2008年09月19日(金) 02時06分-K
人類はついに火星に到達し、テラ・フォーミングによって、人類の生活圏を大幅に広げた。そしてアステロイド・ベルトでの資源開発と核融合技術、縮退エンジン技術の研究、太陽付近でのエネルギー採取等により、ほぼ太陽系全土への人類圏の拡張を果たし、恒星間ラムジェットエンジンによる世代宇宙船の外宇宙移民団まで編成され、銀河への人類の種子として飛び立っていった。
また、脳・コンピューター・インターフェイスの研究は、脳のコンピューターによる補助を可能にし、知能の人工的加速を実現し、DNA‐RNAシステムの改変も含めた遺伝子工学に代表される生命工学と、サイボーグ化技術及びナノテクノロジーの融合は、一人一人の人間に、自らの体をデザインする自由を与えた。人類の自然進化からの離脱、自律進化の夜明けである。人々は体だけでなく知能まで操作をはじめ、その日の気分により気分を変えられるようになっては、感情や性格等の概念はもう意味を成さなくなっていた。一つの自我に対して、いくつもの肉体を割り当てたり、一つの肉体にいくつもの自我を押し込めたりしているうちに、自我という概念も希薄になり、そしてその自我という情報生命体は、より大きな情報を求めて寄り集まり、「人類」という一つの巨大な超生命体を形作った。
「人類」は次のステップへ踏み出すための膨大なエネルギーを確保するために、太陽の周りをすっぽり覆うダイソン・スフィアを建造し、太陽の全エネルギーを使用可能にした。そして水星と金星の軌道の間に浮かぶ回転する超巨大加速器により、プランク温度を超える温度を作り出して、時空構造を破壊し、通常の物理法則が通用しない得意点を裸の状態で作り出した。それはすぐに通常空間へ復帰してしまうが、プランク時間ぎりぎりのタイミングで、プランク距離すれすれの精度で、そこに介入することにより、物理法則に対する局地的人為的介入に成功したのである。それにより重力定数、光速、プランク定数をいじることにより、「人類」は惑星のデザイン、生命のデザイン、知能のデザイン、に続いて、宇宙のデザイン、世界のデザインを可能にしたのである。これにより人類は超高速航行、ワームホールによるワープ、人為的真空の相転移、局地的インフレーション、人工ビッグバン、基本粒子の改変(質量や電荷、色荷、フレーバーの改変、さらには数を増やす、数を減らす、もしくはどこまでも分割可能として基本粒子なしとすることもありうる)、同様に四つの基本相互作用の改変、次元数の改変、無限次元のヒルベルト空間的宇宙、シミュレイテッド・ユニヴァース、論理構造の改変、シミュレイテッド。ユニヴァースの連鎖による本質的「不思議の輪」(GEBの意味での)、閉じた世界線、と無限の可能性を手に入れ、全宇宙を我が物とし、まさに神となったのである。
というところで彼は目を覚ました。彼はその夢を理解できなかった。なぜならその原始人だからだ。彼は隣で寝ている男に夢の話をしようとした。ちなみに二人に名前はない。まだそこまで言語が発達していないので、個人は名前でなく、匂いや姿の記憶と集積として認知されている。
「うほ、うほほ、うほうほ、うほほほほほほ、うっきゃ、うほほ」
とても不思議な夢を見たが我々の単純な言語では表現できない、という意味である。しかし彼のその貧弱な脳髄にはその後の人類の神への進化の可能性がつまっていたのである。
「うっがーー!」 ぼこっ
うほうほじゃ何を言ってるのか分からん! という意味である。ぼこっ、というのは殴った音で、これは黙れ、という意味の肉体言語である。その衝撃で人類の神への進化の可能性は潰え、その二ヵ月後人類は水虫で滅びた。
こんなことしている暇だけは絶対にないはずなんだ。
最終更新:2014年02月17日 13:08