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甘いだけの小説は書けるのか (古夢)

2011年06月25日(土)23時10分 - 古夢

 


今日も貴方は私の頭を優しく撫でて、私の自慢の艶(つや)やかな赤毛を丁寧な手つきで梳いてくれる。毎日の日課。私と貴方の二人きりの時間。一筋一筋を辿るような手のあまりの気持ち良さに、私がうっとりと目を細めて貴方の肩に頭を預けると、貴方は可笑しそうに笑う。
「まったく、お前は本当に可愛いな」
「知っているわ」
だって私は、貴方に愛してもらえるように、もの凄く気を遣っているのよ。貴方の機嫌を見極めて、構って欲しがっているときは構って、放っておいて欲しい時は静かに見守って、重い女にも鬱陶しい女にもならないように。とても神経を使っているのよ。勿論、貴方に気付かれないように、だけれど。
「だから、もっと愛して?」
小首を傾げて見せれば、貴方はくすりと笑う。
「なんだか、今日は甘えん坊だな」
あら、だって貴方は今、甘えられたい気分でしょう?私はそれに便乗しているだけよ。たっぷり甘やかして頂戴な。
貴方は私のスレンダーな身体のラインをすぅっとなぞり、耳元で甘く囁く。
「お前には負けるよ。世界中で一番可愛い僕の恋人さん」
まったく、嘘ばっかり。私が貴方に勝てることなんて未来永劫あるはずがないし、何より私は私が貴方にとって一番じゃないことをよぉく知っているわ。貴方の一番は余所に住むあの女。私とよく似た赤茶色の髪の娘。まぁ、私の自慢の赤毛は地毛だけど、彼女は染めているわ。髪の根元に黒が覗いているもの。ああ、いけない。愚痴っぽくなってしまったわ。それもこれも、貴方が白々しいことをいうからよ、気障な浮気者さん。
でもいいの。今は極上の蜜酒のような貴方の囁きに酔っているわ。騙された振りをしてあげる。貴方と一緒に住んで、一番貴方の傍にいるのは私だもの。貴方にとって、私は家族のような存在。でも、『妹』なんて言ったら怒るわよ?私にも、一応プライドはあるのだから。女ですものね。
今日の貴方はご機嫌で、私に膝枕をしてくれる。背中や首筋を辿る手のあまりの心地よさに、私は不覚にも寂しがり屋の猫が甘えるような声で、貴方を誘ってしまう。口付けを乞うように見つめて切なく鼻を鳴らすと、貴方は苦笑して私の鼻に軽くキスしてくれた。優しい感触を待っていたのは別の場所だったのに。
「意地悪ね」
軽く睨むと、貴方は口の端を持ち上げて言う。
「女を甘やかし過ぎるとろくなことがない」
まぁ、なんて今更!随分と利いた風の台詞ね。私が貴方を甘やかし過ぎたせいかしら?
「何を考えているか知らないが、お前は僕を甘やかしなさい。それが仕事だよ」
拗ねた心が顔に出たのか、貴方は苦笑して私の高い鼻をつまんだ。
「あら、勝手な話ね。男っていうのは、種族時代を問わず身勝手なものなのかしら?」
からかうように半眼で見返せば、貴方はお手上げだ、と言うように両手を上げる。
「悪かった。おいおい、あんまり睨まないでくれ」
貴方は、私の黒めがちな瞳が非難がましく細められているのに困った顔で眉根を寄せる。
「別に睨んでなんかいないわ、元からこういう顔なの」
つんと澄まし顔をすると、貴方は私のご機嫌をとってくれる。貴方と私の恋愛遊戯。どちらも本気で怒ってなどいないと知っている他愛ない言葉遊びのような戯れ。私が怒ったふりをして顔をそらし続けていると、貴方は背中からふわりと私を抱きしめた。
「なぁ、そろそろ機嫌を直してくれないか?」
私の首をくすぐるように撫でながら、貴方は最後の、とっておきのカードを切る。
「今日の夕食は、お前の好きな牛肉の缶を開けてやるからさ。」
「…仕方ない。それなら許してあげるわ」
物につられる軽い女と思われるのは癪だけど、これ以上怒ったふりをしていてもつまらないし、実際空腹を感じていたので、私は貴方を許してあげることにする。私の気持ちは言葉では表せないから、態度で示してあげるの。私は貴方を振り向き軽くキスを贈る。ペロリと顔を舐めてみせると、やっぱり色気より食い気だな、と貴方が呆れたように呟く。じゃれて貴方を押し倒し、機嫌良く貴方に顔をすり寄せる私に、貴方はため息をつく。
「現金なやつ」
当たり前でしょう?女ですもの。



電車で思いついて書きあげたのはいいのですが、どう考えてもそっくりな話をどこかで読んでいる…。まぁ、よくある話ですよね。ありがちですみません。
甘い会話を意識している、つもり。甘さの引き立てとか、高度なことは考えてませんでした…。
俗に言う『夜に書いたラブレター』並みの恥ずかしさ。
明日になったら全削除してしまいそうなので、今日のうちにアップします。
アップ版を使ってみたかっただけという説もあり(!?)

 

最終更新:2012年11月16日 23:54