2012年06月14日 (木) 22時57分-鈴生れい
飛び出した。門にぶつけて膝が痛い。
それでも止まるわけにもいかず、駆け足駆け足全速前進。
加速度的に速度を上げて、左に曲がって右に曲がってもひとつおまけに右折する。
加速はやがて収まって、速度は一定ラインをキープ。
ここまでは順調重畳。道も半ばにさしかかる。
坂道接近傾斜は十度。馬力は十分ひた走る。
そろそろ息が切れてきた。膝も頭も脇腹も痛い。金魚のように口パクリズム。
鞄がばさばさ揺れる中、赤信号へとぶちあたる。
歩行者追い越し自転車追い越し自動車追い越しごぼう抜き。
ついでに白黒橋もひとっ飛び。足がもつれてずっこける。
クラクションが鳴り響き、あわや大惨事の予感。
でも悪運ここに極まれり。転がったら避けられた。
ブレーキ音を背景に、また立ちあがって走り出す。
ここでようやく学校視認。自分と同じ奴もちらほら。
滑るように校門をくぐり、カラスのように靴を散らかし、風のように階段を舞う。
一回踊って二回踊って、いよいよチャイムが鳴り渡る。
四つん這って段を飛び、靴下摩擦を発揮する。激突したのは言うに及ばず。
鞄も放って猛ダッシュ。ラスト3秒間に合うか!?
ガラッ
「セーフッ!」
戸を弾くように開けると、俺の席以外ぴっちり埋まった教室と生徒と教師の呆れ顔が見えた。
俺のシャウトに呼応して、教師がため息交じりに言う。
「アウトだ」
だが諦めない。今回は最大の(言い訳の)切り札を用意してあるのだ!
「いえ、俺は実験をしてたんです!」
「は?」
「遅刻にぎりぎり近付くという極限の方程式をです!」
どうだ、兄貴に聞いた高校でやる微分とかいうのの応用!
これだけ高尚な俺の方程式、崩せるもんなら崩してみろ!
俺がドヤ顔を決めていると、うちの担任は少しだけ考えるような仕草をした後、こうのたまった。
「遅刻でない時間をぎりぎり遅刻に狭めていくんだよね?」
「はい!」
よくは知らないけど、そんなことを言っていた気がする。
「要するに遅刻でない時間と遅刻の差を限りなく0にするわけだ」
「・・・? はい!」
まあ、なんとでも言えばいい。この俺の方程式は絶対崩れない。
いっそ高笑いかアメリカン笑いのひとつでもしてやろうかと検討してみる。気持ち悪いので止めた。
そんな余裕綽々の俺は、教師が少しばかり不敵に笑ったことに気付かなかったのだった。
「じゃあ、遅刻ね」
「・・・・・・え?」
何故自分は書き出すとこうなるのだろう。
ちなみにタイトルは「遅刻方程式」。
お題である「My方程式」を満たせているかどうかはお任せします。
最終更新:2014年02月17日 15:35