2012年03月13日 (火) 15時49分-水無原
「ねぇ、僕は君のことが好きなんだけれど、君はどれくらい僕を好いているんだい?」
私はクスクスと笑いながら、客の腕に絡みついた。
「お望みなら幾らでも」
そして彼の耳元で愛を囁く。
問い:I love you.を訳しなさい。
「同性愛者がゲイセクシュアル、両性愛者がバイセクシュアル。でもカナの場合はどちらでもないと思うよ」
ハルカが言った。
「エイセクシュアル。あんたの場合は多分それだ」
「エイセクシュアル?」
「略してAセク。無性欲者。恋愛なにそれおいしいの、ってヤツだ」
私は首を傾げた。
「それで、なんで私が水商売に向いていると思ったの」
「絶対本気にならないから」
ハルカは、カチリ、とライターを点けた。煙草に火を移し、深く吸う。
「本気の恋愛をしないということ?」
「そう」
気だるげにソファーに寄りかかるハルカは、私の大学の大先輩だ。
「恋をできないと思いながら偽物の愛を売る。絶対に、その雰囲気は相手にも伝わるもんだ。割り切れる女が好きな客にモテるよ、きっと」
だから、うちのバイト先で一緒に働こう?
ハルカは、そう言った半年後、客に刺された。彼女がいなくなってから、私は酷い虚無感に襲われた。もともと私は夜の世界に興味がなかった。ただ、お金は欲しかったから惰性で働いていた。
ある日、一人の客が私の相手となった。
「オジサンさ、ハルちゃんに逢いたくて来ちゃったぁ。カナちゃん、ハルと仲良かったよねぇ?」
ねばりつく声。ハルカを刺した、あの客だった。執行猶予中なのだろうか。
私は、酒瓶を叩きつけたくなる衝動を堪え、笑った。
ごめんなさい、しらないの。
そんなことより、わたしのことをきいてくださいな。
訳:私はあなたに嘘をつく。
本当はカナさんを実はゲイのノンセクシュアルでハルカに恋してたオチにしようかと思いましたが、面倒だったのでやめました。
I love you. の訳が、みなさん思ったより意訳してたので、当初想定していた甘酸っぱい話がどこかに消えてしまいました。
最近水商売の話ばかり書いている気がします。
最終更新:2014年02月17日 15:03