街の郊外に位置する山林、鬱蒼とする中で隠れるようにと建てられた邸宅から、駆け出すように男達が走り出す。
周囲が喧騒に包まれ、軍服を身につけた男達がトラックへと飛び移ると
山道を駆け下りるように走り出した。

茂みの中から浮かび上がる薄緑の眼光、
スニーキングスーツに身を包み暗闇に潜む男は持っていたボトルを開けると
入っていたウォトカを一息に飲み下し、持っていた拳銃をゆっくりと構える。

『ターゲットが偽の情報にかかったよ、三舟用意はいい?』

「――清水か? 今ちょうど酔いがまわってきた所だ」

山道がライトで照らされ、先ほどのトラックがゆっくりと三舟の射程距離内へと進入してくる。
足元のスイッチを踏み、小気味よくカチリと音を立てると、
道路脇に仕掛けられていた指向性地雷が炸裂し、一瞬にしてトラックを炎上、横転させた。

「敵襲だ、全周防御ッ!」

「……フン」

トラックから投げ出された男達の中でターゲットが立ち上がり、指揮を始めるのを確認し、
ゆっくりとファイファー・ツェリスカの引き金を引く、山林に轟音が轟くと同時に潜んでいた野鳥達は散り散りに飛び立つなか
ターゲットの体が宙を舞うと、地面へと投げ出された。

「始末した、これから回収ポイントへと向かう」

『うっかり足を踏み外してあの世逝き、なんてことに、ならないように注意してね』

「フッ、俺を誰だと思って――」

三舟が立ち上がろうとしたその時、三舟は足元の苔に足を取られ、その場で真後ろにひっくり返ると
偶然地面からはり出していた石に頭をぶつけ、そのまま死んでしまった。

「――う、うーん、ハッ!?」

 暗転した視界の中、僅かな光を瞼の奥に感じた三舟は、その場を飛び起きるように目覚めた。
周りを見渡すと窓から入り込んでくる穏やかな風にカーテンが揺れ、遠くからは子供たちの笑い声が聞こえてくる。
リアリスティックな夢にしばらく思考を奪われていたが、ふと傍らに視線を向けると、一人の青年が驚きの表情のまま固まっているのが見えた。

「清水か……こうして顔を合わすのは久しぶりだな」

「えッ!? えぇ、そ、そうだねッ!」

「なんだ――? 俺のこ、声が妙だぞ!」

自らの声に驚愕した三舟が腰を起こそうとするが、肩にのしかかるような重みを感じ
胸元を注視すると、再び仰天した。

「な、なっ……ななな、なッ!」

「なんじゃこりゃ?」

「なんじゃこりゃぁぁーッ!!」

本来あるべきではない位置、わずかばかりに膨らんだ胸元に三舟は錯乱状態に陥る。
はたと気を取り直し、次は股下へと腕を伸ばす、しかし、彼の期待していたブツはそこから忽然と姿を消していた。

「し、清~水~!? ど、どういうことなのか、説明してもらおうかぁ?」

「ざんねん! ミフネのぼうけんは ここでおわってしまった!」

「説明になってない! お、俺の体はどこ行った!?」

「三舟が生前――
『俺が死んだ時には、戦友達が眠っている地中海に埋葬してくれ』
――って、遠い目をして言ってたから、もう手配して火葬にしちゃったよ?」

そういうと清水は近くにおいてあった骨壷を手に取り、手を合わせるといい加減なお経を唱え始める。

「即身成仏」

「やかましいわ! って、本当に灰になってる……な、なんてことしてくれるんだよ、お前は」

「ちょうどいい具合に研究中の肉体転移施術の献体が一体余ってたから、
君の脳をそのまま移植したんだよ、脳に埋め込んだ、インプラントをそのままにして死なれるのも面倒だったしね……」

「――命があるだけ助かったと言うべきか、というかなんで女なんだ」

その言葉を聞くや否や清水は足元においてあった紙袋からファイルの束を取り出すと
ベットの上に腰を下ろす清水に投げ渡した。

「派手に暴れまわるのだけが諜報戦じゃないよ、君にはこれから財界・財閥の御曹司たちが集まる名門校へ転入し、
彼らと接触しながら、末端から情報を引き出して貰いたい」

「産業スパイかよ――娼婦にでもやらせとけっつの」

ベットの上であぐらをかいている三舟の頭を清水が軽く小突き、
ふところから学生証を取り出すと、ポーズを取りつつ三舟の前にその学生証を差し出した。

「えーと、『三舟愛璃』? なんだこの名前」

「ふふ!下の名前は僕が新しく付けたんだ……ナイスネーミングでしょ?」

(多いよなぁ、こういう親――ババァになって、そんな名前で呼ばれる身にもなってみろっての)

「ともかく、明日からさっそく学校に潜入してもらうからよろしく!」

こうして――学園の闇に潜む巨悪に立ち向かう、
三舟権三(2×)改め三舟愛璃(16)のスニーキングミッションが始まろうとしていた。


「明日からかよ!!」

元レス
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220262396/28-30
最終レス投稿日時
2008/09/06 21:06:25

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最終更新:2008年09月08日 20:33