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男の子の勲章

2006年12月24日(日) 04時34分-川口翔輔

  少年の心は傷付きやすい。

 食堂で昼食を済ませた僕と斎藤は、シューズを置きにロッカーに寄ってから、三限・英語リーディングの教室に向かう。ロッカールームのある文学部棟の自動ドアをくぐる直前で、二人ぴったり同時に足を止める。学部棟に入ってすぐの窓口に院生らしき二人が立っていて、なにやら手続きを待っているようだ。ドア越しにそれと確認し、僕と斎藤はそこで、いつものように全力でじゃんけんをする。まず、僕が負けた。

 腹を決めて自動ドアをくぐる。次の瞬間、僕は出来得る限り朗らかな声で言う。

 「ロッカーに寄ろっかー」

 誰も笑わない。


 文学部の窓口を足早に通り過ぎ、一度、屋根付きの渡り廊下に出る。そこを道なりに進み、再び屋内に入ると、ロッカールームの面する廊下に出る。
その廊下に入るドアをくぐる直前で二人同時に足を止める。ドアの向こうに目的のロッカールームが見える。そこから、ちょうど今、同じ学部の、見覚えのある女の子二人(しかし名前は知らない)が出てきて、こちらへ向かって歩いてくる。
 僕と斎藤はここでも、いつものように全力でじゃんけんをする。今度は斎藤が負けた。

 僕がドアを開けてやり、斎藤が先に入る。ちょうど、やってくる女の子二人とすれ違う格好になる。次の瞬間、斎藤は出来得る限り朗らかな声で言う。

 「ロッカーに寄ろっかー」

 誰も笑わない。


 僕と斎藤はそれぞれ自分のロッカーにシューズをしまい、また廊下に出た。ロッカールームに向かって左の方向に、男子用トイレのマークが出ている。そのトイレの角を折れたところに階段がある。僕と斎藤はその階段を上り、二階にある英語リーディングの教室に向かう。
 22番教室は階段を上って二つ目、右手の教室がそうだ。そのドアをくぐる直前で、またも二人同時に足を止める。曇りガラスの向こうから、三、四人の女の子の笑い声が聞こえる。きっと平田さんたちがプリンでも食べながら教授の悪口を言っているのだろう。
 ここで、僕と斎藤は三度目の全力じゃんけんをする。また、僕の負けだった。

 斎藤が勢いよくドアを開ける。平田さんたちが振り返ってこちらに注目する。僕は膝の震えを隠し、背筋を伸ばして教室内へと一歩を踏み出す。次の瞬間、僕は出来得る限り朗らかな声で言う。

 「あとで、ロッカーに寄ろっかー」

 誰も笑わない。


 このようにして日々、僕と斎藤はお互いの心を鍛え合っている。


 


 友情って大切ですね。
最終更新:2014年02月16日 22:45