2012年07月01日 (日) 23時20分-竹之内 大
北の大国には、一人のお姫様がおりました。それはそれは美しいお姫様でしたから、世界中から彼女を妃にと求める方々が昼となく夜となく城へ押し寄せました。ある者は、世界一の知者である自分こそが姫にふさわしいと主張し、またある者は、剣の腕で右に出るものがない実力を持つ自分こそが彼女の夫になるべきだと言いました。はたして彼女はこの中から誰を選ぶのか。皆の注目を集める中、求婚者たちの前に現れた姫は、こう宣言しました。
「私は、伝説の剣を抜くことのできた、選ばれし方と結婚します。」
伝説の剣。それはその国に昔から伝わる、知恵と勇気を兼ね備えた選ばれしものにしか抜くことができないという剣。男たちは皆、我先にと王城の中央部に位置する塚へと走り、その剣を抜こうとしました。しかし誰一人として剣を引き抜くことはできません。今でも美しい姫君は、選ばれし者が現れるのを待ち続けているのです…
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小国の王子である彼は、どちらかといえばなよなよとした性格の、ちょっと弱々しい感じの方でした。ある日、そんな彼に乳母が聞かせたのが、北の国の姫の物語。その乳母は、もともと北の国に仕えていた人でしたから、その話はとても生き生きしたものでありました。その話に深く感銘を受けた王子は幼心に、いつか一人前の男になって、見事その剣を引き抜いてやろうと思ったのでした。彼はそのために懸命に努力しました。毎日毎日必死に剣をを振り、本にかじりつくようにして勉学にも励みました。王様は一生懸命に努力する王子を大変好ましく思うと同時に、いつまでもそんなおとぎ話にうつつを抜かしている彼に頭を悩ませてもいました。そこで、王は王子に一つの提案をしたのです。
「18歳になったとき、北の国へ行って自分の力を試してみよ。もしだめだったら、私の跡を継ぐことに専念するように…」
王子は自分が剣を抜くことができるとは思っていませんでした。もともと自分は弱虫で、大した男ではないのですから。そんな自分をここまで育ててくれたのがこの物語。でも、もうここで卒業するべきなのかもしれません。王子は塚を改めて見つめました。心なしか昨夜見た時より大きいような気がします。緊張しているのでしょうか。王子は心を落ち着けるように大きく一つ息を吐き出すと、伝説の剣の柄に手をかけました。
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「姫様本当によろしかったんですか。あんなインチキをして…」
「何言ってんの。ばれなきゃいいのよ。」
「ホントにばれないんですか。だって伝説の剣をうずめて偽の剣を刺しただけでしょう? さすがに誰か気づく人がいるんじゃ…」
「だってここんとこずーっと挑戦者いなかったのよ?
そうじゃなきゃあんなもの見に行く物好きいないしわかりゃしないわよ。あーあまったく、ようやく私も結婚できるわ。」
「そんなこと言って、あのルール姫様が言い出したんじゃ…」
「まあ私も若かったからね。どの男がいいのかなんてわからなかったしさ…。選ばれし者なら問題ないだろと思って言ったのに、まさか見つからないなんてね?
だんだんこの話、昔話みたいになって、挑戦者も現れなくなるしさ。あの王子様、なかなかカッコイイ子だったし、これが最後のチャンスかもって思うと…。さすがにこれ以上嫁き遅れるわけにはねぇ…」
そんな話をしながら花嫁衣装のお姫様は、旦那様のもとへと向かうのでした。
最終更新:2014年02月17日 15:46