アットウィキロゴ

終電の後発列車

2005年01月21日(金) 12時47分-木組

 〈1〉穂永秋琴

 田舎町の線路を最終電車が通る。がたがた、がたがた。間もなく日付が変わった。
 希沙はといえば、生まれて初めての夜更かしに胸が躍るあまり、ベッドの中でもなかなか寝付けずにいた。
 ――私は悪いことをしているんだ。
 そのことに対する恐怖と、ぞくぞくするような満足感を噛み締めながら、希沙はようやく毛布にくるまったところだ。身体は眠気を訴えてくるが、浮き立つ心がそれを許さない。ひとりでに笑みがこぼれてくる。眼が部屋の隅にあるセーラー服を眺める。三ヶ月後にはあれを着る。希沙はセーラー服と夜更かしとは大人になるための登竜門だと、意識しないで思っていた。
 零時十五分。
 がたがた、がたがた。家の側の線路を電車が通っていく。三分経つと、対向列車が過ぎていく。
 ――?
 希沙はむくりと起き上がる。冬の夜の静けさが耳にがんがんと響いてくる。
 ――気のせい? 夢でも見たかな。
 零時三十分になる。再び電車の音が通り過ぎる。耳に響く静けさ。いや、それは心臓の音だったかもしれない。対向列車が過ぎる音。
 希沙はわずかな希望をかけて、電車の発射時刻表を見る。最終電車は、間違いなく、十一時五十五分。それ以降、電車が線路を通るわけはない。当然、通るわけがない。
 ようやく膨らみ始めた胸の奥で、心臓が踊り出す。
 四十五分。またしても電車の声。
 希沙は、ごくりと唾を飲み込んで、窓のカーテンを開けた。いつもと変わらぬ町だ、ただ今は、ほぼ全く寝静まっているという違いはあるが。最寄駅は、隣家の影に隠れて様子が見えない。恐かった。けれど――。
 親が眠り込んでいるのを見た希沙は、コートを羽織って外に出た。爽やかな冬の冷風が、蒲団で温まった頬を撫でた。流れ星が一つ、尾を引いて消えた。
 ――行こう。
 恐怖は興奮に圧殺されていた。戦慄的な喜びだった。

 駅には明かりがともっていた。四年前に無人駅となったはずだが、駅長室には人の影があった。列車が来た。希沙はプラットホームに近づいた。
「どちらまで行かれます?」
 黒々と立ち尽くす駅員が訊いた。帽子の影に埋もれて顔さえ黒く見えた。おまけに口ひげをたくわえていた。
 そのとき希沙は、財布を持っていないことに気づいた。
「あの、すいません、お金を忘れてきちゃって……」
「構いませんとも、ご乗車くださいませ」
 駅員の答えに驚いて、希沙は思わず顔を見上げた。暗い中でよく見えないが、駅員の口元には笑みがあるように見えた。
「早く。出発してしまいます」
 プラットホームに立った希沙に、列車の乗務員が深々と頭を下げた。
「お待ちしておりました。どうぞご乗車ください」
 そしてその乗務員は、希沙の手を取ると、車両の中へ案内した。

―― * ―― * ―― * ――

〈2〉木塚百川

 暖かい空気が希沙をつつみこむ。
「それでは、ごゆっくりと夜の旅をお楽しみくださいませ」
 のっぺりした顔でそんなことを言って、乗務員は一礼だけ残し歩き去ってしまった。
 列車は一両しかなかった。あれはたぶん、運転室か乗務員室に続いているのだろう。戸を隠してゆれるカーテンを見ながら、ぼんやりと希沙は思った。がたん、と車両が揺れる。あわてて手すりをつかんだ。
 車両の中を眺めてみる。 
 列をなしている吊革。通路をはさんで一列ずつ並んでいる二人掛けのシート。乗客の姿はないけれど、そのあたりは、乗ったことのある普通の列車といっしょだ。でも……。
 なんだろう?
 織田祐二とか浜崎あゆみとか、そういった人々の写った広告がひとつもない。代わりに貼ってあるのはよくわからない絵ばかりだ。逆さまに刺さった電柱とか、顔のない人間が鏡を割っているところとか――図画の教科書のうしろのほうに、ちょっと載っていそうな絵。
 希沙はしばらくそれらを見上げていたが、車両がまた大きく揺れたとき、座席ががら空きなことを思い出した。
 適当に、乗降口から近い座席に座る。ふかふかしたそこにお尻をのせると、じわっとした暖かさが這い上がってきた。窓についた露をぬぐって、外を見る。透明になったガラスの向こうで、いくつもの灯火や黒いかたまりが、次々に後ろに流れていく。
(私の家も、もうずっと遠くかぁ……)
 そう思うと、希沙の心はきゅっと縮まった。父の顔や母の顔、壁にかけたままのセーラー服なんかが、ガラスの奥にぼんやりと浮かぶ。強く瞬きしてそれらを追いはらい、希沙は唇をつりあげてみた。
 プチ家出。
 これが、そう? 着ているものはパジャマとコート、素足には白いスニーカー。子供も大人も寝ている時間に、ひとりで列車に乗っている。ひどく心細く、切なくて、わくわくする――夜更かしなんか、メじゃない。
 コートのポケットを漁ると、赤い腕時計が見つかった。このコートはよそ行きの定番なので、遠出するときに必要なもの――ハンカチとか、ティッシュとか――はいつもポケットに入っているのだ。アナログ式のその時計は、午前一時三〇分を示していた。
 がらっ。
 扉の開く音。希沙は文字盤から目を離し、音のしたほう――後ろを見た。
 背広を着た男が、さっき乗務員が入っていった引き戸から出てこようとしている。
(あれ……あっちは乗務員さんの部屋じゃなかったっけ……?)
 駅で見たこの列車は、たしか一両編成だったはずだけど。そんな希沙の疑問にはおかまいなしに、男は希沙のほうにやってきた。
 がらがら。
 多少、おぼつかない足取りだ。
 がらがら。
「おぉ。こんな時間に、ひとり?」
 希沙を見下ろして、枯れた声で男は言った。年齢は希沙の父くらいだろうか。口調はちょっと酔っぱらいみたいで、意味もよくわからない。がらがらいっているのは、男が海外旅行用のような大きなトランクをひきずっているからである。
「はい」
 こころもち緊張して希沙が答えると、男はわざとらしくびっくりした様子で顔をのけぞらせた。
「へえ、やるじゃねぇの。嬢ちゃん、すごいなあ。こいつをやろう」
 男は懐に手を突っ込んだ。するとばさばさという羽ばたきとともに、黄色い小鳥が一羽飛び出してきた。
「へへっ、こいつはやらねぇぞ」
 鳥は男の肩に止まった。目を丸くしている希沙に、男は笑みをみせた。父親くらいの年齢のはずなのに、その仕草は子供っぽい。男は握った手を希沙のほうに突き出した。
 大きな手が開くと、青い包み紙に包まれた丸いものが、希沙のてのひらに落ちてきた。
「アメだ。おっと、おじさん怪しい人じゃないからな。怪しいか。ははは」
 男は勝手に笑い始め、希沙が何か言う前に、またトランクを引きずりながら歩きはじめた。肩には黄色い鳥を乗せたままで。
「あのっ、あ、ありがとうございます!」
 腰を浮かせて希沙が言うと、男は後ろ向きのまま軽く右手を挙げ、それから向こう側の戸の奥へと行ってしまった。
 あれ?
 また希沙は首をひねった。戸の向こうに客車はないはずなのに……彼はどこに行くつもりなんだろう?
 とりあえず腰を戻し、キャンディと腕時計をポケットにしまう。
(車掌さん……じゃあ、ないよねぇ)
 座席に座ったまま、希沙が戸の奥を見に行こうかどうか迷っていると、背広の男が出ていった戸がまた開いて、今度はコート姿の青年が入ってきた。
(うわ……あ)
 青年の顔を見て、希沙は絶句してしまった。
 王子様だった。いや、そうかと錯覚するほどに、秀麗な顔立ちをした青年だった。歩みに合わせて涼しげにゆれる銀髪の下に、同じように澄んだ淡い色の瞳がある。黒いコート――希沙の着ているアイボリーでフードつきのものではなく、張り込み中の刑事が着ているような大きいやつ――が、希沙には一瞬、王族のマントのように見えた。
(外人さんかな) 
 歩いてくる青年からあわてて視線を外し、窓の外に視線を向けながら、そんなことを思う。ちょっと耳と頬が熱い。目が合ったかもしれないのだ。氷みたいに冷たい窓ガラスに手を当て、今ここにほっぺをくっつけたら気持ちいいかな、などと考える。
 青年の足音は聞こえなくなっていた。
 もう、行ってしまったかな。それとも前に座ったのかも――
「こんばんは」
「はひっ?」
 急に上から声が降ってきて、驚いた希沙は思わず変な返事をしてしまった。頭上をふりあおいで、口をぱくぱくする。
「はじめまして、お嬢さん」
「あっ、は、はじめ――まして」
 黒いコートの青年が、希沙の横に立っていた。希沙がなんとか返事を返すと、膝をかがめ、目線を合わせてくる。きれいな日本語で青年は訊いてきた。
「一人かい?」
「は、はい。そうです……」
 青年の瞳を直視できず、希沙は視線をそらした。すると、彼の傍らに女の子がいたことに気がついた。こちらは金髪で、セーラー服を着ている。希沙と目が合うと、彼女はにやっと笑みを浮かべた。どぎまぎして、希沙は青年のほうに視線を戻す。
「一人か。……では、これをあげよう」
 青年は内ポケットから何か取り出し、希沙に差し出した。おずおずと受け取る。ひんやりしたそれは、銀紙に包まれた板チョコレートだった。
「溶けないうちに食べるといい。ではね」
「あ……どうも……」
 青年の低い声に聞きほれていた希沙は、かろうじてそれだけ答えた。すぐに我に返り、なんて間抜けな返事なんだと激しく自己嫌悪したが、その時にはもう、青年は前のほうの席に移動してしまっていた。青年が窓際、少女が通路側に座る。
(……一体、どんな人なんだろ?)
 服装といい、容姿といい、これまで希沙が会ったことのある人物とは大きくかけ離れていた。外国人そのものとは週一回のAETの授業で顔を合わせていたけど、なんだろう、気配がちがう。まあ、最初に会ったサラリーマンみたいな人も、けっこう変わった感じの人ではあったけれど。
 もらった板チョコを、キャンディをしまったのと同じポケットに入れる。溶けないうちに、と言われたけれど、チョコはひんやりしたままで、しまったポケットのほうが冷えるんじゃないかと希沙は思った。
 乗客は三人になった。
 がたごとと、単調なリズムが希沙の頭を揺らす。いつもなら確実に眠くなるはずのその振動も、逆に睡魔を追いはらっている。
(?)
 通路側に座った少女が、ちらちらこちらを振り返るのに、希沙は気づいた。
 やがて立ち上がり、こちらに歩いてくる。金髪でセーラー服。あまりなじみのない組み合わせだ。おまけに首や両手両足にフリルのついたバンドをしているので、よけい妙な感じがする。ただ長い金髪はとてもきれいで、自分の髪――伸ばしたいのに校則のせいで短いままの黒髪――とは比べものにならない。
 少女は希沙の席の横までやってくると、腰に両手をあてて、つり上がった青い目で希沙を見下ろした。
「コンバンハ」
 なんとなく棒読みみたいな口調で言う。それでも流暢な日本語だ。
「こ、こんばんは」
「あたし、アイビス。あなたは?」
「……希沙」
「キサ? 言いにくいね、姓は?」
「……羽鳥」
 ぽんぽんと聞いてくる女の子に、希沙は答えを返していった。内心では(何、この子)と思わないでもない。背は高いけど、たぶん希沙と年は変わらないだろう。
「ハートリ……キサ・ハートリー……Xa,Heartly?」
 繰り返すたびにどんどん呂律がおかしくなっている。アイビスと名乗った少女は眉間にしわをよせて、
「舌かみそう。ね、ハートリーってどう書くの?」
 希沙は露で曇ったガラスに、大きく「羽鳥」と書いた。アイビスは小さく口笛を吹くと、どこかうらやましそうに「いい姓じゃない」と呟いた。
「フェザードバードか。あたしの姓、ブロンズヤードっていうの。青銅の庭。最低から二番目の姓よ。だからキサ、あたしのことはアイビスって呼んでね」
 アイビスの喋りは、口調だけでなく展開も早い。それなのに大きな青い瞳を希沙から片時も離さないものだから、もともと押しの強くない希沙はどんどんうなずくだけになってしまった。
「ね、キサ・フェザードバード、あなたをあたしのコンパートメントに招待するわ。今はあいつも眠ってるし、余計なものは何もない。あなたを招くには今が一番いいって、あたしは思うの」
 なんでこの子はこんなに早口なんだろう。希沙の頭の隅をそんな疑問がかすめたが、頭のほうは勝手にうなずいていた。アイビスは嬉しそうに微笑むと、
「決まりね。じゃ、ついてきて。あいつの横では静かにね。あ、これあげる」
 希沙の手を引っぱって立たせると、その手に何かを握らせてきた。開いてみると、褐色の紙で包まれた一枚のチューイングガムだった。
 アイビスに手を引かれて、希沙は前方の戸へと歩き出した。青年の横を通るとき、そっと様子をうかがってみたが、彼は腕組みをして目を閉じていた。
「この向こうよ」
 アイビスが言った。そこはキャンディをくれたサラリーマンが出ていった戸だ。忘れていた疑問を思い出して、希沙はそれを口にした。
「アイビスちゃん、この列車って、一両しかないんじゃないの?」
 問われたほうは軽く首をかしげ、希沙を見つめ返したが――
「『ちゃん』はなし」
 とだけ答え、戸を引いた。折りたたみ式のその戸はぐにゃりと開くと、二人を迎え入れた。
 ここにくると騒音もやかましい。がちゃがちゃと激しく揺れる接合部のステップを用心しいしい踏み越えた希沙の目の前に、重厚な木の引き戸が立ちはだかった。つやつや黒光りするその戸には、鮮やかなステンドグラスがはめ込まれている。
「え? あれ?」
「こっちよ、キサ」
 とまどう希沙を尻目に、アイビスは金属製のノブをつかみ、それを引き開けた。

―― * ―― * ―― * ――

〈3〉藤枝りあん

 開いた扉の先の部屋を見て、希沙は思わず息をのんだ。
「なかなかのものでしょ」
 驚いた様子の希沙の隣では、アイビスがいたずらっぽく微笑んでいる。まるで自慢の秘密基地をこっそり友達に教えているような、そんな顔だった。
 そこは、教会だった。
 いや、そもそも希沙はキリシタンではないし、近くに教会というものは無いのだが、社会の資料集で見たことがあるような感じの部屋だった。丁度、中世ヨーロッパの文化の辺りで載っていそうな、荘厳な感じのする個室。無論、と言えるのだろうか、ともあれそこは、希沙の部屋と同じぐらいの大きさしかないのだが。それなのに何故か、希沙は教会だと思わずにはおれなかった。
「さ、入って」
 呆気にとられている希沙の手を取り、アイビスはその部屋の中に入って行く。希沙が気付けばもう、彼女の後ろで扉は閉まってしまっていた。

 今は夜のはずだよね――思わず希沙はそう心の中で呟いた。だが天井からステンドグラス越しに光が差し込んで来ている。あまりにも幻想的なその紋様に見入ってしまうが、それでも疑問は尽きなかった。
「あの・・・アイビス?」
「なぁに」
 向かい側の木製の長椅子に腰掛けたアイビスに向かって、希沙は思い切って尋ねてみることにした。
「おかしなことを聞くけど・・・」
 列車に乗ってから、不思議なことは周囲にとっては当たり前のようなことばかりのようだった。だから言うのも気後れしてしまうのだが、聞いておきたかった。
「アイビスは・・・」
「あたしは?」
 少し間が空く。
「何処まで行くの?」
 言ってしまってから、希沙は頭を垂れた。聞きたかったのはそんなことではなかったのに。もっと他に、例えば、どうして夜なのにこの部屋に光が差し込んでいるのかとか、前にここに入ったはずのおじさんがどうしていないのかとか、聞きたいことは他にはあったのに。
「あたし? そうね・・・」
 そんな希沙の悩みを余所に、アイビスは暫く目を宙に泳がせていたが、こう答えた。
「キサよりも前の駅なのは間違いないわ」
「え」
「キサ、遠くまで行くみたい」
 眉根を寄せて考え込む希沙に気付いているのかいないのか、アイビスは嬉しそうに続けた。
「うらやましいわ。きっと水晶海とか、蛍火の庭とか、もっと他にもたくさん見れるもの。でもあたしはダメ。翼ヶ峰で下りなくちゃならないのよ」

 ここは列車の中なのだろうか――希沙はだんだんとそう思い始めた。さっきから揺れてもいないし、そもそも自分は行き先を知らない。もしかしたらこれは夢なのかもしれない。
「いたッ!!」
 そう思って思いっ切り頬をつねってみて、思わず希沙は叫んだ。向かい側でアイビスが驚いて目を丸くしている。
「キサ、いきなりどうしたの?」
「え? あ、何でもないの」
 夢では――ないらしい。希沙はほっぺたをさすりながら唇を噛んだ。我ながらおかしなことをしたものだと、急にそう思い始める。そう、実際に自分が着ているのはパジャマだし、寝る前に列車に乗り込んだのは確かなことなのだ。自分が不思議がっていることなんて、中学生になれば理解出来るものなのかもしれないのだ。
「・・・やっぱり、ここ、居心地が悪いのよね」
「そんなことない、そんなことない」
 自分が急に妙な行動を取ったのがこのコンパートメントのせいにされそうになったので、希沙は慌てて手を振った。確かに居心地がいいとは言えないが、この厳かな雰囲気はなかなか神秘的で悪くは無いと思うのだ。だがアイビスは、
「そうなのよ」
 と言い切ると口を尖らせた。
「ストルク、Plumidge Chursy がいいって聞かなかったのよ。あたしは Wingyle  Shrina がよかったのだけれど。そう、Plumidge Chursy はコンパートメントに相応しくないと思うの。窓が無くて景色が見れないのは良くないわ。椅子も木でクッションもないし、それに、ベッドも寝にくそう」
 早口で言いたいだけ言ってしまうと、彼女は苦笑いを浮かべて、苦々しく笑った。
「ごめんなさい、こんなこと言ってもどうにもならないって分かってるけど」
「ううん」
 希沙は首を振った。『なかなかこの雰囲気はいいと思うよ』と言うべきかどうか考えていると、
「アイビス」
 例の低い声がした。驚いて後ろを振り返ると、銀髪の青年が扉の向こう側に立っていた。
「ストルク、ちょうど今戻ろうと思ったところよ」
 アイビスがそう言って立ち上がると、青年――ストルクというらしい――は困ったような笑顔を浮かべて、
「アイビス、私も確かにこのコンパートメントはどうかと思ってしまうほどだよ。しかし、それほど悪くは無いと思う」
 そう言って連れの少女の皮肉を受け流した。
「それよりも二人とも」
 自分も彼の話題に上っていると気付き、希沙はドギマギしながら背筋を伸ばした。後ろを振り向いてから思い出したのだが、今の自分は見られた顔ではないのだ。先程つねったために赤く火照ってしまった頬を見られるのが無性に恥ずかしくなり、希沙はじっと自分の指先を見つめた。
「剣の塚が見えて来た。見に来るかい?」
「ぜひ!」
 そう叫んで立ち上がってしまってから、希沙は、なんて子供っぽいことをしてしまったんだろうかと、赤くなった頬をさらに赤く染めた。何とかもう少し大人にならなくちゃと、彼女は慌ててこう付け加えた。
「えと、ぜひ、見てみたいです」
 二人が大笑いしなかったことが、今の希沙にとって最も幸いなことだった。

―― * ―― * ―― * ――

〈4〉鴉羽黒

「ところで、剣の塚って何なんですか?」
「慌てなくても、すぐに見えてくるよ」
「Seeing is believing、でしょ?」
「えーと、わかんない…」
 ストルクの促すままに元の車両に戻ったキサは、窓に映る景色を見て驚く。一見するとそこはただの森林なのだが、風に揺れる葉の色は、それまでキサの見たことのないそれだった。わずかに青みがかった灰色とでもいうのか――、どこか金属のような冷たい光沢をたたえている。
「大分近づいているようだね。もうすぐ森を抜けるよ」
 ストルクの言葉を聴いているのかいないのか、キサは窓ガラスにへばりつくようにして外を眺めている。アイビスは、まるでそれが自分の功績であるかのように誇らしげに笑っている。
「すごいね、これ…。なんていう樹だろう…」
「あら。キサの町にも、多分生えているわよ。ただ、このあたりの木々は剣の塚の影響を受けているだけ」
「え? どういうこと?」
「実は、わたしにもよくわからないわ。今のは本の受け売りよ」
 そう笑ってアイビスは肩をすくめ、ちょっと舌を出した。その仕草が妙にハマっていて、キサは不覚にも、
(かわいい…)
 なんて思ってしまった。自分ではとてもじゃないが真似のできそうもない仕草であり、キサはちょっとうらめしくも思う。
 けれど、結局その感情は表に出ることはなかった。なぜなら、次の瞬間に窓の外の風景が一気に広がったからだ。
「わぁ…」
 キサとアイビス、二人の口から同時に感嘆のため息が漏れる。
 森を抜けた列車は、並ぶ丘を突っ切るようにして走っていた。見渡す限り広がる丘陵地帯、その一面を青灰色の草が覆っている。さらに、至る所に鈍く輝く何かが刺さっている。そして一番大きな丘の頂点に、十字架にも見える巨大なオブジェが刺さっていた。
「さあ、ここが剣の塚――、別名、結晶古戦場さ」
 ストルクの声に応えるかのように、列車のアナウンスが駅への到着を告げた。

―― * ―― * ―― * ――

〈5〉再び穂永秋琴

 ブレーキをかける列車の軋む音が、不思議と耳に障らない。
「ここには、三十分くらい停車する」ストルクが言った。「あまり遠くへは行けないけど、良ければ降りて見に行くといい」
「ストルクは行かないの?」と希沙が訊く。
 ストルクは列車の窓辺に肘を突き、笑って言う。「年寄りに冬の早朝は答えるからね(アイビスが希沙を突っついて、「若年寄」と耳打ちする)。――それに、私はここへは何度も来ているから、今更立ち寄らなくてもいいのさ」
 しかし実際に列車を降りてみれば、ストルクの言ったことは分からないでもなかった。何一つ遮るものの無い青鈍色の草原に吹き渡る、一月の風は冷たかった。希沙は思わずコートの襟を引き寄せた。
「さて、あまり時間も無いし、あの丘まで行ってみない?」とアイビスが訊く。希沙はうなずく。
 やや曇り気味の明け方の空は、草原と同じ青鈍色をしていた。土の色は白っぽく、所々に転がっている小石は揃って灰色。冬のこととて虫や鳥はいない。生命を、いな、死すらも感じさせない、無生物的な草原。風さえも、どこか灰色で。さわさわという草のざわめきは、紙がこすれる音か、衣擦れの音にも似ていた。
「季節によっては、トカゲくらいはいるらしいんだけど」アイビスが言う。「こう寒くて、しかもこう曇ってると、どうも陰気な場所よね」
「うん、なんか、幽霊も寂しがってどこかへ行ってしまいそう。……あれは?」
 希沙が指差した先には、土に突き刺さった斧があった。その横には盾。どちらにも共通するのは、柄の部分まで青灰色だという点だ。
「武器の化石よ」
 ――武器も化石になるの? その質問は、笑われるのが怖くて、言わずにおいた。ひょっとすると常識かもしれない。帰ったら、理科の教科書を開いて調べてみよう。
 上り坂を踏んで歩いていく。少し息が切れてきて、一息入れようと立ち止まり、ふと上を見上げると、あの十字架はもう目の前にあった。いや、十字架ではない。それは剣――物語か、さもなければゲームにでも出てきそうな、柄の長い、両刃の剣だった。
「おう、嬢ちゃんも来たか。なんだ、アイビスちゃんも一緒か」
 剣に見入っていると、突然声をかけられた。見れば、電車の中で飴をくれた男である。男は巨大な剣の化石にもたれかかりながら、キセルをふかしている。
「あれ、賈さんじゃないですか。おはようございます」するとアイビスはこの男――賈と知り合いなのか。
「ん、折角来たことだし、寒いからってこの剣を見ないのは大損だろ(アイビスが「ストルクに爪の垢でも」とつぶやくのが聞こえる)。まあ気持ち良い場所じゃないが……なんだ、こんな光景はほかじゃあ見られんもんなあ」
 そう言って、賈は右手にキセルを持って立ち上がり、左手で尻の砂をはたいた。キセルの先を地面で叩いて火を消す。火は決して、灰色の草には燃え移らない。
「さて、そろそろ俺は行くが……」
「あ、待って!」アイビスが賈の腕をつかむ。「その懐に入れているのは何ですか?」
 賈は、悪さを見つけられた子供のように、ばつの悪い笑いを浮かべながら、懐から細い棒のようなものを取り出して、投げ捨てた。希沙が見てみれば、それは矢の化石である。
「ここのものを勝手に持ち去ってはいけないことくらい、あなただってご存知でしょうに」
「いやあ、なに、ほら、出来心ってやつよ。矢の化石は特にたくさん落ちてるし、一本くらい、……いや。うん。――あ~、じゃ、また後でな」
 そう言って、賈は逃げるように歩き去った。
「良い人なんだけど、悪い奴なのよね、あの人は」希沙は、なんとなく賈という男が分かったような気がした。

 車内に戻ると、ストルクは読み耽っていた本から目を上げて微笑んだ(希沙の心はとろけた!)。
「やあ、お帰り」
 列車がそろそろと走り出す。巨剣のオブジェが少しずつ、やがて急速に遠ざかっていく。

 青鈍色の空が、少しずつ白色に変わっていく。ストルクは剣の塚について、こんな話を聞かせてくれた。

 昔々――と言っても、気が遠くなるほどの昔じゃない。世界中どこでも、王様とか殿様といった人たちが、部下を連れて戦いに明け暮れていたころ。異民族とか神とか、そういうのがキーワードだった時代かな。それは、本物の魔法使いがほとんど死に絶えたころ、妖精や巨人や小人や竜がいなくなったころ、つまり魔法というものがそろそろ世界から消えかかっていた時期で、弩とか火砲が呪いと魔法に取って代わった時代でもあったんだ。
 さてそのころ、このあたりには強い王様と賢い王様がいて、お互い仲が悪かった。で、ついに戦争になってしまったわけだけど、三日三晩戦った末に、賢い王様は強い王様に打ち負かされて、殺されてしまった。
 賢い王様の息子――つまり王子様だね――は、お城の侍女と一緒に逃げた。そしてこの侍女は、密かに生き延びていた魔女の娘だったのさ。「湖の貴婦人」と呼ばれた、有名な魔女のね。復讐を誓った王子様は、湖の魔女のもとで錬金術と呪いを習得した。湖の魔女は王子との別れ際に、呪いの剣を渡した。斬ったものを全て青銅に変えてしまう「ルパルクティング」を。この世の別れだと知る湖の魔女は、王子様の背中を見て涙したと伝わっている。
 王子様はたった一人で、強い王様に挑戦状を叩きつけた。強い王様は強い戦士たちを率いて、王子様が指定した草原、今では剣の塚と呼ばれているあの場所へやってきた。
 それは酷い戦争だったと言われている。王子様はたった一人で、ルパルクティングを振るって戦い、雷名の聞こえた戦士たちを次々と物言わぬ銅像に変えてしまった。王子様に殺された戦士は千を単位をして数えるほどだったそうだ。そして、ついにはあの強い王様が自ら王子様と戦った。そのときは既に夕方。朝からずっと戦って疲れていた王子様は、仇の手にかかって斬られてしまった。
 その時、王子様を城から助け出したあの侍女が、号泣しながらやってきて、王子様の亡骸を抱きかかえ、湖のほうへ歩き去った。強い王様の部下が馬を駆って追いかけたけど、ゆっくり歩く侍女に追いつけなかったそうだ。
 それはさておき、強い王様も、さすがにショックを受けたらしいね。賢い王様とその王子様によって、子供のころからの友達の多くを失ってしまったんだそうだから。そこで王様は、戦の神にルパルクティングを捧げ、争いの終結を宣言しようとした。戦の神に武器を捧げるという習慣は、この地域に広く伝わる風習で、勝利の感謝と平和への祈願をこめて行うものだ。まず巨大な武器のオブジェを作り、それに並べて敗者の剣を大地に突き刺す。
 だがこの儀式が間違いのもとだった。斬ったものを全て青銅に変える呪いの剣ルパルクティングは、大地さえも青銅に変えてしまった。青銅になった大地は、草も木も――この地域の全てを青銅にしてしまった。強い王様は失敗を悔やんだけれど、もう遅い。なくなくこの地を離れ、遠方の王様である従弟のもとへ部下や庶民とともに移り住んだんだ。そしてルパルクティングは、湖の魔女が持ち去った……。

「それはほんとの話?」と希沙は尋ねる。
「まさか」とストルクは言う。「おとぎ話だよ。剣の塚がああいう状態になっているのは、多分土壌や地球の磁気の影響じゃないかな。ただ、科学者たちにも確実なところは分かってないらしい」ストルクは少し笑う。「だから、もしかすると――ね」
 列車の窓から光が差し込まなくなる。窓の外を見れば、鬱蒼とした針葉樹の森だ。
「さて、噂をすれば」アイビスは言った。「魔女が住んでいた湖の森よ」

―― * ―― * ―― * ――

〈6〉木塚百川:二周目

 窓の向こう、流れゆく青鈍色の荒野は、しだいにその色彩を減らしていった。
 代わりに濃緑色の低木群が姿を現し始め、それはみるみるうちに背を伸ばして、列車を包み込んだ。大きな籠の中を走り抜けているみたいだ。車内の蛍光灯がぼんやりと灯り、希沙たちの顔を黒いガラスに映し出す。
「……夜になっちゃった」
「光が遮られたみたいね。ね、キサ、前に行こう。きっと湖が見えるわよ」
「え? 前って――」
 コンパートメントじゃなかったっけ。
 口の中でもごもごと呟いているうちに、希沙の体はアイビスに引っぱられて扉の前まで来てしまっていた。アイビスは戸を引きあけて、どんどん中に入っていく。あぶなっかしい足取りで付いていきながらふと振り向くと、ゆっくり歩いてくるストルクの長身が目に入った。彼も付いてくるようだ。
 だしぬけにばたばたとコートがあおられた。襟元やら袖口やらから侵入してくる寒気に、「ひゃあ」と叫び身を縮める。  
「あはは。階段あるから気をつけてね」
 アイビスが連絡通路の出口を開けたのだ。さきほどはそこはコンパートメントに通じていたはずだが、今その出口は冷たい風といくらかの光を注ぎ込んできていた。 
 やってきたストルクに背中を押してもらいながら急な階段を上る。上がったそこは、デッキになっていた。腰ほどの高さの手すりをつかんで、アイビスが身を乗り出している。
「ほら、見える!」
 足場が高い上に揺れているので、希沙はおっかなびっくりと彼女の横にやってきた。
 木々がアーチを作っているその向こう、列車のすすむ遥か先に、大きな湖が横たわっていた。
 あらかじめ湖と言われていなければ、それは大河に見えた。木々が邪魔なせいもあるが、両端が見えない。きらきらと輝く湖面は、ちょうど水晶を砕いて振りまいたようだ。その輪郭ははっきりとはしておらず、やや霧に沈み込むようなゆらめきを見せている。
 そこで気がついた。
「あ、アイビス。このままじゃ私たち、あの中に突っこんじゃわない?」
「え? ああ、ノー・プロブレム。だよね、ストルク?」
「ああ」
 深みのある低い声が、希沙の後ろのだいぶ高いところから降ってきた。
「あれは蜃気楼のようなものでね。幻だから、溺れることはない」
「そういうこと」
 シンキロウ。希沙もその単語は知っていた。暑い日に高速道路かなんかのずっと前を見ると、水たまりがあるみたいに見える。あれとか、砂漠でオアシスの幻が見えるのとかが、そうなのだ。実際にはありはしない、まやかしごと。
 列車のレールは霧の湖の底へと続いているようだった。

 霧の中というものは、外から見たほどに幻想的であるわけではない。単に空気中のビリュウシが光の直進をソガイし、視界をきかなくしているだけだからだ。そんなものでいちいち騒ぐのは、子供のすることだろう。
 などと考えてはみたが、それでもわくわくしてしまうのは仕方ないのだった。
「わ、すごい。キラキラしてる! それになんか青い!」
 列車はゆるやかに坂を下って湖底へと下り、今はその最深部とおぼしき辺りを走行している。森ではやたら激しかった揺れもほとんどおさまり、船にでも乗っているような気分だ。おまけに霧には真珠みたいな光沢があって、ときおり青いさざなみが加わるとあっては、はしゃぎたくならないほうがどうかしている。
「本当、綺麗ね。魚が泳いでてもおかしくないくらい」
 アイビスが相槌を打つ。彼女のほうは希沙ほどはしゃいではいなかったが、やはり楽しそうだ。二人とも窓際の座席に陣取って、窓に張り付いている。 
 白銀色の景色は列車の速度をあまり感じさせない。なんというか、同じところでずっと揺れているのではないかと錯覚しそうになる。そういえば、そういうおもちゃを、水族館のお土産で買ったことがあったっけ。
「あれ?」
 錯覚ではなかった。
 白銀の奥にぼんやり見える何かの影が、ちょっと前からずっと動いていない。目を凝らすと他の影も同じように動かないので、影が追走しているわけではないのだと分かる。ついでにいうなら、その景色はどこかの街並みのようだった。
 と。
『ご乗車の方々にご連絡いたします。当列車は只今より、機関室の保守作業に入らせていただきます。終了予定は一時間後です。申し訳ございませんが、今しばらくお待ちください』
 鼻にかかった声でアナウンスが入った。
『なお、停車中の御下車は自由でございます』
 分厚い洋書を閉じて、ストルクが立ち上がる。
「降りるの? あたしも降りる。希沙は?」
「あ、私も――」
 と答える前に、希沙の返答を予測していたらしいアイビスはその手を引っぱって乗車口に向かっていた。

 ストルクがハンドルを回すと、戸が開いた。冷気があらためて服の中にもぐりこんでくる。ボタンを全部付けてふとどきな連中をしめだすと、希沙は周囲を見回した。
 霧は少し薄くなっていた。木と石でできている建物や石畳の敷かれた道路などが、うっすらと浮き上がっている。
 外国のようだった。音がまったくないこともあって、現実感があまりない。もっとも、スニーカー越しに感じる冷たさが、しきりに希沙の現実感をつついてくるが。
「私は知人に会う用があるが……君たちはどうする?」
「ついてく」
 即答したのはアイビスだ。
「だってここ、誰もいないもの。お茶でも飲まないと冷え切っちゃうのに」
 ねえ、と希沙に同意を求める。「そうかも」という希沙の返答はあまり聞かずに、アイビスはストルクに胸を張ってみせた。青年はかすかに肩をすくめると、黒いコートをはためかせながら歩きはじめた。
「どこ? 歩く?」
「いや、すぐだ」
 希沙の前で、二人がそんなやりとりをしている。希沙はといえば、見上げた空が水面のように光の網目模様を映し出しているのに気をとられ、そちらは聞いていなかった。
(不思議……) 
 蜃気楼と言われたけれど、幻とは思えない。揺れる光の網が地面に複雑な影を落とし、それも揺れている。水底に沈んだ遺跡を散歩している気分だった。頭上を魚が泳いでいても、確かにおかしくはない。
「キサ~。どこまで行くの?」
「へ?」
 振り返ると、金髪の少女と黒衣の青年が、ふるぼけた石塀の前でこちらを見ていた。行きすぎたらしい。赤面し、あわててかけ戻る。途中で石塀につまづきかけたところを青年の腕が支えてくれた。
「す、すみません」
「……足元が荒れてくるから、気をつけて」
 青年は言って、石塀の奥に続く道の先を眺めた。道とはいえ、すでにそれは石畳の通路ではなく、赤茶けた土のそれになっている。伸びゆく先には大きな館のシルエットがそびえており、その前に小さな黒い影があった。
「どこ、ここ。誰かの家?」
「知人のものだよ」
 ストルクは歩みを再開した。アイビスと希沙がやや気後れした様子でその後をついていく。と、その二人がそろって妙な顔をした。
 二度、三度と地面を踏んでから、顔を見交わす。希沙がつぶやいた。
「……金属になってる」
 赤茶けた土ではなく、青黒くわずかに光沢のある金属。ちょうど『剣の塚』で見た光景に、それは似ていた。石塀から向こうの地面は、草むらの形はそのままに、すべて青く沈んだ光沢に覆われていたのだ。
 投影される光のゆらめきまでも、青黒く輝いている。
「青銅の庭……」
 つぶやいて、アイビスは顔をしかめた。
「悪趣味ね。何考えてるのよ、ここの奴は」
 吐き捨ててから駆け出す。あわてて希沙もその後をおいかけたが、スニーカーに素足なのでひどく膝に響いた。確かにいい趣味とはいえないと、ちらりと思う。 
 ストルクは黒い影の前で二人を待っていた。黒い――彫像の前で。
 アイビスと希沙は黙ってそれに目をやった。
 それは青銅の彫像だった。青銅の板だ。それにもたれるように座り込んでいる、たくましい男の彫像。そして、彼の胸板に頭を預けて座る、若い女の彫像。女の腹部からは剣が生えていて、その柄は女の手に握られていた。
「これ……板に字が彫ってある。お墓だわ――読めないけど」 
 アイビスが言うのが聞こえた。希沙は彫像から目を離さなかった。聞いたばかりのおとぎ話がよみがえる。斬るもの全てを青銅に変える剣と、それを掲げて戦死した王子。彼とともに姿を消した娘と、剣とともに姿を消した娘の母。
 希沙はストルクを見上げた。青年は常の通りに感情を沈めた瞳で、一つのものとなっている彫像を見下ろしていた。その唇から低い呟きがこぼれた。
「ヴィヴィアン――貴女の……」
 そこで視線を外したのは、希沙の視線に気づいたからなのか、アイビスに呼ばれたせいなのか、定かではなかった。「ねえ、これって誰のお墓?」という少女の問いには答えずに、ストルクは道の奥へと歩き始めた。
「無視しないでよ、ちょっとぉ。なんなのよ、このお墓」
 振り返らずに青年は答えた。
「蜃気楼さ。御伽噺の名残だよ」
 少女は頭をかいた。彼女には似つかわしくない動作で、明らかに納得していないのが見て取れる。しかし重ねて問い詰める気にもなれなかったのだろう、肩を少し怒らせて歩き出した。
 希沙も歩き始めたが、その前にもう一度振り返ってみた。彫像はまだそこにあった。
 幻とは思えない。だがこれも、実際にはありはしないまやかしごとなのだろうか。青年が呼んだ名は――あれもまやかしごとの一部なのだろうか。
 やめた。考えたところで分かりはしない。ここは蜃気楼の街なのだった。希沙は前を向くと、遠ざかりかけている二人を追いかけるべく足を早めた。

―― * ―― * ―― * ――

 霧はますます濃く、深く広がっては希沙の前に立ちはだかった。ともすれば、ほんの数歩前を歩いている二人の姿まで見失ってしまいそうだ。小走りになって二人の横に並ぶ。
 と、
「お久しぶり~い」
 どこからか声が降って来た。慌てて声のした方向を見上げるが、何も見えない。
「え、何? 何、なに?」
 そんな希沙の様子を見ているのか、何処からか降ってくる声は面白そうに、
「嬉しいねぇ、選ばれたお客さんまでいるんだぁ~。う~ん、こりゃあ結構結構、可愛らしいお譲ちゃ~ん」
と言った。のんびりしているというか、鼻にかかったような間延びした声だ。ストルクは前を向いたまま、
「久しぶりだね、テューン、それにジャンルーカも」
言うと同時に、霧の中にぼぅっと浮かび上がる二つの光があった。青い光と緑の光。その光は二・三度瞬いたかと思うと、
「いらっしゃ~い」
という声とともにぱっと消えた。
 驚く間も無く、乳白色を押し出しながら黒い扉が現れ、軋みながら重々しく開いてゆく。あたかも空間を切り取って出現したかのようなその扉の前に、青い灰色のネコを抱いた人物が立っていた。
 赤みがかったオレンジ色の髪の毛は真っ直ぐ下に長く伸び、墨色のローブと対を成している。
 魔法使いみたい――と希沙は思った。
 だがそれ以上に、人形のようにも見えた。
 その人物は腕の中でふんぞり返っているネコとは対照的に、瞬き一つせずにじっとそこに立っていたのだ。霧のせいもあるのだろうが、生命感の無い肌の色は透けるように真っ白で、唇も健康的なピンク色ではなく、冷水につかったかのような紫色をしている。ネコと同じオッド・アイの瞳――右目が水色、左目が緑色――は、何処か遠くを眺めているのだろうか、虚ろだった。
 すると再びあの小さな男の子のような間延びした声が、
「どぉ~ぞぉ~、な~かへお入りぃよぉ~」
と暖かそうな室内へと促した。
 だが希沙の意に反して、その声は動かないその人からではなく、その腕に抱かれているネコから発せられたかのように、聞こえたのだった。

「お邪魔します」
ストルクがそう室内に足を踏み入れ、二人の少女もそれにならった。途端に、柔らかい湯気が全身を覆って歓迎する。
 部屋は外とはまったく異なり、暖かだった。色も青白い霧の中とは異なり、オレンジ色をしていた。暖炉にくべられた薪が乾いた音を立ててはぜ、その上では金属製のヤカンが盛んに湯気を立てている。
「よくいらっしゃいましたね、ストルク」
一番奥まったところに据えられている揺り椅子に座っている老婦人が、穏やかな語り口でそう声をかける。
 自分のおばあちゃんよりもずっと年上に見えるのに――と希沙は思った。まるでお姫様だ。若くて可愛らしい、という意味ではなく、雰囲気がどことなく上品で、気高い雰囲気がしたからだ。もう少し語彙が多ければより相応しい言葉も出ただろうが、希沙にはお姫様が精一杯だった。
 それはともあれ、ストルクはすっと頭を下げると、言葉を返した。
「こちらこそ、お久しぶりです、我が親愛なる――」
   ドスッ
「みなまで言うなぁ~」
ストルクの下げられた頭の上に、どっかりとネコが居座った。正確に言うと、ネコを抱いていた人物が、間髪入れずに彼の頭の上にネコを落下させたのではあるが。ともかく、あの声がこうストルクの言葉を遮った。
「母者人(ははじゃびと)は~ぁ、名ぁ前ぇを呼ぉばれるの~が、好きじゃぁ~ない」
分かってるよ、と呟いて、ストルクは姿勢を正した――頭上にネコを載せたまま。
 それを見て、アイビスは口を押さえて笑い出した。希沙も、失礼だとは思いながらも思わずぷっと吹き出してしまった。ストルクには悪いが、毛がもこもこしている横柄な態度のそのネコは、後ろから見ると巨大なカツラのように見えてしまうのだ。
 男性の後ろで少女二人が忍び笑いをしているのを知ってか知らずか、
「暫く見ぬうちに、随分と変わりましたね」
と、老婦人は軽く口元に手を添えて微笑んだ。
「お元気そうで何よりです」
ストルクも、礼儀正しくそう返した。それから、「ジャンルーカ」と言って振り返ると、
「すまないが、テューンをどかしてくれないか」
 すると、今まで動く気配も見せなかった例のローブの人物は――いや、ネコをストルクの頭に落下させたのだから動いたはずなのだが、そうは思えない様子だった――すっと手を伸ばし、ゴロゴロと喉を鳴らしているネコをゆっくりと持ち上げ、自身の腕の中に収めた。そして再び、石像のように動かなくなってしまう。
「・・・ジャンルーカは、相変わらず、ですか」
「そうね・・・何も変わらない。変われないわ、この娘(こ)は」
老婦人は寂しそうにそう呟くと、気まずそうに立っている少女二人に向き直って柔らかく笑いかけ、
「外は寒かったでしょう? ともあれ、お座りなさいな」
と席を勧めた。木製の、質素ながらも頑丈な椅子だ。置いてあるクッションがまた上品で、センスの良さをうかがわせる。
 それでは失礼して、とストルクが引いた椅子の上にぱっと飛び乗るものがあった。つい先ほどまで、ジャンルーかとかいう娘さんの腕の中にいた、あのネコだ。
「テューン・・・」
「ここはボクの席ぃ~」
ふふん、と鼻を鳴らして、テューンはうるさそうにストルクを見上げる。それを見て溜息を漏らす彼を見て、少女達はもう一度、顔を見合わせて笑った。

 気品あふれる老婦人と、それに負けず劣らず上品な雰囲気を醸し出している青年は、あたかもここが宮殿の一角であるかのごとく、優雅に歓談を始めた。
 希沙はそんな二人の様子を羨ましく思いながら――ただの憧れなのだが――見よう見まねで、ちょっと気取った感じでお茶に口をつけた。
 そのお茶は今まで彼女が飲んだことがあるお茶とは全く違った味がした。といっても、もし彼女が紅茶の類をを飲んだことがあるのならば、これはハーブティーかもしれないなとは思ったことだろう。そのお茶は春の花のような甘い香りと味がして、一口飲むだけで体の心からじんわりと温まってくるのだ。砂糖は入っていないようだったが、それでも十分おいしく飲める。
「おいしーい」
ほっと溜息をつきながらそう呟くと、
「でしょ~ぅ?」
とまたあの声が返ってきた。見れば、テーブルの向かい側でテューンがニヤニヤしながら身を乗り出している。
 その時、希沙は「不思議の国のアリス」を思い出した。あれにもお茶会があったが、それよりも何よりも、あのネコだ。あの作品にも――といっても、彼女が知っているのはアニメのアリスだけなのだが――こんなようなネコが出てきたはずだ。チェシャーネコとか言ったっけ。あれは赤とピンクの縞々模様で、黄色い目だったような気がする。
(でも、知ってるんだから)
と希沙はネコを見据えた。
(だまされないもんね!)
 知っている。
 これは「腹話術」とかいう芸なのだ。口を動かさずに人形に喋らせるというもので、TVで見たことがあった。
 だからこの間延びした声はテューンというネコのものではなく、その隣で座っているジャン何とかさん――座っているというよりも、固まっていると言った方が近い気もする――が発したものなのだ。ネコが喋れないということぐらい、希沙は知っていた。
「どぉ~かした~ぁ?」
そう声をかけられ、希沙ははっとして、首をふるふると振った。だが、彼女の隣に座っていたアイビスは、「ええ」と言って、手にしたカップを下ろした。そして続ける。
「どうして自分の口で喋らないの? 少し失礼だと思いますけど」
ズバリそう言って、アイビスは、相変わらず放心状態のジャンルーカを睨んだ。
 だが彼女の問いかけも虚しく、ジャンルーカは椅子の背にもたれかかったまま動こうとしない。虚空をじっと見つめているだけだ。
 アイビスが大きく息を吸ったのを見てか、次の瞬間――希沙はアイビスがテーブルを叩いて立ち上がるのではと身を硬くしたのだが――あの声で、
「ごめぇ~んね~ぇ」
という答えが返ってきた。
「ちっがぁ~ぅんだよ~ぉ。ジャ~ンルゥ~カ~は、しゃ~べれなぁ~いんだよ~ぉ。ちょ~っと、ワ~ケあ~りでね~ぇ」
「ワケ? Reason? どんな?」
アイビスはひとまず上げかけたこぶしを下げ、先を促した。
「え~っと~ぉ・・・」
テューンはテーブルに両前足を載せたまま、首を曲げてジャンルーカを見上げ――もしかしたら本当にネコが喋ってるのかも、と希沙は思い始めた――
「そぉ~れはね~ぇ・・・」
言いよどんだ。あまりにも本当に困っているように見えたので、希沙は思わず「テューンさん」と言いそうになってしまった。ネコに。
 と、ここで今まで固まったように動かなかったジャンルーカがすぅっと真っ白な細腕を伸ばし、目の前のクッキーの皿から一枚摘み上げると、ぽいと無造作にテューンの方に放り投げた。
 テューンはそれを両前足で器用にキャッチすると、ぱっとテーブルの陰に消えた。
「あ、ちょっと!?」
モギモギ、とクッキーを食べているらしい妙な音がして、それから、
「うみゃ~」
という、声とも鳴き声とも判別がつかない声がして、
「母者人の手ぇ作りクッキィ~、お~いし~ぃよ~ぅ」
と再びテーブルの上にテューンの顔が現れた。口の周りのクッキーかすをぺろぺろと舐め取っている。
「ごまかす気?」
アイビスの冷たい視線も何のその、テューンは何を言っているのやらといった様子で、「くあぁ・・・」とおおあくびをした。
 さらに何かを言おうとしたアイビスの目の前に、ずいっとクッキーの皿が押し出されて来る。ジャンルーカが、無表情のままクッキーのさらに手をかけているのが見える。
 アイビスはあきらめたように頭を振ると、
「お茶のおかわりはもらえるのかしら?」
と言ってクッキーに手を伸ばした。無言のまま、ジャンルーカはティーカップを自分の近くに寄せ、二杯目のお茶を注いだ。
 はっとして我に返ると、希沙をじっと見つめる目があった。テューンだ。慌ててクッキーを手に取り、
「い、いただきます」
とクッキーを口の中に放り込んだ。まろやかな蜜のような味が、口いっぱいに広がる。
 テーブルの向かいでは、テューンがクッキーの皿からクッキーをくすねようと、前足を交互に出してさらにアタックをかけている。その横で、ジャンルーカはポットを手にしたまま、また、何処かをじっと見つめていた。

「道中、重々気をつけなさいな」
老婦人に見送られながら、三人は肌に染み入る霧の中へと戻った。来た時よりも一層寒い気がするのは、体が部屋の暖かさに慣れてしまったからだろうか。
「これから先の駅は特に・・・暫くは、花一輪にも情けをかけてはいけませんよ」
言いながら、老婦人は手の平から空豆大の鈴を取り出した。
「これは――」
「いいんですよ、お使いなさい」
少し驚いている様子のストルクにひとつ握らせると、
「頼りに出来るほど強くはありませんが、無いよりは十分ましでしょう」
と残りの二つをそれぞれ希沙とアイビスに握らせる。
「それが鳴ったら、一層注意なさいな」
淡い光を発する胡桃のような美しいその鈴に見とれていた希沙だったが、
「特に、選ばれた貴女はね」
と老婦人に言われ、驚きながら頷いた。選ばれたから危険なのだろうか。だが老婦人はにっこりと微笑みかけると、
「では、また・・・指し示す導(しるべ)があるように」
と、胸の前で何かの模様を指で切ると、手を合わせた。ストルクが応えて、
「旅に祈りを・・・お元気で」
と同じ動作を繰り返す。「あいさつよ」と、目をぱちぱちさせていた希沙にアイビスが耳打ちをする。
「フェザーバードのところではやらないの?」
「いってらっしゃい、って言うけれど・・・」
あんな動作はしないな、と思いながら希沙は鈴を握り締めた。無くさないように、腕に紐で括っておいた方がいいかもしれない。
「じゃぁ~、ついて来て~ぇ」
霧の中に、再びあの青と緑の光が浮かび上がった。便利な目だ。
「近道するぅ~けど~ぉ、は~ぐれなぁ~いよ~ぅにね~ぇ」
「はぐれるとどうなるの?」
だが、答えは無かった。代わりに、「ついといで~ぇ」というあの声が聞こえるだけだ。希沙は背筋が寒くなるのを感じながら、小走りでその光に走り寄った。

 走る。
 走る。
 走る。
 誰もいない。
「アイビス?」
 誰もいない。
 誰もいない。
「ストルクさん?」
 答えは無い。
 何も、無い。
 辺りは一面の、霧。
「どうしよう・・・」
 希沙は泣き出しそうになった。ここへ来てようやく、帰りたいと強く思った。
 迷ってしまった。
 迷子になってしまったのだ。この、何処だか分からない場所で。
 あの光を追って走っていた。その隣には、アイビスもストルクも一緒にいた。確かに、すぐ傍に、それこそ手を伸ばせば届くところに、いたのだ。
 それが突然、光が消え、驚いて立ち止まると同時に二人の気配も消えてしまった。
「どうしよう・・・」
 迷子になった時、迷った場所から動かないのが一番いいということは知っている。だが、霧はますます濃く深くなってゆくし、音を吸い込んでしまうその濃い乳白色の中では、自分は見付けてもらえないかもしれない。となれば、自力で列車に戻るしか――
                                 だ
                                 め
                                 だ
                                 よ
   リ ―――― ・・・ン

 音がした。驚いて左手を見ると、硬く握り締めたこぶしから、淡い光が漏れている。鳴ったら気をつけろ、老婆の言葉が聞こえるようだ。落とさないように、一層力を込めて握り締める。

   リ ―――― ・・・ン

 動こうとした時に、何かが聞こえた。声のような気もするが、耳で聞いた感じがしない。頭に直接響いたというか、そもそも音はこの霧では聞こえないのだ。
「誰かいるの?」
希沙は叫んだ。
「動かない方がいいの?」

   リ ―――― ・・・ン
                                 待
                                 っ
                                 て
                                 て
                                 す
                                 ぐ
                                 行
                                 く
「誰?」

   リ ―――― ・・・ン
    リ ―――― ・・・ン
     リ ―――― ・・・ン

 と。
 両肩に、誰かの手のぬくもりを感じた。
 後ろに誰か
 いる


「フェザーバード!!」
気がつくと、そこは列車の前だった。
「あ、あれ・・・? アイビス・・・?」
「ああ、よかった、心配したわ本当よ、ねぇストルク!?」
「そうだよ、いつの間にかいなくなってしまって本当に驚いたよ。一時はどうなることかと・・・」
二・三度目をこすって立ち上がってみると、そこは本当に列車のすぐ前だった。あの霧の中では見えなかったというのに。
 と、
「無ぅ~事でなぁ~により~ぃ」
あの声が聞こえてきた。
「テューンさん!?」
「テュ~ン~でい~よぉ~、キ~サちゃ~ん」
にっしっし、と笑いながら、ネコが笑っている。やっぱりこのネコは喋れるんだなと希沙は思った。
 だがそんなことよりも。
「ど、どうして私、こんなところに?」
「ああ、それは・・・」
「あの人が助けてくれたのよ」
すこしムスッとしながら、アイビスはその人物を指し示した。
 赤みがかった髪の毛に、墨色のローブ。ジャンルーカだ。彼女はまるでたった今、服のまま泳いできたかのように全身ずぶ濡れだった。
「危うく、亡霊達につかまるところだったって言うじゃない、無事で本当によかった!」
ぎゅっと希沙を抱きしめるアイビスの代わりに、ストルクが口を開いた。
「彼女はその、不思議な力があってね」
「だ~れかさんのおかげでね~ぇ」
くっくっく、とテューンが喉を鳴らす。とりあえずそれを無視しながら、ストルクは続けた。
「それであの霧の中から、君を見つけ出して連れてきてくれたんだそうだよ。お礼を言った方がいい・・・たとえ、伝わらなくとも」
 希沙は、ジャンルーカと言う人物をもう一度、見た。それから近寄って、頭を下げる。
「危ないところを助けてくれて・・・」
相変わらず無表情のまま、ジャンルーカは希沙の方を見ようともせず、ずっと立ち尽くしていた。
「ありがとう、ございます」
希沙はそう言って彼女の手を取った。
 その手は、温かかった。あの時の、手と同じ。
 その時、彼女は少し笑ったような気がした。
 だが希沙が顔を上げると、やはりジャンルーカは彫像のように均整の取れた顔に、表情を浮かべることは無い。

「あ~、そ~そ~」
再び列車の前に戻ってくると、テューンが伸びをしながら希沙に言った。
「ワ~ケあ~りで、こ~れからちょ~っと列車に乗ぉ~るから~ぁ。ま~ぁ、よ~ろしく~ぅ」


 (15点配分)
( )「全体として、面白かったかどうかの報告」
( )「どこまで読んだか、その確認」
( )「気になった部分への指摘」
( )「興味深い(面白い)と感じた部分の報告」
( )「技術的な長所と短所の指摘」
( )「読後に連想したものの報告」
( )「酷評(とても厳しい指摘)」
( )「好きなタイプの作品なのかどうか」

・特に重点的にチェック(指摘)してもらいたい部分。
(                 )

・読んで楽しんでもらいたいと考えている部分。
(                 )

・この作品で、いちばん書きたかった「もの/こと」
(                 )


 かくして一行は湖の貴婦人の館へと。
 しかし藤枝さんには迷惑をかけっぱなしです。


最終更新:2014年02月16日 22:03