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正義の方程式(お題『My方程式』)

2012年06月17日 (日) 21時53分-エンディミオン

「隊長、大変です!」
「どうした。電車の中で突然腹痛に襲われた悲運のサラリーマンみたいな顔をして」
「関係代名詞の中身を無駄に伸ばさないでください! とにかく大変なんです。巨大な怪獣が東京湾に出現しました!」
「ほぉ、それで?」
「は?」
「だからそれでどうしたの。現れただけなら良いじゃない。もしかしたら東京の新名所になるかもしれないぞ」
「暴れてい――」
「なに!? それは大変だ!」
「あっ……は、はい」
「何でそんな大事なことを早く言わないんだ。だからお前は五十にもなってまだ平隊員なんだ」
「そんな事より報告を聞いてください」
「イヤだ」
「怪獣は自らを『セイギ』と名乗っているとの事です。また怪獣が現れたのと時を同じくして、世界中で哲学者が突然命を落としています」
「哲学者が?」
「はい。法哲学者とか政治哲学者とか。ただ不思議なことに、科学哲学者や言語哲学者などは生き残っているようで、双方にまたがっていた者は危篤に陥っている模様です」
「ふむ……」
「あと、亡くなったのは皆大変に優秀な人ばかりで、ちょっとアレな人達は総じてピンピンしています!」
「隊員クン。もう家に帰って良いぞ」
「へ? ちょっとなに言ってるのかよく分からないのですが。それに私にはちゃんとした名前が――」
「怪獣は『セイギ』と名乗ったのだろう?」
「うん……。うん、そうですよ。そうなんだけどね――」
「それなら我々にはもはや選択肢はない。あとはお家でひたすらゴロゴロするだけだ」
「どういう事ですか?」
「多分世界のどこかで遂に発見されたんだ。正義の方程式の解が」
「正義の方程式……まさか!?」
「そのまさかだよ。哲学者達が次々に死んで、『セイギ』が現れた事がその証拠だ。解を導くために必要な要素が一点に集結したんだろう」
「つまり、そういう事ですか」
「あぁ、そういう事だ。後は待つ事しか出来ないさ」
 遂に「セイギ」は行動を開始し、人々は歓喜した。生誕の瞬間から願い続けたモノが、やっと我々の目の前にやってくる。社会と契約を交わし、民主主義を掲げ、時にはファシズムの挫折に苛まれながら。長かった。長すぎたかもしれない。
 だがもはや長さなどどうでも良い。悲願は成就されたのだ。我々は完全な存在となった。誰も泣かず、苦しまず、我慢すらせずに暮らしてゆける。さぁ、謳歌しようではないか。遂にこの手の中に舞い降りた、パーフェクト・ジャスティスを――


 そして正義は実現された。人類のその後を知る者は、誰もいない。
最終更新:2014年02月17日 15:44