2007年10月31日(水) 23時17分-穂永秋琴
バルザックの中編小説「魔王の喜劇」に収められた素晴らしい挿絵を見て着想した。
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氷の瞳をはれぼったいまぶたで覆い
でっぷりとした腰を玉座に落ち着け
しみだらけの腕を肘掛けに委ねて
老いらくの魔王は口もとをゆがめている
地獄の新入りたちが演ずるのは
血も毒も火も剣もない夢幻劇
瑣末な破滅の悲喜劇を見やりながら
魔王は静かに笑っている
憤怒のために燃え上がっては
地獄の獄卒どもを震え上がらせたあの瞳も
今は炭のよう
毒の剣をとり、異獣を率いて
叛逆の軍勢を指揮したあの腕も
今は鉛のよう
ごくまれには慟哭し
しばしば高らかに哄笑したあの口も
今はただ微笑みを浮かべるだけ
はるか去った悲劇の時代を懐かしみながら
魔王は静かに笑っている
劇の不出来を憫れんで
怠惰な自己をば嘲って!