2012年02月19日 (日) 10時48分-すばる
窓の外では、雪が降っていた。積もっているとは言い難い程度の雪が風景を疎らに染め、深々と降る雪はおそらくそれも、積もるとまではいかないだろう。この冬は例年に比べ雪の日が多かったけれど、立春もすぎ、そろそろ見納めを迎えているのかもしれない。だけどもう私だって、雪ではしゃぐような歳じゃない。雪はただ、雨以上に通学を面倒にするだけ。電車で通学している姉や兄もしばしば愚痴をこぼしている。だのに雪を見ると、心の奥底がむずがゆくなる。どうして? 私はもう小学校も最高学年の六年生、なのになんで雪遊びをしたいなんて思ったりするの? そんなことない。だってもう、中学生になるんだから。そういうわけで私は、テレビを前に炬燵でポテチを食べていたんだけど、呼び鈴がそれを邪魔した。
「冬美ちゃん、あそぼっ!」
玄関を開けると目の前に加奈が立っていた。約束をした覚えはなかったけど、私もちょうど暇だったんで、招き入れる。
「ええー、それよりも外で遊ぼうよ。せっかく雪降ってるんだから。」
どうやら、雪が降ったから遊びに来たらしい。もともと加奈は、いまだに鬼ごっことかかくれんぼとかをやろうと言い出すのだ。でも、しょうがない。せっかく来てくれたんだ。付き合ってやるか。
近くの公園には一、二年生か、もしかしたら幼稚園児かもしれない小さな子が二人いた。やっぱりもう大きいんだから、雪遊びなんてするもんじゃない。そもそも積もってないし。だけどそんなことお構いなしとばかり、加奈は土交じりの雪をかき集める。
「雪だるまつくろう!」
加奈は大はしゃぎだ。私も彼女に倣い雪を集める。ブランコの上、生垣の上、地面の上の雪はほとんど取りつくし、そんなところのまでかき集めて、何とか小さな雪玉二つができた。重ねてみると、一応それなりの形にはなった。
「ねえ、冬美ちゃん家に、ボタンとかってないかな? 目を作るのに。」
ちょっと加奈、まさかそこまでやるの? そう突っ込みたかったけど、たぶん無駄だろうからやめておいた。加奈はそういう子なのだ。
「うん。あると思う。すぐとってくるから、ここで待ってて。」
私はそう言って駆け出す。いつの間にか差してきた日の光の下、大急ぎで家まで戻って、裁縫箱の中を漁る。確かお母さん、ここにそういうの入れていたはず。たくさんあったから、ちょっと借りたってきっとばれないだろう。なるべく小さくて黒い、同じ形のやつを二つ選んだ。それから、さらに三つ。これは雪だるまの服用。三つもいらないかもしれないけど、念のため、どうせ戻すんだからあまっても大丈夫だし。でもこれが意外に苦労した。同じ形のボタン、三つもないし。早くしなきゃと焦るも、何とか見つけ出す。
見つけた後は公園までダッシュ。遅れた分急がないと、でも、そういう時に限って靴がなかなかはけない。それでも何とか足を突っ込み、公園にたどり着いた時には息が上がっていた。冬なのに汗が出た。入り口のところで息を整え、加奈のもとに向かう。が、
「あれ、雪だるまは?」
「ああ、ごめんね。崩しちゃった。」
えっ、ちょっと。なんで?
すると加奈は公園の反対側を指差す。そこには、小さな二人組と、一つの雪だるま。
「なんか、胴体だけしかできないって困ってたから。」
雪だるまには木の腕が刺さり、帽子がかぶせられていた。目もついている。なんかちょっとだけむっとしたけど、まあいいやと思った。だってもう、中学生になるんだし。
ヘックション!
帰り道、手袋や靴下に寒風吹きすさび、すごく寒い。手袋をとってみるとてのひらは赤くなっていた。ああ、こうなることはわかっていたはずだけど、どうしてかやってしまうんだ。早く帰って炬燵に入ろう。
最終更新:2014年02月17日 14:35