ウッダーラカの「有」の哲学

ヤージニャヴァルキヤの観念論的な傾向に対して、
ウッダーラカ・アルーニの思想は実在論的である。

彼は万有の根源を「有」と規定した。
万有の根源としては、「有でもなく無でもない一者」とする
リグ・ヴェーダ』末期の讃歌があったり、
「無」を世界創造の原理とする思想もすでにあった。

ウッダーラカの「有」の哲学は、それらを批判し、「無」から「有」は生じえない
とする彼の確信のうえに成り立つ。

この「有」はきわめて「微細なもの」であるが、
繁殖の意欲をおこして苦行(タパス)を行い、その熱力(タパス)によって、
熱・水・食物の三要素を生み出した。
そして「生命としてのアートマン」によって、この三要素の中に入り込み、
三要素の混合によってさまざまの現象をつくりだした。
したがって、多様な現象界もすべてこの三要素によって構成されている。

たとえば燃える火のなかに見える赤い色は熱の色、白い色は水の色、
黒い色は食物の色である。

人間の各部分や諸機能もすべて三要素から成っている。

三要素のなかにアートマンとしてはいった「有」は、
こうして万物に浸透しているのである。

このことをウッダーアラカは、具体的な事象の観察を通して語る。
―塩の塊を水に溶かすと、塩は認められなくなるが、
容器のなかの水はどの部分も塩辛くなる。
よう樹(ようじゅ)の見のなかの種子を割ってみると、そこには何も認められないのに、
その目に見えない微細なものから大樹が生じている。
それと同じように、「有」もきわめて微細なものであるが、
万物に浸透し、その本質をなしているのである。

このウッダーラカの思想の核心は、彼が息子のシヴェータケートゥに向かっていう
「おまえはそれである」に最も端的に表現されている。
個体がその本質において最高実在と同一であるという思想を簡明直截(ちょくせつ)
にいいあらわしたこの短句は、古来、ウパニシャッドのなかの大文章として有名である。









最終更新:2007年07月28日 12:58
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