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わたし「あなたの声」

ブロロロロ……

心地よい、閉塞感。
狭すぎることもなく、それでいて誰かの意識やそこにいる温度を確かめられる場所。
中々どうして、わたしはバスという乗り物が好きだ。
ストリートに並ぶ街路樹たちは青々と緑に染まり、上がったばかりの陽は燦々と降り注ぐ。
くらっとしちゃうような暑さだけど、そんなものも冷房の効いた車内では関係のないことだ。

「それでさ、昨日はアイツがさ―――。」
「うっそ、本当?バカだなぁ」
「ちょっと天然すぎるよな」

毎朝のバスに乗る顔ぶれはいつもと変わらず、お爺さんが、お婆さんが、彼女が、
そして他愛もない話に花を咲かせる彼らがあの席にいることも日常の一部となる。
彼らにとっても、この席に座るわたしは日常になっているのかな。

―――今日のお昼はどうしようか、いつものカフェでいいかな。

そんなことを考えながら、光と景色が流れる窓を眺めていた。


――――――――


ブロロロロ……

今日は生憎の雨で、ちょうど良かった密度のバスがちょっぴり窮屈になった。
わたしは雫に濡れる傘を足元に立て掛け、いつものように窓の外へ目をやる。
――悪い天気だ。圧迫された車内の中で口々にそのような言葉を言うが、
それも「誰かにとっての良い天気」なんだと思うと、不思議と悪くないものに思えてくる。
まあ、バスが狭くなるし、あまり好きじゃないんだけど。

「今日ってさ、なんか提出物あったっけ」
「馬鹿、バスん中でいいからさっさと数学の宿題やれ」

いつものグループと思しき声が耳に入るが、いつもより大人しい様子に気がつく。
風邪してないといいけど。

―――お腹空かないし、お昼はいいや。

バスは雨を切り、乗客をそれぞれの日常へと送っていった。


――――――――


ブロロロロ……

あれからしばらく天気は崩れたけど、今日は朝から快晴だ。
朝日は木々を照らし、葉っぱに乗せた雨水がまるで宝石のように乱反射する。
こんな日は、何か良いことがありそうな予感がするな。
わたしはいつもの席へと腰を下ろし、ちょっぴり豪華になった景色に意識を没頭させる。

「昨日のテレビ観た?」
「あー!あの○○のドッキリだよね」
「もうマジで腹痛かったわー」
「つーか風邪、もう平気なん?」
「全然余裕。お前らにも移してやりたかったよ」


「………あ」

―――今日はデザートもつけちゃおうかな。


End

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最終更新:2015年01月14日 01:21