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現代子不語拾遺集

2008年11月22日(土) 23時42分-K

 私がさる友人の母親から聞いた話。
 愛知県は瀬戸市に天下に類稀なる美しい髪を持った女がいた。女はその腰まである長い髪を毎日傅きたちに手入れさせ、丁寧に梳らせ、満遍なく香油を塗らせていた。そうすると女の髪はますます輝くのだった。
 そんなとき、彼女の家に一人の新しい下働きの少女が入った。粗末な身なりの少女だった。しかし彼女を見たすべての人は、まったくなんの手入れもされていない、長さもせいぜい肩までの、彼女の髪の美しさに気付かざるを得なかった。ただその少女のみが自分の髪の美しさに気付いていなかった。
 女はその少女をひどく疎ましく思った。それで深夜に用を言いつけて自分の部屋まで呼び寄せてその少女を殺してしまった。そしてその髪を貪り食ったのである。
 次の日から女の髪はより一層艶やかさを増し、まさにこの世のものとは思えなくなっていった。誰もが目を見張り、目を疑った。
 しかしその頃から、女は髪が口の中に入る、と漏らすようになった。また、髪が目の中に入るとも。そんなある日彼女は自慢の髪をばっさりと切ってしまった。誰もその理由は分からなかったが、次の日彼女は寝床で冷たくなっているのを見つかった。短くしたはずの髪はまた人の背丈以上に長くなっており、その髪が首にきつく巻きついていた。

 稲稲子曰く、女は髪の毛により縊り殺されたのである。髪は女の命と言うくらいなのだから、髪に女の命が宿ることもある。この話は、人を殺すことはよくないと言うことを表している。


 一宮に住むある夫婦、夫が絵をたしなみ、素人ながら卓越した技術を持っていた。彼は妻がまだ美しいうちに、その美を永遠のものにしようと、カンヴァスの上にその精髄を閉じ込めようとした。その絵は完成が近づくにつれ、次第に生きているように見えた。そしてそれとともに妻はだんだん生気を失い、床に臥しがちになった。夫は絵の完成をますます急いだ。そして絵の完成とともに妻は死んだ。
 そこで夫は初めて、自分の間違いに気付いた。確かに残された絵は生気に満ち、美の結晶と言えたが、それが何であろうか。現実の妻は死んでしまったのだ。夫は悲しみに暮れ、最後のときを絵にかまけ、共に過ごさなかった自分を憎んだ。夫は妻の棺おけに完成した絵を入れ、ともに燃やすことにした。その棺おけは焼き場まで運ばれ、炉の中に入れられた。そして火の中に入れられてしばらくした後、炉の中から、女性のうめき声や叫び声が斎場全体にこだました。

 稲稲子曰く、その妻は絵に生気を吸い取られて死んだのである。だから、絵を一緒に燃やせば、当然絵のほうが先に燃えるから、生気が流れ出て、妻は生き返ったのである。このように人を葬るときは気をつけなければいけない。

後代の偽書。文体で分かる。
最終更新:2014年02月17日 13:12