165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/31(土) 00:15:58.80 ID:O9cmwnAn0
「プロローグ」
今、俺は鉄くずを片付けている。
腕の形をしたもの、足の形をしたもの、体の形をしたもの・・・
元は「人」だったもののなれの果て。
ミクがこんな事さえしなければこうはならなかったのに
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/31(土) 00:22:21.78 ID:O9cmwnAn0
そう、それは今から10時間前にも遡る。
俺はその日、嬉しくて仕方が無かった。と言うのもここ数年食費を削り、汗水たらし
愛情を注ぎ込んだスタリオンが復活するのだ、胸の高揚はいやでも高鳴る
上の俺の部屋からミクが降りてくる
「♪マスター、美味しい麦茶ですよー♪」いつもの様にミクが麦茶を運んでくれる
俺はミクに「おうっ、有難う」と言うと麦茶をグビリ、と一口飲む。その日の麦茶は飛びきり旨かった
夏の日差しの中、エンジンを車体に載せ後は試運転を待つばかり。
ふと携帯を見ると午後12時。まずい、今日振込みの日だった!
俺は慌てて身支度するとミクに「車は任せた!」と言い、銀行へ向かった・・・
169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/31(土) 00:28:43.66 ID:O9cmwnAn0
銀行へ行き、スタリオンのエンジンをオーバーホーしてくれた東京の業者へと送金する。
俺は銀行を出た後、軽くタバコを吹かし意気揚揚としていた、ガレージで無残な姿になった
スタリオンを見るまでは。
近くのコンビニでビールを買う。無論、最高級のモルツ!俺は車を修理し終えたら〆はモルツ!と決めているのだ
モルツとカシューナッツの入ったコンビニ袋を引っさげガレージに戻ったのだが・・・
様子がおかしい。なんか「ゴンゴン」とか「ギュウギュウ」と言う音がする。・・・・冷や汗が背中を走る
まさか!そう思って俺がガレージに飛び込んでみた物は・・・スタリオンで遊ぶいや、スタリオンを破壊するミクの姿だった。
マフラーにはネギが詰められ、取っておいたボンネットはリンの手で一枚の鉄板と化していた・・・・
173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/31(土) 00:34:17.17 ID:O9cmwnAn0
俺は思わずコンビニ袋を落とした。俺のスタリオンが・・・スタリオンが・・・
目の前で復活を待っていた俺の幼き日のヒーローは再び無残な姿を晒していた。
ミクを見ると体にハーネスを絡め遊んでいる。(※ハーネス:人間で言う神経の部分)
ミクは俺を見ると陽気な声で「お帰りーマスター♪」と言っている・・・・
俺は悲しいのと同時に胸に湧き上がる物を感じた・・・。ユルサナイ
絶対に許さない。俺が幼い頃憧れてようやく手に入れて直したスタリオンを、ただ暇潰しの為に買った人形に潰されたのだ。
俺は工具箱からラチェットレンチを取ると、ミクの腕目掛けて振り落とした
176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/31(土) 00:43:15.71 ID:O9cmwnAn0
ドグッ!!鈍い音がするとミクの腕は折れ変な方向に曲がっていた。
ミクは腕を抑えると「痛い!痛い!マスター酷いよ!!」と俺に泣き叫ぶ。ハァ?
酷いのはそっちだろうが。俺が上司に嫌味を言われ、頭を下げたくない相手に頭を下げ
ただ、こいつでドライブする日を待ちわびながら修理したんだ。それをこいつは・・・
俺はミクに尋ねてみた。「何でこんな事をした?酷いのはそっちだろ!!」するとミクは泣きながら
「だって・・・マスター、ボロ車好きでしょ?」アホかこいつは!!!
俺は確かにボロ車は好きだ。けどそれを直すのが楽しいからなんだ!!
そしてボンネットを潰し終えたリンにも尋ねた・・・「何でこんな事したんだ?」
リンは泣きそうな顔で「ミクお姉ちゃんがマスターが喜ぶからって・・私止めたんだけど・・・」
そうか。リンにボンネット潰すよう指示したのはお前だったんだな。
つくづく有難うよ・・・。俺から夢を奪ってくれて!!
184:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/31(土) 01:09:55.88 ID:O9cmwnAn0
俺はスタリオンに目をやった・・・。フェンダーは小さな凹みが一杯、ボンネットが無く
屋根にはペンキで書いたのだろうか、ミクの下手糞な文字で「マスターのもの」と書いてあった・・・
ライトはもがれてコードだけで繋がっているプラプラ状態。取り付け前だったダッシュボードは粉々と化していた。
俺はレンチを置くとスタリオンのマフラーからネギを一品引き抜く・・・・
俺はネギをミクの尻の穴に押し込めた!!グニュウ!!ミクは「痛い!!いたあああ!!」と叫ぶケツリ上げる
「スタリオンだってこんな思いしたんだよ!!」俺はミクを睨み怒鳴りつけた。
リンは怯えた目でこっちを見ている。こっちミンナ!!と睨みつけたらリンは泣いて退散してしまった。
さてどうしてやろうか・・・。あの時、俺は確かに怒り心頭だった。けど壊すつもりは無かった。
だが、一旦タガが外れた俺はとめどなく暴走を始めるのだった
190:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/31(土) 01:29:17.01 ID:O9cmwnAn0
俺は廃油の入ったジョッキを取るとミクの口に差込、流し込んだ。ミクは「おげぇえ、ぐぅえ」と溺れながら
飲んでいる。ミクはハァハァ息づくと「マスター、ごめんなさいごめんなさい!!!」今更謝ったって遅いんだよ!!
お前が謝った所でスタリオンを修理したあの日々は帰ってこないんだ。思えばこいつは俺が作業するたびに邪魔してきた。
塗装途中の車体に触ったり、ばらしたエンジンの部品を持っていったり。他愛も無い女の子の悪戯と許していたらこうか。
今日と言う今日は許さない!!ミクが何しようが許さない!!許すものか!許すものか!!許すものか!!!
俺は、ミクの目玉を抉る為に抉る為に指を突っ込んだ・・・。ニュルリ。嫌な感触だ
「いや”あああああああ!!!!!」俺が強引に引っ張ると目玉はあっさり抜けた。
両方抜けて目玉がブランブランしている・・・。ケーブルがきめぇ事この上ない。
更に俺はシンナーを取り出しミクの腕を磨いた。何でかって?
人工皮膚を溶かして金属を露出する為さ。ミクは痛がって抵抗するが俺が殴ると黙り込んだ。
「マスタ・・・・もう・・・やめて・・・」律儀に涙なんざ流して。俺が「よし、ゴメン」とで言うと思ったか!!
アヒャヒャヒャ!!!俺のスタリオンを壊した罰だ!!罰を受けるが良い!!!
金属が露出した腕をサンダーで切断、ミクは当然「ぎゃあああおいfkfhfj、zzd;ぃj¥お@いういt68yn」
意味不明な事を言っている。しばらくするとピクピクしかしなくなった。
俺は最後にあれをやろうと決めていた
193:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/31(土) 01:39:16.78 ID:O9cmwnAn0
そう、背中の脊髄チューブに収められているケーブルを引きちぎるのだ。俺はミクの背中をカッターで切り開く
ミクは抵抗する訳でもなく「マスタ・・・マスタ・・・マスタ・・・」と言っている・・・
ミク、今お前の全てを終わらせてやる!!俺は力をこめてケーブルを引きちぎった!!ブチブチブチッ!
あちこちでケーブルが千切れる音がする中引きちぎり、コンクリートの床にケーブルを叩きつけた。
どうだ、これで・・・。どうだ。俺はその場に座り込んでミクを見る・・・・
これが報いだ!!と思っていると後ろから声がした・・・・
「・・・マスター?」その声は一緒に旅行に出かけていたレンとカイトだった。
俺は立ち上がり近寄ろうとするとカイトはアイスを落とし、こう言ったのだ
「マスターじゃない。こんな人、マスターじゃない!!」カイトは怯えた目で見ている・・・
レンも同じだ。腰が抜けたのか座っている・・・
俺は鏡を見た、するとそこに居たのは・・・・
目はギラギラ猛獣の様に鋭く、顔を引きつり般若と化していた自分だった
ミクを壊している間は気がつかなかったがツナギにミクの冷却液を飛び散っている。
俺は我に帰った。・・・俺は何をしているんだ!?
196:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/31(土) 01:49:38.16 ID:O9cmwnAn0
「違うんだ・・・!これは・・・!」近寄ろうとするとカイトは「こんな人はマスターじゃない!!近寄らないで!!」
レンも「貴方は、マスターじゃない!!この人でなし!!」そう言うと2人はどこかへ逃げ去ってしまった・・・
俺がミクの方を振り向き、頭を見ると・・何かある。虫だろうか?俺がミクの頭を見ると1円玉サイズの虫が張り付いている。
しかもその虫を良く見ると電子チップがついている・・・まさか。俺は顔面が真っ青になった
巷で噂となっていた「ウィルス虫」の存在だ・・・・ウィルス虫とはアンドロイドに寄生し暴走させる恐怖の虫だ。
ボーカロイドも例外ではない。近所でもレンがロードローラーで果断を荒す事件があったばかりだ・・・
と言う事はこの虫のせいで俺は・・・・。そう、とんでもないことをしていたのだ
俺が部屋に上がりその虫を調べると「自動車の破壊」とプログラムされたソフトが見つかった。
そう、ミクは自分でやったんじゃない。この虫にやらされていたんだ・・・!
206:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/31(土) 02:26:50.66 ID:O9cmwnAn0
俺は途方にくれた・・・。こんな虫一匹のせいで俺の人生、スタリオン、そしてミクを滅茶苦茶にされた・・
俺が下りると無残な鉄くずと化したミクと破壊されたままのスタリオンが有った。
俺は・・・俺は・・・もうどうにかなりそうだった。俺はミクの冷却液で汚れたツナギを脱ぎ
Tシャツに着替えた。皮肉にもそのTシャツは去年、三菱のイベントの際にミクが選んでくれたものだった
中央に大きなスタリオンの書かれたTシャツ・・。俺は泣いた。とにかく泣いた。
本当に悲しくて悔しかった。どうしようも出来なかった自分、あの時ミクと一緒に行けば・・・
後悔しても仕切れないものだった・・・・。泣き疲れた俺は落としたモルツを拾おうとシャッター付近へ向かった
するとコチラの様子をうかがうカイトとレンだった。俺は人でなし・・・
そう思うと悲しくなってくる。俺がまた泣き出すと声がした・・・
「マスター、もう泣かないで」それはリンだった。さっき逃げた筈では・・・?
リンは「マスター、分からなかったんだよね。ミクお姉ちゃんがおかしくなったの虫のせいだって・・私も言えなかった・・
マスターが怖くて」無理も無い、俺だってあんな顔で睨まれたら逃げ出すよ・・・
リンは一旦俺を落ち着かせるとカイトとレンに事情を説明し、誤解を解いてくれたが・・・
ミクは戻らない。壊れたミクは戻る事はないんだ。俺が相変わらず泣いているとレンが近寄ってきた
俺を軽蔑するような目で見ている。やめてくれ!!俺はもう・・・
するとレンが「何めそめそしてんだよマスター。」と言う。え・・・?どう言う事だ?
するとカイトが「ミクちゃんの頭、壊れてないから直せるよ。」・・そうだ。車と同じようにまた直せばいいんだ!!
だけどミクは俺を恨むだろう。あんな事をしたのだから。レンが「償うなら今のうちだよ。どうする?ミク姉ちゃん治さないの?」
俺は立ち上がると涙を拭き力強く言った「直すに決まってるだろ・・・・!」
早速皆で部品を集め始めた。幸いにも頭部と足は大丈夫だったが腕、胴体は俺がズタズタにしたせいで駄目になっていた
208:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/31(土) 02:40:15.78 ID:O9cmwnAn0
「エピローグ」
あの日以降、俺は普段以上に働きスタリオンとミクを直す為に奮闘した。
あの潰れたボンネットだが、アレはダミーだった。と言うのもおかしいと思ったリンが廃車のボンネットと摩り替えて潰していたのだ
これは後日談が「ウィルス虫」をばら撒いていた犯人が捕まった。正体は12歳の中学1年生。動機は「注目の的になりたかった」そうだ
やれやれ。こっちは慰謝料だなんだでふんだくったがスタリオンとミクの部品代にあっという間に消えた
ミクの部品は高く、更にあまり一般に出回っていない為探すのも一苦労だった。欠品パーツは
レストア技術で培った腕を頼りに自作した。胴体もある壊れたミクを譲ってもらいドナーとした。
あの日から1年半・・・・。たった1年半なのに10年経ったような気がする・・・
そして今日、友人に頼んで人工皮膚を纏い、あのお馴染みの衣装を着たミクが俺の部屋のベッドで寝ている。
スタリオンは昨日、無事車検に合格。いつでも走れるようにした。
俺はコンピュータを起動し、再起動プログラムを実行した・・・「再起動中・・・」。その時間は僅か5分だが1時間に感じられた
再起動終了を意味するピーピー音がする。俺は恐る恐る呼んだ。「ミク、起きる時間だぜ」
するとミクはゆっくり目を覚まし、俺を見る。「きゃあ!」そう言うとミクは怯えた。
やはり駄目なのか・・・。そう思うとミクがリンの手紙を読んでいる。ミクは俺を見ると「マスター!!」
飛びついてきた。俺は嬉しくて嬉しくてたまらなかった・・。
今はどうしてるかって?ミクも、立派な女整備士になったよ。
今もミクの歌声は響いている・・・・
「♪マスター、モルツですよー♪」
fin
最終更新:2008年11月29日 16:59