2006年12月13日(水) 23時32分-川口翔輔
英語の授業中、僕は居眠りをして夢を見ていた。
その夢の中に、ずかずかと無遠慮に古川が入ってきた。古川は僕と同じクラスで英語の授業を受けている。その古川に僕は言ってやった。
「おい、入って来るときには『お邪魔します』くらい言えよ。礼儀を知らんのか」
古川はそう言われても面白そうに笑っている。僕だって本気でそう言ったわけではない。本当はうれしい。ただ、初めはその感情を押し隠して、あくまでドライにこう言うのが僕らの挨拶なのだ。
「おうおう、そう言うなよ鈴木、まあいいじゃん。だっておれもこの英語の授業つまんなくってさあ、つい来ちゃった」
そう言って古川は僕の隣に腰掛けた。僕らは二人して放り出してきた英語の授業の批判を始めた。
やがて古川がふらふらと立ち上がった。
「おれもう起きるわ」
古川は夢から出て行った。僕は「おう」と言って、それからは古川のいない一人ぼっちの夢を見た。
しかし間もなく、その一人ぼっちの夢の中にまた古川がずかずかと無遠慮に入ってきた。僕は言ってやった。
「なんだ、またか。なにしに来た」
古川は苦笑いをしている。
「それがさ、起きてみたら授業まだ50分もあったからさ、もうちょっと寝よっかなって」
「50分かあ」
僕らは懲りずに授業批判を始める。
すると、今度は平田さんが申し訳なさそうに入ってきた。平田さんは笑いながら「なんかあたしも来ちゃった」と言った。僕らは三人してあははと笑った。
平田さんの後には西岡が入ってきた。西岡の後には田辺が入ってきた。同じ英語のクラスの連中が続々とやってくる。最後に教授までもが無遠慮に入ってきた。これでクラス全員がこの夢の中に勢ぞろいしたことになる。ふと気付けば、すでにそこは教室だった。平田さんは不恰好な訳文を読み上げているし、古川もいつの間にか教科書を開いて、頬杖をついたまま電子辞書をテケテケとやっている。いつもの睡眠学習授業の開始だった。僕がまたかとうんざりしていると、溜め息交じりに教授が言った。
「はいじゃあ鈴木くん、次のとこ読んで訳して」
予習をしていなかった僕は、逃げ出してしまおうと思って、隣でテケテケやっている古川に向かってこう言ってやった。
「おい、おれもう起きるわ」
「はあァ?」
数人の笑い声がしんとしていた教室に響いて、僕ははっと目覚めた。溜め息混じりに教授が言った。
「おはよう鈴木くん」
数人の笑い声がしんとしていた教室に響いて、僕ははっと目覚めた。