2012年04月21日 (土) 12時16分-すばる
ひどい渋滞だった。このあたりで慢性的に発生する渋滞、それが今日に限って、いやに停滞している。ただでさえパーキングで携帯切って五時間爆睡したのだ。今日のうちに着く予定だったが、見通し絶望的だ。気を落ち着かせようと、煙を吹くも、どうにもよくならない。今日は何ともついていない。……無理もないか。今日は九月十三日の、金曜日。イエスキリストが磔にされたり、アポロ十三号が事故った日だ。とはいえそれは、ひどく古い話。しかも宗教に無関心な日本人にとっては、たいした意味もない話だ。それでも、十三日の金曜日とは、不吉な響きである。そこには、おそらく去年の事件のことが、多分に理由として含まれているのだろう。去年の一月、四月、七月の十三日、金曜日に、都内の公園などで発見された死体。そういえば、あれからニュースで聞いていない。警察に捕まったのだろうか。
車の列が、加速していく。渋滞を抜けたのだ。トラックは、高速を軽快に走っていく。いつのまにか都内にまで入っていた。ふと、背後に気配を感じたのはそのときだった。振り返ることはできなかった。振り返る前に、目の前にナイフがかざされたからである。思い出す。そういえば、十三日が金曜日だったのは、いつ以来だったか。
「このまま、走りつづけろ。」
どすの利いた男の声だった。黙って従った。従うしかなかった。しかし同時に、一つ疑問が浮かぶ。
「どうやって、乗ったんですか。」
「渋滞で車が動けないでいる間に、だ。」
「どうして、俺を。」
「どうしてか、だと。そんなこと、おまえ自身が一番よく知っているだろう。みんなお前のことが嫌いなんだ。気味が悪いと思っている。誰だってお前のことは悪く言う。おまえには死ぬ以外、人のためになることなんて何一つできやしないんだ。」
ふざけるな。急ハンドルを切った。このままではどうせ殺される。もう一か八かだ。
九月十三日、××××高速道路でトラックの暴走事故があった。急ハンドルを切ったトラックが貨物に押されて折れ曲がった。乗用車五台が巻き込まれ、死者十二名の大惨事となった。トラックの運転手は△△△△容疑者四十五歳で、トラック内部から大量の乾燥大麻が発見されたことから、警察は大麻中毒による幻覚症状が原因とみて調査している。
最終更新:2014年02月17日 15:25