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F研(別名:ショートもどき)

2007年03月01日(木) 08時45分-藤枝りあん

 『花柄では決してなかったはずだ』

 ある日、会長がまたいつものごとく突拍子のないことを言い出した。
「サブ、お前は傘を忘れる」
「この土砂降りで?」
「だからこそ安心して傘を忘れるかもしれないだろう? だから会長として忠告してやっているんじゃないか。ありがたく思え」
「ハイハイ」
 この雨の中、どうやって傘を忘れるというんだ――会長が自分の傘を捜している間、俺はそんなことを思って傘立てを覗き込んだ。
 だが、会長の予言は見事に的中していた。
「・・・会長、俺の傘、どれでしたっけ?」

『結局会長と相合傘をするハメに・・・』



『ドッキリだと信じたい俺がいる』

 ある日、会長がまたいつものごとく突拍子のないことを言い出した。
「そうだ、百物語やろう」
「いつスか」
「今夜」
「場所と道具は――」
「寄宿舎のお前の部屋、あとローソク買ってこい」
 Noと言える日本人、それが俺。Noと言わせない日本人、それが会長。
 そんなわけで百物語開始。とはいえ極少部員を誇るF研究会(通称:F研)において百まで話を考えるのは至難の技だ。大半は本やホラーサイトからの転用で聞いたことがある話ばかり。
「それでその鏡の中に――」
「それさっきも言ってません?」
「さっきのは廃墟、今度の話は車のミラーだ」
「同じです」
「しょうがないじゃん、大体この人数で百まで話せないって」
「そうだぞ、サブ! そういうお前こそ、さっきの話は非常によく似ていた! なあ! そこの誰か!」
「ええ!」
「そうだぞ!」
「って、ちょっと! そこの誰かって誰スか!?」
「知らん!」
「失敬な! 会長もサブ会長も、俺ら誘ったの忘れちゃった!?」
「呼んどいてそりゃーないでしょ!」
「身に覚えがない!」
「私は記憶がない!」
 とりあえず人数を確認すると、ありえない数になっていた。
「よし、これでわがサークルも安泰だ!」
「入会させる気スか!?」
「当然だ! ぬらりひょんだか座敷わらしか知らんが、百物語が完結しなければやつらも姿の消しようがあるまい! 寝るぞ!」
 まだ五十物語もいっていないという俺の心の叫びは会長には届かなかった。結局、そのまま勢いで全員俺の部屋で一泊することになってしまったのである。
 しかし、残念ながら会長の願いはかなえられなかった。
 朝起きてみると、部屋にいたのは。
「会長、俺ら、昨日は誰も誘ってなかった、ですよね・・・」
 俺と、会長、ただ二人だけ。

『やはり墓場のローソクだったのがまずかったのだろうか』


『個人的にはインフィニ』

 ある日、会長がまたいつものごとく突拍子のないことを言い出した。
「サブ、今日お前は車にひかれる」
 時刻は夜の10時を過ぎている。会長が押し掛けで俺の部屋に泊まりにきており、もう外出の予定はない。
「コンビニにパシリとかしませんからね」
「別に、もう雑誌とかジュースとか買ったから必要無しなんだが」
 いったい何を言い出すやら、と思いながら会長が買ってきた雑誌のページをめくる俺。
 その瞬間、会長の予言は的中した。
「この車、いいな・・・値段も手ごろだし・・・」

『買ったら乗せろと会長に言われたが、下宿先では買えません』


『夢を見た』

 ある日、会長がまたいつものごとく突拍子のないことを言い出した。
「サブ、貴様よくも約束をすっぽかしやがったな」
 仮面の笑顔の下に見えるのは般若の形相だ。
 入園以前からずっと腐れ縁だった俺にはわかる。いや、わかってしまった。弁明する前に殺されることが。
 短い人生だったな、俺。もし次があるなら、約束事は証拠を取っておくことにしよう・・・

「・・・という夢を見たわけで」
「ほぉー、貴様の中でこの会長のイメージはそんなバイオレンス野郎なわけだ」
 短い人生だったな、俺。もし次があるなら、会長にうかつに事実を打ち明けないことにしよう・・・

「・・・という夢を見た夢を見たわけなんでしょうかね?」
「そうか。ところでサブ、この会話もまた夢だったとかいうオチはないだろうな」
「まさかー。もうそろそろ俺だって起きてますよ」
「そうか。ところでサブ、貴様よくも約束をすっぽかしやがったな」
 結局、短い人生だったな、俺。

「・・・という夢を見た夢を見た夢を見たような気がするんですが」
「そうか。ところでサブ、そんなものが言い訳になるとでも思ったのか」
 あえて長い人生だったと思ったらどうなるんだろう、俺。

「・・・というのは夢だったのでしょうか?」
「夢だろ。ところでサブ、昨日の約束のことなんだがなんですっぽかしたりしたんだ」

『・・・という夢だったかもしれない』


『世界に3人はいるらしいけど』

 ある日、会長がまたいつものごとく突拍子のないことを言い出した。
「サブ、貴様よくも約束をすっぽかしやがったな」
 デ・ジャ・ヴ。
 しかし、俺には言い訳する暇すら与えられなかった。会長のチョークスリーパーによって、すべては決した。
「昨日の昼飯はお前がおごるって約束だっただろぉがぁーー!!!」
 確かに、そんな約束しましたよ。ええ、言いましたとも。
「でも、昨日はちゃんと俺がおごったじゃないスか」という言葉は声にならなかった。
 結局、俺はその「約束」を破った罰として味噌ラーメンをおごらされることとなってしまった。
 なんでも昨日は一人でむなしくMバーガーを食べる羽目になってしまったらしく、会長は非常にご立腹だった。
 一方の俺は「約束は守った」と繰り返し伝えたが信じてもらえない。いや、演技なのかもしれない。俺に二回おごらせるために!
 そこで俺は会長にあきれられるほどにお互いのケータイで写真を撮り、しっかり保存して写メまでして、おごったことを確認させた。ぶっちゃけ1000円の出費が2回は正直痛いのだ。
 会長があきれてたが気にするものか!

 で、次の日。
 もう今日はおごらないと心を決めていたところ、また会長が突拍子のないことを言い出した。
「サブ、貴様よくも約束をすっぽかしやがったな」
 デ・ジャ・ヴ。
 しかし、俺には言い訳する暇すら与えられなかった。会長のコブラツイストによって、すべては決した。
「昼飯は一人じゃ飯がまずくなるから一緒に食べるって約束だっただろぉがぁーー!!!」
 確かに、そんな約束しましたよ。ええ、言いましたとも。
「でも、昨日はちゃんと一緒に食べたじゃないスか」という言葉は声にならなかった。
 そこにもう一人の会長が現れてこう突拍子のないことを言ったからだ。
「サブ、今日は金欠で哀れなお前のためにこの会長が一食おごってやろうではないか!」
 俺。
 俺にコブラツイストを決めている会長。
 そこに現れたもう一人の会長。
 二人の会長が見詰め合う・・・あれ? 修羅場の予感。
 そして現れた会長が一言。
「お前誰だよ?」
 一方の会長も答える。
「会長」
「嘘付け。偽者」
 埒が明かないと、二人の会長は俺を残して部屋を出て行った。
 ・・・
 しばらくして会長が一人戻ってきた。いや、会長は一人なんだけどさっきは二人いたわけで。
「会長、結局どうなったんですか?」
「さぁ・・・気付いたら偽者はいなくなってたけど?」
 いいのか会長、そんなんで。
 そしていいのか俺、そんなんで納得してて。
「じゃ、メシ食いに行くぞ。豚丼おごってやる」

『じゃあ俺がおごったのは本物か偽者か・・・どっちなんだ?』


『ドッペルゲンガーに会うと本人は・・・って言うけれどさ』

 ある日、会長がまたいつものごとく突拍子のないことを言い出した。
「・・・駄目だ、もうすぐ死ぬかも」
 突拍子無さすぎ。
「いやいやいやいやいやいややめてやめてそんなことを言うのは!」
 だがこういう微妙な予言をしたときの会長は大真面目、本気そのものだ。
「何かあったら、後はお前に頼んだからな」
 この時俺は会長の言葉を冗談だと思っていた。
 しかし、俺はすぐに俺の愚かさを知ることとなった。
 いまさら悔やんでも遅いが、あの時、もう少し俺が会長の言葉を真剣に受け止めていたら・・・

 しばらくして、会長は死んでしまった。
「会長ぉ! 何であっさり死んじゃうんスかぁ~~!!!」
 俺はあまりのことに涙が出てきた。
「しょーがないだろ! いくら会長とはいえアクションゲームは苦手なんだ!!」
「だったらイージーかノーマルモードでいいでしょー!?」
「アルティマニアじゃないとレア武器が手に入らないんだッ!!」
 だのに改造コードは邪道だと言ってはばからない会長。
「ほら敵が来たぞ! ボス倒せば終わりだ! 頑張れ!!」
 残された俺は一人で地獄の苦しみに立ち向かうことに・・・
「ぎゃー! 弓兵ー!! ドット体力ー!! ボス強ー!! あああああー!!」

『俺の方が瀕死・・・』


『流れるプールで流されるのが好きだといったら「そうだと思った」だってさ』

 ある日、会長がまたいつものごとく突拍子のないことを言い出した。
「プール行こうぜ、サブ」
「こんな時期に? 会長と?」
「こんな時期だからこそ、F研一同が集まって室内プールに行きたいんじゃないか!」
 F研、現在部員数2。念のため。
「えぇ~・・・二人っきりッスか~?」
「そうだ、二人きり――ってこのエロス! 何期待してんだ!!」
「何なんスか! この前は『周囲の噂は気にしない』とか宣言してたじゃないスか!!」
 最近、俺らが付き合ってるとかいうよからぬ噂があるらしい。根も葉もない噂だ。
 会長と俺はただの腐れ縁。赤ちゃんの時からずっと、だけど。
「二人きりなんて言うからだ、バカサブ!! よからぬことしようとしたら海底ならぬプール底に沈めてやるからそう思え!」
「別に会長のペタ胸なんて見たく無いッスよ」
 決まり手は張り手。しかも両手。
 結局俺は、会長に散々「羽子板」だとか「貧乳」だとかののしられた上にプールに連行された。
 ってか「羽子板」じゃなくて「まな板」か「洗濯板」だよな、普通。それに俺男だからダメージ無いし。
 ・・・ってことは会長にはダメージがある言葉なのか? 「羽子板」って。
 よくわからん人だ、会長は。
「ちなみに俺、水着は高校の時のしか持って無いッスよ」
「案ずるな、サブ。こっちも水着なんて高校の時のしかもってないぞ!」
 ちなみにうちの高校は男女共にいわゆるスクール水着。
「・・・水着買ってからプールに行きやしょうぜ!」

『そして危うくビキニを買わされそうになる俺・・・それだけは勘弁してくださいッス』


『俺は何もやましいことはしていない、はずだ』

 ある日、会長がまたいつものごとく突拍子のないことを言い出した。
「サブ、飛込みしないか?」
 ちなみに、今俺たちはプールに来ている。前回の続きだ。
 水着だが、結局俺は無難なトランクス、会長は競泳用に惹かれていたようだったが俺の静止を聞いてくれたようで無難なところで落ち着いている。色が若干派手なような気もするが気のせいだろう。
 ついでに会長の腹筋がわれかけてて俺がショックを受けていることは秘密だ!
「高いところはちょっと・・・」
 そして、俺は流れるプールで17週目のところだった。流れるプールって一見流れが弱いように感じるが実は逆流して泳ぐことが出来ないほど強かったりする。
 つまり俺はまだまだまったりしていたかったわけで。だから決して会長よりも貧弱なボディに嫌気が差したわけでもなければ、高いところが苦手で足が震えるわけでもないことを付け加えておこう。
 さて、それはともかく、水から引っ張り挙げられて引きずられる前に何とか言い訳を考えなければ、と俺は思った。
「あの、会長、実は今――」
 と、次の瞬間。
   ザブッ
 という音がしたかどうか定かではないが、俺は海底ならぬプール底に引きずり込まれた。
 周りに人がいないからたぶん会長だったのだろう、人影がプールに飛び込んだのが見えたような気がした。
 口から盛大に水を飲んで、鼻に水が入ってツーンとして、頭に載せてた水中ゴーグルが外れて目が痛んで、足がどうなったのか気付いていられなかった。
 ただ何となく、会長が俺の右足から何か黒いものを引き剥がそうとしているらしいことが分かった。
 ・・・気を失ったわけではないが、何が起こったのかはいまいちよく分からなかったわけで。
 俺が水ではなくて空気を吸い込んだとき、傍らには会長が真っ青な顔をしてへたり込んでいた。その隣には係員らしき人がいるのも見えた。大丈夫ですか、と聞かれたので俺は頷いておく。
「足がつっちゃったみたいで、ご心配かけました」
 とりあえず足が痛んだのでそう言っておいた。まぁ、むせてたので完璧には伝わってないだろうけど。
 それから休憩をして、結局は体力を回復させてから遊んで帰ったわけなのだが。
 どうやら俺は足がつったわけじゃあなかったらしい。
「会長、あの、俺の脚・・・」
 何故なら俺の右足にはくっきりと、紐で何重にも締められたような跡が。
 そう、まるで長い髪の毛に巻きつかれていたかのような・・・
「大丈夫だ、サブ。アレならちゃんと捨てといたから」

『いろんな意味で、いいのかなぁ・・・』


仮復活を祝ってこんなものしかできません。シリーズで続けれるか挑戦中。

「会長の性別ってどっちさ?」という質問を受けたので、その答えを追加。
答えになってないとか言わない。

さらに追加。
よかった、自分以外に作品をあげてる人がいて。
最終更新:2014年02月16日 23:26