代に劣っていたものの、それを補う心を、世界を巣食う(発音が同じであるため、彼女がこの意味で「すくう」と言ったことに誰も気づかなかった)愛をお持ちでございました」
「ならば、僕は恐怖を払い、悲しみを振り捨て、苦悩を断ち切り、勇者として戦うことを誓いましょう」
 そう言って、プルは剣を掲げる。観客から喝采が沸く。
「ほう」グラシリスがつぶやいた。「思いのほか上手いではないか」
「それでこそ勇者様。我らをお導きになられる方。――私はアルミラと申します。魔衆を倒し、平和を得るそのときまで、あなたの側を離れず戦います」
「ではアルミラさん、僕が勇者として、最初にすべきことはなんだろう」
「魔衆に奪われた聖魔剣を、あのリシーサを取り戻すことです。たとい勇者様の剣技を以ってしても、聖魔剣なくしては、魔衆を打ち倒すことはかないません」
 とこのような調子で第一幕は終わり、ルシダムとアルミラは聖魔剣奪還を目指して旅に出た。「細かい演技にはやはりあらがあるが、台詞回しはなかなかうまい。素人にしては上出来だ」とは、グラシリスの寸評である。「魔衆一のかっこつけと対面してるからじゃねーの?」とラルガが茶化す。
 上手くいってほっとする間もなく、第二幕がスタートする。聖魔剣を追って小さな山村を訪れたルシダムとアルミラは、土地の貴族の歓待を受ける(彼が出て来て、「遠路はるばる、よう来はりましたな」と喋ったところで思わぬ爆笑が起こった。その貴族らしからぬなまりのためであるが、さすがは団長、その苦笑を諸共せずに全ての台詞を言い切り、再び場内を鎮めた)。魔衆が聖魔剣を隠したという場所をこの貴族から聞いたルシダムは、彼の案内で剣の隠し場所へ向かう。ところが、この貴族は魔衆に買収されていた。人里離れた山村で、二人は狼人間に囲まれてしまう。
「ひっかかりましたね、勇者! 私は魔衆の副官、黒魔術師セレフォーラです」と、けばけばしい衣装の魔女が呼ばわる。
「驚いたな、あの娘がセレフォーラの姐さんを演(や)ってるぜ」とラルガ。
「くっ、これは罠か!」とアルミラ役の少女。
「ふふふ、自らの愚かしさを呪って、地獄へ堕ちなさい。……私の可愛いペットたちの、お食事の時間ですわ!」
 ヴェルティナが手を挙げると、勇者たちの周りを囲んでいた狼男どもが一斉に咆哮を上げ、跳びかかってきた。
 ――えーと、シャンプは、確か、こう構えてた。
 プルはアルミラ役の少女と背中合わせに立ち、シャンプの戦い方を頭において、剣を構え、襲いくる連中を斬り払い、突き倒し、打ち捨てた。
「武術としてちゃんと見れば隙だらけだけど」とファリン。「演技としてはまあ、見られるレベルになってるわね」
 多勢に無勢である。しかし意外と様になっているプルのみようみまね剣は、次々に狼男役の連中を倒していく。
「ここ、やられるとこだよ!」
 アルミラ役の少女はそう耳打ちすると、悲鳴を上げて倒れた。プルは彼女の言葉を聞いて、しばらく戦ってから、同じように倒れた。
「やられ方は演技のレベルじゃねえな」とラルガ。「まあ、慣れてるからだろうが」
「慣れたくない事柄ね」とファリン。
 慣れかけているグラシリスはぎくりとしたが、それを余所に演技は続く。
 プルがふらつきながら立ち上がる。アルミラ役の少女の指示である。これを見て、ヴェルが言う。
「あらご立派ですこと。もう戦う力もないのに、立ち上がっては見せるのですね。――では、それに免じて、あなたに生き残るチャンスを差し上げましょう」
 プルの足元に、ヴェルが剣を投げる。聖魔剣ではない。
「その剣で、あなたの仲間を刺しなさい」
「そんなこと……!」
「できないと? では、もう一つ選択肢を差し上げましょう」
 ヴェルは今度は、隣にいる貴族を、あの裏切り者を指し示す。
「この男を斬りなさい」
「そっ、そんな――!」と貴族を演じる座長が悲鳴を上げる。(今度はなまらなかった)
「うるさいですわ。私、見苦しい人は嫌いですの。それに、頼みの勇者を敵に売るような者を味方にしても、また裏切るに決まっていますものね。――ね、勇者。この男なら惜しくはないでしょう。私、勇者が”人間”を、守るべき”人間”を斬るところが見たいのですわ。悪い取引じゃないと思わなくって?」
「はまってるわね」とファリン。
「はまりまくってるな」とラルガ。「あのガキのルシダムにも驚いたが、あの娘のセレフォーラがこんなにはまり役とは思わなかった」
 プルは答えなければならない。どう答えたものか?
 ――シャンプならどうするだろう。
 いや、だめだ。シャンプがこんな状況に追い込まれた場面など、とても想像がつかない。それなら。
 ――トリューなら、どうする?
 プルはとりあえず剣を拾って、ヴェルと座長のところへ歩いていく。実はここで助っ人が登場する筋書きだったので、アルミラ役の少女がプルのマントを引っ張るが、プルは気づかない。プルはそのまま、へたり込んでいる座長の首筋に剣を向ける。
「賢明ですこと。そのままさくっとやってくださいな」
 プルが眼を閉じる。深呼吸を二つ、三つ。観客が静まり返る。やるのか、やらないのか。
 ――セレフォーラは。
 突然勇者が振り向いて攻撃してくることなど、予想しているだろう。振り向けば、すぐに対応してくるに違いない。そして、それに対抗する体力は、自分には残っていないのだ。
 すっと息を吸う。
「うあああああっ!」
 プルは一声上げると、振り返りもせず後ろ向きのまま、全体重をかけてセレフォーラにもたれかかった。この奇襲を予想していなかったセレフォーラは対応できずに押し倒される。彼女の襟首を掴んで、プルが体勢を立て直す。目の前すぐにあったのは、当然、ヴェルの顔である。少しだけ赤面。
「負けてください」
 ヴェルがプルの耳にこっそり言葉を入れる。プルはそれを聞いて、しばらくもみあった後、跳ね返されて転がる。
「いきなり女性を押し倒すなんて、野蛮な勇者さまですこと。さっきも言いましたよね、私、見苦しいのは嫌いです。――見るに堪えない勇者。消えていただきましょう……」
「消えるのはそなただ:セレフォーラ」
 白い服をまとった女が舞台に登場する。大賢者エメティカである。
 結局セレフォーラはエメティカに退けられるが、聖魔剣は持ち逃げする。ルシダムとアルミラはエメティカに助け出され、聖魔剣の秘密を聞いたところで、第二幕は終わる。
「本日はエリン・ギー一座の公演をご覧いただき、誠にありがとうございます。第三幕は明日午前十一時から開幕の予定です……」
 すでに夕刻となっていた。空は青から赤へ、そして濃紺へと変化していた。あとしばらくの時間が経てば、濃紺は漆黒となり、銀色の月が上るであろう。
「勇者さま、おつ。なかなかの演技だったよ~」
 アルミラ役の少女がプルに声をかけ、控え室に入っていく。入れ違いに着替えを終えたヴェルが出てくる。
「お疲れ様でした、プルさん。迷惑でしたか?」
「いやいやとんでもない。俺も楽しませてもらったよ」
 談笑しながら舞台を降りると、客席にはミセナと数人の客が残っているのみであった。
「やあ勇者」
「勇者言うな」
「いや上手い演技だったじゃないか。魔衆の副官どのもそうは思わないか?」
 ヴェルが口を開くより早く、プルが口を挟む。
「いや、ヴェルのほうが上手いって」
「それは認める」とミセナも乗っかる。
「いえ、その」とヴェルはにやにやと笑って、言った。「昼間のあの人、ほら、画材屋の。あの人を思い浮かべて、演技してました」
「なるほど」と二人が声をそろえる。
「プルアロータス、君はどうしたんだ?」
「うん、俺もまあ、ヴェルと似たようなものかな」
「勇者みたいな人を知ってるんですか?」
 ――いや、勇者を知ってるんだけど。
 プルが曖昧な表情をしていると、ミセナは口を抑えてくくく、と笑い、席を立った。
「さて、食事に行こうと思うけど、一緒にどうだ?」
「行くよ」
「行きます」
 プルとヴェルは二つ返事で承知する。
 ――本日の戦果。プルアロータスが特殊能力『演技』『はったり』『見よう見まね剣技』を習得。

「思ったより良い劇だったじゃねえの」とラルガが言った。
「ふん、君に演劇の良し悪しが分かるのかい?」とグラシリス。
「そいつはどういう意味だ、コラ」
「君が芸術を理解できるとは思ってなかったってことさ」
「殺すぞ」
「よしなよ」とファリンが間に入る。「しかし、確かにあの子、勇者の演技は、結構さまになってたわね。セレフォーラさんもはまり役だったし。――でもそれだけに残念だわ」
「何が?」とラルガが聞く。
「続きを見られないことが、だろう?」とグラシリス。
 ファリンはこくりとうなずいた。
「――あの娘が動いたわ」
「飯でも食いに行くんだろうよ」
「そうだろうけど、なんであの連中はつけていかないの?」
 三人は顔を見合わせる。
「――へへへ」ラルガが笑った。悪意をこめた笑いではない。本当に嬉しくて笑ったのである。「連中が動かねえなら、俺らの出番だ。まずは一つ、あの娘どもを追いかけようぜ」

    ◆おまけ

 アルミラ役とエメティカ役の二人の少女だけが、一座の控え室に残っていた。
「だって、ねえ」とアルミラが言う。「コッチの目的は、ヴェルちゃんじゃないもんね☆」
「声量やや大」とエメティカ。「外に漏れる危険有り」
「分かってるったら」
「――魔王ミセナに若干の注意を要す」
「あー大丈夫、向こうは気づいてないから♪ どうせ空の上の三羽鳩と噛み合ってやられちゃうよ」
「違。三羽鴉。なおファリンら三名が魔王ミセナの反撃により撃退される確率は14.7%と判断、無視できない数値」
「細かいことは気にしない。あんな連中どーでもいいっしょ」
「ミセナの能力、我々の前にはさしたる脅威とならないといえども、魔衆の者たちを脅かすには足る。計画の妨げとなる可能性有り」
「うむ、むー」
「排除の手を打つべき」
「む、むー……む、むふふ――良いこと思いついちゃった♪」
 アルミラがエメティカの耳にぼそぼそと。
「――悪趣味とはいえ良策と判断」
「じゃあもう動こうよ。ヴェルちゃんやお空の魔王さまなんかより、もっと大きな相手のところへ」
「異議なし」
 彼女たちこそあの『魔の寵愛』、ルブロ・ヴォルヴァタであることを知っているのは、上空の三魔衆だけである。

    ◆おまけ2

「どこをほっつき歩いてるんだ、プルは」
 プルアロータスが宿に帰っていないと聞き、トリュフォーは思わず声を立てた。
「――変な場所にひっかかったり、金をぼられたりしてなきゃいいがな」
 探すともなく、なんともなしに街へ出てみる。すっかり暗くなった。夜の王都はそれほど安全な街ではない。まして田舎者のプルが危ない場所へ足を踏み入れない保証があるものか。トリュフォーは目を転じる。大柄な三人の男の背中が見える。知った男たちである。料理屋の並ぶ界隈へ足を向けているから、食事をしようというのだろう。
「――あの連中、また王宮を抜け出て遊び歩いてやがる。深刻な会議のあとによくそんな気になれるもんだ。フラムルが見たらぶちきれるだろうな。――王都に慣れてる分、プルより余計にタチが悪いぜ。料理なんざ美味いものを食い飽きてるだろうに」
 誰か知らん、この三人は国に知られた男たちであることを。一人は騎士団第二隊長のエオルス・リオナシュー、一人は宰相府秘書官フラヴィダム・ルベルケンス、そして一人は、――誰がそう思うだろう、オニド・M・マッタンゴー国王その人である。

  30(バーネット)
「おいしかったですね」
「ああ、悪くなかった」
「値段もそんなに高くなかったしね」
「なんだ、財布の中身を気にするぐらいなら素直に奢られていればいいのに」
「そうもいかないって」
 食事をしようと街に出たのはいいものの、三人とも王都に不慣れでありどの店に入ったらいいかが分からず、結局ヴェルティナが劇団員から聞いたことがある店に入ることとなった。話に出るだけのことはあって味のほうは上々で、楽しく食事することが出来た。――ヴェルティナがこれ美味しそうですね、と言ってメニューの中の鳥料理を指差したときには慌てて別の料理を勧めたりしたが。最後に食事代をどうするかでちょっともめたが――三人とも自分が奢ると言い張ったのだ――割り勘にしようということで落ち着いた。
 そして三人は今、街灯に照らされた通りを歩いていた。
 流石は王都というべきか、今まで見てきた場所とは比べ物にならないような人数が歩いている。ひょっとしたらこの通りにいる人だけでランプテロミス村の人口より多いかもしれない。見たことの無い規模の人だかりを見回しながらプルはそんなことを考えていた。ミセナも同じようなことを考えていたようだ。
「しかしたいした数だな。どこにこれだけ住んでるんだが」
「出稼ぎに来てる人もいるみたいです。そういう人たちのための施設もあるみたいですよ」
「なるほど」
「ここにはいろんな人がいるんです――」
「はーっはっはっはっは。楽しいおしゃべりはそこまでだぞ、諸君。ここからはこの美形魔剣士グラシリスの独壇場だ。さあ! この私の活躍をその目に焼き付けるがよい!」
 突如声が割り込んできた。しかも頭上から。三人――のみならず通りにいた全員が声のほうを見上げた。そこにはすでにおなじみの魔剣士の姿が。
「――……いろんな人が」
「いや、あれは違うと思うんだけど……」
「なんだ貴様らその冷たい反応は! そーか、人目が多いからだな! この恥ずかしがりやどもめ! しかーし! たとえ衆人環視の下であろうともこのグラシリスの美麗さは全くもって損なわれぬぞ! いや、むしろ観客が多いほどより美しく戦うことが出来るのだ! よってその反応に意義を申し立てるって言うかなんつーかこう盛り上がりが足りんのだ盛り上がりが!」
 喚きながら屋根の上、漆黒の馬に乗ったグラシリスは剣を抜き放った。ミセナがそちらへ向き直り、弓を手に持ち戦闘体制に移行する。
「……二人とも下がっていてくれ。こんなのでも一応魔衆だからな」
「あら、その必要はないわ。だって囲まれてるんだもの」
「そういうことだ」
 さらに二つ、別の声が降ってくる。一つは羽音とともに、もう一つは轟音とともに三人を囲むようにやはり屋根に降り立つ。それを見た通行人たちがようやく事態の異常さに気付き、我先にと逃げ出していく。
「さて、どうする。三対一だぞ、碧空の魔王」
「こちらとしてはことを荒立てるつもりはないんだけどね」
「何をいまさら!」
「ま、そうくるだろうね。ついでに一応言っとくけど、私たちの目的はそこのハーフのお嬢さんであってあんたたち二人には用はないのよね。だからさ、抵抗しないで素直に渡してくれない? 無駄な争いはしたくないのよ」
「えっ!? ボク!?」
「どうしてヴェルを!?」
「あー、その辺は面倒だから省略。ともかく、抵抗しないでって話よ」
困惑するプルとヴェルティナの代わりにミセナが気丈に叫ぶ。
「そんなこときけるわけないだろう!」
「やっぱりそうなるわよね……」
「だからさっさとやっちまおうって言ったんだ。そんじゃ、いくぜ!」
「待てラルガ。ここはまず名乗りを上げるのが――」
「私は上で見物させてもらうよ」
「おいファリン! ったくどうしてこう……ええい行くぞ!」
 そう言って先に飛び出したラルガに続きグラシリスも黒馬から飛び降りて格好をつけながら地面に着地する。
 ミセナは少しずつ近づいてくる魔衆二人からプルとヴェルティナを守るようにじりじりと後退していく。
「しかし物好きなやつだな、こんな無力なやつらほっとけばいいのによ。碧空の魔王だったか? お前も俺たちと同じアマニタだろう。だったら魔衆に加わったほうがいろいろといい目が見れるぜ?」
「貴様らなどと、一緒にするなぁ!」
 それが始まりの合図となった。ミセナが弓に矢をつがえ次々と放つ。いくつもの矢が魔衆二人に向かい、その距離を縮めていく。それに対して、ラルガはグラシリスの前へ出て、大剣を高く持ち上げると――
「らあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 咆哮とともに一気に振り下ろした。と、その巨大な刀身から不可視の何かがほとばしり、ミセナの放った矢を弾き飛ばしながら一直線に駆け抜けていく。そしてそのままとっさに避けたミセナの横を通り過ぎ、後ろにあった家の石壁に大穴を空けたのだった。
「くっ、衝撃波か」
「へへへ。どうだ『剛剣』の威力は」
「ミセナ!」
「おお、なんと麗しき友情。しかし君らの相手はこの私だ。余所見は後にしてもらおう」
 駆け寄ろうとしたプルとヴェルティナの前にグラシリスが立ち塞がった。
「しかし少年、君とは随分と縁があるようだ。微妙に近親感がわかないでもないが、悲しいかな私と君は敵同士。とっとと地に伏してもらおうか」
「わーー!?」
「プルさん、危ない!」
 ヴェルティナがプルを突き飛ばす。倒れたプルの上でグラシリスの剣が空を切る。そのまま立っていたらばっさりやられていただろう。
「ふむ、いい判断だお嬢さん。しかし、君の騎士ではどうやら力不足のようだ。というわけでおとなしく付いてきてもらおうか」
倒れたままのプルを横目にグラシリスはヴェルティナに剣を向けてそう告げる。それに対してヴェルティナは――
「嫌です!!」
 と叫ぶと、グラシリスに向かって思いのほか鋭い蹴りを放った。油断していたのかあるいは本調子でなかったのか、グラシリスはその蹴りをもろに受けて吹き飛び、そのまま地面に倒れ付す。突き倒された格好のままプルが呟く。
「……ヴェルってひょっとして結構強い?」
「え? そんなことないと思いますけど……」
「ぬう、やるなお嬢さん」
「うわ!?」
 倒れていたグラシリスがむっくりと起き上がる。しかしどうも先ほどとは様子が違うようだった。それに先ほどから何度も響いている破砕音――ミセナとラルガの戦いが続いているのだろう――の中にバチバチという新しい音が聞こえてきていた。
「どうやら甘く見ていたようだ。それは詫びるとしよう。だが! この究極魔剣士グラシリスの力はこの程度ではないぞ」
 そう言うとグラシリスはヴェルティナに剣を向けた。どこかで見たことのある光景だとプルは思った。どこで見ただろうかと考えて、プルがその答えにたどり着くのとグラシリスの剣先に雷光球が出現するのとはほぼ同時だった。反射的にプルはヴェルティナとグラシリスの間に飛び込んだ。そして――
「ふはははは! 喰らえー!」
「うわあぁぁぁぁぁぁ!!」
「プルさん!? 大丈夫ですか!?」
 プルはヴェルティナをかばって雷光球の直撃を受け、ばたりと倒れた。ヴェルティナが慌てて駆け寄る。これを受けるのは二回目なプルだったが今回は何とか意識を保っており、何とか立ち上がることができた。自分の成長をちょっとだけ実感したプルだった。実はあまり嬉しいことではない気がしたが、とりあえず今はありがたかった。
「うむ、素晴らしいぞ少年。身を挺して女性を守るとはまさに騎士の鑑! その自己犠牲の精神は我が同志たちにも見習ってもらいたいものだ。本当に全くもって美しい。このグラシリス、不覚にも情けをかけたいとすら思ってしまったよ。だが、こちらも任務なのだ。命が惜しければそこを退きたまえ」
 プルは無言のままそこに立っていた。どうにかなる見込みが全くないのが分かっていても、それでもそこに立っていた。体中が痛みでおかしくなっている。ヴェルティナが何か言っているような気がしたがよく聞こえなかった。グラシリスの剣先に再び光が現れ――
「たいした根性だ。しかし惜しいな、本当に惜しい。だが、君がそこを退かないのであれば仕方がない。これが最後げふぁ!?」
 グラシリスは突如現れた人影の拳によって先ほどヴェルティナに蹴られたときの倍近い速度で吹っ飛んで行き、壁に思いっきり激突した。人影はというと振るった拳を収めるとプルとのほうを見た。そして――
「よい心がけだ。男児たるものやはりそうでなければ」
そう言って拳の主――何だか威圧感のある偉そうなおっさんは大きく破顔したのだった。


31 皆既日食

「キキキキキキキ貴様ああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
もうすでに半分壊れかけた(いろんな意味で)グラシリスが叫ぶ。
「この世紀末の超絶美形魔剣士グラシリスの華のかんばせに手を挙げるとは何事かあああああああああ!」
「先ほども蹴られていたように見えるが」
傍観を決め込んでいたファリンがぼそりとつぶやいた。
「適齢期のお嬢さんならば許す!騎士としてな!!」
「そーか。好きにしてくれ」
軽くグラシリスにあきれながらも、ファリンの目は新たに出てきた人物から離れはしない。いかに不調とはいえ<魔剣>グラシリスを殴り飛ばした人物である。彼が弱いのは女性に対してのみ――決して甘く見ることなどできない。
「よくも父上にすらぶたれたことのない私の顔を殴ってくれたな・・・高くつくぞ」
グラシリスの構えた剣に、巻きつく蛇のような紫電が駆ける。
「たわけ。殴られずに一人前になれた者などおらぬ」
「だから先ほども蹴られ――」
「ファリン!貴女はしばらく黙っていてくれたまえ!」
「女性に八つ当たりとは・・・男らしくないな、おぬしは」
ギリギリギリ。
グラシリスの歯軋りが響いた。うわあこの人本気で切れたよどうしよう・・・今のプルにもはっきり聞き取れたのだからかなりやばい。
「どこの誰だか知らないが、よほど死にたいようだなキミは」
瞳を紅く輝かせながら、剣を大上段に構えなおす。
「我が手に宿り、我が命に従い、我が力となる魔剣<気高きルイーダ>よ・・・・我が呼びかけに応え、その魔性を顕現せしめよ!」
突如空より轟音を伴いながら稲妻が魔剣に走る。
そしてその稲妻は、閃光を散らして消えることなく、そのまま――天地を貫いたまま、一振りの刃と化した。
「いかに堅固な城もたやすく落とす真なる姿の<気高きルイ―ダ>」
凄絶な笑みを浮かべてその二つ名の由来となる剣を掲げるグラシリス。
「跡形もなく滅びたまえ!」


<藤枝りあん>

穂永氏え

何かもういろいろと大変なようなそうじゃないような感じで書ききれなかったので次は新しく挙げといてくださいませ。二回目。懲りません。反省しても実行しません。そんな生命体です。ぷ~

話の筋としましては、
グラシリスがやられて、エリン・ギー劇団が加勢したことによって魔衆が一時撤退をして、実は例の偉そうなおっさんが『ルベスケンス騎士団長』だったと判明して、んでもって王様はというと部下(フラヴィダムを含む)と一緒に密談めいたことをしようとしたところをトリュフォーに止められ、プルが宿に戻ったら勝手にぶらぶらしていたルスラとシャンプが近日中にお祭りがあるからぜひ行きたいと叫びまわってて、戻って来たトリュフォーに明日あたりにちょっと出かけるから準備しとけと言われてお仕舞いッス。

なんで、遂にトリュフォーさんとお別れの時が近付いておりますね。(唐突)
トリュフォーさんの目的は、王の密命により、聖魔剣(ちなみに勇者は想定外)を王都へ持って来ることだからですよ~。ちなみに王様は、表面上はいい人なんですが、非常に野心が高く、凶暴で自己中心的で他者の命を駒のようにしか思わない冷酷な一面を持っております。が、一部の人を除いて気付いていない模様。トリュフォーさんも気付いていません。ダーマさんあたりは知ってる。レジスタンス(トロイの木馬役)だからね。
つまり、王様は表向き、聖魔剣は世の平和のため、と言っておりますが、本心はといえば、世界を自分のものにしたい、という限りない欲望のために使おうとしておる模様ですわ。そこへかねてから機会をうかがっていたレジスタンスが攻め込んできたり、魔衆が来たり(魔衆は一応、王様側ということになっている。もちろん、双方に力を貸し与え、戦い合うようにしている可能性も大きい)、ハーフやアマニタの集まりであるエリン・ギー劇団が大変な目にあったり加勢したり、ミセナとヴェルが腹黒ルブロの計略によって戦う羽目になったり、実は騎士団であるトリュフォーさんが戦おうとしたら何かしらの陰謀に巻き込まれたり、何も知らないプルたちが無駄に併走したり、ルブロとヴォルヴァがかなり怪しい動きを見せたり、最終的には王様があんなことになっちゃってそいでもってハチャメチャなことになってしまって、SAD END への分岐点が出てくるところまで行ってしまうんですな。まーこのあたりは自分が〆たいなーなんて思ってますが、まだまだ先は長いですわ。
とりあえず、王都市街戦の前に、
     祭り!
これは外せませんな。ヒロインとの好感度とかサブイベントとかミニゲームとかが目白押しですよ。ここから SAD END になると悔しいですよね~。あは~

で、長々書いとりますが、次回は、

> Meets 王様!

さらには

> 潜入! 男の園!!(騎士団のこと)

となりますでしょうな。
ちなみに、ここでようやくトリュフォーさんが騎士団で『黒曜の騎士』(もしくは『アニキ』)と呼ばれるほどの実力者かつ人気者の騎士だということを知り、そのまま二度と仲間には戻らずお別れになってしまうのあります。そんな彼をまた仲間にするためには、かなり後になってからの特殊イベントバトルをある条件をクリアして勝利(?)することが必須ッス。

最期に言い訳させてもらいますと、このお話は『ゲームの小説化』を狙った構想となっているのでこんな妙なことになるんですな。
実を言うと、まじめに製作中なんで。マジ。
・・・だから忙しくって書き終わらなかった、なんて・・・駄目? ですよ、ねぇ~。すみません。
次回よろしく。
(すでにリレーじゃないってことはわかっとります。物語も中盤だし、ここから先暫くはRが決めたあらすじに添う形にならざるを得ないんですよねい。本気でごめんなさい。埋まってきます)

    ◆33(穂永)

 我らの愉快な魔衆三人組は、それぞれ異獣にまたがって、妖魔城へ向かって飛んでいた。互いに一言も言葉をかわさない。一人は淡々たる表情、一人は意気消沈、一人はあからさまに憤怒を振りまいている。到着し、騎獣を下り、玉座の間へと進み出た。
 まさにレイスが口を開こうとしたとき、それをさせずにグラシリスが進み出て、頭を地面に何度も打ち付け、叫んだ。
「重ね重ねの失態、お詫びのしようもございません……!」
「……その通りだ」
 グラシリスは顔を少し上げ、ちらとレイスの表情を窺う。珍しく険しい表情である。恐れをなして、あわててまた平伏した。
「ファリンの機転のおかげでこうして全員無事で帰ってこられたが、下手をすれば死者か捕虜を出していたかもしれない。……本当のところ、ミセナが出てきたところで君たちは撤退すべきだった。まして、あのルベスケンス騎士団長が相手では、満身創痍の君に勝ち目があったと思うのかい? 君は『無理をするな』という僕の戒めを忘れたのか?」
「身の程を知れということでございますか……!」
「そうだ」
 グラシリスは恐縮するばかりである。たまりかねて、ファリンが進み出た。
「レイス様、そのお言葉はあまりです」
「ああ、自分でもひどいことを言っていると思うよ。でも言っておかなきゃならない。不可能を可能に変えるなんて、言うは易いが行うは難い。かなわなければ退かなければならない。自分ためにも、仲間の命のためにもね。そして安全に逃げ切るためには、退却の期を誤ってはならない。退却の期を誤らないためには、自らの力を熟知することが不可欠だ」レイスはここまで言って、声を和らげた。「さあグラス、分かったら下がって休みたまえ。次の戦いのためにね。期待している」
「はっ……」
 応じてしずしずとグラシリスが引き下がる。
 ――彼は熱くなるとすぐ猪突するのが玉に瑕だったが、今回のことで、少しは自重するようになるだろう。
「さてラルガ、君についてだが――」
「恐れながら叱責は見当違いと思いますがね。これ(とファリンを指して)が止めなければ、さっさと敵を倒してくることができた――」
 レイスは苦笑して、
「いや今回のことは、君には何も言うつもりはないよ。ただ別にやってもらいたいことがあるだけだ」
「伺いましょう」
「ティロピラス公爵のもとに部下を連れて赴き、彼の謀反を支援してやってほしい」
 ラルガの顔がぱっと明るくなる。レイスは追い討つ。
「ほら、ミセナみたいな人物の変則的な戦いに応じるより、強敵ルベスケンスと真っ向から打ち合うほうが君の好みに合致するだろう。まあミセナだろうがルベスケンスだろうが、君の相手にはならないだろうが」
「さすがはレイス様、俺のことを良くご存知だ。明日にでも早速発つとしましょう」
 グラシリスとは対照的に、胸を張ってラルガが出て行く。
 ――彼は戻ってこないかもしれないな。戦えるなら僕のところでも公爵のところでもかまわないだろうから。
 さてレイスは残った一人に顔を向け、微笑して言った。
「……ファリン、疲れたろう」
 ファリンも少し苦笑して応じる。
「ええ、精神的に」
「どうもこの魔衆という組織の中じゃ、君や僕のような常識人は肩身の狭い思いをするのが運命らしいよ。――ところで、どうやってグラスを救出しラルガを止めたのか具体的に教えてくれないか。僕の遠視魔法では、そこまではっきりと見定められなくてね」
「いささか自慢するようなふうになりますが、ご命令とあらばお話ししましょう。私が戦いの様子を見てますと、一人の騎士が話し掛けてきました。私はその風采から、騎士団第二隊長エオルス・リオナシューであろうと判断しました」
「『藍水の騎士』だね」
「私も適当に彼に応答していたのですが、グラシリスがルベスケンスに倒されたので、ただちに彼を人質とし、これと交換にグラシリスを解放するよう要求しました」
「ほう、エオルスを一撃で捕えたのかい? 一撃必殺とは、まさに瞬剣士の面目躍如だ」
「いえ彼は強敵でしたよ。一剣のうちの三番目の布石まで使わなければなりませんでしたから。……グラシリスについてはそういうことです。ラルガは止めても止まりそうにありませんでしたから、邪視の魔道を使って無理矢理止め、彼の魔獣に運ばせました」
「それで彼はあれほど機嫌が悪かったわけか。――君の状況判断は見事だったな。グラスとラルガが無事に帰ってこれたのは君のおかげだ。礼を言おう」
「役目を果たせなかった者にもったいないお言葉です。――ほかに用件がなければ、これで失礼させていただきますが」
「ああ、ゆっくりと休みたまえ」
 くるりと後ろを向いてファリンが去っていく。その背中にレイスは思い出したように声をかけた。
「そういえば、エオルスと何を話したか聞いてもいいかい?」
 ファリンはふり返って、きょとんとして答えた。
「はあ、まあ、気持ち良い風だとか、月はないけど良い夜だとか、大して意味もなさそうなことを言われましたが」
「そりゃ君、口説かれてたんだろう」
 はっと少し顔を赤くして応じる。
「そうかもしれませんが、しかし私は、あのような軽薄な男は好みではありません」
「だろうね。つまらないことで呼び止めてすまなかったな」
 改めて彼女の背中を見送りながら、レイスはかなたの王都に、懐かしいあの都に思いを馳せていた。他所よりも時間が速く流れるという、あの移ろいやすい町へ。
 ――さて。レイスは思う。次はあの町は、どう変わるかな?

    ◆

 王都北部、占天塔。
 王国の占天官セファラスは、窓の外の星空を眺めてつぶやいた。
「――北東に兵厄の兆しがあり、南に繚乱の兆しが出ている。そして星の配列は、偉大な人物の死を示している――」そして、客の男に向かって言った。「大変な内乱が起きるよ。王国がひっくり返るような。そしてその乱で、誰かが死ぬ。この大陸全てに影響を及ぼすような誰かが――」
 魔王ファエルは答えた。
「星の奏でる前奏曲が導くのは、狂気と殺意に満ちた死の舞踏というわけか。してその調べは、かつての魔神の叙事詩にひき比べ、いずれが壮大なのだろうかな?」
「間違いなく今回だろう。あれは叙事詩、これは言わば神話の範疇だ。――君はその死の舞踏に加わるつもりなのか?」
「合奏には調和が必要だ。欠けている者があっては完全な演奏とはなるまい。――君はどうする?」
「実はスバエルギナスの一件からひどく老け込んでしまってね。まあ僕は君と違ってハーフ・アマニタなのだから、もう若いとは言えない歳だし。薬や魔法で老化を防いではきたが、そろそろ影響が出ている」
「スバエルギナスに制御不能な魔力強化の魔道をかけたのは、ほかにあの魔神を捕える方法がなかったからだ。君は我々みなに代わって彼を殺し彼の血に汚れたが、君だけが罪の十字架を負うべきではない」
「そんなことを言ってるんじゃないんだよ。いや、それもあるんだけどね――才ある若者と技を競うのは楽しい、だが真剣勝負はもうごめんだ――ただ、もう僕の手に負える状況じゃないと、蜃気楼の森ではっきり分かったんだ。あの謎めいた双子の魔衆、ルブロ・ヴォルヴァタに、手も足も出なかったんだから。……君はなぜ今ごろ、争いに関わろうと思うんだ? 黄昏の空の魔王は中立ではなかったのかな?」
「我と我が友を守るため、剣をとらねばならぬときもある。たとえ血を好まずとも、我が敵たらんと思う者があれば目に物見せるに吝かではない」
「平たく言えば、ミセナ・マトポーダの忘れ形見のためというわけだね。――君の娘になるかもしれなかったから?」
「私はそれほど自惚れてはいないよ。ミセナ・マトポーダは誰にも捕えられなかった、まして私ごときの翼で追いつける存在ではなかったろう。あの忌々しいクロカータだけが彼女を鳥かごに入れることができたが、彼女はそれを破ってはるかな高みへ飛び去ったのだ」
「君が腰を上げたのは、ミセナ・マトポーダをクロカータの奴から守れなかったから、今度こそというわけか? それこそ僕たちみなの責任……」
「それは深読みしすぎだ……魔神と戦った仲間は兄弟同然、ならばミセナ・クロカータは私にとっては姪、姪の身の安全を気遣うのは、伯父として当然のことだ」
 とここで沈黙。セファラスに動く気はなく、ファエルももはやそれは諦めた。ただ意見の一致を見たのは、我らが女主人公の一人である、ミセナ・クロカータの身の上を心配する思いのみである。するとドアをノックして、当のミセナが部屋に入ってきた。
「失礼――なにやら重要な話の途中だったようですが」
「いや、構いませんよ」とセファラス。「何か御用ですか?」
「近々王都で祭りがあるとかで――友人に誘われましたから、見物に行くつもりです。ですのでしばらく留守にします――それだけですが」
「旅路にあって憂いも募っているはず、存分に気晴らしをされるとよいでしょう」とファエル。「ただし、王都に不穏な気配が漂っていますから、充分に注意なさい。できるだけ魔衆とはことを構えぬこと、それでも戦わねばならなくなったら、臨機応変に対処することです」
「忠告感謝します」

    ◆

 翌朝、オニド国王は朝食をとって身支度を整えると、いつものとおり執務室へと入り、宰相府秘書官フラヴィダム・ルベスケンスから、各地より寄せられる定例の報告を聞いた。
「アルボア・ティロピラス公爵に不穏の動きありとのことです」
「またか。あの老人も懲りないことだな。――アルボア爺さんは、本気で余の天下を覆そうなどとは思っておるまい。ただ単に、戦いたいだけのことだろう。一戦交えてからちょっと説得すれば、すぐに降服するであろうよ」
 王はあごに手をやって考え込んだが、すぐに顔を上げて言った。
「あとでインディカム・ルベスケンスと相談しよう。どのみちアルボア爺さんの相手ができるのはそなたの父上だけだろうしな」
「しかし陛下、――個人的な意見ですが、よろしいですか?」
「言ってみるがよい」
「各地でレジスタンスの動きが活発化しており、一部はこの首都に潜んで内乱を起こそうと企んでいるとか。また魔衆出現の報告も相次いでいます。この時期に公爵が謀反とは、いささかタイミングが良すぎはしませんか」
「レジスタンスとアルボア爺さん――公爵が提携していると? だが公爵は、そなたの父インディカム・ルベスケンスや、騎士団副団長コルヌ・ポドストーマとともに、余の尖兵としてメラノスポルムと戦った経歴がある。レジスタンスはメラノスポルムの残党の流れをくんでいるらしいが、それが憎い仇の一人である公爵と、果たして手を結ぶかな?」
「直接手を結んではいないかもしれません。ただ、背後にこの両者を操っている者がいるのかも」
「ふむ。余に取って代わろうと企む諸侯か、それとも魔衆――」
「……ご注意なさいませ」
「うむ……」
「ところで明後日より開催されるヒカリタケ祭りですが、あるいはレジスタンスや公爵は祭りの混乱に乗じるつもりかもしれず、中止されてはいかがと存じますが――」
 王がまさに答えようとしたとき、執務室のドアをノックして、聞き慣れた声が聞こえた。フラムルだ。口やかましいからあまり顔を合わせたくないが、頼りにはなる男である。
「トリュフォー・ルベスケンスが聖魔剣の勇者とともに帰還いたしました。ただちにお会いになりますか?」
 王は大きな声で答えた。
「会おう。――勇者を迎えるとなれば、それなりの礼は尽くさねばなるまい。インディカム、コルヌ、ラクタリウスらを呼び集めよ。余もすぐに参る。勇者の出迎えには、ここにいるフラヴィダムを行かせる」
 ドアの外でフラムルが「かしこまりました」と応じ、その場を去った。王は打って変わった小声でフラヴィダムに耳打ちした。
「レジスタンスの件については後ほど相談しよう。だが祭りは行うぞ。これを中止しては、民が不満を言おう」
 王が退室し、フラヴィダムもそれに続く。執務室の外にある階段のところで分かれ、王は上り、フラヴィダムは下りる。

 プルアロータスはびくびくしていた。トリュフォーに連れてこられたのは、なんと王宮の中だったからだ。その上、兵士や宮女たちが自分たちを遠巻きに眺めてひそひそと囁きあっているに及んでは、心中の不安も洪水のように荒れ狂う。ところがシャンプとルスラはいつもの調子のままで、シャンプは珍しそうにあたりを眺めてはいるが汗の一つもかいていないし、ルスラに至っては例の倣岸な態度をいささかも崩していない。トリュフォーは何も言わないし、聞けそうな雰囲気でもない。
 王宮へ入ってしばらく進むと、一人の若い男が出迎えに現れた。背は低く痩せ型で、目の下にはうっすらと隈が浮かび、やや陰険そうな印象は与えているものの、顔立ちは整っていておおむね美男といって差し支えない。プルは彼の様子を見て密かに安堵した。王宮といえばさぞシャンプやルスラのような人外の化け物どもが巣くう魔窟であろうと思っていたが、出てきたのがどうやらまともそうな――シャンプやトリュフォーよりは自分に近い――青年だったからだ。
 彼がまず口を開いた。
「宰相府秘書官フラヴィダム・ルベスケンスと申します。勇者どの、よくぞ王宮へ参られました」
 この挨拶を受けてプルは困った。
「あー、えっと……」
 ここまで険しい表情を保ってきたトリュフォーも、思わず失笑した。船の上で魔衆の剣士がやったことと同じ失敗を、まさかこの男がするとは。
「くっくっ、フラヴィダムどの、勇者はそっちだ」
 はっとして、しかしさすがに顔を赤らめることもなく、フラヴィダムはシャンプの前に立って頭を下げ、
「失礼、勇者どの、よく王宮へ参られました。王様がお待ちですので、どうぞお進みください。……トリュフォー、君の功績を嬉しく思うよ」
「どうも」とあまり気のない返事をトリュフォーがする。
 フラヴィダムが先に立って一行を案内していく。プルがたまりかねて、トリュフォーに聞く。
「王様って、どういうことなの?」
「黙ってな。すぐに分かる」
「あの人は? トリューと知り合いみたいだけど」
「ありゃ私の兄貴だ」
「俺を馬鹿にしてるでしょ、そんな嘘に騙されるとでも――」
「しっ、到着だぜ」
 城門かとすら見まがう、見たことも無いような巨大な扉の前で、フラヴィダムと一行は立ち止まった。まずフラヴィダムが、中に向かって声をかける。
「陛下、勇者シャンピニオンが参りました」
「通せ!」
 よく響く声が中から聞こえ、大扉が音を立てて開いた。正面にはひげをたくわえた、見るからに威圧感のある、しかしまだ若い人物が座っていた。間違いなくオニド・M・マッタンゴー国王だ。王の左右には文武の官が席順に従って並んでいるが、プルの目には入らない。息を飲んだ。心臓が踊る。がさすがに幾多の冒険をかいくぐってきただけあって、歩けなくなるほど恐ろしくなるということはなかった。フラヴィダムのあとに続いてしずしずと中へ進んでゆく。シャンプとルスラは例によって平然たる様子。
「遠いところをようこそ、勇者よ。余が」王は充分に間を空けて、言った。「国王オニド・M・マッタンゴーである」
 誰も何も言わないので、フラヴィダムが「名前と出身地を言いなさい」とささやいた。
「なに、おらからか?」とシャンプが確かめる。フラヴィダムがうなずいたので、シャンプが言った。「おらの名前はシャンピニオン。出身はレンチヌラ」
「彼が勇者です」とトリュフォーが言った。
「プルアロータスです。出身はランプテロミス」とプルが続く。よどみなく言えたのでほっと一息。
 王が傍らの宰相を見る。宰相は答える。
「ランプテロミス村はムーランからさらに西方にある小村の一つです。レンチヌラという場所は、王国の領土内にはありません」
 王はうなずいて、言った。
「そちらの少女は」
 ルスラが答えた。
「残念ながら王よ、わらわはあなたの問いに対する答えを持っておらぬ。わらわはルスラという名を名乗っておるが、それはこの者たちがくれた名で、わらわの本名ではない。本名は覚えておらぬ。出身地も知らぬ。ただこの者たちについておれば、それを知る手がかりがつかめるやもしれぬと思い、ここまで同行して参った」
「なるほど」と王。「あなたの探求に余の力が役立てばと思う。――さて」
 と王はいずまいを正し、言った。
「すでにそなたたちと近づきになった者もおると思うが、そなたたちの名乗りに応じ、改めて余と余の股肱たる臣下たちを紹介いたそう。先にも言ったが、余がオニド・M・マッタンゴー国王である。そして」
 王は一呼吸置く。
「騎士団団長インディカム・ルベスケンス」声に応じ、武官主席の男が立った。昨晩の魔衆を退けたあの男である。彼はプルに目配せし、目だけで笑って見せた。
「宰相アルベオ・ポリポルス」文官主席の初老の男。先に地名のことで王に答えていた男だ。
「騎士団副団長コルヌ・ポドストーマ」武官次席の男。すでにかなりの高齢と見える。この人物は立ち上がらず、こう言った。「立ち上がって礼ができぬのをお許しあれ」。王が補足した。「彼は若い頃の負傷のため、立つことができぬ。騎士団で軍師を務めてもらっておる」
「魔術師団団長ラクタリウス・ラエティコロラス」
「騎士団第二隊長エオルス・リオナシュー」
「宰相府補佐官サー・スクレロ」次々と紹介が進む。
「騎士団第三隊長フラムル・ヴェルト」
「魔術師団副団長ラテリト・マトローマ」
「騎士団第四隊長ダーマ・スクレロ」これらの人物とは、みなもちろん面識がある。
「宰相府秘書官フラヴィダム・ルベスケンス」ずっと王のほうを向いて立っていたフラヴィダムが、プルやシャンプたちのほうに向き直り、一礼する。
「そして最後に、騎士団第五隊長――」王が言った。プルは不思議に思った。もう紹介の済んでいない人物は残っていないのだ。
 王はその名を呼んだ。
「――トリュフォー・ルベスケンス」
 プルどころはシャンプも、王の言葉の意味が一瞬分からず、目を見開いた。勘のいいルスラだけが、そういうことであったか、と目を細めている。プルとシャンプは目を見合わせて、それからはっと気づいて、トリュフォーを見た。
「悪りぃ、騙してた」
 トリュフォーはそういって笑った。

 食事が運ばれてきた。勇者と王との歴史的会食といったところである。みなが饒舌というわけではなかったが、文官たちはたいてい話術に長けており、プルは彼らとの会話に苦痛を感じないで済んだ。シャンプとルスラについては、これは苦痛などという感覚を持ち合わせない者たちである。ただエオルス一人がぼんやりとしていた。
 トリュフォーがフラムルに「エオルスはどうしたんだ?」と尋ねる。フラムルは「恋の病らしい」と答えた。「なんだそりゃ」「昨晩、街で魔衆の襲撃があったろう。そのとき魔衆の女剣士に恋着したとか。まあこれはもともと惚れっぽい性質だ。すぐに飽きて忘れるだろう」
 会食はそんな調子だったが、みなの胃袋がくちくなった頃――大変な健啖家の集まりであるから、途方も無い量の料理が消費されたわけだが、それはさておき――王が言い出した。
「ときに勇者よ。聖魔剣とやらを余に献上してくれんかね」
 みなが驚いて、一斉に王を見た。
「なに、伝説の剣を是非とも我が腰に佩いてみたいと思っただけのこと。勇者の実力ならば、剣などなくとも大したことはあるまい」
「いんや、どうしてもと言われれば差し上げてもいいけんど」シャンプは応じた。「無理だと思うべ」
「なぜだ?」
 王が疑問を呈すると、シャンプはつかつかと窓際に歩み寄り、大きく振りかぶってリシーサを窓の外はるかに投げ捨てた。王も含めて並み居る権官たちはびくりとしたが、剣は間もなく高速で飛んで戻ってきて、シャンプの手元に収まった。
 王は密かにインディカムを見た。
「――勇者が魔術や手品の類で剣を戻したとお思いですか? 私には、そんな様子は見受けられませんでした」
 王はコルヌを見た。
「わしにも見えませんでしたぞ。聖魔剣は勇者の手元にあるべきものなのでしょうな」
「なに、ちと戯れを言ってみたまでよ」と王はシャンプを見て破顔した。「その剣は君が持ち、魔の眷属を斬り捨てるために使うがよかろう――ところで、王都にはいつまで滞在予定かな?」
「探している人がいるべ。その人の手がかりを見つけるまでは」
 ――ならば、しばらく彼は手元にいる。と王は思った。勇者を手元に置いておけば、聖魔剣は手に入れたも同然だ。
「ルスラ、そなたはどうかな?」
「どうとは?」とルスラ。
「ラテリトからの報告を聞くに、そなたはどうやら『神の悪戯』であるらしい。が近年、シークレアを除いて、神の悪戯が現れたという報告は聞かない。よってそなたはおそらく、数百年か数千年も生きてきたのであろうと思われる」
「いつ生まれたか、そんなことは覚えておらぬ」
「で、だ。あるいはそなたの名を、年代記や歴史書の中に見つけることができるやもしれぬ。そなたの魔力の強さから察するに、過去に何らかの争いに関わっていた可能性は高いからな。余の書庫の閲覧を許してもよい」
 ルスラはうなずいていった。
「貴重な指摘と協力を感謝する、王よ」
「さて、そろそろ会食は終わりといたそう」と王。「このあと特に用事がないのなら、城の中を見て回るのも良かろう。ルスラ、そなたに書庫の鍵を渡しておこう。必要な書物はいつでも借りてゆくがよい」

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 古今東西、城というものは広くて入り組んでいるものである。無駄に長い廊下、いたるところにある階段、そして数えるのも馬鹿らしくなるほどたくさんの扉など一般家庭ではありえない様々なギミックがそこには存在している。しかもここはかの有名な王都マッタンゴーの中心に位置する王宮、その規模は計り知れないものがある。
 元一般市民の少年Pことプルアロータスは一般市民――しかもド田舎の――であったがゆえに城というものに入るのは初めてであった。というか、そもそも城というものを見ること自体も初めてである。城が割と近くに見えるようになってから中に入るまでの間ずっと、プルの基準では巨大をはるかに越えたその建築物を眺めながら上の空な様子でただただ「うわぁ」と言い続けていたあたりから城というものがプルにとっていかにとんでもないものとして認識されたかを読み取ることができるだろう。なお城の中に入ってからも彼は視線をあちこちに泳がせながら人目を気にしたのか前よりは幾分か小さな声でやっぱり「うわぁ」を連呼していたことを追記しておく。
 ともかく城というのはプルにとって未知の場所であり、なおかつ――ここが重要だが――危険の無い場所でもあった。危険なことは人並み以上に嫌いだが、珍しいものは人並みに好きなプルには絶好の場所と言えた。
 こうなれば探検する以外に道はない。少年らしいその感情に突き動かされプルは割り当てられた部屋を飛び出したのだった。あとの二人――トリュフォーは一緒に来なかった――とも一緒に行こうと思っていたのだが、シャンピニオンは部屋に入るなりさっさと寝ていまい、ルスラのほうもこれまたさっさと出て行ってしまった。プルは仕方なく一人で探検を始めることにしたのだった。
 この時点で深く考えずただ好奇心だけで行動を起こしたのが間違いだったと後にプルは振り返る。広くて入り組んでいて全く知らない場所をたった一人で歩き回る。ちょっと冷静に考えてみればこの後に起こることなど容易に想像がつくであろう。そしてその想像を裏切ってくれるほど世界というのは優しくないものなのである。まあ、要するに――

「――ここ、どこ……?」

 


 またエラーでました。もうヤだ(R)
あ、あと長い上に遅くてすいません穂永さん(R)

こっちも長いので人のことを言えない。例によってキャラ増やしてるし。その割にあんまり話は動いてないし。穂永。
おまけの部分に若干の加筆。穂永。

勝手に団長の台詞を関西風に。あと、勝手に()を付け加えました。ああそうですとも、殺されたって文句は言いませんよ?
にしても、サイといい、団長のクレンタにせよ、何かと関西弁が多い今日この頃。間違っているのは許してくださいよ。イメージだけですから(R)
あ、あと、ルブロの人称を直しました。彼女らはほとんど主語を省略し、必要な場合は自分のことを「こっち」や「これ」といったように、物体のように称するためです。ちなみにルブロはカタカナ表記になります。終。(R)

というわけで市街地前哨戦です。グラシリスは本調子でなかったり、ファリンは戦わなかったりしますがそれでこそ前哨戦ということで。
そういえばミセナは知り合いが鳥肉を食べるのをどう思ってるんでしょう? (バーネット)

グラちゃん暴走。このままだとかるく王都が壊滅しそうなので誰か彼を止めてあげてください。ていうかごめんなさいガンダ○の中の人とその仲間たち(皆既日食)

ゲーム製作中は本当ですが、RPGツクール体験版しか持ってないから、キャラグラフィックしか作れないという罠。ええ、後は製品版を購入してイベントを作るだけで完成しますよ。
様々あると思いますが、突っ込みは無用ッス。(藤枝)

RPGどころか戦略シミュレーションが作れそうなほどキャラが増えてしまった……トリュフォー関連以外の王様の側近は全部私が設定してしまったわけですが、構わないですかな? まあ、構うと言われたって反省しませんがね。穂永。

遅れた上に短くて中身が薄いというこの駄目っぷり。ほんとーにごめんなさい(特に稲永さん) (バーネット)
 

最終更新:2013年06月17日 18:49