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心理ゲーム

2009年04月29日(水)16時25分-K

 あなたは心理ゲームの登場人物です。あなたは朝起きると草原にいました。周りを見回すと、一軒の小屋が建っています。あなたはその中に入ります。拒否権はありません。小屋の中には机が一脚あるきりでがらんとしています。窓のカーテンが閉まっているので薄暗くて物がよく見えません。あなたはカーテンを思い切り開いて、太陽光を中に入れます。するとあなたは机の上に何かがおいてあることに気付きます。それは手鏡でした。あなたはそれを覗き込みます。すると一体何が映ったでしょう? 無論、あなたに選ぶ権利はありません。大体、鏡に何が映るかをあなたがどうやって決めるというのですか。これを選ぶのは心理ゲームの読者です。あなたはその選択に従うことしか出来ません。読者が選んだのはアレイスター・クロウリーの握りこぶしを頬につけて変な帽子をかぶったあの有名なポーズです。そしてそれは、読者の理想的自我の像なんだそうです。何でかは知りません。もちろんあなたは読者ではないので、その像はあなたとは何の関係もありません。何の関係もないものを見るために草原の一軒家までつれてこられてえらい迷惑な話ですね。この心理ゲームはここで終わりですので、そんな珍妙なものが映った鏡を見てあなたがどう反応したのかは知りません。本には何も書いてありませんし。あなたがアレイスター・クロウリーを知っているかどうかも知らないので、どう反応したのか予想しようもないですしね。
 さてあなたは次の心理ゲームの登場人物でもあります。前の心理ゲームの登場人物がどうなったかは知りません。多分、今でも鏡とにらめっこをしてるんじゃないですか。あなたは森の道を歩いています。暗いくらい森です。すると道の横の草むらから、何かが飛び出しました。それは一体何でしょう? 一体何なのか、あなたも気になるでしょう。しかし、読者が回答するまでもう少しお待ちを。それまでは如何なるリアクションも出来ない宙ぶらりん状態を我慢していてください。この際ですから、この空き時間を使って、その宙ぶらりん状態を楽しむコツでも発明したらどうです? でないとこの先、その仕事続けられないでしょ? おっと、読者が答えたようです。答えは振り子の先に付いたギロチンだそうです。でこれは、えっとなになに? 読者の本当の姿なんだそうです。何でかは知らないったら知らないです。知りたくもありません。多分理由なんてないんでしょう。だいたい、本当の姿ってどういう意味なんでしょうかね。本当の姿が振り子の先に付いたギロチンというのも意味が分かりませんが。大体この読者の空気読まなさっぷりもアレですが、何つうのか、面白いと思ってるんですかね、こいつ。ただ単に外せばギャグになると思ってるのは、腹立たしくすらありますね。殴ればいいんですよ、殴れば。まあ、ただこいつの場合、馬鹿なりにウケを狙ってるんだろうということが分かるからまだ可愛いもので、人によっては答えの意図が全く分からない奴がいて、質問したとたん間髪いれずに「森の中を通っているのは国道○○線で、国道○○線は青森のどこそこを云々かんぬん……」とのべつまくなしにまくし立て始めて、とても困惑させられたことがありましたが、あいつは一体なんだったのか。そういえばそいつが送ってきた年賀状は川と日の出の写真で「これは木曽川での初日の出ですが、この木曽川は愛知と岐阜の県境ではなく、上流のうんたらかんたら……」と書いてあってとても困惑したのだが、大体元旦に初日の出の写真が送られてくるというのは、いつの初日の出なんだよ、という話である。そういえば、暑中見舞いも送られてきたが、なんだか別荘めいた建物の傍らのプールサイドでの写真で、それ以降そいつのことを「ブルジョアの豚野郎」と呼んでいたのもいい思い出だが、思い出してみれば随分筆まめな奴だ。返事を書いた覚えがないが。今どこで何をしているのか全く知らないし知りたいとも思わないし、会いたくもないが、変な奴だったなぁ。なんの話だっけ。ああ、すみません、あなたのことを忘れていました。でも、思い出した所で、あなたのためにできることは何もありませんから、突然ギロチンに襲い掛かられて大変でしょうが、自分で何とかしてください。
 それはさておき、あなたは今度は迷路の中をさまよっています。ギロチンはどうなったのかと思うかもしれませんが、思っても無駄なので思わないで下さい。書いてないことは、知りようもありません。あなたはただ書いてあることに従っていればいいのですし、それ以外にやりようもありません。恨むなら自分の境遇かあなたのことを考えもしない読者にしてください。あなたはしばらくグルグル回っていると、自分の足元に何か落ちていることに気付きました。一応言っておきますけど、この「グルグル回る」と言うのは一箇所で灯台みたいにグルグル回るという意味ではないと思います。原文に但し書きが書いてあるわけではないんで、はっきりとは申し上げかねるんですが。さあ、一体それは何でしょう? もうなんだか、別になんだっていいでけどすね。くだらなくてやってられませんよ。こんなくだらない本の登場人物であることが恥ずかしくないんですか? 何とかしてみようと努力してこなかったんですか? もちろん努力したってどうしようもありませんけどね。本当にかわいそうな人ですね。世界で一番くだらない本の、くだらなくて馬鹿で自主性のない哀れな登場人物。具体的に例を出すなら、高校の同級生だったО友君と同じくらい馬鹿で哀れだ。親の家業継ぎたくなかったからって、殴り殺さんでもいいのにね。馬鹿だね。ちなみに落ちてたのは、落とし穴だそうです。そんなものどうやって落ちてるんだか分かりませんけど、何でもそれが今読者に一番必要なものなんですって。そりゃ良かったね。ただあなたにとっては明らかに落とし穴は必要とは言いがたいし、床に落ちている落とし穴を前に、何をすればいいのか分からないあなたの姿が眼に見えるようだけど、拾うなり落ちるなり好きにしたらいいと思いますよ。この心理ゲームももう終わりだから、勝手にやってて。何をすればいいか分からなくなったら、そこで永遠にグルグル回ってたらいいんじゃないかな。じゃあね。


下らない
最終更新:2014年02月17日 13:33