Nenkova,..., 2008,ApJ,685,147N

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  • ABSTRACT

初めて、AGNトーラスのクランピーな性質を説明するformalismを開発した。
2つの論文でそれらを示す。
ここでは、クランピーな媒体の放射輸送に対する一般的なformalismを提示し、AGN問題の構成要素を構築する。
AGNの放射場によってねっせられる個々のダストクラウドのソースファンクションである。
smoothモデルとのクランピーモデルの違いは、広いダスト温度が中心天体から同じ距離に同居できることである。
この性質で、10ミクロン干渉計観測によるNGC1068の核の近くの低いダスト温度を説明した。
全体の幾何にかかわらず、クランピーダスト分布は適当なSEDの多様性と、10ミクロンの吸収のフィーチャーは決して深くないことを示した。
さらに、X線の減光柱密度はIR放射を特徴づける柱密度の周りでばらついている。
これらの全ての性質はAGN観測の特徴である。
クラウドをAGNトーラスにまとめて、観測と比較することがもう1つの論文でなされている。

  • 1.INTRODUCTION

統一モデル
  1. Antonucci 1993,2002
  2. Urry & Padovani 1995
によると、様々なAGNの種類は、統一モデルの見込み角によって起こると説明できる。
ダストトーラスの非等方なobscurationによって、フェースオンから見るとタイプ1、エッジオンから見るとタイプ2である。
  1. Krolik & Begelman 1988
によると、光学的に厚いダストクラウドが集まってトーラスはできていると結論づけられている。
実際、
  1. Tristram et al. 2007
は、VLTI干渉計観測で、CircinusのAGNを観測し、クランピーもしくはフィラメント状の構造の強い証拠を提供した。
クランピーとスムーズな密度分布の基本的な違いは、クランピーであれば、光学的に厚い媒体の異なる領域の間を自由に放射が伝わるということである。
しかし、クランピーな媒体の扱いの難しさのせいで、
  1. Pier & Krolik 1992
からトーラスのIR放射のモデルはスムーズな密度分布を使っている。
  1. Rowan-Robinson 1995
は、クランピーを現実的なモデルに取り入れることの重要性を書いているが、formalismは提供していない。

最近、そのようなformalismを開発し、
  1. Nenkova et al 2002
  2. Elitzur et al 2004
  3. Elitzur 2006,2007
でAGNのクランピートーラスのモデリングの報告を居ている。
そのformalismの詳細な説明と、AGN観測への応用を行う。
詳細の豊富さのために、2つの論文に分けられたが、この論文では、クランピーのformalismと個々のクラウドからの放射のソースファンクションを構築した。
対応する論文(PaperII)では、この個々の材料を組み合わせてAGNの観測への応用をする。

  • 2.CLUMPY MEDIA

まず、クランピーな媒体を扱う一般的なformalismを与える。
PaperIIでのみ使う結果についてもここで完全なformalismとして述べる。

Fig.1のように、クラウドに集中した物質の領域を考える。
簡単のため、すべてのクラウドが同じだと考え、結果を様々なクラウドの混合に一般化することはすぐできる。
  1. Conway et al 2005
ここのクラウドは、サイズR_cで特徴づけられ、クラウドの分布は、単位体積あたりのクラウドの数n_Cによって特徴づけられる。
1つのクラウドの体積をV_c、すべてのクラウドのvolume filling factorを\phiとする。
クランピーであるとすると、
\phi =n_C V_c \ll 1
である。逆に、スムーズ分布であれば、連続的で、\phi \simeq 1である。
単位長さあたりのクラウドの数を導入することは便利である。
N_C = n_C A_c = l^{-1}
ここで、A_cは、クラウドの断面積であり、lはクラウド間を進む光子の平均自由行程である。
V_c \simeq A_cR_cなので、クランピー条件は、
\phi = N_CR_c \ll 1,  \mathrm{or}  R_c \ll l
と等価である。
クランピー条件は、クラウド間の平均自由行程がクラウドサイズを大きく超える場合に満たされる。

  • 2.1 Emission from a Clumpy Medium

クランピー条件を満たした場合、それぞれのクラウドは強度S_{c,\lambda}と光学的厚み\tau_{\lambda}を持つ点源”メガパーティクル”と考えることができる。
与えられたパスに沿った任意の点sでの強度は、クランピーな媒体に放射輸送の解を適用することで計算できる。
パスに沿った位置s^{\prime}の周りの領域ds^{\prime}で生成される強度はS_{c,\lambda}(s^{\prime})N_C(s^{\prime})ds^{\prime}である。
s^{\prime}sの間のクラウドの平均の数を\aleph (s^{\prime},s) = \int_{s^{\prime}}^{s} N_C dsとし、s^{\prime}からの放射がsにクラウドに妨げられることなく届く確率をP_{\mathrm{esc}}(s^{\prime},s)とする。
  1. Natta & Panagia 1984
は、クラウドの数が平均\aleph (s^{\prime},s)の周りにポアソン統計に従って分布しているとすると、
P_{\mathrm{esc}}(s^{\prime},s) = e^{-t_{\lambda}(s^{\prime},s)}
で、
$$t_{\lambda}(s^{\prime},s) = \aleph (s^{\prime},s) ( 1-e^{-\tau_{\lambda}})
である。Appendixでは、ポアソン分布の正当性を議論し、この結果の導出を与える。
直感的な意味は、2つの極限でわかる。
\tau_{\lambda}< 1のとき、t_{\lambda}(s^{\prime},s) \simeq \aleph (s^{\prime},s)\tau_{\lambda}で、s^{\prime}sの間の光学的厚みの合計である。
つまり、個々のクラウドが光学的に薄い時には、クランピーかどうかは関係なく、領域はスムーズで扱える。
逆の極限\tau_{\lambda} >1では、P_{\mathrm{esc}} \simeq e^{-\aleph (s^{\prime},s)}である。
それぞれのクラウドが光学的に厚いが、光子は、すべてのクラウドを避ければ、パスに沿って2つの点の間を進むことができる。

この結果から、与えられた光線に沿ってクラウドによって生成されるsでの強度は、
I_{\lambda}^{C}(s) = \int^s e^{-t_{\lambda}(s^{\prime},s)}S_{c,\lambda}(s^{\prime})N_C(s^{\prime})ds^{\prime}
となる。この関係は、クラウドサイズが充分小さい粒子となった場合に帰着する、連続的な媒体での標準的な放射輸送の正式な解と全く同じである。
その場合、それぞれの粒子は\tau \ll 1l^{-1}は、標準的な吸収係数である。クランピーと連続の場合の違いは、変数の置き換えだけである。
重要なのは統計的にのみ正しいということである。
しかしながら、スムーズな場合には、どんなパスに沿ってもダスト粒子の数の多さのせいで平均の周りで相対的に小さなゆらぎをもつため、統計的な性質は無視され、結果は決定的になってしまう。
例えば、球状にスムーズに分布していると、等強度線は円となる。
クランピーの場合は、パスに沿って少ない数の粒子しかないので、平均強度I_{\lambda}^{C}からのずれがおこる。
スムーズな場合と逆に、球状にクラウドが分布していても、強度は同心円からずれることになる。
閉じた円の領域から放射されたフラックスは、これらのずれをならし、減らす面積分を含んでおり、ここのSEDの平均からのずれは、輝度のずれよりもちいさなものになる。
一般的に、SEDはなめらかに振舞う関数N_Cをもつクランピー分布の輝度よりも小さなずれをもっているとおもわれる。
ズレを見積もることは、ここでのformalismの範囲外であり、発端から平均に言及する。
ずれについてかんがえるためには、
  1. Honig et al 2006
のように、モンテカルロ解析のようなものが必要である。


最終的な強度の表現には、filling factor \phiが含まれておらず、N_Cだけが含まれている。
式(5)は、\phi \ll 1でべき乗展開した0次項であるといえる。
実際に、詳細なモンテカルロシミュレーションは、この表現は\phiが0.1の大きさのクランピーな媒体で数%以内で正しいと示している。
  1. Conway et al (in preparation)
強度計算は、\phiに依存しないので、結果はこの量に関する情報を与えないし、R_cn_Cの情報を別々に与えることなく、N_Cだけが得られる。
完全に同じように、スムーズな分布の放射輸送問題は、ダストグレインのサイズと体積密度を別々に含まず、組み合わせであるn_d \sigma_dだけが含まれる。
この値は、吸収係数を決定し、N_Cと等価である。

式(5)は、クラウドそのものによるパスに沿って生成された放射のみを説明している。
AGNへの視線のような背景放射源を含んだパスは、平均化が無意味なので、扱うのが難しい。
そのような視線に対しては、k個の妨げているクラウドがあるときに生成される強度I_kがポアソン確率P_kをもつ。
このケースでモデリングして推測できる唯一意味のある量は強度I_kと関連する確率P_kの表である。
つまり、確率は、強度がI_0(obscureされていないAGN)のときP_0、強度がI_1のときP_1などである。
実際の光源は、この確率分布の特定のメンバーに対応する。

  • 2.2 The Cloud Distribution

強度の計算には、分布に関してはN_Cだけが要求される。
興味があるのは、主に、N_Cが中心からの距離rと赤道面からの角度\betaにのみ依存する軸対象なクラウド分布にある。
角度\betaに傾けられた動径方向の光線に沿ったクラウドの全数は、平均的に\aleph_T (\beta ) = \int N_C(r, \beta ) drである。
フリーパラメータとして、赤道面の動径方向に沿ったクラウドの全数の平均\aleph_0 = \aleph_T(0)を導入すると便利である。
角度プロファイル\aleph_T(\beta )/\aleph_0は、\betaが赤道面から増加するに従って減少していくことが期待される。

  • 2.3 Total Mass in Clouds

1つのクラウドの質量は、\simeq m_HN_{c,H} A_cと書け、N_{c,H}は水素の柱密度、m_Hは水素核の質量である。
式(2)をつかって、分布プロファイル\eta_C(r,\beta ) = (1/\aleph_0)N_C(r,\beta )を導入すると、クラウドの全質量は、
M_C = m_H N_{c,H} A_c \int n_C dV = m_H N_{c,H} \aleph_0 \int \eta_C dV
となる。ここで、積分はクラウドによって占められる体積全体について行う。
N_{c,H}\aleph_0は、赤道面の平均総柱密度である。
同じ赤道面の柱密度をもつスムーズ分布の全質量は、\eta_Cが規格化したガス密度分布を表すことを除いて、同じ表現で与えられる。

式(6)の全質量の結果も\phiに依存していない。
この表現に入っている個々のクラウドの性質はN_{c,H}だけで、直接的に光学的厚みに関連する。
クラウドサイズR_cは、クランピー条件を満たす限り、無関係である。

  • 2.4 Total Number of Clouds

強度も全質量も、n_Cでなく、N_Cを含んでいる。
n_Cは、全クラウド数の計算n_{tot}=\int n_C dVに含まれる。
n_{tot} = \int (N_C/A_c)dVなので、n_{tot}N_Cで表すと、クラウドサイズを含むことになる。
A_c \simeq R_c^2と、R_c = \phi /N_Cより、
n_{tot} = \int \frac{N_C}{A_c}dV = \int \frac{N_C}{R_c^2}dV
= \int \fra{N_C^3}{\phi^2}dV = \aleph_0^3 \int \frac{\eta_C^3}{\phi^2} dV
である。
興味のある量の中で、n_{tot}は唯一\phiに依存している。
セルフコンシステントであるために、は、クランピー条件を保証するために\phi \ll 1が必要である。
つまりn_{tot} \gg \aleph_0がポアソン分布を正当化する条件である。
\eta_Cは、\eta_C(r,0)dr = 1に従うので、n_{tot}は、\sim \aleph_0^3/\phi^2のオーダーであり、2つの要求は相互にコンシステントである。

2.5. Covering Factors

”カバリングファクター”というと、いろんな意味で使われている。
一般には、AGNの中心から見て、トーラスの占める割合として理解されている。
これは、ランダムな観測者がobscureされる割合と同じである。
なので、平均カバリングファクターは、タイプ2AGNの割合f_2と同じである。
つまり、f_2は、AGNの放射がobscureされたクラウドに吸収される割合の平均である。
AGN放射のスペクトル型をf_{e\lambda}として、\int f_{e\lambda}d\lambda = 1で規格化する。
核を中心とした半径rの球殻を通って抜けてくるAGNの光度の割合は、平均的に、
p_{\mathrm{AGN}}(r) = \int_0^1 d\sin\beta \int d\lambda f_{e\lambda} P_{\lambda ,\mathrm{esc}}(r,\beta )
で、P_{\lambda ,\mathrm{esc}}(r,\beta )は、AGNから方向\betaに放射された波長\lambdaの光子が半径rに到達する確率である。
よって、f_2=1-p_{\mathrm{AGN}}(R_{\mathrm{out}})であり、ここでR_{\mathrm{out}}はトーラスの外半径である。
これは、個々のクラウドの光学的厚みの大きさに依存せずに成り立つ関係である。
スペクトルの積分は、一般にすべての波長を含み、特定のobscureされているバンドの場合には、関係するスペクトル範囲に限定される。
クラウドがAGN放射の全体に対して光学的に厚ければ、P_{\lambda ,\mathrm{esc}}(R_{\mathrm{out}},\beta ) \simeq e^{-\aleph_T(\beta )}\lambdaに依存しない。
f_{e\lambda}の規格化を使うと、式(8)から
f_2 = 1 - \int_0^{\pi /2} e^{-\aleph_T(\beta )} \cos \beta d\beta
最近の研究で、
  1. Maiolino et al 2007
は、”ダストカバリングファクター”を熱的なIR放射とAGN放射の比として定義している。
AGNのアウトプット全体が可視光/UVにあるので、トーラスのクラウドに吸収される放射は赤外で再放射されるだろう。
なので、このダストカバリングファクターは、可視光/UVに対するf_2の割合である。
X線では、割合f_2はたいてい、Compton-thickかどうかに関係なく、視線に沿って少なくとも1つのobscureしたクラウドをもつ光源の統計から導かれる。
すべてのクラウドに衝突しない確率はe^{-\aleph_T}なので、式(9)は、この場合にも成り立ち、ダストがあるかないかにかかわらず、X線をobscureするクラウドの全数\aleph_Tで成り立つ。
なので、Maiolino et alのダストとX線に対するカバリングファクターと可視光/UVとX線に対する割合f_2は対応し、同じ量として意味のある比較に使える。
実際の比較は、2つの波長領域に異なって影響する観測的不確定性があるが、その基本的な過程は正しい。

他の定義は、こういった割合とは異なっており、時々1を超える時がある。
  1. Krolik & Begelman 1988
は、”カバリングフラクション”Cを、赤道面に近い平均柱密度がCN_{c,H}になるようにどうにゅうする。
すると、そのカバリングファクターは\aleph_0である。
AGNからの広輝線と挟輝線は、よくクラウドのobscurationを考慮せずに式(5)と同様に計算する。
つまり、t_{\lambda}=0の極限である。
  1. Netzer 1990
クラウドの分布は、球状で、全輝線フラックスの規格化は”カバリングファクター”から得られる。
Krolik & Begelmanと同様に、このカバリングファクターは、\aleph_Tである。
球状分布はf_2 = 1-e^{-\aleph_T}なので、このカバリングファクターは\aleph_T \ll 1のときのみf_2に一致する。
\aleph_T=1の球状分布は定義によると、1のカバリングファクターをもつ。
なぜなら、ひとつのクラウドに、平均してすべての方向で出会うからであり、実際にこの場合、f_2は0.63でしかない。

輝線カバリングファクターは、\aleph_Tであり、f_2ではない。
このカバリングファクターは、1型スペクトルを特定の近似のもとに解析することで得られる。
これらの仮定のもとでの計算を支配するクラウドの種族は、AGNのobscurationを制御するクラウドとは異なっていて、このカバリングファクターは光源の統計から得られるf_2から大きく異なる。
この議論が示しているように、カバリングファクターの概念は、よく定義されていて、異なる文脈で異なる量を示している。
この概念が呼び出されると、適切な定義は上記のf_2に対するのと同じように、クラウドの分布関数から確率の計算を必要としている。

  • 3.SOURCE FUNCTION

ここまでのformalismは一般的だった。
特定の放射プロセスに応用するには、1つのクラウドのソースファンクションのモデリングが必要である。
ここでは、このformalismをAGN放射によって熱せられるダストトーラスのクラウドに適用する。
クラウドを2つのクラスに分ける。
大きな光学的厚みに対しては、クラウドが直接AGNに面していると、照らされてる側で温度が高く、反対側で温度が低い(Fig.2)。
そのクラウドの放射は、非等方であり、対応するソースファンクションS_{c,\lambda}^{d}は、AGNからの距離rとクラウドの方向と観測者の方向のなす角\alphaに依存している。
AGNとの間を他のクラウドに遮られているクラウドは他のクラウドから間接的に温められる。
これらのクラウドの加熱は一般的に均一であり、そのソースファンクションS_{c,\lambda}^{i}\alpha依存性は弱い。
位置(r,\beta )において、AGNまでの平均クラウド数は、\aleph(r,\beta ) = \int_0^r N_C(r,\beta ) drで、AGNが遮られていない確率はp(r,\beta ) = e^{-\aleph (r,\beta )}である。
その場所での、クラウドの全ソースファンクションの一般的な表現は、
S_{c,\lambda}(r,\alpha ,\beta ) = p(r,\beta )S_{c,\lambda}^{d}(r,\alpha ) + [1-p(r,\beta )]S_{c,\lambda}^{d} (r,\alpha ,\beta )
これらの2つのクラスのクラウドのソースファンクションの詳細な計算について述べる。

  • 3.1 Directly Illuminated Clouds

クラウドがどんな形をしていようと、クラウドのサイズがAGNからの距離に比べて小さければ、同じ光学的厚みをもった平坦なパッチと同じとして良い。
実際、AGNからの輝線の計算は常に表面に垂直な直線にそった中心エンジンによって照らされるslabのような輝線クラウドをモデル化している。
しかし、平坦なslabと同じ光学的厚みをもった実際のクラウドのあいだの違いは、平坦なslabが観測者に明るい面を見せるか暗い面を見せるかを与えるが、実際のクラウドが一般的にその両者の組み合わせになることである。
この効果を説明するために、全ての有りうるslabの方向全体で照らされたslabからの放射を平均化して”合成クラウド”を構築した(Fig.3)。
このプロシージャは、外部から照らされたslabに対する放射輸送の厳密解を用いて、照らされたダストクラウドのslabの性質を議論することを進める。
合成クラウドは、3.1.4のslab解から構築される。

  • 3.1.1 Slab Radiative Transfer

面対称のおかげで、slabの放射輸送方程式は、光学的厚み空間で完全に公式化できる。
密度プロファイルもslabの幾何学的な厚さも関係ない。
ダストslabの場合、この普遍性は温度方程式にも拡張できる。
なぜなら、加熱放射の減少だけが放射の相互作用からくるからである。
なので、slabの放射輸送問題は完全に光学的厚み\tau_{\lambda}=q_{\lambda}\tau_Vによって特徴つけられる。
ここで、\tau_Vは、可視光波長でのslabの光学的厚みで、q_{\lambda}は波長\lambdaにおける相対係数である。
slabの垂線に対して角度\arccos\muの光線に沿った放射輸送方程式は、
\mu\frac{dI_{\lambda}}{d\tau_{\lambda}} = S_{\lambda}(\tau_{\lambda}) - I_{\lambda}(\tau_{\lambda})
で、\tau_{\lambda}は照らされている面から垂直に測ったもので、S_{\lambda}はソースファンクションである。
ダストのアルベド\varpi_{\lambda}と等方散乱に対して、S_{\lambda}=(1-\varpi_{\lambda})B_{\lambda}(T)+\varpi_{\lambda}J_{\lambda}で、J_{\lambda}は角度平均した強度で、Tは、ダスト温度である。
これは、放射平衡の方程式からslabのそれぞれの点で得られる。

slabの放射輸送問題を1DコードDUSTYで解く。
  1. Ivezic et al 1999
DUSTYは、ダストの吸収、放射、散乱に対する放射輸送問題のスケーリングの性質を用いる。
  1. Ivezic & Elitzur 1997 (IE97)
解は、slabの放射場とダスト温度プロファイルを決める。
ダストグレインは球状で、サイズ分布は
  1. Mathis t al 1977
を用いる。
組成は、標準的な銀河比率である、シリケイト53%とグラファイト47%とした。
グラファイトの光学定数は
  1. Draine 2003
で、シリケイトの光学定数は
  1. Ossenkopf et al 1992
の”cold dust”を用いた。これは、10ミクロンと18ミクロンのシリケイトのフィーチャーの観測に一致する。
  1. Sirocky et al 2008
光学定数から、DUSTYはMie理論を用いて、吸収断面積と散乱断面積を計算し、放射定数が混合平均から作られる単一組成のグレインの混合を置き換える。
この方法は、適切にグレイン混合の全計算を行い、特に光学的厚みが大きい時に適切である。
  1. Efstathiou & Rowan-Robinson 1994
  2. Wolf 2003
ダストの光学特性を扱うことは、このアプローチで適切で、唯一の近似はslabのそれぞれの場所でのグレインの異なるコンポーネントの温度を単一の平均に置き換えていることである。
  1. Wolf 2003
は、異なるグレインの温度は、平均グレイン近似で得られる値の10%以内であり、これらのずれは\tau>10のときに消えてしまうことをみつけた。
すると、”ダスト温度”は、この混合の平均温度を示している。

slabはAGNフラックスF_{e,\lambda}によって、垂直から角度\theta_iで照らされている。
光度Lの等方的なAGN放射に対しては、bolometricフラックスは、
F_e = \frac{L}{4\pi r^2}
である。照らしているフラックスはF_eとAGNで規格化されたSEDf_{e\lambda} = F_{e\lambda}/F_eによって特徴づけられる。
  1. Rowan-Robinson 1995
に従って、ピースワイズパワー則分布を採用する。
\lambda f_{e\lambda} \propto \lambda^{1.2} (\lambda \leq \lambda_h)
                             \mathrm{const} (\lambda_h \leq \lambda \leq \lambda_u)
                             \lambda^{-p}  (\lambda_u \leq \lambda \leq \lambda_{RJ}
                             \lambda^{-3}  (\lambda_{RJ} \leq \lambda )
ここで、パラメータは\lambda_h=0.01 \mathrm{micron}\lambda_u=0.1 \mathrm{micron}\lambda_{RJ}=1 \mathrm{micron}p=0.5である(Fig.4)。
この標準セットからのパラメータの変化の効果は、3.1.5で議論する。

  • 3.1.2 Dust Temperature

\tau_V \ll 1の時、slab内の拡散放射は無視できるため、ダスト温度はslab内で一定で、\tau_Vにも\theta_iにもよらない。
逆に、滑らかな密度分布では、光学的に薄くても温度分布ができる。

\tau_V > 1の時、拡散放射が効いてくる。

[式(14)の意味]
ます、ダストの放射が各波長で吸収される割合を波長積分すると、以下となる。
\int q_{a\lambda} \sigma T^4 B(\lambda ) d\lambda = \sigma T^4 q_{aP}
外部から受ける光を吸収する割合を波長積分すると、以下となる。
\int q_{a\lambda} F_e f_{e\lambda} d\lambda = F_e q_{ae}
この比をIE97と同様に、係数をつけて拡散放射のエネルギー密度への寄与を\psiとすると、
\frac{4 \sigma T^4 q_{ap}(T)}{F_e q_{ae}} = \psi (\tau_V,\theta_i)
となり、これを変形すると、式(14)となる。
ただし、この論文で、Fig5になっているように、\psiは係数1/4のため、そのまま吸収と放射の割合を示しているわけではない。
\phi (0,\theta_i) = 1で規格化している。

そこで、Fig5。
ψが1.35を超えることはない。というのは正しいと思う。
その次の文章がよくわからない。

「拡散成分の表面加熱への寄与は、外部光源による直接加熱の35%を超えることはない」

正確には、1/4だから、34%のはずなのだが。この係数1/4の意味がよくわからない。

で、続き。
このことは、球殻形状の場合とは異なる。
球殻の場合は、閉じられた内縁空間があるから、光学的厚みが大きくなればなるほど、内縁の拡散放射は大きくなる。
逆に、slabには、エネルギーを閉じ込める場所がないため、表面加熱が無限に進まない。
よって、\tau_V >1では、照らされている面の温度は変わらない。

Fig6は、slab内の温度分布。
\tau_V \sim 10以上で、まず一気に温度が落ちて、それ以降一定となる。
\tau_V \sim 100以上では、ほぼ同じプロファイルを示す。

Fig5からわかるように、ψは\tau_V \leq 1で5%の精度で定数である。
AGNからの距離rと見込み角\theta_iが与えられれば、表面温度は一定である。
Fig6からわかるように、\tau_V > 10では、暗い面でも同じ温度となる。

Fig7は、半径を変えて、外部光を垂直に当てた場合の照射面と暗い面の温度を示している。
これは、簡単な解析的な近似である。(なぜこの式になるのかはわからない)

ダストは主に、短波長の吸収によってタイムスケール10^{-6}で加熱される。
また、数秒以内に振動遷移によって冷却される。
ダストの熱平衡は、力学的タイムスケールに比べてすぐに到達する。
また、ガスは、\leq 10^{12} \mathrm{cm}^{-3}の密度であれば、ダスト温度に影響を及ぼさない。

Fig2のクラウドはすべて同じ距離にあるが、観測者から見える温度は幅がある。
(三日月効果のこと)
Jaffe et al.(2004)は、NGC1068の解像に成功。
r \leq 0.5 \mathrm{pc}800Kの領域とr \sim 1.7 \mathrm{pc}まで広がった320Kの領域。
Poncelet et al. (2006)では、同じデータを解析しており、最も冷たい領域は、2.7\mathrm{pc}まで226Kとなっている。
クランピーが、この近接した高温領域と低温領域を説明できる。
実際に計算してみると、2pcで明るい面で960K、暗い面で247Kとなる。
Shartmann et al.(2005)では、マルチグレインで滑らかな分布でモデル化したが失敗した。
Tristram et al.(2007)でも、クランピーだと推測されるという結論がでた。

ここで、距離rでのフラックスとそこでのslabの温度の最大値は、垂直に照射される場合であり、1対1で対応している。
よって、距離の代わりに、温度T_{max}を境界条件に使える。

  • 3.1.3 Emerging Intensity from a Slab

slabからの放射は、\tau_V,T_{max},\theta_i,\theta_oによって、決まっている。
Fig8-10はその依存性を示している。
(ここでDUSTYを使って検証してみるべきだと思われる)

Fig8は、\tau_V依存性を示している。
上の照射面側は、近赤外で散乱が卓越していて、シリケイトの10ミクロンフィーチャーはすべて輝線で出ている。
ただし、\tau_Vが増加すると、強さは小さくなる。
下の暗い面側は、IE97の球殻モデルと同様な形を示す。
10ミクロンフィーチャーは、\tau_Vが増加するに従い、輝線から吸収に切り替わっている。
しかし、吸収は、球殻の場合ほどは強くない。

Fig9は、T_{max}依存性を示している。
温度が下がると、放射は長波長側へ移動している。
短波長は、散乱によるものであって、照射面側のみでみることができ、温度変化に依存していない。

Fig10は、照射角と見込み角による効果を示している。
見込み角を大きくすることは、\tau_Vを大きくすることと同値である。

  • 3.1.4 Cloud Source Function S_{c,\lambda}^d

”合成クラウド”のソースファンクション
S_{c,\lambda}^d(T_{max},\tau_V,\alpha ) = \langle I_{\lambda}(T_{max},\tau_V,\theta_i,\theta_o)\cos\theta_o \rangle \tag{15}
ブラケットは、αを回した平均を取ることにする。

Fig11は、AGNの周りに同じ距離でクラウドをおいた場合の\alphaによる依存性である。
(注意すべき点は、\alpha = \pi - \theta_o, \theta_i= \frac{\pi}{2}としている点)

Fig12は、\lambda_{RJ},pを含めて、詳細に変化させた場合のSEDを示している。
T_{max},T_{min}が両方とも300Kを超えていれば、slab全体が10ミクロンフィーチャーに寄与する。
なぜなら、300Kの黒体放射が10ミクロンをピークとしているから。
逆に、両方とも300Kを超えていなければ、そのslabは10ミクロンフィーチャーに寄与していない。
つきつめれば、照射面が300Kより暖かくて、暗い面が300Kより冷たければ、吸収のフィーチャーは強くなる。

  • 3.1.5 The Input Spectral Shape

式(13)のピースワイズの入力スペクトルについては、0.1ミクロン以下については、あまり知られていない。
しかし、この領域については、ダストのSEDにはあまり影響しない。
式(15)の光度とダスト温度の関係の規格化のみに影響し、SEDには影響しない。

ダストは昇華温度約1500Kを超えることはできないので、波長は2-3ミクロン以上で放射する。
なので、それより短いところでは、Wienテイルか散乱によるものであると考えられる。
\lambda_{RJ}は、概して、中心の降着円盤の最低温度に当たる波長である。
pは、Sloan Digital Sky Surveyの6868このクエーサーに関して得られている。
幅としては、-1 \leq q \leq 1.5で、フラットなピークは0.5 \leq q \leq 0.8である。

Fig12から、2ミクロン以上では、ほとんどインプット放射は関係していない。
それ以下の波長については、散乱などから、インプットに依存している。
大きくはないが、NIRスペクトルインデックスに違いをもたらす。
  1. Alonso-Herrero et al. 2003

  • 3.2 Clouds Heated Indirectly

拡散放射によって加熱される場合については、Λ-iterationsによって解決できる。
  1. すべての直接加熱されるクラウドのソースファンクションを計算し、これらの放射から拡散放射の一次近似を求める
  2. クラウドをこの放射場に配置して、間接的に加熱されるソースファンクションの一次近似を求め、式(10)からすべての場所のソースファンクションを求める
  3. 直接の放射場に、式(5)から計算されるクラウド放射を加える
  4. これを収束するまで繰り返す
解は、フラックス保存を満たすかテストする必要がある。
\int d\lambda \int F_{r,\lambda}(r,\Omega )d\Omega /4\pi = F_e

クランピーでは、この積分に輸送されたフラックスの寄与は、p_{AGN}F_eとなり、すべての位置の拡散フラックスの動径成分は、F_{r,\lambda}^C = \int I_{\lambda}^C \cos\theta d\Omegaとなる。
そうすると、フラックス保存の式は、
p_{AGN}F_e + \int_0^1 d\sin\beta\int d\lambda F_{r,\lambda}^C(r,\beta ) = F_e \tag{16}
となる。
簡単な変形で、これは、smooth密度のケースになる。
変換項(第一項)で、クランピーの実効光学的厚みt_{\lambda}が実際の光学的厚み\tau_{\lambda]に置き換えられる。

ダストは短い波長で支配的に温められ、長い波長で再放射する。
結果として、すべての場所でAGNによって直接温められるクラウドは最も暖かく、隠されたもっと冷たいクラウドよりもかなり強い加熱を提供する。
間接的に温められるクラウドからのフィードバックの重要性は、S_{c,\lambda}^i/S_{c,\lambda}^dによって評価される。
この比が小さければ、速い収束が期待される。
我々の計算では、Λ-iterationの最初の2つのステップだけを行って、隠れたクラウドの加熱に対しては等方放射の仮定をおいた。
近似した加熱場は、与えられた場所の直接加熱されている放射のαでの平均から導く。
これは、与えられた場所での直接照らされているクラウドの球殻内に存在する放射場である。
実際には、間接的に加熱されたクラウドはおそらくいくぶん少ないクラウドの明るい面にさらされている。
なぜなら、間接的に加熱されたクラウドは、AGNから遠い面にあるからで、ここでの近似は拡散放射場の強度の上限である。
この等方的な場に、ダストのslabをおき、DUSTYで放射輸送問題を解いた。
Figure13は、T_{max}=850Kの場所でのslabの内側の温度プロファイルである。
期待されているように、拡散放射場で加熱されたslabは、Figure6で示されているような、直接照らされているcounterpartsよりも冷たい。
以前のように、放射輸送解から、式(15)の平均プロシージャを使ってS_{c,\lambda}^iを求めた。
今、slabは両方の面から等方的に照らされているので、\theta_iの依存性は消えていて、S_{c,\lambda}^iは等方的である。
Figure14は、2つの代表的な光学的厚みとT_{max}で特徴づけられる半径距離の範囲でS_{c,\lambda}^iの結果を示している。
Figure15は、\tau_V=100に対する対応する比S_{c,\lambda}^i/S_{c,\lambda}^dを示している。
この比は、常にそれぞれの距離でのピーク放射に対応する波長あたありで10%以下である。
例えば、T_{max}=200でのクラウドが、15ミクロンあたりの放射の主な寄与であり、図から明らかなように、この温度ではS_{c,\lambda}^iS_{c,\lambda}^dの10%以下である。
重要なのは、すべてのAGNが隠されたクラウドの周りの直接加熱されたクラウドの等方的な分布を含んでいるので、S_{c,\lambda}^i/S_{c,\lambda}^dは、近似が拡散放射場を過大評価しているとしても小さいということだ。
期待されるように、間接的に加熱されるクラウドは、かなり弱い放射源でiterationプロシージャは速く収束することを示している。

Figure11とFigure12とは反対に、Figure14は10ミクロンのフィーチャーのトレースだけを示している。
この違いは、Figure6とFigure13から明らか内容に直接と間接的に照らされているクラウドの温度構造の間の基本的な違いを反映している。
黒体放射場に置かれたクラウドは、その温度Tで熱平衡化し、I_{\lambda}=B_{\lambda}(T)(1-e^{-\tau_{\lambda}})に従って放射する。
それゆえ、\tau_{10\mu m} \ll 1のとき、I_{\lambda} \sim B_{\lambda}\tau_{\lambda}で、現れるスペクトルは、ダストのクロスセクションと同じ形をもち、輝線のフィーチャーを作る。
\tau_{10\mu m}が増加し、1に近づくと、自己吸収が起こり、フィーチャーの強さが減少する。
\tau_{10\mu m}がさらに増加し、1を超えると、I_{\lambda}B_{\lambda}と等しくなる。
一定の温度では、自己吸収と放射がちょうど釣り合い、プランク関数の熱力学的極限を生成する。
すべての\tau_{10\mu m}>1に対して、単一温度のクラウドは輝線も吸収もフィーチャーは作らない。
ここでの拡散放射場は、純粋な黒体放射とは異なるため、間接的に加熱されるクラウドの中の温度は一定ではないが、その変化はFigure13で明らかなように比較的穏やかである。
直接照らされているslabのダスト温度は4のファクター以上で変化するが、等方的な拡散放射場によって両面から加熱されているslabの内部では2のファクター以下で変化している。
さらに、この小さい変化ですら加熱された面の付近の狭い領域に制限されている。
このことは、Figure14が\tau_V=10\tau_{10\mu m} \sim 0.7に対応する)での弱い輝線のフィーチャーのみを示し、\tau_V=100のクラウドのほとんどはフィーチャーを示さない。

  • 4. DISCUSSION

ここでのformalismは、一般的で、今後このクラウドのソースファンクションを使う。
クラウドは、主に全光学的厚み\tau_Vによって特徴づけられる。
2つの追加の性質が潜在的にクラウドの放射に影響する。
粗い、フラクタル的な表面は、いくらかの散乱された光子を吸収し、熱浴に輸送することで、散乱の効率を下げることが期待される。
もう一つは、形状であるが、この要素は、楕円形のクラウドを全ての方向で平均することで研究できる。
形状のパラメータは、楕円体の軸比に対応する。
クラウドが球形から極端に長いところまで変化する。
ここで構築されたクラウドは、極端に細長い形状の代表を考えている。
間接的に加熱されたクラウドの外部の放射場の等方性によって、この2つのクラウドの幾何学的な形状の場合で調べることができる。
球形のクラウドの放射輸送問題は等方的な外部場の球対称性を保っており、それはDUSTYによって解くことができる。
ソースファンクションは、S_{c,\lambda}^i = F_{\lambda}/\Omegaからわかる。
ここで、F_{\lambda}\Omegaは、大きな距離での球のフラックスと立体角である。
我々は、§3.2で述べられている計算で使われたのと同じ放射場に埋め込まれた球形のクラウドに対するS_{c,\lambda}^iを計算した。
一様な密度の球に対する解は、全光学的厚み\tau_Vのみに依存し、同じ\tau_Vのslabを平均することで構築されるクラウドと比較することができる。
2つの極端な場合の間に重要な違いはなかった。
我々は、現在、球形のクラウドの直接照射について研究しており、別の論文で全体を報告する。
  • A.Kimball et al., in preparation

形状と表面の性質は、次に重要なものである。
クラウドが\tau_Vによって特徴づけられているここでのソースファンクションのモデルは、1つのダストクラウドからの放射の真髄を捉えている。
球形の計算との比較を待つ必要はあるが。

  • 4.1 Dust Temperature in Clumpy Media

clumpyとsmoothで温度プロファイルは異なるが、smoothが距離と1:1で対応しているのに対して、clumpyは以下のようになっている。
  1. 異なるダスト温度がAGNから同じ距離で共存する
  2. 同じダスト温度が異なる距離で起こる-AGNに近いクラウドの暗い面と遠いクラウドの明るい面

Schartmann et al.(2005)は、マルチグレインが同じ位置に異なる温度をもつと示した。
なので、”ダスト温度”の概念は、そのような領域では、微小なレベルできちんと定義されていない。
そして、smoothとclumpyの温度構造の基本的な違いは、個々のグレインのコンポーネントと混合平均に応用できる。
これらの違いは、トーラス放射に対する含みをもち、NGC1068
  • Jaffe et al. 2004
  • Poncelet et al. 2006
とCircinus
  • Tristram et al. 2007
の核の近くの低い温度を説明している。
これらの含みをPaperIIでさらに議論する。

  • 4.2 X-Rays vs. IR

IRフラックスの測定は、天空面でトーラス領域全体からの放射を集める。
このフラックスは、トーラスを通る全ての動径方向のrayに沿った平均クラウド数によって決まる。
逆に、X-rayの減光は、ある特定のray、AGNへの視線にそったクラウドによって制御される。
X線はダスト物質だけでなく、ダストのないものによっても吸収される。
X線を吸収するクラウドは、一般的に、どんな与えられた方向にも数で勝る。
実際AGNでのX線吸収は、ダストのないクラウドによって支配されている(PaperII)
しかし、columnのダスト部分に対してでさえ、X線を吸収するクラウドの数はトーラスの平均から徐々に異なっている。
例として、AppendixのTable1は、\aleph = 5のポアソン分布の表を示しており、PaperIIで示しているように、AGNトーラスを代表している。
パスの80%以上がこの場合、5と異なるクラウドの数を持つことになり、1つのクラウドに当たる確率は9つと同じで、5つの場合の20%の確率である。
同じクラウドの性質と同じ平均\alephをもつタイプ2AGNは、同一のIR形状を示すが、X線吸収columnは桁で異なっている。
これは、X線観測で大きなばらつきとなることを期待される。

それぞれのスペクトルregimeは、全体的な異なる方法でクラウドの光学的厚みの大きな変化に反応する。
IR放射は、光子の脱出確率とソースファンクション(式[5])を通して\tau_Vに依存する。
両方の要素は、\tau_Vが100を超えたときに飽和する。
式[4]から、\tau_{\lambda} \gg 1のとき、P_{esc} = e^{-\aleph}である。
この条件は、\tau_V \geq 50の時全ての関連する波長で満たされているので、P_{esc}は、\tau_Vに依存しなくなる。
S_{c,\lambda}に対しても同様に、それぞれのクラウドは、外から加熱されているので、表面だけが外からかなり加熱されている。
\tau_Vをさらに増加させても、冷たい物質を加えるのみで、S_{c,\lambda}は全ての波長に対して飽和する。
実際に、Figure11はclumpの光学的厚みの3桁をカバーした結果を示しているが、SEDはゆったりした変化のみを示しており、\tau_V \geq 100の時飽和する。
\tau_V < 100でも、かなりのスペクトルの変化は\lambda \leq 10 \mu mに限定されている。
逆に、X線吸収の\tau_V依存性は、かなり異なる。
個々のトーラスクラウドはX線に対して光学的に薄い。
なぜなら、トムソン散乱に対する光学的厚みは\sim 2 \times 10^{-3}\tau_Vでしかなく、それゆえ、X線吸収に対する全体の光学的厚みは\aleph \tau_Vである(§2.1)
光学的厚みは、\tau_Vに線形に増加し、逆にIRでは飽和するレスポンスをする。

2つのスペクトル領域の間の大きな違いは、同様なIR放射を示すAGNでのX線放射の性質のバラつきがさらに増加すると期待される。
違いは、また、SEDがX線吸収columnに関連していないIRでの穏やかな変化のみを示す理由を説明できるかもしれない。
  • Silva et al. 2004

  • 4.3 The 10 \mum Feature

ULIRGとは逆に、AGN観測は、シリケイトの吸収のフィーチャーの例がない。
  • Hao et al. 2007
この振る舞いは、smoothモデルと矛盾しているが、
  • Pier & Krolik 1992
clumpinessが自然な結果である。
Figure11とFigure12から明らかなように、1つのclumpは、決して深いフィーチャーを作らない。
この振る舞いは、フラットなslabの温度プロファイル(Fig6)を反映しており、遠くのAGNの外から温められる実際のクラウドの中の状況の現実的な描像である。
  • Levenson et al. 2007
で示されているように、ULIRGとAGNの10micron吸収の異なる振る舞いは、前者ではダスト分布がsmoothで、後者がダスト分布がclumpyであることを示している。
  • Spoon et al. 2007

Clumpinessは、それ自身でAGNの10micronの吸収のフィーチャーの緩やかな深さを説明できる。
輝線から吸収への遷移を含んだ、フィーチャーの完全な振る舞いは、異なる場所のクラウドの相対的な寄与とクラウドの相互のshadowingのあいだの相互作用を巻き込んでいる。
この振る舞いは、クラウド分布の実際の幾何に依存した複雑なパターンを示している。
詳細な議論はPaperIIで行う。

  • 4.4 Conclusions

clumpyとsmoothは、いくつかの点で異なる。
NGC1068の核の近くの低いダスト温度は、smoothでは矛盾するが、clumpyではありうる。
AGNのIR放射の2つの追加的な問題のフィーチャーは、分布幾何に無関係にclumpyなダスト分布の簡単なhallmarkである。
cloudのコンフィギュレーションが球状であるか不規則であるかもしれないとしたら、
  1. SEDはX線減光の変化との不釣り合いな範囲を示している
  2. 10micronの吸収のフィーチャーは決して深くない
AGNスペクトルで観測される10micronのフィーチャーの全体を理解することは、クラウド分布の実際の幾何の考慮を要求している。
この問題は、AGN観測のclumpyトーラスの他の含みとともにPaperIIで言及する。
最終更新:2015年05月19日 20:14