後期クイーン的問題とは?
後期クイーン的問題とは、推理作家エラリー・クイーンの著作の後期作品から見えてきた、
探偵小説が抱える構造的な2つの問題のこと。
【第1の問題】作中で探偵が最終的に提示した解決が、
本当に真の解決かどうか作中では証明できないこと
どんなに緻密に論理を組み立てたとしても、探偵が真相を推理することはできない。
なぜなら、探偵に与えられた手がかりが完全で全て揃っている、
あるいはその中に偽の手がかりが混ざっていないという保証ができない、
つまり、「探偵の知らない情報が存在することを探偵は察知できない」ため。
【第2の問題】作中で探偵が神であるかの様に振るまい、
[[登場人物]]の運命を決定することについての是非
探偵が捜査に参加することあるいは犯人を指摘することにより、
本来起きるべきではなかった犯罪が起き、
犠牲者が増えてしまうことへの責任をどう考えるのかという問題。
(例えば、探偵の捜査を逃れようとした犯人が関係者を殺して回るようなケース)
ミルキィホームズにおける後期クイーン的問題
前述の後期クイーン的問題の中でも特に【第2の問題】について、
つまり「探偵の活躍によって、更に新たな犯罪が生まれる可能性」については、
作中の探偵と怪盗の関係やそれに巻き込まれる市民の姿から、しばしば指摘されてきた。
ミルキィホームズ公式twitter @milkyholmes |
トイズ喪失とエラリークイーンについて論じてる人がいる くそう もうそこまで至ったか (2011/1/4) |
※参考:「探偵と怪盗の共犯関係」 (2010/12/9) |
いわゆる後期クイーン問題、という奴だ。 「探偵が参加したり存在する事により、犯罪が発生するのでは」みたいなアレである。 ミルキィホームズの作中では、探偵と怪盗の対立関係は、 探偵側の「トイズの消失」を切っ掛けに機能不全に陥っている。 それが不意に断たれた時、新たに生まれたのは、視聴者のみなさんはご存じのとおり、 怪盗側のボス・アンリエットによる奇妙な「保護」である。 探偵が怪盗を必要とするように、怪盗もまた探偵を必要するのだ、と言わんばかりである。 |
ゲーム版の
怪盗Lは、
小林オペラとの対決が原因で以後オペラに執着するようになり、
最終的に
フォルトニウムの炉心を暴走させ、
ヨコハマを消滅させようとする位に狂気が加速していく。
ある意味、
「探偵の存在が新たな怪盗犯罪を生み出している」とも言える皮肉な状況がある。
(もっとも、探偵が居なければ防げない犯罪の方が多いとも思われるので、是非は問えないが)
ヨコハマ市民「俺達の町が…お前達、探偵と怪盗さえ居なければ…」
探偵・怪盗マッチポンプの自給自足型トラブル
◆アニメ版設定
ホームズ探偵学院の実質最高責任者である生徒会長が怪盗帝国の首領アルセーヌ自身であり、
探偵の育成と事件の発生は、ある意味で怪盗のコントロール下に置かれてると言える。
生徒会長が自分に相応しいライバルを見つける(育てる)目的も兼ねてるのでは?との説もある程。
┌──────────────────┐
│ ア ン リ エ ッ ト 会 長 |
└──────────────────┘
↑ │ │
ダメダメ 支援 支配
│ ↓ ↓
- - - - - - - - - - -裏- - - - - - - - - - - -
┌──────┐ ┌──────┐
│ 探偵 ├─攻撃→│ 怪盗 │
└──────┘ └───┬──┘
↑ │
感謝・金 窃盗
│ ↓
┌──┴───────────────┐
│ ヨ コ ハ マ 市 民 |
└──────────────────┘
アルセーヌ(アンリエット)の理想は、自分の好敵手になれる強い探偵が居て、
その優秀な探偵の猛追跡を紙一重でかわし、切磋琢磨して互いを高めあうという生き方。
しかし、肝心のライバルとして期待していたミルキィホームズが
トイズを失いダメダメになり、
まるで保護者のように探偵らしく育つように支援するという奇妙な関係になっている。
第2幕では1期よりも更に激しく状況が変わり、ミルキィホームズが立派な探偵になるどころか、
怪盗を捕まえるという意識さえ失われるほどダメダメになり、日々楽しく過ごす事に没頭してしまう。
何とか手を尽くそうと我慢の限界まで支援していたが、改善の兆しが無いことに深く絶望し、
「他人を傷つけず美しく盗む」美学を放棄して学院を破壊し、去ってしまう。
探偵学院の生徒や、ヨコハマ市民が被った被害は、いわばその煽りを受けた巻き添えとも言える。
◆ゲーム版設定
「国際探偵機関
IDO(本部はイギリス)に生徒会長が事件報告に行く」という会話があり、
更に
ゲーム版設定では、
探偵学院の設立理由に関して驚愕の真相が明かされる。
※ゲーム1作目最終話の内容の激しくネタバレなので注意↓(ドラッグで反転)
ゲーム版の探偵学院の設定では、表向きは探偵を育成する教育機関だが、
本当の目的は、怪盗Lが小林オペラへの復讐の道具の為だけに設立された。
トイズを失った小林オペラに「生徒を育てる」という生きがいを持たせた上で、
オペラの目の前で大切な生徒達を奪い、徹底的な絶望感を与えるのが目的。
これらの状況的証拠から、
- IDOの幹部クラスの中に、怪盗の一員が紛れ込んでいるのでは?
- 探偵組織の上層部は怪盗と裏で繋がっているのでは?
といった意見が過去スレでもしばしば話題に出ている。
┌──────金─────┐
│ ↓
- - - - - - - - - - -裏- - - - - - - - - - - -
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│ 探偵 ├─攻撃→│ 怪盗 │
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↑ │
感謝・金 窃盗
│ ↓
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│ ヨ コ ハ マ 市 民 |
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[[怪盗L]]「怪盗はトイズを使うだけの物盗りではない」
小林オペラ「予告状を出した以上、怪盗は必ず来る、そういうものなんだ」
これらのセリフからも、怪盗は金銭宝物を奪う事以上に
「予告をした上で、厳重な警備を突破して目的の物を奪い、謎と混乱を振りまく」
というスタイルを実践する美学を重視していることが一般的にも認知されていて、
ある種の暗黙のルールの上で探偵と怪盗の勝負は行われている模様。
怪盗L自身、「命よりも己の怪盗としての美学に文字通り“殉じる”」タイプの人間だった。
※ゲーム1作目最終話の内容の激しくネタバレなので注意↓(ドラッグで反転)
小林オペラを憎む以上に、退却してのうのうと生き伸びた自分自身を許せなかった
自ら退路を断ち、小林オペラを絶対絶命の窮地に追い込んだクライマックスにおいて、
ヨコハマ中を消滅させつつ自らも命を散らすことで、滅びの美学を完遂しようとした
ゲーム版の怪盗Lや、アニメ版の怪盗アルセーヌの様に、
自らに課した自分なりの「怪盗としての美学」に病的なまでに拘る気質の怪盗たちにとって、
この後期クイーン的問題は大きく関わっている問題とも言える。
(奇しくも、怪盗Lも怪盗アルセーヌも、追い詰められた際にその美学に綻びが生じている)
最終更新:2012年03月11日 21:10