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へそで茶を沸かす(お題:やかん)

2012年05月27日 (日) 14時35分-すばる

 駅前で、へんてこな大道芸を見たんだ。そもそもそこは、そんなものをやって儲かるのかってこっちが不安になるくらいに田舎で、電車が一時間に一本とかいう駅なんだ。その時点で十分変なのに、やっている芸がこれまた滅茶苦茶なんだ。段ボールに、へそで茶を沸かすって書いてあって、しかも、その段ボールも、見物料を入れる缶も、これがまた汚いんだ。どこかのゴミ捨て場から拾ってきたんじゃないかって思えるようなやつで。それで、肝心の芸なんだけど、ふんどし一丁上半身裸のおっさんが、寝転がって力んでるんだよ。おなかの上には薬缶が置かれていて、おっさんは顔を真っ赤にして力を入れてるんだけど、もちろん何の変化もなくて、だけどおっさんは必死なんだ。そんなおっさんを、時々通り過ぎる人たちはみんな見て見ぬふりで、タイル張りの道端でやってたんだけど、おっさんの乗っている列のタイルがダッシュパネルであるみたいにみんな足早になるんだ。それでもおっさんは必死の形相で、それがはたから見たら鬼の形相なんだけど、汗がだらだら、顔だけじゃなくて体までまっかっか。なにをやってるのかわかっててもわからなくても、結構怖い。それでも、ちょっとでもお湯が沸きそうな気配があったらまだよかったよ。なんっにも起こんない。沸騰どころか、湯気も出ない。それを見てたら、ちょっとあわれに思えちゃってさ、見物料入れちゃったよ。その時、缶の中がすっからかんだったのがなんか切なかったね。それで、なんだか怖くなって、走ってそこから逃げ出したんだ。それで、おばあちゃんにこの話したらね、あんた、狐につままれたねって言われたよ。狐がつねるわけないのにね。






 へそで茶を沸かす:ばかばかしくてしようがないこと


最終更新:2014年02月17日 15:32