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792 自分:名無しさん[sage] 投稿日:2011/03/31(木) 01:18:38
 「…見ていろ」
捕まえた眼鏡を抱きしめて、その小さな唇を噛み締めて。少女は意を決する。
 「え?」
怪訝そうに見つめてくる瞳…それはこれまで少女が愛し続けた、少年の瞳。それは、瑠璃のように美しく、玻璃のように煌く、懐かしい光。
 「これは…もう私のものだからな。返してなどやらん!――-だから、ずっと、おまえは…私を…私だけを見ていろ!」
強気な台詞に反し、少女の声音は震えていた。誰だって、本心を告げるのは、恐ろしいのだ。それは、ずっと彼が怯えていたから誰よりもわかる感覚で。
呪縛といってもいいそれに抗おうとする強さ。いつだって、この一つ年上の少女は、そんな怯懦を持ち合わせていなかった。
 少なくとも、少年の前では、見せようとしなかったし、見たこともなかった。それが、虚勢であるとも感じぬほどに、彼女は強かった。
だから、少年は、思う。もしかしたら、自分は彼女のことを何も知らないのではないか。知ろうともしなかったのではないか。それを知る誰かが他にいるのではないか。

 弱い彼女を、見たいと思う。知りたいと思う。守りたいと思う。譲れないと思う。…それを、おそらく、人は恋慕と呼ぶのだろう。

 「クラン、ごめん」
今まで守ってくれて。愛してくれて。けれど、気づかないふりをして、幾度も彼女の心を傷つけた。それらのことをすべて申し訳ないと思う。
 「そして、ありがとう」
 「お前…どこかで頭でも打ったんじゃないのか?」
不安そうに、本気で心配している、と言うような怪訝な表情を見せるクランに、ミシェルは苦笑する。
自分の怯懦とは違う愚鈍さに、少しばかり絶望する。けれど、これが罰と言うのなら、甘んじて受けよう。そして罪滅ぼしをしよう。

 「愛してる」

二人の唇が重なる直前、息の間で囁いたその言葉で、贖われる罪は。
唇が離れた後、静かに少女の頬を伝う涙に、痛む心が罰となり、彼を少しだけ幸福にした。



785をすごいシリアスにしてみた。

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最終更新:2011年05月04日 14:06