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525 :食べ物小説1:2011/10/19(水) 10:17:37
……お待たせして、大変申し訳ありません。
(たたかれると思って、覗けなかった)
では、スレ使用させていただきます。

ミハ→クラ な感じです。ちょっと捏造設定あり。


食べる、と言う行為は、ほぼ例外なく誰もがする行為だ。
生命を維持させるためには、「人」は食べずに居られない。
なぜだろうか。「食べる」という、その行為は、
ただの生命維持以上の意味を持つようになっているはずだ。
 グルメ番組も、グルメ情報も、宇宙に進出して久しい今日ですら、
人気のコンテンツであることは、変わりない。
内容の質が多少変わっていようと「より、旨いものを食べたい」という、
人間のあくなき欲求は、
ただ地球から離れたごときでは変わらなかったといえる。
 デートで失敗したくなければ、手っ取り早く、
雰囲気が良く美味しいお店に誘うこと。
 そんな使い古された手段ですら、いまだに有効だ。
なぜ味覚は人間に対して、こうも大きな力を奮えるのだろうか。
 ミハエル・ブランは、そんな哲学的な命題をぼんやりと考えていた。
目の前で、旺盛な食欲を見せる、小さな体格の幼馴染を見ながら。

 きっかけは、些細なことだった。いつもの通り
(それもどうかと自分でも思ってしまうのだが)デート情報誌の、
情報収集に余念のなかった自分は、幼馴染のクラン・クラン大尉に声をかけられた。
 なにをみているのだー、と、無邪気にまとわりついているように見えるが、
彼女の内面は子供ではない。こちらに対する牽制だって、判りはするのだが。
 童顔と言うか、子供そのままの表情と、その身体で、覗き込まれたらこちらだって、たまったものじゃない。
クランが覗き込むと、自分の身体の中に、クランの頭が来て、シャンプーの匂いが、もろにくるのだ。
 もうそうなったら、グルメ情報どころではない。一番のご馳走が、目の前をちらちらしているものだから。
集中なんかできっこないので、苦肉の策として「適当にあしらう」
 ほらほら、お子様は関係ないんだから、退いてなさいっと、などといいながら、
小さな頭を押しやると、青い髪が揺れて、匂いがことのほか沸き立つ。
ああもう。我慢テナンデスカー。
 「ミシェル。」
 押しやった手の下から、大きな大きな瞳が、こちらを見つめ返す。小さな頃から見ていた、変わらない、強くまっすぐな瞳。
「………誰かと行くのか。」
 飾り気のない率直な問いは、自分でも意外なほど、ずっしりと「きた。」
 罪悪感だろう。一番好きな人を、他所に放っておいて、決して埋められぬ寂しさを誤魔化すだけの「デート」を繰り返す行為に対しての。
情報を集めて、連絡をして、予定を調整して、会うという一連の行為を、もう自分はほとんど何も考えることなくやってのけることが出来ると言う、そんなことも。
 傷つけても、傷つけても。この幼馴染は、自分を見放さない。
 確信めいたそれは、なぜだか返って自分を傷つけた。大好きで、大事で、触れることもためらわれるのに。
触れて、自分で傷つけるよりはと、触れることなく無視することに決めたのに。自分のことなど、見放してくれて構わないのに、見放さない。
 そんなことを考えたら、反射的に言葉が出なくて、一瞬詰まった。
 「まあ、お前みたいなお子様は誘われないだろうしねえ。縁遠いことですよ。」
 違う。傷つけたいんじゃない。ただ、遠ざけたい、それだけなのに。近ければ触れてしまうから、触れられないくらいに遠くに。ただ。
 ああ、しまった。目なんか見るんじゃなかった。そんな傷ついたような。
 ばかっ!と、言われるその直前に「だから、たまには俺が誘ってあげますか。」
 と言ったのは、深い青の大きな瞳の罠だったと思う。

526 :食べ物小説2:2011/10/19(水) 10:22:33
 言ってからすぐに後悔は訪れたけど。同時に、後悔は何も生み出さないことも経験則として知っていたから。
明らかにうれしげなそぶりを隠すことも出来ないクランを、今度は本当にあしらいながら、今まで蓄積したデータを頭の中で総ざらう。
うん、これだ。
 「じゃあ、今度の非番の夕方にな。」
 そういって、小さな頭に手をやると、やっぱりクランのつかっているであろう、シャンプーの香りが立ち上って、
その日がくるのが待ち遠しいのか、どうなのかすら自分では、判然としなかった。

 「ミシェルー。」 
 「なに。」
 不満たらたらげな、クランを見やる。とっておきのセットアップを着た姿は、
なるほど「デートのためのおめかし」に間違いはない。仏頂面らは似合いませんよー、
とまぜっかえそうとして、嘘です。
仏頂面すら可愛いと思ってしまう自分はやはり、相当重症なのだと思う。
 「お前は、こーゆー店を、普段使うのか。『デート』で!」
 不満を素直にぶつけてくるクランに対して、自分はいつものクールさを装いながら
「いやあ。相手がお前だからさ。」とかえす。
 素直な自分の気持ちを、言葉にするということが、ひどく久しぶりな気がする。
特にこの幼馴染相手には。
 確かにクランの不満は最もだろう。周りは「デートスポット」と言うのには、
到底ふさわしくない店並びで、オシャレなショッピングスポットがあるわけでなし、
ほとんど「飲み屋街」の様相を呈している。
「クラン、今日さ、ちゃんと身分証持ってるよな?」
「あ、ああ。もちろんだ。」
 特異体質であるクランは、マイクローン化したとき、成人であるという証明が必須である。
単純に年齢確認できれば問題ないので、クランは常にカード状のそれを持ち歩く必要がある。
まあ、飲酒や喫煙をしなければ、基本的に問題はないが、今回は店が店だ。
「じゃ、入ろうぜ。」
 そういって、自分では決死の決意で、手を触れて導いて店内に入ったことを、
幼馴染は気付いていただろうか。いや、気付かれる訳にもいかないのだが。

 店に入って、初めは落ちつか無げだったクランだが、何気なく小鉢に盛られた
「お通し」を口にして、表情が一変した。 目を丸くして、頬を赤らめて。
「美味しい…!」
 ほらね、そんな表情をさせたかったんだけど。幼馴染の大尉さんは、普段はひどく意地っ張りの癖に、
こういうときばかり素直に顔に出るのは、反則だと思うのですよと、そんなことを自嘲気味に思いながら、
ビールのジョッキを頼む。
 フロンティアでは、お互い成人であるので問題はないが、クランの見かけが見かけなだけに、
年齢を確認され、クランが向き直る。
「ビールか。デートで飲むものではないなー。」
「ここのビールは特別。ちゃあんと、ジョッキを何度も洗って、拭かないで乾かすの。
その上で、ちゃんと講習を受けた店員がそそぐんだから。」
「なぜ拭かないのだ?」
 もっともな疑問。店の主人から聞いたことを受け売りで答える。
こんなデートテクニックをあえて使って、平常心で居ようと努力する。
「ジョッキに繊維が残ってると、ビールの気泡や泡立ちが変わってくるんだよ。
繊維が核になっちゃって、泡がそっちについちゃうから。ちなみに、何度も洗うのも、
油とかビールの大敵だから。」
「ああ。なるほど…。しかし、大変な手間だな。」
「それに、ここはビールの保存にも、ちゃんと気を配ってるしね。…ときた。」
 二人で、なみなみと注がれたジョッキを受け取り、かんぱーい、と合わせる。
確かにデートと言う雰囲気ではあまりない。
「ここはね、まあ、メインが『オコノミヤキ』と『モンジャ』だから。
……酒の品揃えと、クオリティがハンパじゃないんだけど。」
 そういいながら、メニューを差し出すと、クランは、真剣な顔でにらめっこを始めた。
ああ、いつだってこの娘は真剣だったっけ、なんて思いながら、注文を決めるまで、ひっそりと見とれることにした。

527 :食べ物小説3:2011/10/19(水) 10:26:30
はじめて焼く「オコノミヤキ」に若干へどもどしていたが、もともと料理は不得意ではないクランは
「なるほど、パンケーキのようなものか」と、すぐに返し方をマスターしてしまったが、
問題は「もんじゃ」のほうで、ゲル状(と言うと言葉は悪いが)の食べ物に、かなり戸惑っていたが、
とろけたチーズの一片をほおばると、本当にまたとたんに顔が変わる。鉄板から「ハガシ」と呼ばれる、
小さな銀のへらでこそげ取り、はふはふとしながら、口に運ぶ。
 あー……すっごいしあわせそーなんですけど。
 そんなことを、店主自慢の「うまいビール」で酔いの回った、頭でぼんやりと思う。
そう「食べる」と言うことは、ただの生命維持とか、栄養補給とかという域を「人」にっては、
超えていると考えてまず差し支えない。でなければ、これほど「グルメ情報」が氾濫すると言う意味がわからなくなる。
 うっかり、冷ますのを忘れたハガシを口に運び、アチッ!と失敗すると、とたんにクランが
「大丈夫か?ほら、ちゃんと冷ませ。」
 そういいながら、ミシェルの手をとり、ハガシに息を吹きかけ、ほら、
と差し出す。冷静に考えると、これはかなり「新密度の高い」行為だ。
もちろん彼女はそんなこと意識してないんだろうが。
 だって、ずっとそんな空気だったから。
 両親の居ない、姉と自分をクラン家はいつも温かく迎えてくれ、
大体クランの母親は「さ、ごはんできたわよ。」と、言うのだ。「食べていきなさい」
ではなく「ごはんできたわよ。」と。それはもう、ミシェルと姉が、ご飯を食べていく前提で、
自然と出てくる言葉だった。
 クランは、もうその頃から世話好きで、思えばミシェルを弟のように思っていたのか、
あるいは、もっとペットのような存在か。ともあれ、彼女は食事中ですら、何くれとミシェルの世話を焼き、
もう気付くとミシェルもそれが当然のようになっていたのだ。
 いつもだったら、そんなクランの行為が、照れくさくてまぜっかえすのに、
今日は素直に口に運ぶ。ひどく懐かしい気がした。
「ミシェル。マヨネーズかけるか?」
 あの頃みたいに、彼女は、食べながらもこちらに気配りをする。そっか、ととたんに腑に落ちた。
 いままで「美味しい」とされる店で、どれだけのものを食べても、なぜどこか満たされないような気持ちで居たのか。
というか、満たされてなかったとたった今気付いたのだ。
 だから、新しい情報を求めて、新しい店を開拓して…。
 美味しくないわけではないのに。美味しいと、素直に感じているのに、どうして満足感がなかったのかわからなかった。
気付いてみると、答えはひどくシンプルで、今まで気付かなかった自分が馬鹿みたいだ。
 クランは、焼きあがったお好み焼きをミシェルと自分の分をとりわけ、
自分の分にソースとマヨネーズをかけ、今まさにほおばらんとしていたところだった。
 開かれた口。口の端にはちょっとだけソースがついてしまっている。いつも連れ出す女性では、まず考えられない。
少しでも口の周りに違和感を感じれば、手元のナプキンで口をぬぐう種類の女性たち。
 美味しいわ、と微笑む彼女たちの言葉に、さほど嘘はなかったのだろうが、どうしてあの女性たちは、
彼女ほど、屈託なく食べられないのだろうか。
 口の端に着いたソースをなめとりたくて、思わずみていると、
クラン自身が気付いて、置いてあった紙ナプキンで口をぬぐう。口の端だけ最小限に。
 そのあと、もう一度幸せそうに、お好み焼きを口に運ぶ。こぼれる笑顔。
あの頃と変わらない笑顔。ぼんやりとしてる自分に気付き「どうした?」と問うて来る顔さえ変わらない。
 クランが、居なかったから。
 ああ、グルメなんてくそくらえだ。嘘です。美味しいもの好きです。
でも、その美味しいものすら、一緒に食べる人を選ぶなんて、なんてことでしょうか。
クランとだったら、レーションですら構わない。そりゃ今のお好み焼きのほうがいいけど。
 なんともいえない気分になって、ぐいっと、またビールをあおった。

528 :食べ物小説4:2011/10/19(水) 10:29:37
存分に食べて、店を出て。くるりとクランが長い髪を揺らして、
自分に向き直る。
「さすがだな!とても美味しかったぞ!」
 クランのその笑顔は、店から漏れるほのかな明かりに照らされて、いつもよりずっと可愛らしく見えた。
 酔ってんなー、おれ。と自戒するのだが、つるっと言葉が出た。「この店」と。
 しまった、と思ったときには遅かった。クランがちゃんとこちらを促す調子で見てる。
真剣なその表情に、酔って弱気になってしまった自分は、もう「弱虫ミシェル」以外の何者でもない。
「……特別なんだ。まずデートでは使わない。あんまオシャレじゃないから。」
 うー。このまま泥沼になって行きそうですカミサマ。と、信じたこともないのに祈る。
「でも…旨くて。ビールも、すごい…こだわってるし、他の酒も。」
「うむ。すごい品揃えだったな。コレクターというわけでなく、ちゃんと客に出すものな。」
「だから…その。………クランと来れて………」
 よかった、というそのつぶやきは口の中に消えたはずなのに、ああ畜生。
ゼントラって、耳も良いんだよなあ。たしか。と、もうぐだぐだな自分にツッコミをいれる。
ツッコミすぎてもう、何がなんだか。
 きっと、顔はひどく赤いだろう。こんなに熱を持ってるのなんて、久しぶりすぎて戸惑う。
酒のんでてよかった、とはじめて感謝した。顔が赤い理由を酔っているからだと判断してもらえる。
 つと、小さな手が触れる感触に、クランの顔を見る。
 クランの笑顔は、子供の顔なのに、ひどく表情は大人びて見えて、間違いなく「お姉ちゃん」であることを感じさせた。
あーもう。あーもう適いませんよ。年上のお姉さまが好みって…!明らかに、クランの代償を求めてただけじゃないか。
と、改めて自覚する。
「顔が真っ赤だミシェル。相当飲んだな。」
 その言葉を聴いて、ほっとすると同時に、本当は照れていることを見抜いて欲しかった自分の気持ちに気付く。
だから少し切ない。
「しょうがないなあ。もう、お前は。」
 そういって、クランは戦士とは思えない柔らかな手を、ほんの少しだけ強く握って。
「ゆっくり帰ろう。……いっしょに。」
 そんなことを言って、小さな華奢な背中を見せた。
 すいません。おじさん、おばさん。ついでにお好み焼き屋さんのマスター。
 俺にとっての、最大のご馳走はやっぱりこいつです。
 そんな風に思う、自分をもう、とめることが出来なかった。



……スレ汚し失礼しました。
投下はじめてなので、改行が変になって申し訳ありません。
あと、結果的に焦らしてしまってすみませんでした。

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最終更新:2011年10月22日 19:43