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I love you.を訳しなさい。(古夢)

2012年03月13日 (火) 15時33分-古夢

問い:“I love you.”を訳しなさい。


秋、某日。帰宅した妹が唐突に聞いてきた。
「姉ちゃん、『アイラブユー』って、どうやって訳す?」
「は?」
「だから、‘I love you.’、の訳し方!どうやって和訳する?」
この上なく真剣な表情と、果てしなく理解不能な質問。聞き返すと、ちょっと本格的に気取ってI love youと発音し直した。そういう意味で聞き返した訳ではなかったのだが。
さすがに高校生にもなって、第三文型のSVOが分からなかったらどうしようかと多少ならず不安を感じたが、「『愛しています』以外で」と条件を付けられた。直訳出来なかった訳ではないらしい。良かった。まあ、もしもこんなに簡単な文法構造が訳せないようなら、私は妹の未来を憐れんで泣くしかない。
さて、英語でないということは。
「…現代文で何かあったわけね。漱石さんとか、そういう話?」
疑問形にすらせず、なんとなく脱力しながら確認を取ると、当然といわんばかりの頷きと真面目くさった「さすが」という一言が返って来た。ついでに、「姉ちゃん、歴史上の本書く偉い人にさん付けは変」と突っ込んできた。せめて『文豪』とか、そういう語彙を使えるようになって欲しいなぁという優しい姉の心境も知らずに、妹は今日あった出来事を勢いよく話しだした。
なんでも、現代文の授業で『翻訳の限界』とか『異文化の壁』とかいう主題の論文が出たらしい。そのついでに、先生が「皆もアイラブユーを訳してみよう」とかいう小学校教師のような提案をしたものだから…さあ大変、という事態になった、ようだ。話から推測するに。
その結果。
先生は、『手を繋いでもいいですか』と訳した。純情過ぎる。先生おいくつですか?
友達Aは、『君の為なら死ねる☆(プリントも☆付きで提出)』と訳した。軽い二葉亭四迷?
友達Bは、『好きなんかじゃないんだからっ』と訳した。あ、ツンデレ?
友達Cは、『君を殺して、私だけのものにしてしまいたい』と訳した。えっと…ヤンデレ?
それぞれ突っ込みどころ満載の訳し方をしていて、私は笑い転げた。個性が出る。むしろ嗜好が丸見えだ。妹の交友関係は少々心配になったけれども、自分の知っている禿げ頭で小太りのおじいさん先生が、急激に可愛く思えてきた。そんな素敵な一面があったとは!
「で、あんたは?」
なんとか笑いをおさめて聞くと、妹は真面目な顔をして言った。
「『私と一緒に暮らしませんか』」
「…」
笑っちゃいけない、笑うな自分頑張れ!
そんな必死の自制心も、そう長くはもたず一拍後、私は吹き出した。
「あんた、それ、プロポーズ…、あっははは!一足飛びすぎでしょ。日本人は『愛している』なんて言わなくても、『月が綺麗ですね』で通じる奥ゆかしい国民だって話じゃなかったっけ?だめ、笑いが…」
「…なんでそんなに笑うかなぁ、みんな」
ふくれて唇をつきだしている妹は、高校二年生になるというのに、大層可愛らしい。とても高校生とは思えない。親戚のおばちゃんに「あら、中学生?お手伝いして偉いわねぇ」と言われるだけある。いや、こんなピュアな中学生、今時いない。
『好きだ=結婚しよう』
ささくれ立った現代社会の中を、そんな単純明快な図式で生きている愛すべき妹よ!可愛げのないすれた高校生とは違ったんだね、うん。誤解していたよ、お姉ちゃんが悪かった。
私からしたら、まるで『今時の女子高生』のようにお化粧してみたり、男の子と遊びに行ったりと、おませな青春をしているくせになんて驚くべき素直さ。思いが通じあったら『そしていつまでも二人は幸せに暮らしましたとさ』で終わるお伽噺を、未だに信じているのか。今時少女漫画でも破局するのに。うわ、純粋。
本屋廻りに浮かれる姉を「非リア」「灰色の青春」とか鼻で笑っているくせに、存分に青春を謳歌しているはずの妹の方が、余程純真じゃないか。ああ、まったく!
「ゆうちゃぁぁんッ」
「うわっ」
いきなりガバッと抱きつかれた妹の結菜は、愉快にも悲鳴を挙げた。抑えがたい衝動に、私は心の中で妹に、とりあえずI love you!と叫んだ。
「まったく、良い子なんだから!よしよし」
「ちょっと意味分かんない!やめてよ!あああ、子供扱いしてるでしょ!ガキとか言うんでしょ!?皆して馬鹿にして!!」
顔を真っ赤にして怒る妹に、学校でも笑われたのかと更に笑いが誘われる。ばっちりセットされた髪を無視して、ぐりぐりと頭を撫でまわしながら私は叫んだ。
「ああもう!可愛いなぁもう!」
「うるさい!」

答え:「ああもう!可愛いなぁもう!」

***

現実の事件(?)からちょっとヒント。ロマンチックな話を書こうとして挫折。皆さんの作品が素敵過ぎて…。このままロマンチックな方向で唸っていたら期限に間に合いそうもなかったので、ギャグ風味に逃げました(>_<) 
いつか違う形でリベンジします!多分…←

あ、ヤンデレって使い方合っていますか?
最終更新:2014年02月17日 15:03