2005年02月04日(金) 14時04分-K
むかしむかし、そのまたむかし、またまたむかし…………あんまりむかしなので忘れてしまいました。
むかしむかしあるところに、とても親切な人がいました。どのくらい親切だったかといいますと東に病気のこどもあれば、行って看病してやり、西につかれた母あれば、行ってその稲の束を負ひ、南に死にさうな人あれば、行ってこはがらなくてもいいといひ、北に喧嘩や訴訟があれば、つまらないからやめろといひ、日照のときは涙を流し、寒さの夏はおろおろ歩き、みんなにでくのぼーとよばれるぐらい親切であったそうな。その人は死んでしまった。みんなその人は天国へ行ったと思っていた。そして永遠に平穏な暮らしをするだろうと。
でもこの世には天国も地獄も無いので、その人はたんなる土くれになったんだそうな。
めでたし、めでたし。
むかしむかしあるところに、泣き虫な角砂糖がいました。あまりにも泣き虫なので、花が枯れては涙を流し、虫が死んではむせび泣く。そのせいで、だんだん砂糖が溶けてきて、体がどんどん崩れてしまいます。
ある日、泣き虫な角砂糖は、鏡で自分の姿を見ると、自分の命のはかなさに胸が詰まってしまい、とうとうこらえきれなくなって、大粒の涙をいくつもいくつも落としました。
角砂糖はついに、溶けて流れてしまいました。
むかしむかしあるところに、あるところがありました。あるとき、あるところは、あるところであることがいやになりました。だから、あるところはべつのところにいきました。つまりべつのところになろうといたのです。でもやっぱりあるところにあるところはあるのでした。あるところはかなしみました。