拝啓 姉上様(脳内)
麗しき貴女様の不肖にして最愛の弟、高坂諭吉(セヴントゥィーン)は、女の子になってしまいました。

「というわけでプールなんですよヒャホーイ!」
「ゆきっちゃんテンション高すぎ!?」
はい。そうなんです。
プール! そう、プー――――――ルなんです。 忘 れ て ま し た !
「……これは例年以上の浮かれ方だわ……」
失敬な、佐藤さん。浮かれてなどおりませぬ。ぬ。ぬ。
だってねぇ。
社会的にはどうあれ、今の俺は、乙女なんですよ? それなのに水泳パンツ一丁なんですよ? ダーリンほんまにどうするっちゃ?
「……私、プールが合同なのはすごく罪な事なんだって、君を見てて思ったわ……」
ファッキンジーザス!? またこの娘っ子は神をも恐れぬ勘違いを!?
「違うんですぜよ、佐藤さん!? 真に罪なのは、そのなだらかなベジェ曲線なのぜよ!?」
ベジェ曲線? 勿論俺も何なのか知りませんよ?
「って、これも違うのぜよ! 俺が悩んでいるのはもっと日本の夜明けを見据えたノーブル且つノーブラな」
「エロネタは禁止!! あとインチキ竜馬弁もやめなさい!」
なんてこったい! 俺の才谷梅太郎さん(偽名)語調を否定されるなんて!?
ではなくて。
そうです。身体が女でも社会的に男ってことは、プールも男として入るわけで。……これは!? ま、まいっちんぐ!!?
……ちくせう! 何でこういう時ばっか、俺は男じゃないんだよ。俺だってそんなの男として見たいよ!
ていうか、俺が見られちゃうんじゃん!!?
「……鬱だ。プール、休もうかな……」
「どどどどどど!? どうしたのよ、ゆきっちゃん!? おかしいよ! 君の大好きなスクール水着なのよ!?」
「反応がコミカルだ」
「……実験素体である諭吉君に起こった事象を、客観的かつ科学的に分析しましょう」
「反応がケミカルだ」
いや、適当にツッコんでますが。
佐藤さんが時々見せるこういうボケ、好きだなぁ。
「……デジカメを買いました」
「反応が……えっと、コニカミ○ルタ?」
もはやあってるんだか、いないんだか。
「じゃなくて。……そうだなぁ、佐藤さんは人前にパンツ一丁で出なきゃならなくなったら、どうする?」
「ぅゎ……唐突に何そのシチュエーション?」
退かないでよ! 正直自分でもそれってどうよって思ったさ!! ていうか乳丸出しは俺だってひくわ!!
でもでもでも! 実際そのまんまの悩みなんですもの……。
「んー、絶対にやらなきゃいけないの? ……そうだなぁ、開き直る、かな」
「えぇ!? やっちゃうの!?」
「何その反応!? 真面目に答えた私がアホみたいじゃん!?」
いえ、むしろ俺がというか。想定されるべき状況がアホです。
「パンツとか裸とか、気にしてられない状況なんでしょ? やらなきゃいけないなら、自分を騙してでも自分にやらせる」
「……でもさ。裸を見せて、それで人生が変わっちゃうのかもしれないんだよ?」
相手が佐藤さんだから、気楽に話せるけど……俺だって正直、怖いんだ。
俺を見る周囲の目が――決定的に変わってしまうかもしれないのは。
「でもそれは……まぁ、んー……選択の重さ次第かな」
「重さ、か。……確かにその通り、なんだよな」
「……でもさ? 女の子といっても、みんなのママと同じ物がついてるだけだよ? 妄想過剰なんじゃないの?」
「思春期特有の異性の身体への関心を一瞬で萎えさせた!?」
ごめん。ツッコミ長かった。
でも。
佐藤さんの言うとおり、気にしても仕方ないのかもしれない。
俺が皆に女の子だってばれる日までは――俺はこの身を偽る為、足掻き続けるしかないのだから。
……ありがとう。佐藤さん。
「……よし、やってみるか。まぁどうせ、ぺったんこなんだしねっ」
「き、貴様ァッ!! 真面目に答えてあげた私に、それが言う事かぁっ!!!」
……口は災いの元でした。

後日談。
何事もなく、普通にプール授業を受けられましたとさ。
……姉さん、ないものには確かに気付きようがないんだけど……それはそれでヘコむんだ……。

元レス
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220262396/68
最終レス投稿日時
2008/09/29 13:39:55

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最終更新:2008年09月30日 21:40