ネクロノミコン

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ネクロノミコン(Necronomicon)は、怪奇作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの一連の作品に登場する架空の書物である。ラヴクラフトが創造したクトゥルフ神話の中で重要なアイテムとして登場し、クトゥルフ神話を書き継いだ他の作家たちも自作の中に登場させ、この書物の遍歴を追加している。

概要


アラビア人「アブドル・アルハズラット」(アブドゥル・アルハザードや、アブド・アル=アズラットと記される場合もある)が著わしたとされる架空の魔道書。複雑多岐にわたる魔道の奥義が記されているとされ、それ故か魔道書そのものに邪悪な生命が宿ることもあるという。『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』ではジョセフ・カーウィンが(『イスラムの琴(カーヌーン)』の偽題で)所有し、「時を越え」たり「地下の大軍を出現させ」たりする準備をなした。カーウィンの所有した魔道書は襲撃によって失われたはずであったが、なぜか現代に舞い戻る。また、『ダニッチの怪』では、不完全な英語版が異世界からの怪物を召喚させるために用いられ、逆にそれを撃滅するためにも用いられた。

ラヴクラフトは、イブン・アスィールの『完史』の西欧語タイトル「クロニコン」から着想を得ていたとされている[要出典]。またラヴクラフトがこの魔道書の表題をギリシャ語としつつも起源をアラビアとしたのは、『アルマゲスト』の表題の逸話から着想を得たものであり、ヨーロッパではローマ帝国崩壊後に原書が失われてしまったプトレマイオスによる同書がアラビアに伝わって保存され、発展し、ルネサンス期にアラビア科学として逆輸入された歴史的事実を踏まえたものであると、知人に宛てた手紙の中で説明している。かくして本書は、失われた古代の知識という雰囲気を作り出すための道具立てとなった。

ネクロノミコンは架空の書物であり、本来はクトゥルフシリーズの中でのみ語られてきた存在であったが、現代においては魔道書物の代名詞的存在として様々なメディアでその名前を目にすることができる。

初出はラヴクラフトの著作『魔犬(原題:The Hound)』で1922年の事。
ネクロノミコンの他に、イスラムの琴(カノーン)や、尸条書(中国語版)などの呼び名を持つ。
原書となるアラビア語版、完全なギリシャ語版、ラテン語版、不完全な再版ギリシャ語版、
不完全な米国語版、スペイン語版、前述の中国語版などがクトゥルフ神話の設定上存在する。

来歴


ラヴクラフトが作中に記した来歴によれば、狂える詩人アブドル・アルハズラットにより、730年にダマスカスにおいて書かれた「アル・アジフ(Al Azif)」(もしくはキタブ・アル=アジフ:キタブは本/書の意)が原典であるとされる。アジフは、アラブ人が魔物の鳴き声と考えた夜の音(昆虫の鳴き声)をあらわした言葉であると定義されている(ただし、アラビア語にアジフという単語はない。類音語として、うなる音または轟音の意味をもつアジズがある)。「ネクロノミコン」の表題はギリシャ語への翻訳の際に与えられたものとされ、ギリシャ語のΝεκρός(Nekros 死体) - νόμος(nomos 掟) - εικών(eikon 表象) の合成語であり、「死者の掟の表象あるいは絵」の意とされる。アルハズラットの最期については諸説があると設定されているが、執筆後にダマスカスの路上で白昼、目に見えない怪物に生きたままむさぼり食われたというエピソードが、具体的な伝承として紹介されている。

現存する版本の多くは17世紀版で、ハーバード大学のワイドナー図書館、パリ国立図書館、ミスカトニック大学付属図書館、ブエノスアイレス大学図書館などに所蔵が確認されているが、完全なものは世界に5部しか現存していないと設定されている。

ネクロノミコンの歴史

以下はラヴクラフトが記した資料「ネクロノミコンの歴史」の中で言及されている来歴であり、多くの作品中で事実として踏襲されている歴史である。

730年 アブドル・アルハズラットにより、アラビア語の原書「アル・アジフ」が書かれる。
950年 コンスタンティノープル(ビザンティウム)のテオドラス・フィレタス(テオドールス・ピレータース)により、「ネクロノミコン」の表題でギリシャ語に翻訳される。
1050年 総主教ミカエルにより、焚書処分にされる。
1228年 オラウス・ウォルミウスにより、ギリシャ語版をもとにラテン語に翻訳される。
1232年 教皇グレゴリウス9世により、ギリシャ語版・ラテン語版ともに出版が禁止される。
14xx年頃 ドイツでゴチック体版が刊行される。
1500~1550年頃 イタリアでギリシャ語版が出版される。
1560~1608年頃 ジョン・ディー博士により、ラテン語版をもとに英語に翻訳される。なお「ダニッチの怪」での描写によれば英語版は製本されず、後に不完全な写本が散逸したとされる。
16xx年頃 ラテン語版をもとにスペイン語に翻訳される。

ネクロノミコンの再現


ネクロノミコンは、熱心なラヴクラフトのファン達によってその再現が幾度か試みられている。

古くは1946年にニューヨークの古書店がラテン語版『ネクロノミコン』を販売目録のなかに(ジョークで)追加し、新聞で報道されるほどの騒ぎとなった。

1973年には、アウルズウィック・プレスが贋作と明言した上で『アル・アジフ』を出版。これは全ページをアラビア風文字の無意味な羅列で埋め尽くしただけのもので、コレクターズアイテム以上のものではなかった。

1978年、ジョージ・ヘイが、ジョン・ディー版からの翻訳というふれこみで『魔道書ネクロノミコン』を出版。序文をコリン・ウィルソンが書いている。この本には、実在しているジョン・ディーの暗号文書をコンピュータ解析によって解読したというものが載せられている。その内容は「驚くべき事に」、ジョン・ディーの時代より数百年後に描かれたラヴクラフトのクトゥルフ神話の内容と合致している。この「解読結果」が、作者や関係者のネクロノミコンに対する所見や「解読」に至るまでの経緯などと共に、「ネクロノミコン断章」と銘打たれて収められている。

それまでに出版された『ネクロノミコン』に不満を感じていたドナルド・タイスンは、2004年に『ネクロノミコン アルハザードの放浪』を出版。ラヴクラフトが作中において『ネクロノミコン』からの引用として記述した文章を全て盛り込み、より設定に忠実な再現を試みている。

他に『ネクロノミコン』のタイトルを持つ有名な書籍として、スイスのシュールレアリズム画家H.R.ギーガーが1977年に出版した作品集があり、収録作の一つ「ネクロノームIV」に描かれた異形の怪物が後の『エイリアン』のベースとなった。
最終更新:2013年03月07日 22:12