2011年06月28日(火)01時21分 - エンディミオン
美紀。君は覚えているかな。僕達がまだ小学生だった頃の事。十年前、密かに、ただひたすらに君を想っていた僕に、君は優しく微笑んでくれた。久々の席替えで君の隣になり、緊張で石の様になった僕の手に、真っ白な指を重ねてくれた。あの柔らかで、まるで木漏れ日の様に温かな感触を、僕はきっと忘れない。誰も知らない、二人だけのメモリー。
昼休み、君は一人机に向かって、いつも難しそうな本を読んでいた。校庭から聞こえる友達の声。しかし僕の視線は、決して君から離れる事は無くて。時々君と目が合うと、たまらない程面映ゆかった。幼い僕は、大人びた君を見るだけで、胸を高鳴らせていた。
掃除の時の事を思い出すと、懐かしさと共に、それ以上に照れくさい。あの頃。僕は君に一歩でも近づこうと必死だった。距離、考えそして、気持ちを君に。君に手を伸ばそうとして、欠席している友達の机も運んだりして。そういえば、君が休んでいた日も欠かさなかったんだよな、僕。
だけど、いや、だからこそ僕には信じられなかった。君が授業中、そっと僕の肩に寄り添ってきてくれた事を。放課後の誰もいない教室で、僕が好きだと言ってくれた事を。僕は君を追いかけたけれど、それは君がずっと遠くにいる事を知っていたから。ただひたすらに走り続けていた僕は、君が振り返ってくれるなんて思ってもみなくて。だからなんだ。あの時僕が何も言わなかったのは。言えなかったと伝えれば、分かってくれるかな。
黙って立ちつくす僕を、それでも君は咎めなかったね。いつもと同じ様に、大人びた笑顔で僕を見守っていてくれた。でも本当は、気付いていたんだ。君の瞳はさまよっていた。君の頬は薄紅色に染まっていた。そして目を閉じて背伸びをした君の体は、いじらしい程小刻みに震えていた。夕焼けに照らされた君を、「綺麗」じゃなくて、初めて「可愛い」と思った事を今でもよく覚えてる。あの時教室の扉が開く音が聞こえなければ、と思うと、本当に悔しいよ。
あれからもう十年。僕は全然実感が無い。今もこうして胸に手を当てれば、照れくさい記憶と共に、温かで、それでいて胸を締め付けられる様な想いが、まるで昨日の事の様にはっきりと浮かび上がってくる。朝も昼も夜も、ただ彼女の事だけを考えていたあの頃の事。
ごめん、今のは取り消すよ。僕は今だって、君の事を想い続けてる。テレビを見ていても、スポーツをしていても、夢をみていたって、君の事は忘れない。ほら、これ。あの夜一緒に買った指輪も、ちゃんと。
僕はいつまでも語り続ける。彼女の表情は変わらないけれど、笑顔でいてくれればそれで良い。僕の心の中では、君は確かに言葉を返してくれるのだから。互いに寄り添って、いつまでも夜空を眺めていられるのだから。
線香の匂いが広がる。
次は、何時の話をしようか。美紀。
読んでくださってありがとうございます。
まずは……タイトルの通りです。美紀さん、いらっしゃったらごめんなさい。コピペして、名前だけ変えてからお読みください。すみません。ごめんなさい。先に謝り倒しておいたので許して下さい(笑)
コンセプトは、K先輩がよくおっしゃっている「いろいろな読み方が出来る」といったところでしょうか。そうは言っても2通りだけのような気もしますが。
気持ち悪い、等の非道なものでも歓迎するので、感想を是非聞かせてください。また、僕の後に書かれる方がいらっしゃれば、更なる甘さを期待したいと思います。