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国のアスベスト対策の杜撰さを告発する

2007年01月03日(水) 16時55分-Κ

  むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがおったそうな。
 おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行ったそうな。
 おばあさんが川で洗濯をしていると、川上のほうから、どんぶらこっこ、どんぶらこっこ、とそれはそれは大きなおなかをした妊婦が流れてきたんじゃと。そこでおばあさん、「これはこれは立派なおなかじゃ。もってかえって、じさまと一緒に食っちまおう」。
 家に帰っておじいさんと一緒に、包丁でおなかを切ると、これは驚いた、おなかの中からそれはそれはかわいい、玉のような男の子が飛び出したんじゃそうな。
 「この子は妊婦から生まれたので、妊婦太郎と名づけよう」
 「それがよい、それがよい。お前は今日から妊婦太郎じゃ」
 それからあっという暇もなく、十数年がたってしまい、妊婦太郎は立派な益荒男になったんじゃ。じゃがそんな折、妊婦太郎はひょんなことから戸籍謄本を見て自分がおじいさんとおばあさんの本当の子ではないと知ってしまったんじゃそうな。
 妊婦太郎は悩んでの、悩んだ末に昔村のはずれの魔女に聞いた方法を試してみたのじゃ。「鏡よ、鏡よ、鏡さん、ぼくの本当のお父さんとお母さんはどこですか」
 「あなたのお父さんは会社のアスベスト対策がなっていなかったので、悪性中皮腫になって死んでしまいました。お母さんは国からちゃんとした保護が得られなかったので、川に身を投げたところ、おじいさんとおばあさんに捕まって食われてしまいました」
 そこで妊婦太郎は、まずおばあさんに飲ませるお茶に睡眠薬を混ぜ、眠ったところを椅子に縛り上げ、おじいさんは家に帰ってきたところを入り口のまえに掘っておいた落とし穴に落として身柄を確保した後、おばあさんの指のつめと肉の間に針をさしていき、さらに指の第一関節を一つ一つ折っていき、最後には目鼻耳喉に溶けた鉛を流し込んで殺し、もちろんおじいさんにはおばあさんの叫び声をたっぷり堪能してもらって、二三日は竹やりでつついたり、上からふたをして水を流し込んだりして十分楽しんでから、弱ったところを地面に頭だけ出して埋めて、首を錆びたのこぎりでぎいこぎいこ切り落とし、二人の死体を森の目に付くところに放置した後、国家のアスベストに対する対策の遅れを告発すべく、都に向かって旅立ったのじゃそうな。
 23世紀における、文学研究のもっとも偉大な発見は、文学解析コンピュータ「LITERAL」(何のアクロニムだったかは忘れてしもうたが、文芸解析専用プログラミング言語「epilog」(なんでもepicurean's logicの略なんだそうじゃでの)をつかったコンピュータなんじゃと)による、何ヶ月もの計算の結果、なんと大方の予想を裏切り、どんな小説にも(それどころか人生にも)教訓があることが分かったことなのじゃそうな(何でかというとどんな小説にも、この「LITERAL」を使えば教訓をつけられるからじゃ)。いままで人間の脳の容量では、その教訓がなんなのか分からなかっただけなんじゃとさ。だからこの話にも教訓があり、それは「拾い食いは良くない」ということなのじゃ。めでたしめでたし。


作者からのコメントはないように思われます。
最終更新:2014年02月16日 23:10