2007年02月13日(火) 15時00分-Κ
人は誰でも、特技のひとつぐらい持っているものだ。というわけで、今回は特技を中心に据えて、ぼくの愉快な仲間たちを紹介してみよう。ちぇきら!
―牛田君、君の特技はなんだい?
「おれの特技は、早食いだよ。急いでいるときは便利だよ」
―なるほどなるほど。じゃあ、今回は君の早食いに関するエピソードを聞かせてもらおうか
「オッケー。ある日おれは、早食いじゃ食っていけないことに気づいたんだ」
―それおもしろいね、その早食いじゃ食っていけないっての。食ってるのに食っていけないなんて。
「(無視して)早食いコンテストの賞金ていったって、高が知れてるし、毎年そんなにたくさん早食い大会が開かれてるわけでもない」
―死者が出てから風当たりも厳しいしね。
「そこでおれは、早食いの能力を何かに生かせないか、懸命に考えた。そこでひらめいたんだ。食い逃げだ! って」
―ふんふん、それで?
「食い逃げに必要な才能は食う速さじゃなくて走る速さだって気づいたのは、警察署でだったよ」
―(立ち上がりながら)インタビューに答えてくれてありがとう。これでうまいものでも食いなよ。(そう言って、笑顔で割り箸を手渡す)
―渡辺君は一見、普通の男に見えるけど、すごい特技を持ってるって聞いてきたんだ。それについて話してくれないかな。
「いいよ、実はぼくは痛みを我慢するのが得意なんだ」
―痛みを我慢?
「まあ、実際に見てみないとよく分からないよね。何かぼくに痛いことをしてみてよ」
―痛いこと?そーですねー、じゃ、じゃあ。(手の甲をつねる)
「ははは、そんなんじゃだめですよ、誰だって我慢できます」
―そ、それじゃあ、こんなのなら(中指をつかんで曲がらないほうへぐいぐい曲げる)
「ああ、それならまあまあ痛いですねえ(ごきゅる、と音がして、中指がぶら下がる)」
―ああ、すいません、すいません
「いえいえ、大丈夫です、これくらい。どうってことありません」
―あの、本当に痛くないんですか?
「だから違うんですよ。痛くないんじゃないんです。痛くないんだったら単なる特異体質で特技でも何でもありません。僕の場合はちゃんと痛いんです。単に我慢しているだけなんですよ」
―じゃ、じゃあ、これならどうですか(いすを持ち上げて、思い切り頭に振り下ろす)。
「(頭から血を流しながら)まだまだこれくらいなら余裕です」
―それならこれなら(すべての爪の間に熱した針を差し込んでいき、唇にナイフでしいたけみたいな切れ込みを入れていく)。
「これならまえにやったことあります」
―だったら、こうしてやる(男性自身をこすって無理やり勃起させて、尿道口に毛羽立たせた爪楊枝を入れて、途中で折って出せないようにして、同時に眼球に芥子を塗りこむ)。
「おおっ! これはかなり痛いですねぇ! もうそろそろ我慢できなくなりそうです」
―(肛門を剃刀で拡張して、生きたねずみを入れようとしながら)もし我慢できなくなったらどうなるんですか?
「痛がるに決まってるじゃないですか」
―山之内さんにはすごい特技があるって噂だけど。
「私の特技はね、勘違いすることなの!」
―それって、特技じゃなくて、欠点じゃないですか?
「えっ!」
―今日は国内随一と名高い山寺さんの特技を見せてもらいに来ました。よろしくお願いします。
「(立ち上がって)呼びます」
―(顔を見上げて)へっ、なに? なんですって?
「(両手を高く掲げて)呼びます!」
―(周りを見回しながら)よ、呼ぶって何を?
「(叫ぶように)呼びます!!」
(つづく)
―鳥羽君は、いきなり絶望する、という超絶美技を持ってるんだよね。
「特技っていうほどのものじゃないんだけどね」
―僕にはちょっと信じられないね、いつも明るい鳥羽君が絶望するなんて。
「誰だって、暗い気分になるときはあるでしょ。まあ、それがちょっと激しいだけなんだよ」
―へえ、じゃ、インタビューを続けるけどさ、いきなり絶望するコツは?
「世の中って、必ずしも明るい面ばかりじゃないじゃん? やっぱり、暗黒面てのがあってさ、普段はそっちにはなるべく目を向けないようにしているわけよ。だから、ただその目をそむけているほうに目を向ければいいってだけの話」
―そんなに簡単に目を向けられるんですか? いつでもどこでも。
「簡単だよ! ただ、みんな目を向けようと思わないだけさ。たとえばさ、普段は忘れているけど、僕らはみんないつかは死ななければいけないわけじゃん。そして死んだら二度と生き返らない。この宇宙がこれから何百億年続いたとしても、絶対に僕はそこにいない。そして当の僕は何も感じることはできず、何も考えることはできず、まったくの闇、闇ですらなく、まったくの虚無、虚無ですらなく、もちろんそんなものは想像不可能だけど、想像不可能だからこそますます怖く(突然顔を上げて、中空の一点を見つめ続ける)」
―どうしました?
「(立ち上がって)ぎゃあああゝゞ@☆>£∞㍊♂♀㊤ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!??(窓に向かって全速力で走っていくと、そのままガラスを突き破って、三階下の地面に激突した、即死)」
―今回は、岡島君にインタビューだ。岡島君、君の特技はなんつったって混乱することだよね。
「違うよ」
―………………………………
「………………………………」
―………………………………
「……………あっ! そうだった、そのとおりだ!」
―(安心して)そうだよね、よかった、びっくりしたよ。
「そう、ぼくの特技は乱婚だよ」
―乱婚?
「そう、乱婚」
―一人で乱婚は無理じゃないかな? 一夫多妻ならまだわかるけど。
「へっ? あ、え、え~と、ら、ら、ら、らっこ、コーラ、コーラン、混乱! そう、混乱だよ! 混乱!」
―そうだよね、ははは。驚いちゃったよ。
「ごめんなさい。よく考えたら、最初から混乱て言ってたね」
―言ってたっけ?
「言ってたよ」
―言ってないような気がするけど。
「言ったよ。君の特技は混乱する事だって」
―ああ、ぼくが言ったって意味か! 混乱しちゃったよ。
「違うよ。混乱したのはぼくだ! あんたじゃない」
―いや、だからね、君も混乱したかもしれないけど、ぼくも混乱したわけで……
「あーっ! 盗んだな!」
―ちょちょちょっと待って! 少し落ち着こう。
「するとお前の特技がぼくの特技になるわけだからぼくの特技がぼくの特技じゃなくなるわけですると僕がぼくじゃなくなるわけだからおかああああさああああああああんんんんんんん」
―すみません、誰か救急車呼んでください。
「あたしの特技はねぇ、ほんのちょっっとしたことで走馬灯を見てしまうことなん」
―たとえばどんなことで見てしまうんですか?
「こん前は、たんすの角に小指ぶつけてしもうときに見たし、全校朝礼に貧血でぶっ倒れたときに見たこともあんねん。プールでなんか泳いでみてみい、毎回やで」
―どんな感じに見えるんですか?
「そやな~、なんやしらへんけんど、えらいきれいくて、気がとおなったとおもうと、水にぷうかぷうか浮いとるよおな、気持ちよおなってな、んで目の前をいろんなちいさいころのことが、順番にってわけでもないみたいなんやけど、あっ! あっ、あっ!」
―どうしましたか?
「いま、ちょおど見えとるところやねん。ガキのころのおもいでとか、ああ、ああ、あんなことよおやったなあ、怖いもの知らずもいいところや、ははは、そないなこともあったなぁ」
―どんなものが見えてるんですか?
「ちょいとまちいな! 見終わったら説明するから! ああ、この頭ぼうっとなって、指先が冷とうなるんが気持ちええねんな。ああ、なんや、目の前が暗く…………」
―ちょっと? 大丈夫ですか? 尾上さん? もしもし? すみません、誰か救急車呼んでください!