2012年04月28日 (土) 22時55分-水無原
その記録を彼が見つけたことが、巡り合わせとか運命とかだったなら。私は神を呪おう。
彼はその記事を読んで苦悩し、悲嘆し、さらに絶望した。私は彼の考えを知らなかったが、その記録が忌むべきものらしいと悟った。その知識を捨てたら何が起こるのか、私には判らなかったが、彼の憂鬱を軽減するために何かできることを探した。結論として、全てをなかったことにするのが一番良いらしいと考え、彼がそれについてまとめたノートを私の引き出しの奥の奥に隠した。
彼はノートが失せたことにすぐ気付いた。しかし私にありかを尋ねることはなかった。彼にとって、私が記録を目にした時の感情が恐ろしいのだろう。それは彼にとって良くないもので、彼に血縁のごとき情を抱いている私にとっても良くないものだと思ったのだろう。
彼は私の友人の忘れ形見だ。友人はすでにこの世になく、父親の方は誰とも知れない。
「ハルカ」
「おい、その呼び方やめろよ。俺には遼って名前があるんだ」
「戸籍には振り仮名振らないから、漢字の名前なら好きな音を振れるのよ、ハルカチャン」
「無駄な知識付けやがって……」
彼は彼の母親の記録を見つけたのだ。酔漢に刺されて死んだ母親。私を水商売に誘ってそのまま死んでしまった、母親らしいことを何もしなかった遥。
「ねぇハルカ。アンタは賢いわねぇ」
「そりゃ、カナよりはな」
「老後は任せたー」
「カナの老後とか想像できねぇ」
「えー、でも私結婚できなさそうだしー?」
「まあ確かに。エイセクシュアルだっけ?」
「そぉそ。だから襲っちゃ、だ・め・よ?」
「身の程弁えろババァ」
軽口をたたく相手がいるというのは良いものだ。漫画の中みたいに恋愛パワーで必殺技が出せるわけじゃないけれど、一人タイセツな人がいれば強くなるというのは本当かも、と思う。
「ハルカー」
「んだよ」
「あんたはいなくならないでねー」
暫くの沈黙のあと、応、という声が聞こえた。
新しい展開を考えると壮大なファンタジーになりそうだったので、短くまとめるために「I love you」企画のカナさんに出演してもらいました。
ごめんなさい。完全身内ネタです。一年生の人とかわからないだろうなぁ。
でもちょっと満足。
最終更新:2014年02月17日 15:27