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遺産目当て

2012年05月24日 (木) 18時47分-安住 小乃都

「あー疲れた。できれば何にも考えたくないなぁー。」
「そういう訳にはいかないだろ。」
「だよねー。」
ピアスの男が1人。茶髪の男が1人。小太りの男が1人。
「ねぇどうしたらいいと思う?」
ピアスが茶髪に聞く。
「どうしたらいいと思うんだ?」
「さあーわかんなーい。」
「お前に分からないものを俺に聞くなよ。」
茶髪が腕を組んでため息をつく。
ピアスが頭を抱えてのけぞった。
「あ゛あ゛あ゛もう嫌だなあああ。」
「とにかく。早く片付けろよ、ソレ。」
茶髪が面倒そうに指をさす。
「片付けろったって・・・どこに?」
「だから俺に聞くな!!」
2人は同時に床を見た。
「重そうだね。」
ピアスが下を見ながら言う。
「そら重いだろうな。」
茶髪も下を見ながら答える。
ピアスが何か思いついたように茶髪を見た。
「バッグに詰めちゃえ?」
「バッグ・・・ああ、キャリーバッグ?」
茶髪が小太りの持ってきたキャリーバッグを見た。
「そうだよー。やっぱこういうのは運びやすくしないとネー。」
ピアスがごろごろとバッグを引きずってくる。
「んーまあそうなったらやることは1つだな。」
「は?」
「ビニール袋に入れて、バッグに詰めて、どこか車で遠い所に運んで・・・」
「やってくれるの?」
ピアスが目を輝かせる。
「阿呆か!お前がやるんだよ。俺は知らねぇ。」
茶髪が部屋の奥からビニール袋を投げた。
「これに入れとけ。」
「やってくれても良いじゃんケチー。」
「殺したいっつったのお前だろうが。」
「そうだけどーう。」
ピアスがふてくされながらバッグの中身をぶちまけ、そこにビニール袋ごと詰め込んだ。
「あー疲れた。できれば何にも考えたくないなぁー。」
「聞き覚えのあるセリフだな。」
「あーうん僕も言い覚えがあるよー。」
茶髪が呆れた顔をする。
「ふざけてるなーお前。」
「わーいありがとー。」
「ほめてねぇし。」
ピアスはバッグを立てると、軽く叩いた。
「ねぇもう良いかなー?」
「そうだな。」
茶髪がバッグを蹴る。
バッグはそれに答えるようにガタガタと動き出した。
上部のチャックがひとりでに開き、中から手が出てくる。
そして腕が出て肩が出て顔が出てもう片方の腕が出て
小太りの男がため息をついた。
「あー苦しかった。ねぇ、2人とも、分かった?」
下半身をキャリーバッグに埋めながら、小太りが2人を見る。
「俺は最初から分かってる。分かってないのはそっちの阿呆だろ。」
茶髪がピアスを指さす。
「だってー簡単だと思ったんだもん。
それに僕、本気で君を殺したつもりだったんだけど。」
ピアスが小太りの首を見て言う。
小太りは首についたあざをさわって笑った。
「あんな弱い力でデブの人間が絞め殺せるか。
皮膚に跡が残りやすいようにロープに薬品かけといたんだ。
万が一を考えてね。杞憂だったけど。」
小太りが首をかきむしる。
「それに、キャリーバッグに詰める時も適当だったよね。
本物の死体はもっと重いよ?どうやって運ぶ気だったの?まさか何も考えてない?」
「あーもう。分かったよ。」
追い打ちをかける小太りに、ピアスが両手をあげた。
「わかった降参僕の負け。まったく、回りくどい止めかたしないでよ。」
「やっと分かったか。」
茶髪が小太りをキャリーバッグから引きずり出す。
小太りは上着を脱ぐと、肉襦袢を外して元のやせぎすに戻った。
「どう?難しいでしょ。」
やせぎすは笑って腕を組んだ。
「あきらめるよな?」
茶髪も机にもたれて笑う。
「あきらめるよ。僕には無理そうだ。」
ピアスはベッドに倒れこむと、大きく伸びをした。
「まぁそんなことしなくても僕は不自由してないしね。
太ってるやつが嫌いで、ちょっと思いついただけだったし。」
「負け惜しみか?」
茶髪が腕を組む。
「かもね。」
やせぎすがベッドのふちに座る。
ピアスは二人の会話を聞きながら目を閉じた。
「ともかく。」
大きくあくびをする。
「親父を殺そうなんて言った僕が馬鹿だったよ。」

Fin
最終更新:2014年02月17日 15:31