2012年04月15日 (日) 19時58分-すばる
鍋に水とバターを加え、沸騰させる。そこに薄力粉を一気に入れ、よくかき混ぜたのち、弱火で温め、さらにとき卵を少しずつ、様子を見ながら加えて混ぜる。クッキングシートに並べ、190℃のオーブンで三十分焼けば完成。
大事なのは生地。クリームはそこまで難しくないし、市販の生クリームを入れてもいい。鍋で卵、薄力粉、砂糖、牛乳をかき混ぜながら加熱すればできる。だけど生地ができなかったら、どうしようもない。潰れた生地にはクリームを入れる隙間もなく、中身のない最中みたいな感じだ。練習として二週間前に作ったとき、リベンジとして先週作ったとき、生地と一緒に気持ちまでぺちゃんこになった。しかも今日は、ラストチャンス。今日は十日、日曜日。十四日までにもう休みはない。
それで、朝の九時から作り始めて、失敗した。今は、二回目の挑戦。オレンジの光の下、生地の塊がにわかに盛り上がった。
遊里はそれを見て、比喩ではなく飛び跳ねて喜んだ。
木曜日の昼休み、丁寧にくるんだシュークリームをもって隣のクラスまでやってきた。入りながら、夏樹ちゃん、と声をかける。ひと月前、ひょんなことから知り合い、友達になった彼女の前で、努力の結晶を広げる。
「うそ、これ、結城さんが作ったの?」
「うん、まあね。」
「すごーい、結城さんって、お菓子作るの上手なんだね。私なんて何度失敗したことか。」
「ふふっ。」
「あっ、ひっどーい。いま、笑ったでしょ?」
「ごめんごめん、でも別に、ばかにしたわけじゃないよ。」
「ええー、本当にー?」
「ほんと、ほんと。」
それでも彼女はなお疑いの目を向けてきた。その顔が何となくおかしくて、我慢しきれず笑いが漏れる。それで怒った夏樹は、ふん、とそっぽを向いてしまった。謝罪し弁明し、何とか機嫌を直させようとするけど、かわいくへそを曲げる夏樹に、シュークリーム一個余分に持ってかれた。
どうして自分は、みんなといるんだろうと、考えたことがある。誰かといると、こうやって気を使う。いろいろと面倒くさいし、今回は、努力に見合うものが得られたとも思えない。気が合わなかったりもする、すれ違いもする。一緒にいて、いやな思いをしたことだって何度もある。だけど、どうして一緒にいるのか。考えても、答えは出なかった。ただ、彼女は笑っていて、自分も笑っていた。
かなり急ごしらえです。落ちもいいのが思い浮かばなくて、無理やりつけさせてもらいました。
また、作中の方法でシュークリームができる保証はありません。その点はご了承ください。
最終更新:2014年02月17日 15:24