2005年12月09日(金) 01時31分-テンシャン山脈
私はサカナを2匹ほど飼っている。2「尾」というのが適当なのかもしれないが、なんだか食べる目的であるように聞こえてしまうので、私は自分で禁句にしている。彼ら(性別はわからない)と出会ったのは数年前。妹親子と川に遊びに行ったとき、ふちをすくってみたらとれていた、という全く曰くも何も無い普通の淡水魚だ。去年兄が訪ねてきたとき、ハヤだとかオイカワだとか言っていたが、知ったかぶりの奴のことだからどうせ知っているサカナか釣ったことのあるサカナを羅列しただけだろう。
そんなこんなで適当に水槽に入れてパンのミミをくれていたらいつのまにかおおきくなって、池を作ってやることにした。これが中々重労働で、家に帰ってから20分くらいすると、日ごろの運動不足が祟ってすぐへばってしまう。すると決まって夫が「手伝ってやるよ、むりして。」と腰を揉んでくれるのだが、私は「ううん」と言って意地を張る。「私がとったおサカナだもん、私が世話するの」 夫は、「でも、明日も早いんだろう?僕は昼間は暇だし、掘っておくよ。」と言うが、結局押し問答になって終わる。
それで毎日、帰ってくると、掘ってのけた土がきれいに庭の隅にまとめてある。
夫が「来週には、水を入れようか」と言った。私は素直に「うん」と答える。「そろそろ、底も十分深いよね」「これだけの大きさがあれば、10匹だって20匹だって大丈夫だよ。なんなら、増やそうか」「いいね、次の土曜、とりに行きましょう?」「そうしよう」私たちの会話は、いつも楽しい。それはリビングでの会話で、2匹のサカナの前での会話だ。
サカナはしゃべらない。けれど、私たちの会話に、確かに参加している。
それで土曜日、前に魚を取ったふちを、1回だけすくってみた。7、8匹小物がとれて、私たちは満足して帰った。
どーん!!
翌日、そういう音で目が覚めた。夫はもう起きていて、キッチンで包丁を握っている頃だ…ったと思う。記憶などたどっている暇はない。急いで寝室に面する庭に飛び出した。…そこには、なんだか赤い物があった。
「チース」
「…………ちー…す」その、羽毛を生やした、体長3mくらいの、全身がまっかな、トサカのついた、それでいて背中にうろこが張り付いている、鳥?みたいな6本足の生物は、確かに人間の聞き取れる音を発した。
「…アノサ、俺チョット落ッコチチャッたんダケドサ、なんか食ウモン無イ?」
しかも、日本語を話した。私は、寒気がした。
「ネエ、ちょ、アノサ、俺腹減ッテルンダヨネ。食いもんクレタラ、イツカ必ず恩返シニクルゾ。俺、こう見えて結構義理深インダゼ」
私は反射的にリビングに走った。それで水槽の中の、特別大きい2匹のうち1匹を網ですくいだして、呆然としている夫を尻目に、鳥?の元へ駆けた。
「サンキュー」
英語?とにかく鳥らしきモノはそれを丸呑みし、私に礼を述べた。そのとき赤い閃光がうろこの辺りから広がって鳥みたいな物体を包み、墜落したときの擦り傷を癒していった。
「ジャナ、この恩は忘れネエゼ」
鳥は一瞬にして消えてしまった。後には、池を作るために掘った穴と、そこにトリが墜落した時に出来たらしいかすかな跡だけが残った。
私と夫は、変わらず過ごしている。サカナは、小さい子たちが成長して、どれが元々大きい魚だったかわからなくなってしまった。「…池に水、入れる?」「もう一度、あのトリが降りてくればね。」あのトリは、私たちにとっての、何か、信仰みたいなものになっている。
最初のアイデアではトリが飼い慣らされてました。
最終更新:2013年06月13日 00:08