2012年03月07日 (水) 20時00分-すばる
そこに降り注ぐ陽射しは、いつもとなんら変わらない。時に雲に隠れ、時に雨に隠れるものの、それは常に、そこにあった。何もない洞窟の中にさえ、それは降り注ぐ。しかし、そこしか知らない彼には、その外に何があるのか、まったくわからなかった。彼はそこで生まれ、そこで育った。おそらくは、その場所で死んでいくのだろう。そこには、彼に敵う者はいなかった。彼にとって脅威は何もなく、また、食べるにも苦労しなかった。生きていくうえで、何一つ不自由はない。しかし、だからだろうか、彼は陽射しの向こうにあこがれた。その先にいったい何があるのだろうか、果てしなく続く空、瞬く光の降り注ぐ大地。無数に茂る緑のもの、見たこともない生き物たち。その中には、自分よりも大きいものもいるかもしれないし、自分と同じようなものもいるかもしれない。しかし、全ては想像でしかない。そこから出ることは叶わず、その陽射しの先にあるものは、想像するしかない。実際にどうなっているのか、確かめるすべは何もなく、しかし、だからこそ、井戸の底で蛙は今日も夢を見る。