赤いチョコレート

2011年06月28日(火)21時03分 - すばる

 

 バレンタイン
 それはきっと特別な日、空気がほのかに色めき、それでいて、どこか緊張が見え隠れしている。だってそれは特別な日、あたしにとっても、あなたにとっても、きっと忘れられない思い出になる。永遠に刻み付ける。そのために、あたしは何日も前から、ただあなたのためだけに用意してきたんだもの。みんなに好かれて、たくさんのチョコレートをもらうあなたにも、それはきっと、特別な一粒になる。丁寧にラッピングした私の思いは、たくさんの思いの中に埋もれてしまうかもしれないけれど、あなたはきっと見つけ出す。その時には、愛しいあなたは、あたしだけのものに。



 あたしはその日も、いつもと同じように登校しました。でも本当は、心臓はバクバクなって、今にも張り裂けてしまいそう。平静を装いつつも、どこか張り詰めた空気が町全体をすっぽりと覆っています。だって今日は、一年に一度の特別な日。多かれ少なかれ、若い男女ならば誰もがこの日に思いをはせている。ましてやそれが、思春期真っ只中の少年少女たちの集まる学校ともなれば、その空気は甘酸っぱい匂いを帯びた、よりあからさまなものになるのです。みんなそれぞれ、心の中に期待を秘めて今日この日を迎える。もちろんあたしだって例外ではありません。
あたしの恋のターゲットは、クラスの人気者であるあなた、女の子からも大人気で、モテモテのあなたはきっとたくさんの思いをもらったのでしょう。渡すあたしは必至なのに、もらうあなたは何ともないという感じでそっけない。でも、きっとあなたは、あたしの思いを見つけてくれる。だからそれまではガマンガマン、ただその時をそっと見守ります。



 あたしがそれを知ったのは、それから一週間ぐらいしてからのことでした。あなたがあたしの思いを見つけてくれたという、確かなしるしを見つけたのです。一番じゃなかったのは癪だけど、特別に許してあげる。だって、最後に食べたのは、あたしの愛だったんだもの。これからは、あなたはずっと、あたしだけのものです。





 なんか甘い小説企画とかぶっている感じもします。しかも短い。が、書いちまったもんはしょうがない。玉砕覚悟で上げます。
 

最終更新:2012年12月01日 11:11