2004年11月30日 (火) 14時49分 - 百川
第二回名古屋大学最強王決定トーナメント
【B‐1】
開 催 決 定
名古屋の一角にそびえ立つ最高学府・名古屋大学。平成16年7月4日、この地をかつてない戦慄の嵐が包み込んだ。嵐の名は、第二回名古屋大学最強王決定トーナメント。二ヶ月前に行われた第一回大会には数々の英雄が時を越えて参戦し、そして壮絶に散っていった。あの死の舞台が、再び蘇ったのだ。
暗闇の中で一筋の光明を勝ち得る者は、誰なのか?!
『えー、みなさんこんばんは。実況のフナコシです。まず手短にルールの説明をさせて頂きます。
・出場選手は16名。試合はトーナメント形式で行われます。
・試合は無制限一本勝負。反則技はありません。原則として相手がタップ(降参)するか戦闘不能になるまで続けられますが、レフェリーが試合続行不可能とのジャッジを下した場合、その時点までの戦いぶりを見て審判員が判定を下します。
・武器、魔法の使用は認められていますが、1対1の闘いを原則とします。
・試合は終了後、いつでも再生が可能です。
・セコンドのリングインは認めません。
・試合結果に対するクレームも認めません。
以上がおおまかなルールとなります。
なお、このトーナメントには、解説にタカダさん(格闘家)とタニカワさん(次席プロデューサー)、ゲストにセキネさん(タレント)とオグラさん(グラビアアイドル)をお招きしております。
みなさん、よろしくお願いします』
タカダ:『よろしく』
タニカワ:『よろしくお願いします』
セキネ:『よろしくどうぞ』
オグラ:『どうもよろしくですー』
『事前の特番では視聴率が60%を越えたという注目の今大会、格闘のプロとして、タカダさんは誰に注目しますか?』
タカダ:『そうですね。やはり伝説のボクサー「モハメド・アリ」選手でしょう。彼が異種格闘技戦に出るのはイノキ戦以来ですからね。これは見ものですよ。それと孫――』
オグラ:『わたし、モーツァルトさんがカッコいいと思いますー』
タカダ:『…………』
『おっと、抽選の結果が発表されるようです』
●トーナメント決定●
―――1回戦Aブロック―――
・第1試合:シャンピニオン VS 招待選手B(極秘)
・第2試合:サンチョ・パンサ VS 大島先生
―――1回戦Bブロック―――
・第3試合:ブラダマンテ VS 名大ネコ
・第4試合:不動大空 VS ドン・キホーテ
―――1回戦Cブロック―――
・第5試合:招待選手A(極秘) VS 招待選手C(モハメド・アリ)
・第6試合:モーツァルト VS 招待選手D(孫悟空)
―――1回戦Dブロック―――
・第7試合:遠山連也 VS ベートーベン
・第8試合:風間芳子 VS 吉田美和子
『以上のような組み合わせとなりました。どうですか、セキネさん』
セキネ:『ええ、第3試合なんかおもしろそうですね。騎士がネコに負けたりして。ははは』
タカダ:『わたしは第5試合ですね。対戦相手はモハ――』
オグラ:『あー、そーですよねー、あのネコちゃんかわいーですよね、セキネさん』
タカダ:『…………』
セキネ:『ウチの飼い猫に似てるんだよなあ』
『さて、間もなく第1試合が始まろうとしておりますが、なにやらハプニングが起きた模様です。いましばらくお待ちください』
オグラ:『ネコちゃんがトイレに行ってるんですよー』
『ちがいます』
〈30分経過〉
『情報が入ってまいりました。シャンピニオン選手が未到着だそうです。バスには乗っていたようなんですが、会場で姿が見えなくなったと……』
タカダ:『ははは。前代未聞ですね、タニカワさん』
タニカワ:『そうですねぇ』
セキネ:『あれ? オグラちゃんは?』
〈10分経過〉
『ご来場になった125000人の観客のみなさま、お待たせいたしました、ただいま選手が入場いたします』
オグラ:『ネコちゃん、お部屋に入れてくれませんでしたー』
セキネ:『うん、あのね、選手控え室には入っちゃダメなんだよ』
タカダ:『…………』
【1回戦Aブロック第1試合:シャンピニオン VS 招待選手B(極秘)】
『おっと、招待選手Bですが、その正体は戦国の覇者、織田信長です。お供のサルとイヌ、もとい木下藤吉郎(セコンド)と森蘭丸(セコンド)を従えて、さっそうと現れ……たのですが、なんでしょう、妙にふにゃふにゃしています。
一方のシャンピニオン選手、会場入りの途中で道に迷ってしまったそうです。立派な剣と鎧を身にまとってはいても、見たところ普通の少年ですが……大丈夫なんでしょうか』
タカダ:『プロの身体じゃありませんね』
セキネ:『ウチのハムスターに似てるなあ』
オグラ:『かわいー』
[選手データ]
シャンピニオン (英雄)
体力 1456/攻撃力 208/精神力 250/スピード 282
織田信長 (スライム)
体力 1503/攻撃力 200/精神力 143/スピード 143
寸評:シャンピニオン選手有利。織田信長選手は、のしかかり攻撃が全て。
《馬上の織田信長選手、ずるりとすべりおちてシャンピニオン選手に襲いかかるという、人外の戦闘法を見せる。対するシャンピニオン選手は、何度か押し倒されはしたが全て気合ではねのけ、「レインボーストライク」で決着をつけた。試合後、シャンピニオン選手が何を勘ちがいしたか織田信長選手を口に入れようとして、セコンドに止められるという一幕もあり。試合再生コード:1282391165》
『織田信長選手がスライムだったというのは、驚きでした。スライムの分際で人をサルとかキンカンとか言っていていいのでしょうか』
タカダ:『粘りはありましたけどね』
オグラ:『かわいー』
セキネ:『シャンピニオン君、意外と強いねぇ』
1回戦Aブロック第1試合結果……「シャンピニオン(英雄)、準々決勝進出決定」
【1回戦Aブロック第2試合:サンチョ・パンサ VS 大島先生】
『サンチョ選手ですが、行方不明になった主人を探していたそうで、やや遅れての入場です。そのせいか準備がろくにできなかったらしく、控え室にあった火縄銃だけを持ってきています。大島先生のほうは……ああ、こちらは槍ですか』
タカダ:『サンチョ選手のほうがパワーはありそうですが、スピードはないですね』
セキネ:『今日はよく選手が迷子になるねぇ』
タニカワ:『そうですね』
オグラ:『なんで控え室にテッポーがおいてあるんですかー?』
[選手データ]
サンチョ・パンサ (足軽)
体力 1442/攻撃力 205/精神力 167/スピード 81
大島先生 (槍使い)
体力 1744/攻撃力 133/精神力 49/スピード 106
寸評:サンチョ選手有利。ただし火縄銃は扱いが難しいので、万全とは言いがたい。
《試合開始と同時に、必死で火縄銃に弾を装填し始めるサンチョ選手。なんとか一発は相手に命中させたものの、次弾が続かない。逆に大島先生が撃たれた肩を押さえて奥義「真・龍槍五斬」を繰り出し、サンチョ選手を圧倒。よろめくサンチョ選手にセコンドのドン・キホーテ選手が熱い檄とナベとナベのフタを飛ばしたが、残念ながら後の二者以外は届かず、サンチョ選手は無念の1回戦敗退となった。試合再生コード:373795972》
『セコンドのほうが大盛り上がりでしたね。タニカワさんが飛んできたナベを頭にぶつけてしまいましたが、大丈夫でしたか?』
タニカワ:『ええ、慣れてますから』
タカダ:『ふつうに打撃戦をやれば、サンチョ選手は勝てたでしょう。残念です』
オグラ:『タニカワさん、おでこんとこ、血ぃ出てますよー?』
タニカワ:『大丈夫です。慣れてますから』
タカダ:『サンチョ選手はインファイトに持ち込むべきでしたね。たとえば右の――』
『タカダさん、コメント中のところをすみませんが、次の試合が始まりますので……』
タカダ:『…………』
1回戦Aブロック第2試合結果……「大島先生(槍使い)、準々決勝進出決定」
【1回戦Bブロック第3試合:ブラダマンテ VS 名大ネコ】
『さて、いよいよ注目の一戦です。赤コーナーより、麗しき女騎士ブラダマンテ選手が……と、なぜか道着を着て黒帯をしめての登場です。これは……イメージチェンジでもしたのでしょうか』
セキネ:『おお、これは萌えだ』
オグラ:『きっと彼氏が見たいっていったんですよー』
『それは違うと思います。
えー、対する名大ネコ選手、ネコにしては足が多いような……それに微妙にたぷたぷしているような、そういった印象が感じられます』
セキネ:『やっぱりうちのネコには似てないかも』
タカダ:『ああいうの、どこかで見たような気がするんですが……』
オグラ:『かわいー』
『かわいくはありません』
[選手データ]
ブラダマンテ (カラテカ)
体力 1464/攻撃力 111/精神力 255/スピード 196
名大ネコ (スライム)
体力 1517/攻撃力 263/精神力 169/スピード 216
寸評:名大ネコ選手有利。ブラダマンテ選手は連続攻撃の成否が運命を分ける。
《試合開始からしばらくすると、名大ネコ選手はスライムという本性を現した。遊星からの物体Xのごとくにブラダマンテ選手に襲いかかり、一気に押し倒す。ブラダマンテ選手はどろどろになりながらも抵抗したが、からみつく名大ネコ選手を振り払うことができず、「エナジードレイン」を立て続けに受けてダウンした。試合再生コード:700902749》
『えー……一歩間違えれば放送禁止になるという、きわどい戦いでした。総合プロデューサーのK氏と、次席プロデューサーのタニカワさんが事情聴取のために連れて行かれてしまいました。視聴者からは抗議と再試合要求の電話が殺到しております。前者は女性ばかり、後者は男性ばかりです。おそらく後者は、編成でコードに触れる音声を一部カットしたためと思われます』
セキネ:『いやあ、デジカメ持っててよかったなあ』
『試合中、セキネさんは大喜びでしたね』
セキネ:『そりゃもう、スライムにからみつかれて悶える絶世の美女、しかも気高(中略)士ですよ? それに道着を(中略)普段は慎み深(以下略)』
『……改めて、放送にお見苦しい点やお聞き苦しい箇所が多々ありましたことを、つつしんでお詫びいたします』
セキネ:『あっ、2カメさん、どこへ行くんだ。そっちは僕じゃないよー』
1回戦Bブロック第3試合結果……「名大ネコ(スライム)、準々決勝進出決定」
【1回戦Bブロック第4試合:不動大空 VS ドン・キホーテ】
『1回戦も中盤に差しかかってきました。青コーナーから現れた不動大空選手、単なる男子高校生のようです。没個性的な量産品の武器と防具を身につけています』
タカダ:『ちょっと格闘家には見えないですね。体格はいいんですが』
セキネ:『あ、髪型とかがマネージャーの弟に似てる』
オグラ:『セコンドの女の子、かわいー』
『対するは、さきほどサンチョ選手のセコンドとして登場し、解説のタニカワさんにナベをぶつけたドン・キホーテ選手です。……なぜか彼も、長身を道着に包んでいますね』
セキネ:『さっきからカメラさんに向かって何か怒鳴ってるね』
タカダ:『セコンドはサンチョ選手ですね。ヒートアップを止めるのが大変そうです』
オグラ:『どんきほーてって、雑貨が安いんですよー』
『そこはちがいます』
〈15分経過〉
『えー、みなさま、諸般の事情により、この試合はカメラ中継を天井のみにさせていただきます』
オグラ:『ドンさんに、カメラ全部こわされちゃいましたもんねー』
セキネ:『あれ、一台250万円するのになあ……ねえ、タニカワさん』
タニカワ:『慣れてますから(←聴取から戻ってきた)』
[選手データ]
不動大空 (兵士)
体力 1185/攻撃力 122/精神力 204/スピード 127
ドン・キホ-テ (カラテカ)
体力 1403/攻撃力 107/精神力 168/スピード 242
寸評:ドン・キホーテ選手有利。不動大空選手は一発逆転が狙い目。
《試合開始と同時に、ドン・キホーテ選手の猛烈なラッシュが不動大空選手を襲う。不動大空選手はバズーカ砲で応戦したが、1発撃つまでに5発殴られるといった有様で、あっという間にリングに伸びてしまった。なお、試合が終了したのにもかかわらず、ドン・キホーテ選手の興奮が収まらなかったため、会場は一時騒然とした。サンチョ選手はじめ解説やゲストが総出で取り押さえるという事態に。試合再生コード:392437477》
『観客21名と、解説のタカダさんが軽傷を負ってしまいました。あとセキネさんのカメラもです』
タカダ:『あの爺さん、見かけより力がありましたね……』
オグラ:『わたしは握手してもらいましたー』
セキネ:『で、デジカメが。貴重なシーンを収めたあのデジカメが……』
『きっと優勝賞金で賠償してくれると、セコンドのサンチョ選手がコメントしていましたよ』
セキネ:『映像は戻ってきませんよ……しくしく。ブラダマンテさまー』
『不動大空選手、試合でのケガよりも、試合後セコンドの金髪少女に殴られたケガのほうが大きい模様です。ただいまタンカで運ばれていきます』
タカダ:『人生いろいろです』
1回戦Bブロック第4試合結果……「ドン・キホーテ(カラテカ)、準々決勝進出決定」
【1回戦Cブロック第5試合:招待選手A VS モハメド・アリ】
『場内がー! 熱狂の渦に包まれていますー! モハメド・アリ選手の入場と共にー! 会場内のボルテージもー! 最高潮に達していますー!』
オグラ:『なに言ってるかー! ぜんぜん聞こえませんー!』
タカダ:『これですよ! これこそ格闘の祭典ですよ! ねえタニカワさん!』
タニカワ:『――――(何かを言っているが聞き取れない)』
『対するはー! おおっと、韓国ドラマ「冬のソナタ」主演俳優、ペ・ヨンジュンさんです! 水色の衣装をまとい、手には銀の杖を持っています! クールな微笑がまぶしいですー!』
セキネ:『いきなり歓声が黄色くなったなあ』
オグラ:『きゃー、ペーさーん! こっち向いてくださーい!』
『ぺーはちがう人です』
〈25分経過〉
『モハメド・アリ選手、まだリングに着きません。いましばらくお待ちください。
なぜあんなにギクシャク歩くんでしょうか』
タカダ:『フナコシさん! 彼は、彼は重病の身を押してですね!』
オグラ:『でもー、あのひと、顔色が変ですよー?』
タカダ:『そんなところは問題じゃありません! アリは、アリはですね……!(号泣)』
セキネ:『あっ、転んだ』
〈15分経過〉
『アリ選手がリングに入りましたので、ただいまより試合を開始いたします。ずっと笑顔で待ち続けたペ・ヨンジュン選手、好感度高いですね』
オグラ:『わたしー、ヨンさまのサングラスになりたいですー』
タカダ:『俺はアリの行く手の床になりたい……』
セキネ:『僕はブラダマンテさまの道着の奥襟になりたい……』
『それはやめてください』
[選手データ]
ペ・ヨンジュン (魔導士・空)
体力 1500/攻撃力 322/精神力 143/スピード 227
モハメド・アリ (死体)
体力 1224/攻撃力 213/精神力 34/スピード 250
寸評:ペ・ヨンジュン選手有利。絶大な攻撃力を発揮すれば、勝利は間違いない。
《試合は痛烈な打撃の応酬となった。しかし一撃の重いペ・ヨンジュン選手が徐々にモハメド・アリ選手を圧倒していく。モハメド・アリ選手は「エア・バースト」で攻撃力を削られたのが響き、リングに沈んだ。ちなみに、試合が終了してもモハメド・アリ選手が立ち上がらないためにドクターが呼ばれ、結果、彼の心停止を確認。試合再生コード:535166731》
『モハメド・アリ選手、亡くなってしまいました。ただ、死亡推定時刻が試合日の三週間前という謎の検死結果が報告されています。また、試合中の事故とのことで、ペ・ヨンジュン選手には特に裁定は下されない様子です』
タカダ:『……………(←口から離魂)』
オグラ:『わーい、ヨンさまー! すごいですー!』
セキネ:『あっ、オグラちゃん!?』
〈2時間23分経過〉
『ふう……ようやく混乱も静まったところで、事情をご説明申し上げます。
ゲストのオグラさんがリング内に入ろうとしたのをきっかけといたしまして、人気スターに目がくらんだ観客のみなさんが一斉にリングに殺到するという事態が起こりました。ペ・ヨンジュン選手に被害はありませんでしたが、警備員35名と観客3545名がつぶされてしまい、病院へ運ばれました』
オグラ:『ごめんなさーい(←無傷)』
タカダ:『…………』
セキネ:『タカダさん、アリの敗戦見てからずっと放心してるよ』
オグラ:『大丈夫ですよー。わたしとセキネさんの2人でがんばりましょーよ』
タニカワ:『…………』
1回戦Cブロック第5試合結果……「ペ・ヨンジュン(魔導士・空)、準々決勝進出決定」
【1回戦Cブロック第6試合:モーツァルト VS 孫悟空】
『異色の組み合わせとなりました。赤コーナーからは、薄命の天才音楽家、W.A.モーツァルト選手の入場です。丈の高いコートに身を包み、荘厳な入場曲の中をリングに歩んできます。リングにグランドピアノを持ち込んだ選手は、彼が初めてでしょう』
セキネ:『あの入場曲、自作だそうだね。控え室でもピアノ弾いてたけど、すごかったよ』
オグラ:『でもー、ひとこともしゃべりませんでしたしー、顔も見せてくれないんですー』
『青コーナーからは、えーと、サルではありません。斉天大聖の異名を持つ、孫悟空選手です。なにしろとんでもない鉄砲玉なので、セコンドには三蔵法師についていただきました』
オグラ:『バナナ、食べますかねー』
セキネ:『「反省」はできるかなあ』
『やらないと思います』
[選手データ]
モーツァルト (スケルトン)
体力 1718/攻撃力 260/精神力 222/スピード 238
孫悟空 (魔導士・力)
体力 1045/攻撃力 194/精神力 187/スピード 269
寸評:モーツァルト選手有利。孫悟空選手は、筋力増加以外に勝ち目は薄い。
《殴りかかる孫悟空選手を無視したかのように、モーツァルト選手はピアノを弾き始める。孫悟空選手は「マッスルアップ」を使い、矢継ぎ早に攻撃を繰り出していたが、曲が奏でられ始めてからしばらくして、いきなりダウン。立ち上がろうとしても足に力が入らない様子で、そのまま倒れてしまった。レフェリーが試合を止めたが、コートがぼろぼろになったモーツァルト選手は髑髏と化した自身の姿を隠しもせず、スポットライトの中心でひたすらにレクイエムを弾き続けていた。試合再生コード:126728879》
『試合終了から45分が経過して、ようやくみなさん正気に返ったようです。鬼気迫るとでも形容いたしましょうか、そんなモーツァルト選手の演奏に、孫悟空選手や観客のみなさんはおろか、わたくしどもまで忘我状態になってしまいました。
10万人を超す観客全員に回心の喝を掛けてくださった三蔵法師さんに、感謝です』
タカダ:『アリ……これで安らかに眠れるよな……(←魂が戻ってきた)』
セキネ:『まだ言ってる』
1回戦Cブロック第6試合結果……「モーツァルト(スケルトン)、準々決勝進出決定」
【1回戦Dブロック第7試合:遠山連也 VS ベートーベン】
『さて、音楽家が続けて登場いたします。まず赤コーナーからは、日本国内では並ぶもののないピアニスト、遠山連也選手です。セコンドには誰もいませんが、かわりに女性の遺影が置いてあります。そのせいでしょうか、遠山選手、白装束です』
オグラ:『あの写真のヒト、恋人かなー?』
セキネ:『ワイドショーで見たことあるね、たしかスドーさんとか言わなかったっけ?』
オグラ:『わたしー、連也さんのリサイタル、聴きにいったことあるんですよー』
『さて、青コーナーから登場したのは、世界でも屈指の音楽家、ベートーベン選手です。モーツァルト選手と同じくコートに身を包み、帽子を深くかぶっています。入場のテーマソングはもちろん交響曲第五番「運命」です』
オグラ:『この人もー、顔見せてくれませんでしたー』
タカダ:『試合前ですからね、緊張していたんでしょう』
セキネ:『日本中の学校の、音楽室の帝王だよね』
オグラ:『わたしー、ベートーベンさんのリサイタル、聴きにいったことあるんですよー』
『それは無理です』
[選手データ]
遠山連也 (サムライ)
体力 1410/攻撃力 208/精神力 160/スピード 178
ベートーベン (スケルトン)
体力 1117/攻撃力 203/精神力 165/スピード 90
寸評:遠山選手有利。奥義が出れば必勝か。
《両者ともリングにピアノを持ち込んでの試合。遠山連也選手はぼろぼろの楽譜を用いての演奏となったが、ベートーベン選手は空での演奏となった。試合の推移は当事者にしかわからない心理戦になったが、やがてベートーベン選手が演奏をやめ、遠山選手に一礼してリングを去った。試合再生コード:647702968》
『心に残る戦いでした。遠山選手、楽聖ベートーベンに演奏で勝利しました。見事です』
オグラ:『ええと、もうすごい感動しちゃって、何言っていいかわかんないですー(感涙)』
セキネ:『ラジカセも……持ってこればよかった』
タカダ:『ううっ、遠山、お前、漢だ!(号泣)』
タニカワ:『そうですねぇ』
1回戦Dブロック第7試合結果……「遠山連也(サムライ)、準々決勝進出決定」
【1回戦Dブロック第8試合:風間芳子 VS 吉田美和子】
『さて、次の対戦は女性同士とのことで、ゲストのセキネさんは大変気合いが入っているようです。赤コーナーからは、純白のウェディングドレスに身を包んだ風間芳子選手が椅子と共に入場してまいりました。セコンドは旦那さんでしょうか』
セキネ:『うーん、純白のドレスが血に染まる、いわゆるブラッディ・ブライドですね』
タカダ:『なんで花嫁? なんで椅子を持ってるんでしょうか?』
オグラ:『旦那さんもー、イスもってますねー』
『青コーナーからは、セーラー服に身を包んだ女子高生、吉田美和子選手の登場です。ただ、こちらの衣装は黒が基調となっていますので、風間芳子選手とは正反対ですね』
セキネ:『うんうん、これもまたなかなかだ(ぱしゃぱしゃ)』
オグラ:『セキネさんー、そのカメラー、どこから出したんですかー?』
タカダ:『さっきからやかましいと思ったら、あちら、セコンドも女子高校生なんですか』
タニカワ:『そうですねぇ』
[選手データ]
風間芳子 (魔導士・毒)
体力 1736/攻撃力 217/精神力 83/スピード 187
吉田美和子 (魔導士・炎)
体力 1397/攻撃力 230/精神力 192/スピード 197
寸評:吉田美和子選手有利。ただし体力のなさには注意したい。
《試合開始すぐに風間芳子選手の「ポイズンミスト」が吉田美和子選手に炸裂し、吉田選手は厳しい立ち上がりとなった。毒による累積ダメージからか、中盤も過ぎたあたりから、吉田選手は圧倒され始める。起死回生の策として、両腕に炎を宿らせ反撃に転じたものの、風間選手の持つイスが盾となって攻撃が当たらず、試合は風間選手の制するところとなった。試合再生コード:414289792》
『えー、序盤はそうでもなかったのですが、終盤あたりから炎弾が乱舞するすさまじい戦いとなってしまいました。観客211名が火傷で入院加療を余儀なくされています』
セキネ:『ちょっとトイレに行って戻ってきたら、席が焦げてるんだもんなあ』
オグラ:『わたしのところにもー、火の玉が飛んできたんですけどー、タカダさんがえいやって火を叩いてー、横にとばしちゃったんですよー』
タカダ:『痛てて……まずいな。来月試合があるのに』
『その跳弾が、タニカワさんの顔面に直撃したみたいなんですが』
タニカワ:『平気です。慣れてますから(くぐもり声)』
オグラ:『あははー、ミイラみたいですー』
1回戦Dブロック第8試合結果……「風間芳子(魔導士・毒)、準々決勝進出決定」
『さて、これで準々決勝に進出する8名の選手が決定いたしました。ただいまは30分の休憩時間となっておりますが、おや、ちょっと、こら、きみ、マイクを(中断)』
〈20分経過〉
『失礼しました。いまのは迷子になったシャンピニオン選手です。マイクを何かと間違えたようですが、彼はセコンドの方が連れて行きましたので問題はありません。
さて、それではタカダさん、今後の予想を、って、あの、やめてくれますか(中断)』
〈30分経過〉
オグラ:『ええとー、実況のー、フナコシさんがー、いきなり走ってきたどんきほーてさんに「立ち去れ怪物め」とか言われてー、ナベでなぐられてー、どっかいっちゃったのでー』
セキネ:『我々がかわって、続きをお伝えいたします』
タカダ:『あの人は控え室から出してはいけませんね』
●準々決勝:組み合わせ●
・準々決勝第1試合:シャンピニオン VS 大島先生
・準々決勝第2試合:名大ネコ VS ドン・キホーテ
・準々決勝第3試合:ペ・ヨンジュン VS モーツァルト
・準々決勝第4試合:遠山連也 VS 風間芳子
『さて、招待選手と自由参加選手が半々となったこのトーナメント、この中で好勝負が期待できるカードといえばどれでしょうか、解説のタカダさん』
オグラ:『タフですねー』
『商売ですから』
タカダ:『わたしはペ・ヨンジュン選手の攻撃力の高さに注目したいですね。モーツァルト選手、ピアノを演奏しようにも、あの打撃を食らってはたまりませんよ』
セキネ:『僕ぁ風間さんかなあ』
オグラ:『セキネさん、フナコシさんがいないあいだー、風間さんの控え室にいってー、ずーっとおしゃべりしてたんですよー?』
セキネ:『お、オグラちゃん、なんで知ってるの』
『セキネさんこそ、規制が敷かれている中をどうやって?』
セキネ:『そりゃマネージャーに、じゃない、ええと……あ、第2試合は面白そうだね』
タカダ:『あの爺さん、控え室の備品ぜんぶ壊しちゃったみたいですよ……』
【準々決勝第1試合:シャンピニオン VS 大島先生】
『さあ、ハプニングにより休憩時間が20分延長されましたが、いよいよ準々決勝第1試合のゴングが鳴らされようとしています。
赤コーナーからは、英雄シャンピニオン選手。豪華な甲冑がこころなしか似合ってきたような気がいたします。相変わらず落ち着きがないですが……』
タカダ:『ポテンシャルは相当なものですよ。1回戦は見事でした』
セキネ:『うちのハムスターに似てるんだけどなあ』
オグラ:『かわいー』
『青コーナーからは、槍をたずさえた大島先生の入場です。サンチョ選手に撃たれた肩はもう大丈夫なのでしょうか』
タカダ:『あのくらい、たいしたケガじゃありませんよ。漢なら平気です』
オグラ:『なんでー、タカダさんが返事してるんですかー?』
セキネ:『タカダさん、さっき火傷した手にすごい包帯巻いてるじゃないですか』
タカダ:『…………』
[選手データ]
シャンピニオン (英雄)
体力 1456/攻撃力 208/精神力 250/スピード 282
大島先生 (槍使い)
体力 1744/攻撃力 133/精神力 49/スピード 106
寸評:シャンピニオン選手有利。大島先生は必殺技が不発だと苦しい。
《事前の予想は明らかにシャンピニオン選手有利の方向に傾いていたが、大島先生が意外な健闘を見せた。奥義「真・龍槍五斬」を連発し、シャンピニオン選手を追いつめる。対するシャンピニオン選手も「レインボーストライク」を連続で放ち、最終的に両者はダブルノックダウンを喫した。二人とも必死で立ち上がろうとしていたが、レフェリーのカウントが9まで進んだところで、ついにシャンピニオン選手が立ち上がり、勝利を手にした。試合再生コード:1677852174》
『熱い戦いでした。12万人弱の大観衆が一斉になって、立ち上がろうとする両選手にエールを送りました。シャンピニオン選手、こう申しては失礼ですが、見かけに合わない根性の持ち主です。大島先生も肩のダメージさえなければ、試合はどうなっていたかわかりません』
タカダ:『シャンピニオ―――ン! お前、お前……漢だァァァァァ!』
オグラ:『うるさいですー』
セキネ:『言ってもしかたないよ、今は』
タニカワ:『残りHPが3でしたからねぇ』
セキネ:『えっ?』
準々決勝第1試合結果……「シャンピニオン(英雄)、準決勝進出決定」
【準々決勝第2試合:名大ネコ VS ドン・キホーテ】
『さて、問題の――もとい、注目の選手がやってまいります。まず赤コーナーからは、名大ネコ選手の入場です。ネコといっておきながら、実は猫ではありません』
セキネ:『1回戦はすごかったなぁ……』
タカダ:『あんなのは格闘の試合じゃありませんよ』
オグラ:『かわいー』
『かわいくはありません。
一方の青コーナーからは、噂の老騎士ドン・キホーテ選手が入場して……きませんね』
セキネ:『さっきここで暴れたあと、サンチョさんといっしょに記者席の前の通路を走っていったけど』
オグラ:『試合の前―、おトイレの廊下ですれちがいましたー』
タカダ:『騒ぎが起こっているところを探せばいいんじゃないですか?』
〈25分経過〉
『大変お待たせいたしました。ブラダマンテ選手の控え室で、サンチョ選手とともに楽しそうに話しているところを、係の者が発見いたしました。ただいま準備中です』
セキネ:『いいなあ』
タカダ:『完全に遊山気分ですね。綱紀粛正のためにも、ここは厳しく遅刻制裁金を課すべきですよ。そもそも試合というものは――』
オグラ:『試合とゆーもにょわー、わー、わー……くしゅん! (←くしゃみ)』
タカダ:『…………』
セキネ:『ブラダマンテさま……ああ……やっぱりカメラは惜しかった……』
『マイクを噛まないでください』
[選手データ]
名大ネコ (スライム)
体力 1517/攻撃力 263/精神力 169/スピード 216
ドン・キホ-テ (カラテカ)
体力 1403/攻撃力 107/精神力 168/スピード 242
寸評:名大ネコ選手有利。ドン・キホーテ選手は攻撃力の低さが致命的か。
《ドン・キホーテ選手、会場入りしてから12度目、しかし誰もが納得できるとなるとこれが初めてとなる「この怪物めが!」というセリフと共に、名大ネコ選手に突撃した。が、名大ネコ選手はすばやく正体を現してドン・キホーテ選手にからみつく。ドン・キホーテ選手は何か叫びながらひたすら暴れたが、振りほどくことができず、先刻まで談笑していたブラダマンテ選手と同様の末路をたどることとなってしまった。試合再生コード:1296946767》
『試合とは直接関係ありませんが、試合の途中でセコンドのサンチョ選手がリングに乱入しそうになり、取り押さえられるという一幕がありました。また、この試合を観戦中に気分を悪くして会場を去ったお客様が1200名にのぼるという情報が入っております』
セキネ:『だって……ねぇ。爺さんとスライムの絡みだからねぇ。オグラちゃんも医務室に行っちゃったよ』
タカダ:『でも、これで名物選手がここを去ることになりますね。問題人物でしたが、いなくなってしまうと、一抹の寂しさが感じられます』
『ドン・キホーテ選手なら、観客席のほうにいますよ。サンチョ選手が試合とは別に観戦チケットを買っていたようですから』
タカダ:『…………』
準々決勝第2試合結果……「名大ネコ(スライム)、準決勝進出決定」
【準々決勝第3試合:ペ・ヨンジュン VS モーツァルト】
『いよいよ注目度ナンバーワンの試合が始まろうとしています。この時点で、貧血を起こして卒倒した女性客が3000名にのぼりまして、試合開始を待たずして会場を去っていかれました』
タカダ:『ペ・ヨンジュン選手のアウトレンジからの攻撃は効きますよ。ですからモーツァルト選手はできればタックルからのテイクダウンを――』
オグラ:『あっ、ヨンさまだー。ヨンさまー、サングラスをくださーい! (←復帰)』
タカダ:『…………』
セキネ:『あっ、サングラスが飛んできた』
オグラ:『わーわー、それはわたしのですー!』
『拾った者勝ちです』
オグラ:『フナコシさんひどいですー! そーゆー人だったんですかー?』
『ごほん。向かい側の青コーナーからは、自作の入場曲とともに、モーツ、わ、わ、ちょっ(中断)』
オグラ:『うきー! さんぐらすー!』
〈15分経過〉
『失礼しました。ゲストのオグラさんが実況席に飛び入りして乱闘するというアクシデントが起こりました。試合の開始を遅らせてしまったことをお詫びすると同時に、笑顔で待っていてくださったペ・ヨンジュン選手と、モーツァルト選手に感謝の意を表明いたします』
タカダ:『何でカメラの前でそういうことをするんですか……!』
オグラ:『でもー、おかげでヨンさまのサングラス、げっとできましたー』
セキネ:『僕もおかげでオグラちゃんのナイスアングルをゲットできたしー。ぱんちらー』
『視聴者と事務所から苦情が来ますのでやめてください。
青コーナーからは、すでにモーツァルト選手が入場ずみです。……おや、今回はピアノを持たず、かわりに黒い箱のようなものを……』
セキネ:『CDコンポじゃない?』
オグラ:『わたしがー、教えてあげたんですー。いちいち演奏しなくてもー、これに録音できますよーって』
タカダ:『いいんですかね』
タニカワ:『そうですねぇ』
[選手データ]
ペ・ヨンジュン (魔導士・空)
体力 1500/攻撃力 322/精神力 143/スピード 227
モーツァルト (スケルトン)
体力 1718/攻撃力 260/精神力 222/スピード 238
寸評:好勝負。モーツァルト選手の音楽が試合にどう影響するか。
《モーツァルト選手、試合開始と同時にコンポのスイッチを入れ、荘厳な音楽を流し始めた。対するペ・ヨンジュン選手は足元にややふらつきを見せたものの、容赦のない攻撃を加え、モーツァルト選手を追いつめる。結局、音楽が効果を及ぼさなかったことを悟ったらしいモーツァルト選手が突然に消滅し、試合はペ・ヨンジュン選手の勝ちとなった。試合再生コード:547318774》
『モーツァルト選手、いい音楽だったのですが、1回戦ほどの迫力がありませんでしたね』
タカダ:『だってあなた、いくらなんでも録音じゃダメでしょうよ……』
オグラ:『ごめんなさいですー』
『なお、この試合でモーツァルト選手がレコーディングしたCDについて、各国の機関から買い取りのオファーが殺到しているようです。それに伴って著作権の問題など、ややこしい事態が起きているようですね』
タカダ:『そりゃ、世界に一枚の新曲CDですからね。値は付けられませんよ』
オグラ:『ディスクはー、わたしが貸したやつなんですけどー』
セキネ:『次の試合に出る遠山選手も欲しがってるみたいだよ。全財産出してもいいって』
タニカワ:『(含み笑い)』
準々決勝第3試合結果……「ペ・ヨンジュン(魔導士・空)、準決勝進出決定」
【準々決勝第4試合:遠山連也 VS 風間芳子】
『赤コーナーからは、1回戦でベートーベン選手を打ち破った日本のピアニスト、遠山連也選手の入場です。セコンドの遺影は、先日飛行機事故で急死したピアニスト、須崎藤子さんのもののようですね』
タカダ:『墓前に勝利をささげるってやつですね』
オグラ:『カッコいいですー』
セキネ:『ちょっと、やつれてないか?』
『青コーナーからは、血の花嫁、イスを振り回す風間芳子選手の入場です。相変わらず旦那さんもイスを持っての入場です』
タカダ:『凶器攻撃ですね。見た目に合わずえげつないです』
オグラ:『セキネさんー、会ってみてー、どーでしたかー?』
セキネ:『控え室で話したときは、試合であんなに変わるとは思わなかったんだけどなぁ』
タカダ:『旦那さんが頭に包帯巻いてるのはなぜです?』
『試合前のスパーリングで、芳子選手にやられたそうです』
タカダ:『…………』
オグラ:『奥さんに殴られてー、なんでニコニコしてられるんでしょうねー』
セキネ:『愛……?』
[選手データ]
遠山連也 (サムライ)
体力 1410/攻撃力 208/精神力 160/スピード 178
風間芳子 (魔導士・毒)
体力 1736/攻撃力 217/精神力 83/スピード 187
寸評:好勝負。遠山選手は奥義が出せるかどうかが全て。
《遠山選手、今回はピアノを使用せず、日本刀での戦いとなった。対する風間選手は笑顔のまま竜巻のごとくにイスを振り回し、それを迎撃する。遠山選手は1度は「居合い切り」を命中させたのだが、2度目が出せず、「やっぱり俺には、花嫁を切るなんてできない!」と叫んだ顔面にイスのクリーンヒットを受けて沈没した。なお、試合が終了しても風間芳子選手の回転が止まらず、スタッフ総出で食い止めるという事態に発展した。試合再生コード:1701602880》
『風間芳子さんが生きたトルネードと化してしまったため、観客席に多大な被害が出てしまいました。判明しているだけでも、軽傷者1221名、重傷者210名、行方不明者2134名です。あと、解説のタニカワさんが飛ばされてしまい、天井の穴から東京湾のほうへ消えてしまいました。ちなみに最大瞬間風速は370m/sです。大型の台風の最大風速を、軽く9倍したくらいですね』
オグラ:『すごい風でしたー』
タカダ:『レフェリーもジャッジも、セコンドの旦那さんまで飛んでいきましたよ…………リングごと』
セキネ:『僕のカメラもね……(涙)』
『被害総額は推定で2億4000万円にのぼる見込みです』
オグラ:『えきぞちーっくー、じゃぱーん! ですねー』
タカダ:『…………』
準々決勝第4試合結果……「風間芳子(魔導士・毒)、準決勝進出決定」
『さて、30分の休憩時間をはさみまして、いよいよ準決勝です』
タカダ:『シャンピニオン選手が、意外と健闘していますね。体力のなさを、うまく技術でカバーしています』
セキネ:『女性選手、風間さんしかいないんだよな。さすがにあれを目の当たりにしちゃ、萌えとか言っていられないし……』
オグラ:『タニカワさんー、捜さなくていいんですかー?』
『鋭意捜索中です。
では、準決勝をお楽しみください……と申し上げたいのですが、あいにく会場の復旧作業が難航しておりまして、いましばらくお待ちください』
〈6時間経過〉
オグラ:『長いですー』
『リングどころか床も、ドリルみたいにえぐられてしまいましたからね。
えー、時間つなぎと申してはなんですが、ペ・ヨンジュン選手が好意により、ディナーショーを行ってくれるそうです』
セキネ:『舞台がないけど』
『ゴンドラで吊ります』
タカダ:『どんなディナーなんだ……』
オグラ:『きゃー! ヨンさまー! よーくー見―えーませーん!』
セキネ:『だったらそのサングラス、外せばいいのに』
〈12時間経過〉
『ようやく瓦礫の撤去作業が終了いたしました。これから仮設リングを設営するとのことです』
タカダ:『お客さん、よく帰りませんね』
『イベントを立て続けに企画していますので。順不同かつ敬称略ですが、
・ディナーショー&トークショー&写真撮影……ペ・ヨンジュン。
・どつき漫才風喜劇「ラ・マンチャの騎士 アロンソ・ケハーナ」……ドン・キホーテ&サンチョ・パンサ、ほかイベントスタッフ多数。
・ブライダルファッションショー……風間芳子、ブラダマンテ&マルフィーザ(セコンド・ブラダマンテサイド)、アーデルハイト(セコンド・不動大空サイド)、吉田美和子。
・ピアノ・リサイタル「空へ贈る12曲」……遠山連也 with W.A.モーツァルト(レコードのみ)。
・講演「アカデミズムと商業主義―二酸化マンガンは燃えているか―」……大島先生。
を、連続で行っておりますから』
セキネ:『絶対、赤字だよね』
『なお、引き続きまして、
・演武「棒術夢幻」&説法「小乗から大乗へ―うつりゆく仏教―」……孫悟空&三蔵玄奘(セコンド・孫悟空サイド)。
・講演「食べられるキノコ、野草類の見分けかた」……シャンピニオン。
・講演「天下布武イズム―ベンチャー時代の開闢とその展望―」……織田信長&木下藤吉郎。
・手品……不動大空。
・葬儀……モハメド・アリ。
を、行う予定となっております』
タカダ:『アリ……』
オグラ:『わたしもー、ブライダルショーにー、出たかったですー』
セキネ:『記者席で聞いてきたんだけど、ブラダマンテさまの写真集が出るみたいだよ。雑誌社の連中、今日だけでみんな3000枚くらい撮ったらしいし』
オグラ:『マルフィーザちゃんのもー、いっしょに出るみたいですよー?』
タカダ:『くぅぅ……格闘技が、格闘技の祭典が商業化の波にッ……(血涙)』
『アリ選手の葬儀も放映権を売却する予定ですけどね』
〈15時間経過〉
『みなさま、長らく、長らくお待たせいたしました。会場そのものはとっくに直っていたのですが、イベントの終了時間に合わせたもので、この時刻となってしまいました』
タカダ:『詰め込みすぎですよ。33時間も待ちましたよ』
【準決勝第1試合:シャンピニオン VS 名大ネコ】
『ここからは、新しいリングと共に、フレッシュな気分で中継してまいりたいと思っております。赤コーナーからは、固定ファンもつきはじめた若き英雄、シャンピニオン選手の登場です』
タカダ:『いいですねえ。りりしいです』
セキネ:『試合前はオッズ高かったもんね。買っとけばよかった』
タカダ:『セキネさん、まさか賭博を……(ぎろり)』
セキネ:『や、やだなあ。ききき昨日の有馬記念のハナシですよ、ははハ』
オグラ:『えー? 昨日はー、月曜ですよー? ケイバはー、日曜じゃないんですかー?』
セキネ:『さ、サンパウロでやってたんだ。リフティング王者を決めるア・リマ記念』
タカダ:『…………』
『青コーナーからは、こちらも固定のファン(アンチ)がつきはじめたおぞましき物体、名大ネコ選手の登場です。これまで優勝候補をことごとく……あっ(中断)』
〈30分経過〉
『失礼しました。観客席のドン・キホーテさんが名大ネコ選手を見るなりいきなり暴れはじめ、あわや大乱闘という事件が発生しました。ただ、サンチョさんの必死の弁明に免じて、客席追放は強制されない模様です』
タカダ:『もう追い出したほうがいいような……』
セキネ:『……うーん、美少年モノは市場がせまいし……(ぼそっ)』
タカダ:『もう一人、追い出したほうがいい人がいるみたいですが(ぎろり)』
セキネ:『あっ、タニカワさんじゃないですか(汗)。大丈夫でしたか?』
タニカワ:『ええ、慣れてますから』
[選手データ]
シャンピニオン (英雄)
体力 1456/攻撃力 208/精神力 250/スピード 282
名大ネコ (スライム)
体力 1517/攻撃力 263/精神力 169/スピード 216
寸評:好勝負。名大ネコ選手の「押し倒し」をシャンピニオン選手がどうしのぐか。
《試合開始早々に、名大ネコ選手が必殺の「押し倒し」を敢行。シャンピニオン選手はしばらくそれにとらえられ、「エナジードレイン」の洗礼を受けたが、やがて名大ネコ選手を跳ね飛ばして起き上がる。そのあとは「レインボーストライク」を連打したシャンピニオン選手が、名大ネコ選手を完膚なきまでに粉砕した。試合再生コード:1959425286》
『見事な戦いでした。ただ、「レインボーストライク」の衝撃波が一部客席にまで及びまして、強風にあおられドン・キホーテさんほか観客35名が行方不明となっております』
タカダ:『ほっとしたような、そうでないような……』
セキネ:『リング修復だけじゃなくて、壁の穴もふさいでおけばよかったのに』
『予算が尽きました』
オグラ:『黒くてー、恐い人たちがー、たくさん裏口のほうに来てますー』
タニカワ:『…………』
準決勝第1試合結果……「シャンピニオン(英雄)、決勝進出決定」
【準決勝第2試合:ペ・ヨンジュン VS 風間芳子】
『6時間も各種ショーを行っていただきましたが、赤コーナーから登場のペ・ヨンジュン選手は相変わらずの笑顔です。セコンドもハンサムぞろいですね』
オグラ:『あれがウォンさまでー、あっちがヨンくんでー』
セキネ:『ヨン様とヨン君って、違う人なの?』
オグラ:『何いってるんですかー。あたりまえですよー?』
『青コーナーからは、恐怖の竜巻花嫁の登場です。できればもうあの技は封印していただきたいものです』
セキネ:『また椅子もってる』
タカダ:『持ってなくても充分強いですよ』
オグラ:『…………(無言でリング上の風間選手をにらんでいる)』
『選手にガンを飛ばさないでください』
[選手データ]
ペ・ヨンジュン (魔導士・空)
体力